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「気がつきました?」  タバサはぼんやりと天井を見上げ、声を掛けたメイドを見つめた。黒髪とそばかすが印象的な、サイト専属のメイド。たしか名前は……シエスタ。  慌てて起き上がろうとすると、タバサはそっとシエスタに押さえられた。 「疲労が原因で倒れられたんですよ?先生の話ですと、今日一日は安静にした方が良いそうです」  やっとタバサは思い出した。数日の徹夜明けのまま学院の廊下を歩いていて急に意識が遠退いたのだ。偶然居合わせたシエスタが医務室に運んでくれたらしい。ありがとう、と頭を下げるとシエスタは明るい笑顔で首を振った。 「敵討ちなさって、ご病気のお母さまの看病もなさって……ミス・タバサは凄いですわ」 「サイトやキュルケが、助けてくれたから」  タバサは言って窓の外を眺める。彼らには感謝している。だがこれからの仕事は助けてもらえない内容だ。ガリア王家の承継と政権掌握、軍事外交とあまりに慣れないことばかりで、さすがのタバサも頭が回りきらないのだ。学院と女王の義妹であるルイズの口添えのおかげでアンリエッタの支援を受けられるのは不幸中の幸いだろうか。タバサは溜息をついてシエスタに目を向ける。  と、タバサはシエスタが一冊の本を膝に乗せていることに気付いた。全くタバサの見たことのない表紙だ。シエスタはタバサの視線に気付いて慌てて本を隠そうとする。 「その本、読みたい」 「いえ、これはお姫様が読まれるようなものでは」 「構わない。私自身、姫として育っていない」  タバサの淋しそうな視線にシエスタは、サイトとルイズには内緒、と言って本をタバサの膝に置いた。タバサは読み進むにつれ奇妙な笑みを浮かべ始めた。


「これで私たちは三姉妹ですね」  アンリエッタはほほえんで、以前に妹としたルイズと新しい妹、タバサを抱き締めた。  ガリア王家唯一の血筋であり、戦乱から取り纏めるだけで精一杯のタバサにとって、今すぐ婿を考えることはあまりに困難だが、一方で姻戚関係による同盟が欲しい。そこでタバサがアンリエッタに提案したのは、自分がアンリエッタの妹になることだった。 「これから、よろしくお願いします。アンリエッタ姉さま、ルイズ姉さま」  タバサの頬がかすかに赤く染まる。ルイズはタバサを抱き締めて言った。 「実は妹って欲しかったの!困ったことがあったら何でも言って!」  ルイズの頭の中では自分はカトレアの姿になっている。優しくて慕われる姉様になりたいのだ。タバサはルイズの耳元に口を寄せるとアンリエッタに聞こえないように囁いた。 「ルイズ姉様とサイトの仲、応援する」  ルイズは怒りかけ、だがカトレアを思い出して怒りを飲み込む。じっと見つめているうちにタバサの健気さに気付き、再びルイズはタバサを抱き締めた。


「すごく、面白かった」  タバサはシエスタに借りた本を渡す。シエスタは悪戯っぽい笑みを浮かべて言った。 「気に入って下さるなんて光栄です。『愛してお義兄様』は私も大好きなんですよ。禁断の愛!ああ」  本を抱いて一人踊るシエスタを眺めながら、タバサはぽそりと呟いた。 「サイトお義兄さま」