ゼロの保管庫 別館

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378 せんたいさん ◆mQKcT9WQPM [sage ]  2007/12/28(金) 19:23:41 ID:lYwZ7QJE  さてと、13巻解禁したので、一言感想など。

すいません14巻で才人帰ってないビジョンが全力で見えましたっ! っていうかそん時の事考えると今からwktkが止まらないぜ!

まあそれはともかく投下。 http://wikiwiki.jp/zero/?14-632 『救国の勇者』の続編?みたいなもの。13巻読んで思いついちゃった。

379 帰ってきた勇者 ◆mQKcT9WQPM [sage ]  2007/12/28(金) 19:24:25 ID:lYwZ7QJE  「こら。いい加減起きなさい」

柔らかい叱咤の声に、才人は目を醒ます。 まず目に入るのは桜の舞い散る青い空。左手に見えるくすんだ鼠色の校舎の窓は幾つか開け放たれており、春を迎えた外気を取り込んでいた。 あくびをしながら弾力のある枕から起き上がる。軽くのびをすると、近所の喫茶店のものだろう、ナポリタンとカレーの交じり合った、昼時独特の臭いがした。 才人は背後を振り返る。 そこには、青い芝生に座り込んだ、ウェーブのかかった桜色の髪をショートボブに刈り込んだ、美しい女性がいた。 彼女の名は。 ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。 彼女は平賀才人の恋人にして婚約者。 異世界ハルケギニアから、才人とともに日本へやってきた、かつての『虚無の担い手』。

「足、痺れるかと思ったわよ。全く」 「わり。ルイズの膝枕気持ちよくてさ」

才人の反論にまったくもう、しょうがないわね、と言いながら立ち上がり、足についた芝生を払う。 すると、やはり足が痺れたのだろう。ルイズはバランスを崩し、倒れそうになる。 それを才人は慌てて支える。

「…ほらやっぱり痺れたじゃない」 「…さっさと起こせばよかったんだよ」

腕の中でそうぼやくルイズに、才人はそう反論する。 しかし、ルイズはさらに反論する。

「あんまりカワイイ顔で寝てるから。起こすのもったいなくて」 「…あのなあ」

呆れたように才人は言うが。 傍から見れば、どこからどう見ても免許皆伝のバカップルであった。

二人は今、才人の暮らしていた日本にいる。 あの日、デルフリンガーの空けた穴から二人が地球に辿り着いてから、もう既に5年の月日が流れていた。 日本にやってきたルイズは、最初、日本語がわからなかった。しかし、ハルケギニアから戻っても言葉の通じる才人の手助けもあり、一年もする頃には流暢に話せるようになっていた。 元々努力家で頭のよいルイズは、言葉と共に日本の習慣や文化もあっという間に吸収していった。 今では、その外見以外は完全に日本に溶け込んでいた。 だが、問題は言語だけではない。ルイズには現代の日本で暮らす上で必要とされるものを持っていなかった。 そう、戸籍である。異世界人である彼女にはビザすらない。法律上、日本に住むのは不可能である。 しかし、それをクリアする方法があった。才人の母の知り合いの弁護士に頼み、ルイズを平賀家の養子にしてしまったのである。 身元保証人にはその弁護士と、知人のイタリア人がなり、そして、なんと帰化審査もパスしたのである。 戸籍上の今の彼女の名前は、『平賀ルイズ・フランソワーズ』。 そして、今、彼女は才人と同じ大学に通う大学生。 桜の色をしたウェーブのショートボブと、ベージュのパンツルックのスーツが似合う、才人の恋人。 ルイズは、日本に来てから、襟元より下に髪を伸ばさなかった。 何故か、と一度だけ才人は尋ねた事がある。 ルイズは応えた。それはね、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは死んだから。あの日、シャイターンの遺跡で、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは死んだ。 だから、平賀ルイズ・フランソワーズとなった自分は、髪を伸ばさないのだと、寂しそうに彼女は笑った。 才人は、それ以来、髪について何も言わない。 ルイズのあんな寂しそうな顔は見たくないし、思い出させたくもない。 今は、この日本で、ルイズを幸せにする。 それが、ガンダールヴの自分にできる、異世界へやってきた自分の主人に対する忠誠だと、思っていた。

まあ、そんな真剣な話はともかく、二人はそれなり以上に幸せだった。 一つ屋根の下寝食を共にし、両親公認で交際していて、大学を卒業したら結婚することが決まっていた。 まさに順風満帆である。 しかし。 そんな二人を、とんでもない異変が襲うのである。

380 帰ってきた勇者 ◆mQKcT9WQPM [sage ]  2007/12/28(金) 19:25:21 ID:lYwZ7QJE  「ただいまー」

帰りを告げながら才人が家のドアを開ける。 その後ろに、ルイズが続く。

「ただいま帰りました」

才人の母がいたら『タダイマでいいのよルイズちゃんっ』とか言い出すところだが、今日はその母はいないようだった。

「誰もいないのか」

玄関を見ると、そこに靴は一足もない。 父も母も、出かけているようだ。 二人はフローリングの廊下に上がり、居間へ向かう。 居間の机の上には、ラップをかけられた夕食が乗っかっていた。 不意に、才人の携帯が鳴る。才人はポケットから飛び出た、雑貨屋で見つけたデルフリンガーそっくりのペーパーナイフ付きのストラップを引っ張り、携帯を取り出す。 そのディスプレイには、『母』の文字。母親からメールが来た事を知らせるものだった。 才人は『今日の晩御飯』という件名の最新メールを開いてみる。

『テーブルの上のおかずをチンして食べてね。お味噌汁はナベの中。 母より』

そんな夕食のメニューは、鰤大根にきんぴらごぼう、黒豆の煮物。 味噌汁はおそらく、豆腐と若布。 ものすごく和食なメニューだったが、ルイズは意外なことに和食が大好きだった。 最初は『なにこの茶色いおかず』とか言いながら食べていたが、数ヶ月もしないうちに『おいしい』と納豆を頬張るまでになった。

「まーた和食かよー」

しかし才人はそこまで和食が好きと言うわけでもない。 ルイズが和食好きだとわかって以来、平賀家のメニューには和食の割合が増えた。 …たまには、昔みたく一週間カレーとか食いたいなあ…。 などと爛れた願望を望みながら、才人はラップを丸め、ゴミ箱に放り込む。 そんな才人に、荷物を部屋に置いてきたルイズが、語りかけた。

「洋食がいいなら、作ろうか?」

しかし即座に才人は否定する。

「いいっていいって!うん、和食がいい!」

五年経っても、ルイズには全く変わらないものが二つあった。 料理の腕と、胸の大きさである。 そして、このことに触れると当然、才人のご主人様は怒り狂うわけで。

「…なんでそんなに慌ててんのよ」 「いや、なんでもないです、はい」 「私が料理すんのがそんなにイヤなワケーっ!?」

言って才人に飛び掛る。 あっという間にルイズは才人を居間の床に組み伏せる。 抵抗しようと思えば抵抗できるのだろうが、それをしてしまってはご主人様の怒りに油を注ぐだけだ。 大人しくされるがまま、あんまり痛くないルイズの拳骨を受け止める。

381 帰ってきた勇者 ◆mQKcT9WQPM [sage ]  2007/12/28(金) 19:26:06 ID:lYwZ7QJE  何発か殴り終わると、ようやく冷静になったのか、ルイズは拳を止める。 そして、マウントポジションのまま、すまなさそうな顔をする。

「…ごめんね。料理下手なのは事実だもんね…」

昔は怒ったらそのまま怒りっぱなしだったのだが、最近、ルイズは怒った後、すぐに冷静になる。 それは、才人と婚約してからぐらいの時期から、そうなってきた。 ルイズは才人の上で、しゅん、と小さくなる。

「…式挙げるまでには、ちゃんと普通に作れるようになるから…」

そして、不安を湛えた表情で才人を見つめて、言う。

「わたしのこと、きらいにならないで…」

ルイズは、ハルケギニアにいた時よりも、才人と離れる事を恐れるようになった。 いかに家族のように接してくれてはいても、才人の家族とラ・ヴァリエールの家族は違う。 この日本で、この地球で、この世界で、本当の意味でルイズが心を許せるのは、才人だけだった。 才人は、そんなルイズにたまらない愛しさを感じて、抱き締める。

「嫌いになんかなるわけないだろ。俺は死ぬまで、ルイズと一緒にいる」 「うん。うん…」

まるで泣く子をあやすように髪を撫ぜる才人の肩に、ルイズは顔を埋めて、不安を打ち消していく。

「…とんでもないバカップルぶりねえ。ご家族が見たらなんて言うかしら」

そんなキュルケの挑発も、懐かしく聞こえ

「…え?」 「…ルイズも聞こえたのか今の?」

一瞬聞こえた幻聴。 それは、日本語ではなかった。 異世界の言語。ハルケギニアの、言葉。 その声は、居間の入り口から響いてきた。 二人は、騎乗位のまま、居間の入り口を見る。 そこにいたのは。 背の高い、燃えるような真紅の長い髪をアップに纏めた、褐色の肌の女性がいた。 日本家屋には場違いな、黒いローブを羽織っている。 それは、見紛うはずもない。

「「キュルケっ?」」

才人は日本語で、ルイズはハルケギニアの言葉で、その女性の名を呼んだ。

「はぁい。お二人さん。元気にやってる?って聞くまでもないか。  …何よその幽霊を見るような目つき」 「どどどどどどどどどーしてっ?」

ルイズは目の前にキュルケがいるのに、その存在が信じられない。 ここは日本で、ハルケギニアではない。 異世界という壁に隔てられているハルケギニアは、月よりも遠い場所のはずであった。

「んー?カンタンな理屈じゃないの。シャイターンの門を使って、こっちにきただけよ」 「ってカンタンに言うけど!どうやって帰るのよ!アンタ家は!家族は!」

キュルケは平然と言い放つが、ルイズはそんなキュルケに猛然と詰め寄る。 自分はあれだけ悩み、あれだけ追い詰められて、この異世界に来たというのに。

382 帰ってきた勇者 ◆mQKcT9WQPM [sage ]  2007/12/28(金) 19:26:48 ID:lYwZ7QJE  「あー、家族なら連れてきたわよー?」 「へ?」

ルイズの目が点になる。 まさか、キュルケの両親が? しかし、その予想は違っていた。 キュルケは、玄関の方へ向けて、廊下から呼びかけた。

「あなたー?まだ終わらないのぉー?」

あなた…?まさか…?

「少し待っておくれキュルケ、この扉の造りといったらもう、素晴らしいぞ!」

玄関から聞こえてきた声は。

「「コルベール先生っ!?」」

廊下に飛び出した二人の視界に入ったのは。 眩く輝く頭頂部。その脇にしがみつく、申し訳程度の毛髪。 通称コッパゲ、ジャン・コルベール。 好奇心旺盛なハルケギニア随一の研究者は、クロム合金の玄関扉を開けたり閉めたり、ドアノブをぐりぐり回したりして熱中している。

「ってあなたってアンタもしかして…」 「そ。ウチの亭主よ。って言っても式挙げたのは今年の春だけどね」

言って、左手の薬指に光る大粒のルビーを誇らしげに掲げる。 そして、続けた。

「それで、あと二人ほどいるんだけど。ちょっと遅れてるのかしら?」 「…へ?」 「…誰?」

驚きで呆然とするしかない二人の視界に、黒い何かと、大きな木の杖が目に入った。 次の瞬間。

「サイトさぁ〜〜〜〜〜んっ!!」

いつか聞きなれた声。 そして、日本の特定の場所でしかお目にかかれない、特殊なコスチューム。 五年の歳月でさらにボリュームの増した髪と胸を揺らしながら、遠慮なく黒髪のメイドは才人に抱きついた。

「ちょ、シエスタ胸胸!当たってるって!」 「やだもうサイトさん、当ててるに決まってるじゃないですかっ」

言って更にきつく抱きつき、腰を振って柔らかい胸をぐにぐにと才人の胸板に押し当てる。

「会いたかったです寂しかったですもう二度と離れませんっ!」

シエスタはうれし涙を流しながら、才人を絞め殺しそうな勢いで抱きつく。

「ちょ、苦しいってシエスタ」

その光景を呆然と見つめるルイズの中に、ずいぶんと久しく忘れていた感情が沸きあがる。

「…ああそう、そうなんだ。おちちがいいんだ。やっぱりアンタはそうなのかぁーっ!」

叫んで放った久方ぶりの跳び蹴りは、メイドだけを吹っ飛ばす。 主人の危機を察した、優秀なシュヴァリエが、咄嗟に才人だけをメイドの腕から奪い取ったのである。

383 帰ってきた勇者 ◆mQKcT9WQPM [sage ]  2007/12/28(金) 19:28:04 ID:lYwZ7QJE  「サイト、大丈夫?」 「…え?タバサ?」

あの日の小さな青い髪の少女は、五年の歳月を経て女に成長していた。 彼女を象徴する青い髪は真っ直ぐ美しく伸びており、動きの妨げにならないように一つに纏められている。 起伏の少なかった身体は、扇情的と言えるほどにメリハリがきいていた。 しかし、才人の顔を潤んだ瞳で見つめるその女性は、確かに、あの小さな雪風の魔法使いだった。 タバサは何も言わず、感極まった表情で、才人に抱きつく。

「…逢いたかった…」 「ちょっと、サイトから離れなさいよっ!」

そのタバサの襟を引っつかみ、ルイズは才人からタバサをひっぺがす。 タバサはあっさりと才人を放す。 そして、ルイズに微笑みかける。

「ルイズ、久しぶり」

その言葉に、ルイズの瞳に理性の光が、見る間に戻ってくる。

「ど、どうして?『門』はこっちからじゃ開けないのよっ?」

ルイズの言うとおりであった。 魔法の存在しない世界である地球では、異世界に戻るゲートを開くことは不可能だ。 すなわち、ここにいる人間は、日本に骨をうずめるしか道はない。 ようやく玄関扉に飽きて居間にやってきたコルベールは、そんなルイズの質問に応える。

「異世界に行ける、それも魔法とは異なる理の支配する世界に行ける。  その機会があるというのに、探求者として、それを逃す手はないだろう?」

そんな熱のこもった言葉に、キュルケが続ける。

「私はダーリンの行く所ならどこへでもついていくわ。だって、妻ですもの」

言って、コルベールの腕を抱え込む。コルベールが照れくさそうに笑った。 そしてそれに、復活したシエスタが続けた。

「私はサイトさんのメイドですし、この国はひいおじいちゃんの生まれた国。  里帰りだと思えばどうってことないですよ」

それに続いて、タバサが最後を飾る。

「…私はサイトに全てを捧げた身。彼のいないハルケギニアに未練はない  それとルイズ。あなたの家族から、手紙を預かっている」

タバサの差し出した手紙を、ルイズは開く。

『もう、ここにはいないルイズへ。  五年前、あなたが死んだと女王陛下に聞かされましたが、私は信じていませんでした。  なんとなく、予感がそう告げていたからです。お父様とお母様も、信じていないようでした。  お父様なんて、一時期軍を動かして捜索させようとしていたんですよ。  そしてその予想通り、ハルケギニアが遍く平定された今、姫様は本当の事を話してくださいました。  そして、姫様はサイト殿の世界に行く準備をしているとも教えてくださいました。  私はまだ病気が治っていないのでそちらには行けませんが、この手紙をあなたの友人達に託したいと思います。  サイト殿とお幸せに。私の愛しい小さなルイズ。    カトレア』

384 帰ってきた勇者 ◆mQKcT9WQPM [sage ]  2007/12/28(金) 19:29:06 ID:lYwZ7QJE 

その下には、乱暴な走り書きで、

『元気でやんなさいよ! エレオノール』

と短い姉からの一文が。 そして、タバサは一身に手紙を読むルイズの脇に控える才人に、同じく手紙を手渡す。

「サイトには、ルイズの父君から」 「…ゑ?」

なんとなく内容の予想はついたが、才人はあえてその手紙を受け取り、開いて読む。 そこには、思い切りきつい筆圧で、でかでかとこう書かれていた。

『娘はやら』

その途中からかき消すように線が引かれ、そして。

『娘を頼む。不幸にしたら呪い殺す。末代まで祟るぞ。覚悟しておけ』

その手紙を見て、戦慄と共に才人は、どれだけルイズが愛されていたのかを知る。 そして、心の中で改めて誓った。 ルイズは、必ず幸せにします。お義父さん。 お前に義父と呼ばれる筋合いはないわ、とその場にヴァリエール公爵がいたら怒り狂いそうだったが。

手紙を何度も反芻したルイズは、手紙を抱き締めて、泣いた。 形のいい顎を、滂沱の如き涙が伝い、流れ落ちる。

「父様…母様…姉様…ちいねえさま…!」

覚悟を決めて日本に来たとはいえ、ルイズにも望郷の念はあった。 いや、五年の歳月が、彼女の心になお、望郷を募らせていたのだった。 才人は黙ってルイズを抱き締める。 ルイズはそんな才人の胸の中で、嗚咽を漏らし続けた。 友人達は黙ってルイズの泣き止むのを見守っていた。 しか、その沈黙はすぐに破られる。

385 帰ってきた勇者 ◆mQKcT9WQPM [sage ]  2007/12/28(金) 19:29:34 ID:lYwZ7QJE  「なんでえなんでえ。久しぶりに来てみたらしんみりしてんなあ」

かちゃかちゃと小さな金属音とともに、そんな声が聞こえる。 この、声は。 五年前、シャイターンの門で最後に聞いた、その声は。 才人は、慌てて声のする場所を振り向く。 それは、自分のズボンのポケットに突っ込んだ、携帯のストラップ。 その先に結ばれた、古ぼけた剣の形をした、ペーパーナイフ。 その鍔の一部が、まるで機械仕掛けのようにかちゃかちゃと動き、そして、声を紡ぐ。

「よお相棒、五年ぶりかね?元気にしてたか?」 「で、デルフリンガー?どうしてお前が?」 「いやあ、魂だけで消えかけてたんよ俺っちも。そしたら、なんか急に引っ張られるカンジがしてさ。  気付いたらここにいたってわけだが」

才人は言葉も出ない。 突然の再開に、喜んでいいのか、涙を流していいのか。 そんな才人に、コルベールが語りかける。

「まあ、とりあえず今日の再開を祝おうじゃないか!ちょうどそこに料理もあることだし」 「え?この茶色いの料理だったの!?てっきり豚の餌かと思ったわ!」 「まあまあ、ミス。ウチの田舎の魚料理でもこういうのありますよ。『テリヤキ』っていうんですけれども」 「…美味しそう」

見知らぬ異世界に来たという不安を微塵も感じさせず、これから始まる宴会を楽しもうとする一行に、才人は思わず吹きだす。 隣にいるルイズも、泣き止んで笑顔になっていた。 そして二人は笑い合うと、わざわざ遠出してきた友人達のため、宴の準備を始める。

「文句言うなら一度食べてみなさいよキュルケ!おいしいのよサイトの国の料理は。  すぐ温めるから待ってなさい」 「じゃ、その間にみんなでDVD見ようぜ!言葉はわからんかも知れんけど、歌モノならいいだろ。  えーっと、どこやったっけな『天使にラブソングを』のDVD」

不意に始まったパーティに、平賀家の居間は喧騒に包まれる。 その喧騒の中、ずいぶんと小さくなった伝説の剣が、小さく嗤った。

「また世話んなるぜ、相棒。  さあて、この世界のこの先六千年は、どんだけハチャメチャなのかねえ。  ま、相棒のいた世界だ、ハルケギニアなんかよりずっと面白いに違えねえ。ああ、楽しみだ楽しみだ」

永遠の語り部は、新しい舞台の幕開けに、心躍らせたのだった。〜fin

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