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「お呼びでしょうか」  アニエスはアンリエッタの私室を訪れた。アンリエッタはいつもの柔らかな笑顔で彼女を迎える。 「多忙だというのにあなたは即座に駆けつけてくれる。感謝していますよ」 「もったいないお言葉」  アニエスは折り目正しく敬礼する。アンリエッタは声を低めて話を続けた。 「アニエス、そんなあなたにお願いなのですが、秘密は守れますか?」 「もちろん」  アニエスは迷うことなく答える。何の仕事だろうか。他国への密偵か、それとも謀反の惧れのある者を調べろと言うのだろうか。緊張した面持ちで言葉を待つと、アンリエッタは一冊の本を差し出した。 「先ほどルイズたちが来ていたのですが、二人の付き人として来ていたメイドがこの本を忘れていったのです」  あの黒髪の小娘か、とアニエスは思い浮かべる。善良そうではあるが、特別どうということもないメイドだったと思う。 「本を届けるのですか?何かのついでに行って参りましょう」  アニエスの言葉に、だがアンリエッタは奇妙な表情で首を振った。何かこの書物に危険なことでも書いてあるのだろうか。 「まさか、あの小娘がレコン・キスタ……」  するとアンリエッタは吹き出してから慌てて手を振った。 「そんな話ではないのです。恥ずかしいことに私、勝手に本を覗いてしまったのですが、中身に興味を持ってしまって」  言ってアンリエッタは本を差し出した。表紙には「新時代マッサージ極意」とある。アンリエッタは頁を開いて冒頭の注意書きを指差した。 「失礼致しまして……『このマッサージは、される者とする者との信頼が最も重要ですから、なるべく最も信用の出来る者にしてもらうこと』と」  アンリエッタは少し頬を赤くして言った。 「私も激務で体の節々が痛くて……。最も信頼出来る人と言えばルイズ、あなた。あとはマザリーニぐらいですので、あなたにお願いしようと」 「そんなことであれば、当然勤めさせていただきますよ、陛下」  アニエスはむしろ誇らしい気分で依頼を受ける。アンリエッタは喜んで本をアニエスに渡した。アニエスは軽い気持ちで本を読みつつ準備を始めた。


「動きやすく、体温が伝わりやすいように、か」  さすが極意と言うだけある本であった。マッサージ師は体に密着する服1枚が理想だという。アニエスはサイトから以前もらった、海戦の訓練に便利な紺色の水着をまとった。訓練中の危険な際を考慮して、胸に白い布で名前を書いておくという発想は非常にアニエスが気に入った実用的な水着なのだ。  次いで街で購入した香を幾つか混ぜて焚く。よくわからないが、肉体を活性化する作用があるとのことだ。鹿から採った成分が多いとのことで香水屋が妙な笑みを浮かべて嬉しそうにしていたが、在庫が余っていたのだろうか。  陛下には恐れ多いことだが全裸になっていただき、柔らかい木綿のシーツで体を覆ってうつぶせになっている。 「このところ、乗馬をする暇もなく体が緩んでしまって……」 「そのようなことはございません、陛下。むしろ美しいですよ」  アニエスは自分の筋肉質の体と見比べる。鍛えた自分の肉体に誇りは感じているが、アンリエッタの高貴な白い肌には女性として憧れを抱くのは当然だ。だが、アンリエッタが見込んだアニエスだけあって、それは嫉妬よりもむしろ守らなければという気持ちへと昇華してしまうのだ。  アニエスは本にある通り、アンリエッタの腰に跨ると首筋を揉み始める。首から肩へ、次いで背中を外側から背骨に向かって揉んでいく。途中、指先で背骨を刺激したり耳たぶを刺激する点が極意なのだ。アンリエッタは寝息を立てたと思うと刺激で体を震わせる。普通は睡眠を邪魔するなど具の骨頂だと思うのだが、この本によればそれもまた極意なのだという。  アニエスは真面目にマッサージを続けてふくらはぎ、内股へと進む。 「あ、あふ」  アンリエッタは奇妙な声を上げるが、アニエスは真面目にマッサージを続けた。やっと背中側が終わったので仰向けになってもらう。これは体温を伝えながらなので布を外して行う。 「あ……ぁん」 「肩こりに効くそうですよ」  言ってアニエスはアンリエッタの胸を握った。肩こりは胸の大きいほど酷いそうだ。たしかに自分は肩こりはしないしルイズもしたことがないと言っていた。おそらく、あのメイドも肩こりに悩んでこの本を買ったのだろう。 「アニ…エス……ちょっ……あぁ、もっと」 「よろしいですか?」  アニエスは冷静に乳首を摘まんで弾く。これは東方のツボという理論体系によるものらしい。左胸を揉みながら右手でへそを刺激する。 「ふにゃ……は……あ」  さらにアンリエッタは変な声を発し始めた。 「大丈夫ですよ」  アンリエッタは本の通り、耳元で囁いてアンリエッタのよだれを拭く。アンリエッタは潤んだ瞳でアニエスを見つめる。遂にアニエスは最終頁にあった極意を頭の中で復唱した。 「陛下、失礼いたします」  人差し指をアンリエッタの唇にあてる。なるほど、本の通りアンリエッタが指に吸いついてくる。アニエスはもう片方の空いた手を茂みの奥へと差し入れていく。つぷり、とぬかるんだ音が聞こえる。 「陛下、ここから先は……」  これはまずいな、とやっとアニエスも気づいた。だがアンリエッタは潤んだ目でアニエスの指を前歯で甘噛みしながら告げた。 「アニエスのこと、信用していますわ。大事な、一の忠臣のアニエス。私のこと、もっともっと……して」 「陛下!」  アニエスの脳が焼き切れた。アンリエッタの胸に舌を這わせる。アンリエッタは怒るどころかアニエスの頭を抱きしめる。アニエスの手はアンリエッタの体の奥をかき回した。ぴちゃり、指先を滴が這い流れる。アニエスは滴を掻き出してはさらに奥を揉みほぐしていく。 「アニエス、アニエス!私、私もう!」  そのままアンリエッタは痙攣して脱力した。


「……陛下、この本は」 「素晴らしい本ですわ!アニエスもお疲れ様でした」  叱られるどころか褒められてしまい、アニエスは次第に不安になる。無礼とかそういう次元ではなく、陛下の考えていることは。  案の定、アンリエッタは裸体を白布で隠しただけの格好でアニエスの肩にしなだれかかりながら囁くように言った。 「このマッサージについて、私以外の誰にもしてはなりません。あと、してもらうのも禁止します」 「……はあ」 「あと……アニエス、今はあなたも恋人はおりませんね?」  アンリエッタはひきつった笑みでうなずくアニエスの首に手を回した。 「使い魔とメイジのカップルがあるのですから……女同士もありですよね?」  アニエスのファーストキスはこうして奪われたのだった。