618 名前:メイドが来たりて笛を吹く ◆mQKcT9WQPM 本日のレス 投稿日:2007/11/18(日) 01:16:29 PHAMvhgH
その日。 彼女は決断を下した。 自分は彼のものである。 なのに、彼の下にいないのは、おかしい事だ。 そう判断した彼女は。 見慣れた部屋を出て、彼の下へと向かったのだった。
『ミス・ヴァリエールへ。 私はサイトさんのメイドです。だから、サイトさんのところへ行きます。 ちゃんと制服、洗濯に出してくださいね。溜め込んじゃだめですよ。 あと、昨日のお夜食の残りは棚に入ってます。早めに召し上がってください。 それでは、またいずれ。 シエスタより』
授業が終わって自室に帰ったルイズは、テーブルの上に無造作に置かれたその手紙を読んだ瞬間、激昂した。
「な、なによあのメイド!抜け駆けしようってわけ!?」
そう叫んで、思い切りその手紙を引き伸ばして、破ろうとする。 すると、窓ガラスに映ったその手紙の背に、何か書いてあるのが見えた。 少し裂け目の入ったその便箋を慌ててひっくり返し、ルイズはそこに書かれている言葉を読む。
『もし、ここに気付いてくれたら、幸せです。 もっと、ルイズは自分の気持ちに素直になった方がいいですよ。 あなたのともだち シエスタより』
それを読んだ瞬間、ルイズはうぐ、と言葉に詰まって、その便箋をくしゃっと丸めるに留めた。 そして、半分怒ったような、半分泣いているような顔で、ひとりごちた。
「…わかってるわよ、そのくらい…!」
ルイズはそう言って、半分怒った顔のまま、ベッドに倒れこんだ。
タバサを使い魔にした才人を、ルイズが部屋から追い出して、十日あまりが過ぎた時のことだった。
「サイトさん!」
才人がその日、半分日課になりつつあるタバサが借りてきた本の返却をしに、山と詰まれた本を図書室へと運ぶ途中、中間地点の中庭に着いた時。 シエスタが、突然目の前にやってきた。 シエスタは息のかかりそうな距離から、本の山を抱える才人を、真剣な目で見つめる。 突如現れた黒髪のメイドのその視線に、才人は思わずたじろぐ。そして。
「…あ、あの、シエスタまだ怒ってる?」
怯えたようにそう言った。 才人は勘違いしていた。シエスタが、ルイズと同じく、タバサを使い魔とした事を怒っていると。
「…何の話ですか?」
当然、シエスタには才人の言葉の意味が理解できない。
「…いや、タバサとアレがごにょごにょ…」
蒸し返して怒らせてもなあ、と思った才人の語尾は、尻すぼみになってしまう。 シエスタは、その鋭い勘で、彼が何を言いたいのか理解した。
619 名前:メイドが来たりて笛を吹く ◆mQKcT9WQPM 本日のレス 投稿日:2007/11/18(日) 01:17:31 PHAMvhgH
「…怒ってませんよ、そんなこと」 「え?そなの?」
才人は、てっきり、シエスタはルイズと一緒に怒り狂っているものとばかり思っていたのである。 無理もないことである。彼が大怪我をしてルイズの部屋から吹き飛ばされた時、彼は四六時中気を失っていたのだから。 後からタバサから事情を聞いた才人が、シエスタがルイズと一緒になって自分を吹っ飛ばしたと思ってもそれは仕方のないことだった。 シエスタはそんな才人を見つめて、改めて彼に語りかける。 あれからずっと、こうしようと考えていた事を。
「…サイトさん。お願いがあります」
あまりにも真剣な眼差しで見つめるシエスタに、才人は後ずさってしまう。
「な、なにかな?」 「私を、あなたの使い魔にしてください」 「…へ?」
思わず才人の目が点になる。 動きの止まった才人に代わり、彼の背に負われたデルフリンガーが言った。
「…メイドの嬢ちゃん。そりゃムチャが過ぎるってもんじゃないかい?」 「どうしてですか?」 「俺っちも大概長く生きてるが、二体の使い魔と契約を交わしたヤツなんざ、聞いたことねえぞ」
しかし、シエスタは反論した。
「…います。いるじゃないですか、デルフさん」 「へ?いたっけかそんなの」 「忘れましたか?始祖ブリミルは、4人の使い魔を連れていたんですよ」
デルフリンガーは鍔をかちゃん、と鳴らした。相槌のつもりらしい。
「……完璧忘れてた。そーいやブリミルの野郎がそうだっけか」 「いやいやちょっと待って!」
その話に、才人が割り込んでくる。
「どうしたい相棒?」 「そもそも俺メイジじゃないし、そもそもブリミル関係ないし、そもそも俺が使い魔じゃん!無理だってば!」 「いやいや相棒、だいたいがあのちみっこい嬢ちゃんと使い魔の契約した時点で相棒は十分規格外だぜ? やっちゃえよ、相棒」
あまりにも気楽に言うデルフリンガー。 そしてそのデルフリンガーに乗せられるように、シエスタは言う。
「無理でもいいんです!形だけでいいんです! あの、その、私もミス・タバサみたいに、サイトさんのモノにして欲しいんです!」 「い、いやでもなあ」
才人はあまり乗り気ではないようだ。 彼には、シエスタの申し出が、なんだか不倫みたいな気がして、イマイチ踏み切れないでいた。 そんな才人に、シエスタは。 どこから取り出したのか、一本の果物ナイフを両手に構え、その切っ先を喉下に当てた。
「…サイトさんのモノになれないなら、私、生きてたってしょうがないです。 今ここで命を絶ちます」 「ちょ、ちょっと待ってシエスタ!早まるなって!」 「…じゃ、カタチだけでも使い魔の儀式してくれます?」
ちらり、と横目に才人を見るシエスタ。
620 名前:メイドが来たりて笛を吹く ◆mQKcT9WQPM 本日のレス 投稿日:2007/11/18(日) 01:18:49 PHAMvhgH
才人ははぁ、と大きなため息をついて。
「…しょうがないなあ…。カタチだけでよければ」
諦めたようにそう言ったのだった。
我が名は平賀才人。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔と成せ。
才人の声が、人の居ないタバサの部屋に響く。 流石に中庭では人目があるので、本を返却した才人はシエスタを連れて、まだ授業中で無人のタバサの部屋に戻ってきていた。 才人はタバサを使い魔にしたときの事を思い出しながら、儀式を進める。 口語による詠唱が終わり、才人は足元に跪くシエスタの細い顎を、軽くつまむ。
「じゃ、いくよ、シエスタ」 「…はい…」
シエスタは才人を見上げ、覚悟を決めたように目を瞑る。 才人はそっとその桜色の唇に自らの唇を重ね。 そして、契約は完了する。
「これで、また契約成立したらオドロキだな相棒」
冗談めかしてそう言ったデルフリンガーの声に。
「…やばい…」
才人の声が重なり。
「いたっ…痛い、いたいたいいたい!」
突如痛みを訴えだしたシエスタの声が重なった。 才人は慌ててシエスタを介抱する。 彼にはキスをした瞬間に、もう分かっていた。 胸の奥に熱い何かが点り、身体中を駆け巡った。タバサの時と同じである。 そう、目の前で、シエスタに『使い魔の印』が刻まれているのだ。 二人目の…黒髪の使い魔の誕生である。
「さ、サイトさん…」
才人の腕の中で彼の手をしっかり握ったシエスタの痛みは、すぐに納まった。 涙の流れる瞳で才人を見上げ、そして微笑んだ。
「私…サイトさんの、使い魔に…なれたんですね…」
才人の中に、言葉とともにシエスタの歓喜の感情が流れ込んでくる。
…心も、繋がったみたいだな…。
才人の心の声に、シエスタは思わず声を上げてしまう。
「え?え?な、なんですか今の?」 「使い魔の契約するとさ」
こういうことも、できるみたいなんだ。
621 名前:メイドが来たりて笛を吹く ◆mQKcT9WQPM 本日のレス 投稿日:2007/11/18(日) 01:19:20 PHAMvhgH
才人の心の声に、さらに激しい歓喜の感情が、シエスタから送られて来る。
嬉しい!嬉しい!すっごく嬉しいです!
その声とともに、シエスタは才人にぎゅっ、と抱きついた。 そして才人はシエスタに言葉で告げる。
「…で、さ。シエスタの身体のどこかに、『使い魔の印』が刻まれてるはずなんだ」
言って自分の『ガンダールヴの印』を見せる。 シエスタは、すぐに思い当たった。 胸のリボンを解き、メイド服の胸元をがばっ!と開く。
「ちょ!シエスタ何やって」 「…やっぱり」
慌てる才人に対し、シエスタは冷静だった。 先ほどの契約の際、最も強い痛みを感じたのがここだった。 鎖骨の間。 彼女の豊満な谷間のすこし上に、その印はあった。 それは、下方が鋭角になった、黒い五角形だった。 見ようによっては、盾にも見える。
「これが、使い魔の印…」 「シエスタ、胸、胸!」
感動するシエスタを、才人の言葉が台無しにした。 勢いよく前をはだけたせいで、シエスタのおっぱいはその先っちょのさくらんぼまで、丸出しになっていた。 …まあ、しょうがないことなんでしょうけどー。
…サイトさんの、すけべ♪
その言葉には、あまりにも淫靡な感情が乗っていた。 それに釣られ、才人の身体が反応する。 おもいっきり、勃ってしまったのである。
…あのなあ、シエスタ…。
呆れたような才人の心の声を、シエスタの心の声が打ち消した。 その声は、まるで身体の芯を引き絞られるような、激しい欲情に染まっていた。
…十日以上もご無沙汰だったんですよ。
そして、才人のズボンを器用に下ろすと。 露出した胸で、才人の肉棒を包み込んだ。
いっぱい、出してください♪ご主人様♪
622 名前:メイドが来たりて笛を吹く ◆mQKcT9WQPM 本日のレス 投稿日:2007/11/18(日) 01:19:58 PHAMvhgH
そして、その夜。 才人とシエスタは、部屋の主に全ての事情を話す。
「…別に構わない」
タバサのその言葉に、嘘偽りはない。 才人は、心の中でタバサに謝罪する。
…ごめんな、シャルロット。
しかし。タバサの反応は、才人の予想と違っていた。
…何を謝るの? 私はアナタの物。サイトの行動を縛る権利も、そのつもりもない。 私はサイトを独占するつもりなんてない。 私は、サイトに独占されていたいけど。
心の中で言い切って、タバサはシエスタに歩み寄る。 そして、シエスタに手を差し出した。
「これからよろしく」
シエスタはその小さな手を握り返した。
「私も、サイトさんを独占しようなんて思いませんよ♪」
にっこり笑って言うシエスタ。 タバサは一瞬驚いた顔をするが。
これ、どうやら使い魔どうしでも通じるみたいですよ?
シエスタの心の声が、全ての疑問の答えになった。 つまり、使い魔同士でも、伝えようと思った事は、相手に伝わるのだ。 そして二人は、心を通じ合い。 才人に向き直る。
「じゃ、これから二人分頑張ってくださいね、ご主人様?」 「…無理は、しなくていい」 「…ははは…」
二人分のねぎらいと期待の感情に、乾いた笑いの漏れる才人だった。
…ひょっとすると、将来的には三人分になるかもですけどね。
二人には伝えないよう、心の内で黒髪のメイドはそう思った。〜fin