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125 名前: 桃色Sisters [sage] 投稿日: 2007/10/14(日) 16:30:20 ID:8uY8TUOA

ハルケギニアからついに元の世界に戻ってきた才人。 しかし、彼には心残りになっていることがあった。 ハルケギニアの地を去る時、その場にルイズの姿がなかったのだ。

彼の地で苦楽を共にしてきたご主人さま。一緒に過ごしていくうちに 主人と使い魔という関係からお互い惹かれあった女の子と男の子が辿りつく関係になっていた。 トリスティンで近衛騎士という身分を与えられ、数々の戦いの中彼女と二人でお互いを護りあってきた。 彼女の実家。ラ・ヴァリエール家の当主からも一応二人の仲を認めてもらうに至っていた。

彼女には耐え切れないことだったのかもしれない。永遠の別れになってしまうかもしれないことだったのだから。 彼女は多分大泣きしたに違いない。でもそれが才人の決心を鈍らせる--ことにつながると慮った結果、 ルイズは自分の想いを抑え込んで立ち会わなかった。そう才人は感じていた。

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久々の自分の部屋--3年という月日を感じさせないくらい何も変わっていなかった。才人が不在の間も 彼の母親は毎日掃除をしてくれていたのだろう。綿ボコリひとつすら見当たらない。 懐かしむかのように才人は自分のベットに触れ、そしてゆっくりと横たわった。 瞳を閉じてみた。いつものベットの匂い。干したてのような太陽の匂いが才人の鼻をくすぐった。 帰って来れたんだ----安堵のため息と共に言葉が漏れた。 あいつ、どうしてるかな・・・異世界に置いてきてしまった恋人のことを思い遣る。 ルイズ----愛しいその名を紡ぎ出し・・・・才人は夢の世界へ旅立った。

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ハルケギニアの面々が出てくる夢から才人は引き戻された--母親が部屋に入ってきたのだった。 「才人!?」 突然の息子の帰還に驚きを隠せずに母はその場に立ち尽くした。 久しぶりの母子の対面に才人も照れを隠せず頭を垂れた。 「・・・た、だたいま。かあさん。」 息子の変わらない声に母は満面の笑みを浮かべて彼のそばに歩み寄った。 「良かったわ。元気そうね・・・本当に良かった・・・」 そういいながら、才人の頭を包み込むように抱き寄せた。 「心配かけて、ごめん。」 才人の頬を暖かいものが伝っていった。 母は才人の頭をくしゃくしゃと撫でて言った。 「あの子も首長くして待ってたのよ。早く顔見せてやんなさい。」 才人は首をかしげた。両親の他に俺を待っているヤツなんていたのか? 「あの子?ってダレだっけ??」 才人の問いかけに母は口を開けて驚いていた。 「何言ってんのよ、この子は・・・あなたの可愛い妹でしょう?」 「えええええええ!!?」 想定外の母の言葉に才人は絶叫した。

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「ルイズちゃん、お兄ちゃん戻ってきてるわよー」 「おかーさん。ほんとー!?」 パタパタパタ--元気良く階段を駆け上がってくる音が聞こえた。 「るるるルイズ?!」 才人は目の前に現れた桃色髪を後ろに束ねた少女に愕然とした。 298 名前: 桃色Sisters [sage] 投稿日: 2007/10/19(金) 13:56:43 ID:zyWNqaHn 桃色かかったブロンド髪に鳶色の目。 とても長い間逢えなかったような。とても逢いたかった。その姿が今目の前に----- おにーちゃん。お帰りなさいっ!!言葉と同時に才人に飛び込んで来た。 兄妹の再会を見届けた母はそっと部屋から出て行った。 彼女の柔らかでほのかに桜色ががった両腕が才人の首に絡められる。 ふわっとした髪の束が才人の頬をなでさすった。そして「彼女」の匂いが鼻をくすぐる。 彼女は才人が座っていたベットに折り重なるようにして倒れこんだ。 おにーちゃんって----この状況を才人はどう受け止めていいのか分からくなっている。 見た目はもう完全に彼女そのものなのに… 「な、なぁ。る、ルイズだよな?」 「・・・・・」 彼女は無言のまま肩を震わせるばかりだ。 どうしたもんかな。彼女に馬乗りになられ、抱きつかれる格好でベットに横たわっている状態に 焦りつつ、おそるおそるではあるが彼女の頭を左の手でやさしくなでる。 あれ?まだこれ消えてないや。左手に刻まれたルーンはなぜか残ったままなのに気がついた。 二人の絆は消えていなかった---心の中に温かい気持ちが広がっていくのだった。 「そのままでいいから。聞いててくれ。俺、今まで魔法の世界に行ってたんだ。 そこでこいつのためなら死んでもいいってくらい護りたいやつに出逢った。おまえと 同じ名前。ルイズってゆー女の子さ。おまえとおなじ年格好だったんだぜ----」 才人はいまだ抱きついたまま離れようとしない彼女に自分の身に起こった出来事を昔話のように 語った。可愛いことにところどころで彼女は才人の肩に顔を埋めたままだったが相槌を打ってくれた。 それが妙に嬉しくて何度も何度も才人は彼女の頭を愛しむようになでるのだった。 「そんなにわたしに似ていたの?」 黙って聞いていた彼女が埋めていた顔を上げ才人を見下ろして問いかけてきた。 その目は赤く、頬は涙で濡れ、その濡れた頬に乱れた髪が何本か引っ付いていた。 「うん。とても似てる。まるで生き写しみたいだよ」 すると彼女は薄く頬を桃色に染め、才人から目線を逸らす。そして言葉をつなげた。 「その子のこと。好き?」 「好き。大好きだ。」 「今でも?」 「ああ、いまでも」 「---逢いたい?」 その彼女の問いかけに叶わぬとは知りながら、しかしはっきりと才人は答えた。 「当然。今すぐにでも---逢いたいさ」 才人の瞳から想いが溢れ出す---- 「ルイズ・・・ルイズ・・・」 「きっと逢えるわ。お兄ちゃん---」 愛おしい人を見るかのように彼女の瞳が才人を捉えていた。そして優しく才人から溢れ出した 切ない思いのかけらをその指で拭ってくれた。 「もう泣かないで。逢いたい人はここにいるんだから---」 才人は何も言えずに彼女を胸へと抱き寄せた。 543 名前: 桃色Sisters [sage] 投稿日: 2007/10/28(日) 00:34:07 ID:M9do1U9l ∽ ∽ ∽ ∽ ∽ 抱き寄せた彼女の桃髪の匂いは紛れもなくルイズのものだった。 離れてしまわないように才人はしっかりと抱きしめた。

「----おにーちゃん。わたしのこと、その人と同じように『ルイズ』って呼んでいいんだよ」 才人に強く抱きしめられながら彼女はつぶやいた。彼女の言葉に才人の拍動が速まった。 「どきどき。聞こえるよ。すっごくドキドキしてるね----」 彼女は才人を見透かしたように言葉を継いだ。 俺、どうしたらいいんだろ。思い余って抱きしめたまではいいのだが、才人にはこれ以上どうしていいのか分からなくなっていた。

コン、コン。部屋のドアがノックされた。

「誰か来ちゃったね。私どいたほうがいいのかな?---それともこのままがいい?」 なんという二択を迫ってくるんだろうか。彼女は。緊張の余り才人は言葉に詰まった。 ”ロック” 彼女はそうつぶやくと、ドアのノブがカチャリと音を立てた。 「ルイズ。魔法・・・・・・使えるのか」 まさか彼女に力があるなんで思ってなかった。そして思わず『ルイズ』と言ってしまった自分に少し照れてしまった。 「うふふっ、不思議な力でしょ。でもおにーちゃん、わたしのこと嫌いになっちゃやだよ」 彼女は才人の胸でもぞもぞと動いて顔を上げた。 ∽ ∽ ∽ ∽ ∽ ノックの主の声が聞こえた。サイトはその声には聞き覚えがあった。 「サイト殿。ここを開けていただけませんか」 彼女は悪戯っぽ笑みを零しドアの方を振り返り、その声の主に声をかけた。 「あ、おねーちゃん。えへへ。今はそのドア開かないよー」 「まぁまぁ。ルイズったらおいたはだめでしょ」 ドアの向こうの声の主はそういうと続けてこう唱えたのだった。 ”アンロック” 一瞬の間に彼女のかけた魔法が解かれ、ガチャリとドアが開けられた。 才人は首を上げてドアの開いたほうを見た。そこにはある部分を除いて彼女と同じ容姿の芳紀な女性が立っていた。 「か、カトレアさん?!」 才人は声を呑んだ。 カトレアは才人をみて天使のような微笑をたたえた。 「しばらくぶりです。サイト殿。」 カトレアは彼女に目を移した。 「まぁルイズったら、なんて格好してるんでしょう」 その言葉とは裏腹にカトレアはころころと笑っているのであった。 374 名前: 桃色Sisters(1/2) [sage] 投稿日: 2007/11/10(土) 18:47:02 ID:rMLpYEKy 才人は馬乗りになっているルイズにちらりと目をやって再びカトレアに視線を向けた。 「カトレアさん。やっぱりルイズはルイズなんですよね?」 「そうですよ。」 首を小さく傾けてカトレアは微笑んだ。 彼はさらに言葉を続ける。 「でも向こうにいるときと性格が変わってない?」 彼女は人差し指を形のよい唇にそっと添えて答えた。 「そう。でもね『なぜ』って今は聞いちゃダメですよ。それはこれからこちらでお話します。」 カトレアは才人から妹へ優しい眼差しを向けて言葉をかけた。 「さぁさぁ、ルイズ。お兄さんをお姉さんに貸して頂戴ね。」

ルイズは桃色に染まったほほを少しふくらかしていたが、可愛らしい返事を返し才人からゆっくりと離れるのだった。 そして彼女は姉の横をすり抜け際、片目を閉じてちょびっと舌の先を出し『ごゆっくり〜』と言い放ってから部屋からトタトタと出て行った。

胸から腹にかけて彼女のぬくもりが残っているのが少しこそばゆい感じがした。才人もベッドから起き上がった。 カトレアが才人の勉強机の椅子に座って、彼と向い合わせになった。 「サイト殿・・・いえ、才人さん。あの子には向こうの記憶を閉じ込めてもらっているの。 私たちはいつまでもこの世界に留まっていることもたぶんできないわ。 もし貴方がこの世界に戻ったままで、あの子の記憶をそのままに残していたら、本当に悲しい思いをさせてしまうーーー」

「そんなの変だ。」 才人は彼女の言葉をさえぎった。 「あいつはーーールイズは、俺のこと思ってくれてここまで来たんだと思う。そうじゃないのか」 「−−−そうね」 伏し目がちにカトレアは言葉を挟む。 「それなのに記憶を奪っちまうなんて、あんまりだろ。そっちのほうが酷いよ!!」

再び彼女は才人に目線を合わせた。そしてゆっくりと宥めるように問いかけた。 「才人さん、貴方はどうしたい?私は貴方にこの世界に戻るべきだと言ったわ。 そして貴方は戻ってきた。・・・でもね、その次にどうするのかは、貴方が決めないといけないのよ。」

妹よりも深い鳶色の双眸は才人を真っ直ぐに見つめていた。彼女はさらに言葉を続けた。 「この世界に残るか、私たちの世界にまた行くのか・・・どっちを選ぶにしろ、 貴方たちには辛い選択になる。でも選ばなくてはならないの。 その答えを私に聴かせて。そうしたら妹の記憶を戻しましょう。」

数秒の沈黙の後、才人は口を開いた。 「インターネットもしたい、こっちの仲間とも遊びたい。そして母ちゃんの味噌汁やカレーも食いたいよーーー」 そこで言葉を切った。彼は両膝の上に拳を握り締める。 「けどさ・・・あっちの世界でどうしようもなく『大事なもん』を見つけちまったんだ。 正直言うと迷った。まじで迷った。でも、それでも、あいつの傍にいてやりたいんだ。」

最後に才人ははっきりと言い切ったのだった。 「俺はハルケギニアに戻る」 ∽ ∽ ∽ ∽ ∽ 375 名前: 桃色Sisters(2/3) [sage] 投稿日: 2007/11/10(土) 18:48:56 ID:rMLpYEKy 才人の決心を聞き届けたカトレアは少し目じりを下げ、柔らかい笑みをこぼした。 才人はその笑みに心を洗われるような感覚を覚えた。そして同時に浮かび上がってきた疑問を彼女にぶつける。 「ところで、カトレアさん。あなたはなぜこの世界に来たんですか?」

小首をかしげながら彼女は答えた。 「ひとつは、妹のことが心配だったからなの。あとひとつはね、私の身体のこと」 カトレアさんの身体?そうか、彼女は元から身体が弱くて実家のラヴァリエールから一歩も外へと足を伸ばせなかったんだっけ。 「才人さん、貴方、幼少の頃身体が弱かったんですってね」

突然自分に話を振られて驚いたが、肯定の返事を返す。 「貴方の話は、妹からよく聞いていたの。あの子に何でも話せているのね。お姉さんとしては嬉しいわ。」 あはは。才人は照れ隠しにぽりぽり頭をかいた。 「貴方の症状と私の今の症状がよく似ていたの。そして今の貴方は元気そのものだわ。 だから、もしかしらたわたしもこちらに来れば治るかもしれないーーーそう思ったのよ」 「てことは、病院に行ったんですか?」 彼が言葉を挟んだ。 「ええ。お医者さんのお話だと、半年くらいここの薬を飲めば治るだろうということだっだわ」 でもここにはそんなに長くは居れないんですよね。まさか半年分の薬もらっちゃったんですか。 「そのまさかなの」 ころころと彼女は笑った。

「才人、カトレアさん。晩御飯よ降りてらっしゃい」 「おにーちゃん。おねーちゃん、いつまでふたりでいるのールイズが全部たべちゃうぞー」 一階から母とルイズの呼び声が響く。

ふたりは視線をあわせるとくすりと笑った。 いきますか。彼の言葉に彼女は首肯で返した。そして家族の待つ食卓へと向かうのだった。 ∽ ∽ ∽ ∽ ∽ 「おっそーーーい。」 ルイズがふくれっ面でお出迎えである。 食卓には彼の好物カレーライスとサラダ。そして少しアンマッチではあるが味噌汁が並ぶ。 久々の懐かしい料理に彼の目頭が熱くなった。

「いだだきます」 才人は手を合わせて、真っ先に味噌汁へと手を伸ばした。味噌の香りが口から鼻へと通り抜ける。 「母ちゃんうめー。さいこー」 この晩餐がもしかしたら最後になってしまうかもしれない。そう考えるととても大切に味わわないとと思うのだった。

母はにこりと笑う。そしてその笑みが彼に決意の口を開かせた。 「母ちゃん・・・俺さ・・・またしばらくしたらここ出ることにしたんだ。 色々心配ばっかかけてるけど、大丈夫だから、俺向こうでもがんばってやってくよ」 そう。分かったわ。母は笑みをたたえながら一言返すだけだった。

カトレアは彼を優しく見つめている。一方、ルイズは目を見開いて固まっていた。 「わ、わたしはどーなるの?またひとりになっちゃうの?」 ルイズは身を乗り出して彼に詰め寄った。

ルイズ。カトレアは妹に呼びかけると小声で何かを呟いた。彼女の右手にはスプーンではなく、杖が握られていた。 ルイズは再び固まった。そして10秒ちょっとたって我に返った。 「・・・・あ、あれ?わたし・・・ここ・・・え・・・サイト?ちぃねえさま!?」

あたふたする彼女にちいねえさまは彼女のイスをぽんぽんと叩いて言った。 「あらあらルイズったら。お座んなさい」 彼女はちょこんと座りなおすと顔を赤くして俯いた。そしてごめんなさい。と小さく呟いたのだった。

∽ ∽ ∽ ∽ ∽ 376 名前: 桃色Sisters(3/3) [sage] 投稿日: 2007/11/10(土) 18:49:34 ID:rMLpYEKy 「お母さま。申し訳ありませんでした。こっちが本当のルイズです」 姉は母に頭を下げた。 「分かってたわよ。カトレアさん。おなかを痛めた子が誰だったかなんて忘れやしませんよ。 でも二人も娘ができてお母さんは嬉しいばかりよ」 さすがというか母は何も動じる様子はなく、笑っているのであった。 「さあ、冷めないうちに召し上がれ」 母は三人の子どもたちに食事をすすめた。 しばらく黙っていたルイズも才人の国のミススープやカレーライスをおいしく食べ始めた。 そして母と姉と3人で色々話をして楽しく過ごしたのだった。

∽ ∽ ∽ ∽ ∽ 食事の後、才人は自分の部屋へ荷物の整理に戻っていった。 食卓には母とカトレア、そしてルイズが残っていた。 「サイトのお母様。ごめんなさい。」 ルイズは謝った。 「どうしたの。ルイズちゃん」 母は彼女の頭をなでて問いかけた。 「だって、サイト・・・さんを向こうへ連れて行っちゃうから・・・もしかしたらもう二度と会えなくなっちゃうかもしれないから」 彼女は頭をたれもじもじしして言った。 そんな彼女に母は微笑とともに言葉をかけた。 「ルイズちゃん。男の子ってのはね。いつかは家を飛び出していくもんなの。 そして自分で新しい家を作るのよ。新しい家族と一緒にね。わたしはそれを見守るだけ。」 そして言葉を続けた。 「あの子はあなたの事がとっても大切なのね。聞かなくても分かるもの。 −−−そしてあなたも。好きになってくれたのね。あの子のこと。」 ルイズの心の奥底に母の言葉が響き渡った。彼女のほほに熱いものが伝っていった。 「あの子のこと、お願いね」 母はそういってルイズをぎゅっと抱きしめたのだった。

∽ ∽ ∽ ∽ ∽ 旅立ちの日。 才人の部屋でゲートが開いた。三人は母に向かい合う。 「いってらっしゃい。」 母はただ一言そういって手をふった。 その言葉に背中を押され、三人はゲートをくぐって行くのだった。

「才人、元気でね。」 息子の消えゆく背中に母は声をかけていた。

〜Fin〜