ゼロの保管庫 別館

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だれでも歓迎! 編集

「うちのぶどうは最高なんですっ!」  だん、とシエスタがテーブルを叩く。いつもならそういう態度を真っ先になじるルイズも、酔ったシエスタに文句を言うほど馬鹿ではない。ルイズとサイトは顔を見合わせて溜息をついた。  今日は新物ワイン解禁の日で、シエスタの村はこの日、新ワインをブリミルに捧げて皆で飲むワイン祭が毎年開かれる。そんなわけでシエスタに誘われたサイト達が村にやってきたのだが、ほんの1時間も経たないうちにシエスタがいつものように悪酔いし始めたというわけだ。 「赤は飽きたんらろ?ならー、白飲もー」  シエスタは広場の真ん中に山と積まれたワインの瓶にふらふらと寄っていき、一本の瓶を引っこ抜く。酔っているくせに器用にコルクを抜くと三人のグラスになみなみと注いだ。 「ミースー・ヴァリエール!勝負れす!」  ルイズは眉をひそめて流そうとする。だがシエスタの言った内容は放置できるものではなかった。 「ワインのー飲みっ比べでー、勝った方はー、明日サイトさんを独占でー」 「私もやる」  明後日の方向から冷静な声がした。タバサだ。 「ちょっと!勝手に決めないでよ!」 「挑まれて逃げる貴族は不戦敗」 「ふーせんぱーい!」  タバサとシエスタの言葉にルイズも冷静さを失った。 「ななななによ!お子様と酔っ払いに負けるほどラ・ヴァリエール家は弱くないわ!」  叫んで。賞品の意思を無視した女三人の戦いが始まった。


「お互い苦労するわね」  酔い潰れたギーシュの頭を撫でながら、モンモランシーはサイトに声を掛けた。サイトの周りには引き分けた三人の女たちが倒れており、時折「水……」と呻いている。モンモランシーは水差しをサイトに渡して言った。 「水魔法の使い手として、こんな子たちには水なんてやりたくないけど」  言いつつも水差しに数滴、二日酔いを楽にする薬をおとしてくれる。 「で、誰が本命なの?」 「本命って……」  モンモランシーも酔っているのか、悪戯っぽく笑って三人を指差した。 「だらしないのよ、あんた。しゃきっと決めないからややこやしくなるの」 「んなこと言ったって」 「言い訳無用。ほんとのことなんだから」  サイトは苦笑して椅子にもたれかかる。と、モンモランシーはテーブルに載せられたフルーツの山を指差した。それは様々な果物を美しい銀の皿に飾り盛ったものだった。 「何か一つ選んで」  サイトは迷った末、桃をつかんだ。モンモランシーはその桃を受け取ると皮を剥き、コップの中で潰した。次いで飲み残した白ワインを加えて掻き混ぜる。よく混ざったのを確認すると一口飲んで味を確認して、サイトの目の前に置いた。 「飲んでみて」  言われるままに一口含む。桃の甘味と白ワインの酸味が混ざって心地よい。 「その色と味はだれ?」  言われてサイトはぼんやりとルイズに目を向ける。くすっ、とモンモランシーが笑ったのに気付き、サイトは慌ててルイズから目を逸らした。だがモンモランシーは満足そうに言う。 「桃髪のルイズが一番好き、なのね」 「いや一番とか何とかは……」  誰も訊いてないのに、とまたモンモランシーは笑う。サイトは溜息をつくと、モンモランシーに諦めの表情で頷いた。モンモランシーは頷き返す。 「あんただけ恥ずかしいのは卑怯よね。だから」  言ってモンモランシーはギーシュの髪をかきあげ、そっと額に口付ける。 「秘密ね、お互い」 「だな」  桃入りの白ワインのグラスと、ほんのわずかに赤ワインの入ったグラスを二人はかちり、と鳴らしあった。

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