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217 名前: きっとサンタさんが [sage] 投稿日: 2007/12/24(月) 22:14:40 ID:eigr0ny2     {   グロ 注意!! };    「ジングルベール、ジングルベール、すっずがなーる」  歌ってみて気付いたことは、歌えば歌うだけ、ここは地球ではないと再確認して空しくなるだけだという事実だった。才人はため息を吐く。 「真っ赤なお鼻の、トナカイさんは」  それでも止めることなく歌いながら歩いていると、不意に誰かに呼び止められた。 「あら、サイトさん」 「お、シエスタか」  洗濯籠を抱えているシエスタに向かって、手を上げながら歩いていく。 「こんにちは、サイトさん」  シエスタは笑顔で返事をしたあと、不思議そうに首を傾げた。 「さっきの歌はなんですか? 聞きなれないメロディでしたけど」 「ああ、俺の世界の歌さ」  才人はクリスマスという習慣のことなどをシエスタに説明した。 「へえ。あちらでも、白銀の降臨祭のような祭事があるんですね」 「ま、そういうのはどこでも同じなんだろうな……っと」  不意に背筋に寒気を感じて、才人はシエスタと会話を続けながらちらりと後方に目をやる。  案の定、塔の影から顔を出したルイズが、凄まじい目つきでこちらを睨みつけていた。 (まずいとこ見られちまったかな)  己の失策に内心ため息を吐きながら、才人は「それじゃ」と手を上げて無理矢理会話を打ち切り、ルイズの下へ向かう。 「よう、ルイズ。元気か?」 「またシエスタと楽しそうに話してたわね」  第一声は恨みの念に満ちていた。才人は苦笑する。 「そんな大袈裟なもんじゃねえって。大したことは話してねえよ。お前こそ、何やってたんだ? その袋はなんだよ?」  ルイズが右手に持っている大きな袋を指差しながら訊ねると、彼女はつまらなそうに答えた。 「宝物この中にあったマジックアイテムよ。虚無と関係ありそうなものがないか調べてみてくれって、ミスタ・コルベールが」 「へえ。すげーな、頼りにされてんじゃん。ちなみにどんなアイテムが入ってんだ?」 「遠くのものを映し出す鏡とか、主人の想像に応じて形を変えるアルヴィーとか、空飛ぶ絨毯とか……」 「統一性がねえな」 「そんなことより、シエスタと何話してたのよ」  ルイズの眉がつりあがる。 「ずいぶん楽しそうだったじゃない?」 「疑り深いな。さっき話してたのはな」  才人はシエスタに教えたことを、ほぼそのままルイズに教えてやった。 「へえ。じゃ、あんたの世界では、今日は恋人と二人きりで過ごす日なのね」 「まあ、家族と一緒って人も多いと思うけど」 「じゃあ、あんたはこの後ずっとわたしの部屋にいなさい。外に出ちゃダメよ」 「分かったよ」  いろいろ言いたいことはあったものの、とりあえずそう答えて、ルイズと共に部屋に戻る。  扉を閉めて鍵をかけた瞬間、ルイズは袋を放り出して才人に抱きついてきた。 「サイト、サイト……」  こちらの胸が痛くなるような声を絞り出しながら、才人の胸に顔を摺り寄せる。  背中に回された両腕に凄まじい力が込められているのを自覚しながら、才人は苦笑した。 「おいおい、どうしたんだよルイズ」 「だって、寂しかったんだもの。サイト、わたし以外の女の子とあんなに楽しそうに……」  ルイズが目に涙を溜めて才人を見上げた。 「ねえサイト、わたしのこと好き?」 「当たり前だろ」 「シエスタよりも?」 「ああ」 「他の誰よりも?」 「もちろんさ」  躊躇なく言い切ったが、ルイズは不安げに顔を伏せた。 「でも、わたしなんて可愛くないし胸もちっちゃいし性格悪いし編み物は下手だし何にも出来ないし……」  ぶつぶつと呟き始める。 218 名前: きっとサンタさんが [sage] 投稿日: 2007/12/24(月) 22:16:04 ID:eigr0ny2 (またこのパターンか)  最近ではすっかりお馴染みになったルイズの行動に、才人は憂鬱な気分になる。  才人がルイズに気持ちを告げ、ルイズの方もそれを受け入れてから、幾ばくかの時間が過ぎていた。  気持ちが通じ合ったためなのか、最近のルイズは己の弱さというべき部分を才人に曝け出すようになった。  それは自己嫌悪であったり、他の少女たちへの嫉妬であったりした。 (愛情に飢えてた、ってことなんだろうな。俺がしっかり受け止めてやらんと)  才人はそう解釈し、ルイズが何を言っても許してやろうという覚悟を固めていた。  しかしルイズの被害妄想じみた思いは治まるどころか、徐々に高まっている感すらある。 「今日はシエスタと話してた、タバサと勉強してた、テファの料理食べてた……」  奥底で火が燻っているような暗い目で、ブツブツと文句を呟くのである。 (俺を失いたくない、取られたくないってのは分からないでもないんだけどなあ)  さすがにルイズのそれは少々行きすぎである。  とりあえず今は何とか話をそらすことにして、才人はルイズを抱きかかえて、ベッドに腰掛けた。 「なあルイズ。クリスマスの話なんだけどさ」 「なに?」  ルイズの興味がこちらに向いたのを幸いに、才人はクリスマスのことをあれこれと説明し始めた。  町を歩く恋人達、通りや家々に飾られるもみの木、サンタさんが持ってくるプレゼント。 「サンタさんって、なに?」 「あー、良い子のみんなに望みどおりのプレゼントを運んでくる、赤い服着た白髭のおっさん、って言うか」 「そういう精霊がいるのね」  ルイズは感心したように頷く。  無論事実とはかなり違う解釈だが、いちいち訂正する必要もないと思ったので、才人は微笑ましくそれを見守る。 「サンタさん……良い子……望みどおりのプレゼント……」  呟いたルイズが、 「ねえ、サイト?」 「なんだ?」 「わたしって、良い子?」  ルイズはちょこんと首を傾げた。才人は内心苦笑しながら頷く。 「ああ、良い子なんじゃないか? 今年一年はずいぶんと頑張ったもんなあ、お前」 「そう、そうよね!」  ルイズは顔を輝かせた。 「じゃあ、サンタクロースはわたしにもプレゼントを持ってきてくださるかしら?」 「うん?」  才人は眉根を寄せた。 (俺の話が異世界の話だってのは分かってるはずだよな? それなのにサンタさんが……って……ああ、そうか)  才人は合点がいって、にやりと笑った。 (要するに、俺から何かプレゼントをもらいたいってことなんだな? 可愛いこと考えるじゃないの、こいつ)  そう結論付けて、才人は深く頷いた。 「ああ、きっともらえると思うぜ、プレゼント」 「わたしが一番欲しいものを?」 「もちろんだとも」 「そう、良かった」  ルイズは満面の笑みを浮かべて頷いた。 「サイトがそう言ってくれるなら、わたし、心の底から信じられる! サンタさんは、きっとわたしの望みを叶えてくださるわ!」  はしゃいだように言うルイズを見て、才人のほうも嬉しくなってきた。 (そうだ、今日は二人だけのクリスマスパーティをやるか。飾りつけして、歌でも歌って)  少し馬鹿らしい気もするが、最近の沈みがちなルイズを元気付けるためにはうってつけの名案に思える。  その思い付きをルイズに伝えると、案外あっさりと了承してくれた。 (他の女の子と遊ぶつもりじゃないでしょうね、とか言われると思ったんだけどな)  少し疑問に思いながらも、才人は準備をすべく部屋を飛び出した。

 切ってきて加工してもらった小さな木を鉢に植えつける頃には、外はすっかり暗くなっていた。 「思ったより時間かかったなあ」 「そう? 大丈夫じゃない?」  やけに機嫌のいいルイズが、にこにこしながら言う。 「あとは木に飾り付けをするだけね」 「そうだな。何を飾ろうか」

219 名前: きっとサンタさんが [sage] 投稿日: 2007/12/24(月) 22:16:58 ID:eigr0ny2

「大丈夫よ。飾りはわたしが用意するから」 「え? お前、そんなの持ってたっけ?」 「これから届くのよ」  ルイズがそう言うのと同時に、部屋の外からかすかな音が聞こえてきた。 (鈴の音、か?)  才人が眉をひそめるのと同時に、ルイズが「来た!」と叫んで思い切り窓を開け放った。  身を切るような冷たい風が吹き込んできて、才人は思わず身震いする。 「お、おいルイズ、何やってるんだよ」 「サイト、見て!」  ルイズは興奮した面持ちで空の一角を指差す。 「サンタさんよ!」 「はあ?」  間抜けな返事をしつつ空を見て、才人はぎょっとした。  サンタがいた。トナカイにそりをひかせた赤い服の老人が、笑顔で手を振りながら空を滑ってくる。 「な、なんだありゃ!?」 「サンタさんよ」  ルイズはにっこりと笑う。 「わたしが良い子にしてたから、プレゼントを持ってきてくださったのよ」 「い、いや、ちょっと待てよルイズ」  才人は混乱しながらも手の平を突き出して、彼女の話を遮った。 「あれは俺の世界の話で」 「ええ、そうね。でもわたし、サイトからサンタさんのこと聞いたから」  ルイズは例の袋を指差した。 「あの中に、持ち主の想像を受けて形を変えるアルヴィーがいるって言ったじゃない?」 「ああ、そうだな……ってことは」 「そう。サンタさんが実体化するように、わたしの思いを込めたのよ」 「なるほどなあ」  サイトは感心した。さすが魔法の世界。なんでもありである。  滑空しながら徐々に近づいてくるサンタアルヴィーを見つめて、ルイズは興奮を隠しきれない口調で呟く。 「わたしのありったけの思いを込めたから、力も相当強いわ」 「へえ、そんなもんなんだ」 「うん。だからね、その強い力で、わたしが一番欲しいものを用意してくださったはずなのよ」 「そういや、ルイズが一番欲しいものってなんなんだ?」  何気なく聞いたら、ルイズが顔をこちらに向けた。  その瞬間、才人の背筋に悪寒が走った。  ルイズの瞳が、今まで見たこともないような色を放っている。  覗き込んでいるとこちらが取り込まれてしまいそうな、奥深い光だ。 「わたしが一番欲しいものはね」  熱に浮かされたような声音。 「わたしとサイトの愛情を、永遠にしてくれるものなの」 「愛情を、永遠に?」 「そう。サイトがわたしだけを見つめてくれれば、きっと愛情も永遠になるから、ね?」  小さく首を傾げたルイズが、再び窓の外に目を移す。夢見るような囁きが聞こえてきた。 「ねえサイト、サンタさんのプレゼント、一緒に木に飾りましょうね。ぶら下げるのにはちょうどいい大きさのはずだから」 「待てルイズ、一体」 「ああ、サンタさん!」  そりに跨ったサンタアルヴィーが、窓のそばで停止していた。  赤い帽子に白い髭、優しい笑顔の老人は、そりの後ろに積んでいた大きな袋を部屋の中に投げて寄越す。  それは床に落ちて、妙に重く、湿っぽい音を立てた。白い袋の底から、赤黒い染みが広がっていく。 (まさか……いや、そんな馬鹿な!)  猛烈に嫌な予感を覚えながら、才人は無我夢中で袋に飛びついて、結び目を解き始める。  そして袋の口を開けたとき、見覚えのある黒い瞳と目が合った。  ルイズが歓声を上げる。呆然とする才人の背後で、サンタアルヴィーが景気よく叫んだ。 「メリー・クリスマス! 良い子のルイズにプレゼントだよ!」

 <了>