ゼロの保管庫 別館

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だれでも歓迎! 編集

563 名前:ものかき ◆XTitdn3QI6 [sage] 投稿日:2006/09/30(土) 23:45:35 ID:fTTyy3DP

『序章』

『一度でいいから私も乗せて下さいね…』 奇しくもシエスタのその願いは実現していた。 コルベールが修理してくれた零戦の試験飛行中… ひょこっと後部座席から顔を出したシエスタに才人は驚いたが、 今更空に放り出すわけにもいかない。 かくして二人の空のデートは現実のものとなったのである。

シエスタは最初は怖がり目を丸くしていたが… やがて慣れてくると、凄い!凄い!と大はしゃぎを始めた。 「ひいおじいちゃんも、こんな景色を見ていたんですね!」 眼下に広がる陽の香る草原を見ながらシエスタは感激していた。 「もう少し遠くに行って見よう、燃費を調べたいんだ」 ガソリンの積載量を計器で確認しながら才人は言った。 「良く分かりませんが、才人さんと一緒ならどこまででも♪」 シエスタは才人を独り占めしている事実に酔いしれていた。 才人がふいに「なぁ」と、立てかけてあったデルフ話しかける。 「なんでぇ相棒!」「どうしよう…」「なにが?」 しばらく考えた後デルフは口を開いた! 「ははぁ〜ん、帰った後の事かぁ?!」 才人の顔が一瞬こわばった。 「図星か?!おしおきはキツいもんなぁ〜」とデルフは笑った。 会話の内容から察したシエスタが口を挟んだ。 「わ、私が勝手に乗ってしまったのが悪いんですから…えと、えと」 「ミス・ヴァリエールには、私からちゃんと説明します!」 「だから才人さんはお気になさらないで下さい」 シエスタは両手のこぶしを握り締め、硬い決意を表明して見せた。 「あ、ありがとう…」 一応、礼は言ってみたものの…二人で空の散歩に出掛けていた事を、 あのルイズが許そうはずも無く、おしおきは間違い無いであろう。 面白そうに笑うデルフを鞘に深く押し込み黙らせ、進路を確認した。

564 名前:ものかき ◆XTitdn3QI6 [sage] 投稿日:2006/09/30(土) 23:46:24 ID:fTTyy3DP

『旅立ち』

ルイズはやきもきしていた。 才人の飛行機にシエスタが潜り込んだらしいという噂を小耳に挟んだからだ。 使い魔が飛行機で出かけたことはいい。修理したから試運転というのも、 意味は良くわからないけれど、必要な事らしいから許す。 でも、あのメイドと一緒「かもしれない」とはどういう事? 今更追いかけようにもタバサのシルフィードでは追いつけない…。 今やその怒りは嫉妬となり、頂点に達しようとしていた。 嫉妬の炎は身を焦がし、嫌な想像や妄想ばかりが浮かんでは消えていった。 キスしたくせに、キスしたくせに、キスしたくせに、キスしたくせに〜! 昼食もろくに喉を通らず、不安を打ち消すようにベッドに潜り込んだ。

「見てごらん!綺麗な夕焼けだよ!」 才人が指差す方向には太陽が沈みかけ、真っ赤な姿を見せていた。 「シエスタ?どうしたの?」 見るとシエスタは怪訝な顔でその光景を見つめていた。 「夕焼け…って何ですか?あの真っ赤な色は何ですか?」 「こういうの…見たこと無いの?」 才人は、異世界だからそうなのかな?と気にも留めずに妙に納得した。 「あ、あの才人さん?!」 「なに?俺のいた世界では、こういうのを『夕焼け』って言うんだよ」 「い、いえ、そうじゃなくて…」 改めて夕焼けを見た才人は驚いた!沈みかけた太陽と思っていたが… 太陽は地平線に沈んでいる訳では無かったのである。 「月の影…」 地平線に見える山に見えたのは、まさしく月の影だった… その影に隠れる太陽…みるみる暗くなる景色…。 「ま、まさか?!」「日蝕?」「ばかな!」 その時デルフが口を開いた!「どうする?相棒!千載一遇の好機だ!」 シエスタを乗せたままだ、ルイズにもまだ何も言ってない。 才人の口から「…ルイズ」の言葉が漏れた瞬間、シエスタが動いた! 背後から操縦桿を握り、日蝕めがけてコースを固定した。 「シ、シエスタ!いったい何を!?」 シエスタは決意に満ちた表情で、搾り出すように言葉を告げた。 「私、平気です!才人さんと一緒ならどこでも。たとえ異世界でも!」 「それに…」「異世界なら…もう、ミス・ヴァリエールも…」 シエスタの決意に、才人は抵抗していた操縦桿の力を緩めた…。 「本当にいいの?」「はい、後悔なんてしません」 「こりゃ、おでれーた」デルフが呆れたように言い放った。 零戦は、やがて日蝕の中へと消えていった…。

568 名前:ものかき ◆XTitdn3QI6 [sage] 投稿日:2006/10/01(日) 00:18:38 ID:hzfqaHg4 さぁ続きは才人&シエスタin日本編だ!気が向いたら書いてみよう。

576 名前:ものかき ◆XTitdn3QI6 [sage] 投稿日:2006/10/01(日) 02:46:30 ID:hzfqaHg4

『日本』

才人とシエスタは大通りに面した公園で一休みしていた。 飛行機は民間の飛行場に着陸させ、空いている古ぼけた格納庫に隠した。 近所の人の話によると、もうずいぶん前に使われなくなった廃棄飛行場で、 災害などの緊急避難時の集合場所に利用する為に放置された場所らしい。 幸い、こちらの世界に戻ってもガンダールヴの力は残っていたようで、 着陸時も難なく無事に済んだ。左手にはルーンもしっかり残っていた。 シエスタは見るもの全てに興味を示し、不安がる事も、怖がる様子も、 全く無いのは意外だった。 「才人さん、あれは何ですか?」「これって触っても平気でしょうか?」 屈託の無いシエスタの様子に、思わず笑みがこぼれる…。 「才人さんと一緒ですもの、不安なんて何もありません♪」 シエスタは「それに曽祖父の故郷ですから…」とも付け加えた。 「よう、相棒!」こちらの世界に戻ってから初めてデルフが口を開いた。 「これからどうするつもりなんだ?」 才人は正直困っていた…勢いに任せて戻ってきたものの、このまま家に… しかもシエスタや「話す剣」を連れて帰る訳にも行かないだろう。 (いや、それ以前に銃刀法違反で逮捕されてしまうかもしれない…) 自分は行方不明…もしかしたら既に死んだ事になっているかもしれない。 まずは現状の把握と、えと…その次に… と、考えていると腹が鳴った。シエスタが満面の笑みで振り返り… 「お腹、空いちゃいましたね♪」 そこで才人は初めて無一文な事を思い出した。コンビニ弁当一つ買えない。 困ったような顔をしている才人の心を見透かしたように… 「心配ありませんよ!ちゃんとお弁当作って来ましたから♪」 とニッコリと微笑んだ。 才人はシエスタの作った弁当を食べながら、今夜の宿を思案していた…。

577 名前:ものかき ◆XTitdn3QI6 [sage] 投稿日:2006/10/01(日) 02:48:19 ID:hzfqaHg4

『残されたルイズ』

ルイズは悶々としていた…。 夜になっても戻ってこない使い魔。例のメイドも帰っていないらしい。 もはや二人が行動を共にしていることは火を見るよりも明らかだった。 キスしたくせに…キスしたくせに…キスしたくせにぃ〜! 何ども心の中で呟きながら、ある場所に向かっていた。 途中ですれ違ったキュルケに「どうしたの?」と聞かれても耳に入らず、 一心不乱に前を見つめ、全く歩みを止めようとはしなかった。 ふ〜ん、何かあったわね…とばかりにキュルケは興味本位で後に続いた。 階段を降りる途中で会ったタバサに「面白そうだから付いてらっしゃい」 と、半ば強引にキュルケは同行させた。 学院の一角にその建物はあった。普段誰も立ち入らないひっそりとした 建物だが…その静寂は一瞬にして破られた。 かくしてドアは開かれた!というよりも蹴破られたのだ、ルイズによって。 「才人はどこ?!」 開口一番、ルイズはコルベールに言い放った。 「な、なんだねいきなり?まぁ来客は珍しいので、歓迎はするが…」 「サイトはどこにいったの?」「いまどこにいるの?」 まくし立てるようにルイズが畳み掛ける。 「ま、まぁ、落ち着いて…」 「いったい今どこで何してるのよ?」 なるほど…そういうこと♪ と、キュルケが鼻で笑う。 コルベールはコホンと一息ついた後、こう続けた。 「実は…私にも分からないんだ」 「ど、どういう意味?」 「計算では、とっくに帰ってきているはずで、がそりんも多く入れてなかった」 「それって…」 「おそらくどこかに降りているか…もしくは…」 「な、何?何よ?」 「落ちた…か」 ルイズの顔色がみるみる変わるのが誰の目にも見て取れた。 何かを思いついたように外に走り出そうとするルイズをキュルケが引き止めた…。 「どこに行くのよ?」 「決まってるでしょ!探しにいくのよ!タバサ、シルフィードをお願い!」 「探すってドコを?落ち着きなさい!」 「だって、だって…才人が…才人が…」 「アンタ…そんなに…」 「それに」 「それに?」 「あのメイドと一緒ってのが、ぜ〜ったいに許せない!」 キュルケは呆れ顔で見つめながら、タバサを見た… 「夜は危険」 「そうね、今夜はもう遅いから…とにかく夜明けまで待ちましょう」 皆に促され…ルイズはしぶしぶ承諾して部屋に戻った。

579 名前:ものかき ◆XTitdn3QI6 [sage] 投稿日:2006/10/01(日) 06:03:05 ID:hzfqaHg4

『宿泊』

「私、村娘ですし…野宿でも一向に構いませんよ♪」 シエスタはサラリと言ってのけたが、都会の真ん中でそれは無謀だ。 公園で野宿などしようものなら不審者扱いで通報されるか、ヘタすりゃ 逮捕だ。おまけにシエスタはメイド服のままで目立って仕方がない。 とにかく落ち着ける場所が必要だったが…生憎と使える金が無い。 シエスタは笑顔で「少しなら持って来ています♪」 と、大切そうに抱えた鞄の中から、少しばかりの銀貨を渡してくれた。 才人もポケットを探り…ありったけの金貨と銀貨を取り出した。 シエスタは驚いた顔でそれを見て 「才人さん、凄い大金を持ち歩いてるんですね」と言った。 しかしハルケギニアの金は日本では使えない…途方に暮れていた…。 「才人さん…そのお金…この世界では使えないんですか?」 「うん…残念ながら…使えない」 「なぁ相棒!思うんだけどよ!」デルフが口を挟んだ! 「俺ぁ、何度か鉄屑扱いで溶かされそうになった事があるんだが」 デルフが最後まで話し終わらないうちに才人は弾かれた様に歩き出した! 「お前、最高の相棒だよ!」 「おぅ、あたりめぇだぁな!」 シエスタは訳も分からず慌てて才人の後に続いた。

才人は金貨と銀貨を「貨幣」としてでは無く、金塊・銀塊として売った。 グラム当たりの価格、今日の金相場がどうとか色々な面倒はあったが、 なんとか現金を手に入れることが出来た。 その金額は2人でしばらく暮らすには充分すぎる金額で、高校生の持つ 金としては破格だった。正直、こんな大金になるとは思っていなかった。 とにかく安宿をと探す才人にシエスタは、出来れば「風呂」に入りたい と言い出した。学院の庭で入ったような「風呂」を体験したいと…。 さすがに銭湯の女湯にシエスタ一人を入らせるのは不安だったので、 仕方なく…大きな風呂付のラブホテルを利用することにした。 「ここですか?安宿でいいのに…まるで貴族用の宿じゃないですか!」 豪華な造りの外観に、シエスタは少々気後れしたような様子だったが、 ここなら余計な詮索もされず都合がいいんだ、という才人の言葉を信じ 手を繋いで一緒に派手なアーチをくぐった。 「ごめんくださいまし!お部屋をお願いしたいのですが…」 メイド口調でシエスタは大きな声でフロントに呼びかけた。 貴族の従者としての躾もされているシエスタにはごく普通の行為… しかし…ここはラブホテル…フロントから手が出て指を刺す。 その方向にはパネルがあり、空室の部屋のランプが点灯している。 状況を飲み込めず呆気に取られるシエスタにシステムの説明をする。 「便利な仕組みなんですね?!魔法みたいですね♪」 目をキラキラ輝かせているシエスタに、気に入った部屋を選ばせた。 やはり選んだのは「お風呂の大きな」部屋だった。 才人はとにかく落ち着けるなら、どんな部屋でも良かったのだ。

部屋に入りデルフをクローゼットに押し込むとソファに身体を投げ出した。 シエスタは終始大騒ぎではしゃいでいた。特にエレベーターに興味津々で、 扉が開くたびに違う世界にいける「どこでもドア」のように解釈していた。 「今日は疲れただろ?ゆっくり休むといいよ、後の事は明日考えよう」 「あ、あの…才人…さん」 「なに?」 「お風呂…一緒に…入りませんか?」 「え?で、でも、それって」 「あの、私、この世界の…お風呂の使い方とか分かりませんし…」 赤面する才人を尻目に…シエスタは何の躊躇も無く既に服を脱ぎ始めていた。

581 名前:ものかき ◆XTitdn3QI6 [sage] 投稿日:2006/10/01(日) 06:57:42 ID:hzfqaHg4

『ルイズ&キュルケ』

部屋に戻ってもルイズは落ち着くどころか、眠る事さえ出来なかった。 どんなに振り払っても、頭の中に才人とメイドの情事が浮かんでは消え、 想像は妄想となり…顔が赤らんでいるのが自分でもハッキリ分かった。 「なに?なに?なんでこんなに気になるのよ?!」 使い魔のくせに!キスしたくせに!メイドのどこがいいっていうの? そりゃ、まぁ少しは胸が大きいかもしれないけど… 私だって…私だって…もう少しすれば、きっと…きっと… 無意識に自分の胸を触り…改めて大きな溜息…。ばっかじゃないの!? 魅力っていうのはね、胸の大きさだけで決まるもんじゃないんだから! 自分で言って、更に自己嫌悪に陥る… 揉めば少しは大きくなるかしら…前にキュルケがそんな事を言ってたわ。 恐る恐る…ゆっくりと自らの胸をまさぐり、揉みしだいてみた。 その時、ふいにドアが開きキュルケが顔を覗かせた。 「あら〜?お邪魔だったかしら〜?♪」 「キ、キュルケ!あ、あんた…の、覗いてたわね!」 「心配だから様子を見に来ただけよ♪そしたらお楽しみの真っ最中♪」 キュルケは悪びれずケロっと言ってのけた。 「出てってよ!」 「あらん♪ダーリンがいなくて持て余してるモヤモヤした気持ち…」 一呼吸置いた後、ゆっくりと艶のある声で言葉を続ける。 「解消する方法…教えてあげようと思ったのにぃ♪」 一瞬言葉に詰まり、やがてルイズは口を開いた。 「な、なによ?」 「あらん♪知りたいの?」 「き、聞くだけなら聞いてもいいわよ!」 「『教えてください』でしょ?」 「う、う〜…お、おしえてくださいぃ!これでいいでしょ?」 「その一言が聞きたかったのよ!ツェルプストー冥利に尽きるわぁ♪」 「いいから早く教えなさいよ!」 「はいはい、慌てないの♪」 キュルケは後ろ手に杖を振りドアに、かなり強固なロックの呪文を唱えた。 その瞬間ルイズは…あのキュルケに教えを乞うた事を激しく後悔した。

586 名前:ものかき ◆XTitdn3QI6 [sage] 投稿日:2006/10/01(日) 08:47:05 ID:hzfqaHg4

『独り遊び』

タバサは部屋で静かに本を読んでいた。区切りの良い所でその本を閉じると、 彼女なりにルイズの様子を気遣い…風の魔法で部屋の様子をそっと伺った。 すると風に乗ってルイズの声に混じりキュルケの声が舞い込んできた…。 何事かと耳を澄ます…やがてそれが艶のある夜の宴の声だと分かるまでに、 そう長い時間は掛からなかった。 小さな頃から他人との交わりを避けてきたタバサは一人遊びに長けていた。 それはガリア王家の血筋ゆえなのかもしれない…。また違った意味で、 現ガリア国王ジョゼフも、一人遊びに長けた人物であった。 タバサは聞き耳を立てながら…幼い身体を自らの指で愛撫し、時には… 風の魔法で優しく撫で回し、あらゆる快感をむさぼった。 その指が下半身に至り、無毛の丘に辿り着き…緩やかな渓谷に触れる頃… そこは既に溢れんばかりの湖と化していた…。 「うっ…」 噛み殺したような声を出し、苦痛にも似た表情…普段なら絶対に見せない、 自分一人だけに許されるこの聖域だけで行われる行為であった。 キュルケには何度か求められた事もあったが、タバサは頑なに拒絶していた。 今は何よりも一人の時間が大切なのだ。 心身ともに…人と交わるにはタバサは、まだまだ幼く未熟なのであった。 そうして2度目の絶頂を迎えた頃…風の声も止んだようだ…。 タバサは気だるそうに下着を代えた後…静かに眠りに落ちていった…。

589 名前:ものかき ◆XTitdn3QI6 [sage] 投稿日:2006/10/01(日) 09:36:12 ID:hzfqaHg4

『混浴』

確かにその風呂は大きかった! 学院の庭の片隅に大鍋を使い即席に作った風呂とは雲泥の差であった。 ジャグジー付きである、なんと照明まで付いている、泡風呂である! 才人自身こんな場所は初めてなのだが…シエスタの手前頑張ってみた。 そんな事してもシエスタも何も知らないのだから意味の無い事だけど、 何ていうか…男の本能がそうさせたのだ…たぶん。 「才人さん、これってどうすればいいんでしょう?」 「あぁそれはね、こうして捻るとお湯がココから…」 ドシャー!バシャバシャ!! 「あ、あの才人さん?違う場所から違うものが出てるみたいですけど?」 「あ、そうそう、こっちだった!」 ビシャー!ドバドバ!! 「キャ!つ、冷たい!」「あ、ご、ごめん!」 ダメだ…いくらガンダールヴでもラブホテルの装備じゃ全く意味が無ぇ〜。 何とかその場を取り繕い…浴槽にたっぷりのお湯を張り…シエスタを呼んだ。 「やっぱり大きなお風呂って凄いですね〜」 そう言いながらシエスタはバスタオルも巻かず産まれたままの姿で現れた…。 才人は目のやり場に困り、真っ赤になりながら浴室を後にしようとしたが、 シエスタにがっしりと二の腕を捕まれた!ふくよかな胸が直接腕に当たる。 「一緒に入りましょ♪って言ったじゃないですか」 「わ、分かったから…先に入っていて、後から行くから、ね?」 「約束ですよ、待ってますからね♪」 高鳴る胸の鼓動を抑えながら…一度浴室を後にした。 浴室からは「才人さぁ〜ん、まぁだですかぁ〜♪」と、声が…。 ここにはルイズもいない、告げ口する目撃者や覗き魔もいない、問題ない! 意を決した才人は服を脱ぎ…腰にバスタオルを巻きつけると浴槽の扉を開けた。 そこには浴槽に気持ちよさそうに肩まで浸かって幸せ一杯のシエスタがいた。 「才人さん、服を着たまま入るんですか?」 「あ、いや、これはバスタオルといって…服じゃなくて…えと…」 「恥ずかしいなら、私、後ろを向いていますから…どうぞ入って下さい♪」 そう言って後ろを向いたシエスタと背中合わせになる形で、才人は入った。 「久しぶりですね、一緒にお風呂なんて♪」 「また一緒に入れる事になるなんて、とっても嬉しいです♪」 そう言いながらシエスタは、こちらに向き直った。 屈託の無いキラキラした瞳で見つめられると…恥ずかしがっていることが むしろ恥ずかしいことなんじゃないかとさえ思える程だった。 「あの…才人さん…」「な、なに?」「お願いがあるんですけど…」 「抱きしめて貰って…いいですか?」 「え、で、でも…」 「才人さんの心の中にミス・ヴァリエールがいるのは承知しています」 「私…2番目でもいいんです。妾でもいいんです。」 「平民と貴族との関係なら、そういう事もあるって…ちゃんと知ってます」 階級社会の世界で育ったシエスタには、それはごく当たり前の事らしい。 事実、正妻の他に平民の妾を取る貴族の話は良く聞いていた。 シエスタをエロ貴族の魔手から救い出した事もあった。 なんて健気で一途なんだろうと思うと…とても愛しく思えてたまらなくなった。 気が付くと…唇を合わせ、激しく抱き合い、歯止めが利かなくなっていた。

608 名前:ものかき ◆XTitdn3QI6 [sage] 投稿日:2006/10/01(日) 13:34:39 ID:hzfqaHg4

『使い魔の行方』

翌朝、ルイズは学院の誰よりも早く起きた! 実のところ一睡もしていなかっただけなのだが、真っ先に向かった先は… 「キュルケ!起きて!いつまで寝てんのよ!」 壊れんばかりにドアを叩き大声で怒鳴り散らした! しばらくするとカギの外れる音が聞こえ、ドアが開いた。 そこには大きく胸をはだけたままの姿で寝起きのキュルケが呆けていた…。 「何よぉ、こんな朝っぱらから?」 「こんなに早く起きるなんて…ルイズにしては珍しいじゃない?!」 一向に緊迫感の欠片も見せぬキュルケにルイズは苛立ちを感じた。 「そんなこと、どうでもいいじゃない!」 キュルケはルイズを嘗め回すように見た後、からかうように… 「アンタ、もしかして寝てないの?」 「そ、それが何よ?」 「昨夜の『あれ』じゃ…足りなかった?とか?」 ルイズは昨夜の出来事を思い出して顔を真っ赤に染めた。 「あら、可愛い♪」 「そんな事どうでもいいの!さぁ早く着替えて才人を探しに行くわよ!」 魔法を使いクローゼットから服を取り出し着替えながらキュルケは尋ねた。 「昨夜から探す探すって大騒ぎしてるけど、いったいアテはあるの?」 「な、ないけど…」「とにかく探すの!」「探さなきゃダメなの!」 キュルケは呆れ顔で 「まずタバサの所に行きましょ、シルフィードは必要みたいだから」 二人でタバサの部屋を訪ねると、いつも通り本を読んでいた。 「あのねタバサ…お願いがあるんだけど…」「…虚無の曜日」 「それは分かってるんだけど…」 相変わらずのタバサに頼み込み、シルフィードで王宮に向かう事にした。 国内の情報なら王宮の情報機関の耳に入るはず…というのがタバサの意見だった。 ルイズはアンリエッタ直属の女官という権限により、容易に謁見を許された。 「彼が消えた?」 「ただの外泊、朝帰りですわ…たぶん」と、キュルケがちゃかした。 「まさか…あの日蝕…」アンリエッタが呟くように言った…。 ルイズの顔色が青ざめた。 「日蝕、日蝕って?もうずっと無いはずじゃ?」ルイズの声が上ずる。 アンリエッタの側近が代わって報告書を読み上げた。 「昨日夕刻、タルブの東の空にて皆既日蝕を観測…との報告がありました」 「なにそれ?どういう事?」とキュルケ。 「一部の地域にだけ日蝕が?そんな事ありえないわ!」ルイズは困惑した。 「…虚無の干渉作用」タバサが静かに口を開いた…。 確かにタルブの空で虚無は発動した…その中心には才人もいた…。 同じ場所で…虚無の残り香のような物が作用した…?まさか? 「アルビオンとの戦闘の可能性は?」 「ありません」 メイドを乗せた才人なら、十中八九まず間違いなくタルブに向かうだろう。 そしておそらく… ルイズは急に目の前が暗くなり…その場に倒れこんでしまっった。

609 名前:ものかき ◆XTitdn3QI6 [sage] 投稿日:2006/10/01(日) 13:35:11 ID:hzfqaHg4

『才人&シエスタ』

脱いだら凄いシエスタは健在だった。キスをすれば舌を激しく絡ませてくる。 風呂の中で才人は「胸は水に浮く」という、どうでもいい知識を身に着けた。 激しく抱き合っていた為に少々のぼせた二人は、続きはベッドでと風呂を出た。 私…とうとう才人さんのモノになるんだわ…少し怖いけど…でも…嬉しい。 先にベッドで待つシエスタの元に行くと、なぜかちょこんと正座をしている。 神妙な顔をして才人に向かい深々と頭を下げると… 「この度はお情けを承る事、光栄に存じます。末永く宜しくお願い致します。」 才人は一瞬ひるんだ!こ、これがあの世界での作法ってヤツなのか? 童貞の才人にとっては「この世界」だろうが「あの世界」だろうが初めてだ。 「こ、こちらこそ…よ、よろしく」と、当たり障りの無い返答をすると、 シエスタはいつもの表情に戻りニッコリ微笑みながら一言、 「やさしくして下さいね…初めてなんです…」と、すこし頬を染めた。 やがてベッドに横たわり…優しい口付けを交わし、体中にキスの嵐を…。 ルイズの数倍はあるであろう胸に顔をうずめ、優しく愛撫を始めた時… ふいにシエスタが聞いた。 「ミス・ヴァリエールとは…その、もう…したんですか?」 ふいに出たルイズの名前に一瞬動きが止まったが、更に愛撫を続けながら、 「いや、ルイズとは…まだしてない…」 「そうですか…『まだ』してなかったですか…」 「どうしてそんな事、今聞くの?」 「え、えと…それなら、私の勝ちかなぁって♪」 勝ち負けの問題なんだろうか?などと思いながら才人は攻め続けていた。 ややストレート気味のアンダーヘアーは柔らかく、まるで羽毛のようだった。 その奥の秘部に指が触れたとき…シエスタの身体がピクンと跳ねた…。 「あ、あぁ…才人さん…」 既にシーツを濡らすほどのシエスタの秘部に、才人はそっと漢の武器で触れた。 と、その時…大切な事を忘れていた事に気づいた。避妊である! 途中で動きを止め何やらゴソゴソ始めた才人に、シエスタが怪訝な顔で尋ねた。 「あ、あん、どうしたんですか?」 「あ、いや…避妊を、子供が出来たら困るでしょ?」 「どうしてですか?私、子供大好きですよ♪」 忘れていた…向こうの世界には「避妊」という概念すら存在していないのかも。 そういえばシエスタも8人兄弟の長女だって言ってたっけ…。 「いいんですよ、そのまま中でお出しになっても♪」 「責任とって下さいなんて言いませんから!」 「あ、でも、こっちの世界で暮らすから…責任とって貰わなくちゃですね♪」 「あ、えと、いや、その…」才人は…一気に萎えてしまった。

610 名前:ものかき ◆XTitdn3QI6 [sage] 投稿日:2006/10/01(日) 13:37:25 ID:hzfqaHg4

『メイド服』

「昨夜はゴメンね」 「いえ、いいんです、気にしないで下さい♪」 結局、昨夜は「ルイズ」「責任」の言葉に撃沈、何も出来なかった。 一介の高校生には荷が重過ぎるですハイ!しかも今や身分証明はおろか、 住民票すらあるかどうか怪しいのに…子供抱えて生活なんてムリだよ。 ホテルのチェックアウト前にシエスタと今後の事を話し合ってみた。 まずは現在の平賀家の状況! これは電話か実際に覗きに行けばなんとかなるだろう・・・たぶんね。 次にシエスタのひいおじいちゃんの子孫探し。 戦争中の行方不明なら戦没者として記録が残っているかもしれないし、 残された家族(いたらの話だが)の子孫もいるかもしれない。 特に目的も無く歩き回っても仕方が無いので、当面の目標と決めた。

しかし…メイド服は思った以上に目立つ! 出掛けにメイド服に着替えようとするシエスタに聞いてみた。 「どうして今日もメイド服なの?もしかして着替え…無い?」 「いいえ、これは昨日とは違ったタイプです♪着替えもありますよ」 「えと…出来れば他の服にして貰えると嬉しいんだけど…」 「メイド服以外で…という事ですか?」 「まぁ、そういう事」 「なら、とっておきのお気に入りがあります♪」 着替える為に奥の部屋に入る後姿が妙に嬉しそうだった…。嫌な予感。 そして…その予感は見事に的中した! 才人の目の前でクルリと一回転!指を立てて「 お ま た せ ♪ 」 それは紛れも無くセーラー服だった。 「ごめんシエスタ…やっぱ、メイド服で行こう」 今日はとりあえず…シエスタに服を買おうと心に決めた才人であった。

と、次から才人&シエスタin秋葉原 ルイズご乱心!

678 :ものかき ◆XTitdn3QI6 :2006/10/02(月) 18:54:48 ID:vBbTRVxw

『溢れる想い1』

ルイズが目覚めると、そこは見慣れない部屋だった…。ランプの明かりだけで、 周囲の様子までは窺い知れないが、布団はもふもふふかふかで肌触りが心地良く 上掛けはとても軽い。中身はガリア産の高級羊毛だろうか…羽毛かもしれない。 天蓋付きのベッドはささやかながらもいくつもの美しい装飾品で飾られていた。 枕元に見覚えのある「ぬいぐるみ」があった… 「これは、たしか…」 寝ぼけ眼をこすり我に返ったルイズは、初めて自分が何処にいるかを知った。 アンリエッタ姫殿下の…寝室。 弾かれるように飛び起きたルイズは、服を着ていないことに気が付いた。 姫様のお部屋なら、クローゼットに服の何着かはあるだろうと…開けてみた。 色とりどりの寝巻きに緊急用の指揮服、今のルイズには不必要なものばかり。 指揮服用の下に着るコルセットが、なまめかしいラインをかもしだしている。 「こ、これが姫殿下のスタイル…」特に胸の辺りが…見るだけで虚しい。 試しにちょっとだけ…とも思ったが、ここは王宮、しかも姫殿下の下着だ… 身に着けることなど恐れ多くて出来ようも無い。ムリな相談だった。 しかし「寝るときには下着を着けない習慣」を知ってか知らずか、ご丁寧に 下着まで無いのは困った。冷静になって良く見れば…今来ている寝巻きさえ 私の物では無い。いったい誰が脱がしたの?これ、まさか姫様の寝巻き? 「落ち着けルイズ…落ち着くのよ…」 ここが姫様の寝室なら…扉の外に女官の一人や二人は控えているはず…と、 真横に垂れ下がる「呼び鈴紐」の存在に気付かずに大きな声を張り上げた! 「誰か!誰かいるんでしょ?!お願い!」 その叫びが終わるか終わらないかの内に扉がバタン!と大きな音で開けられ 一人の人物が駆け寄ってきた。逆光で顔は良く見えなかったが、それがいったい 誰なのかはすぐに分かった。アンリエッタ姫、その人だった。 「あぁルイズ、私の唯一無二のお友達!ルイズ・フランソワーズ!」 「よかった、よかった、目が覚めたのですね!」 「あ、あの姫殿下…これは…」 「いやだわルイズ、そんな堅苦しい言い方しないでちょうだい」 ルイズは「恐縮ながら」と付け加えた後、状況の説明をアンリエッタに求めた。

679 :ものかき ◆XTitdn3QI6 :2006/10/02(月) 18:55:25 ID:vBbTRVxw   『溢れる想い2』

自分が倒れた後、キュルケとタバサが姫殿下の寝室に運んでくれた事。 姫殿下たっての希望により、自らの寝室の使用を周囲に進言した事。 その際「いつも脱いで寝るのよ」とキュルケが手際よく服を脱がせた事。 (姫殿下はルイズが下着を付けず寝る事など百も承知で驚きもしなかった) 二人は既に学院に報告がてら戻っていて、そのまま報告を待つという事。 そして最後に一番重要なこと…。 私が勝手な行動を取らない様に王宮内に留めて置くよう配慮したという事。 「ルイズ…ごめんなさい。今のアナタは…」 「分かっています、御前で取り乱し醜態を晒した事、深くお詫び申し上げます」 ゆっくりひざまづき深々と頭を垂れた。 「いえ、構いません、さぁ昔のように隣に座って、少しお話しましょ」 「そ、そんな」 「ここは私の寝室、他には誰もいません。何の為にここで休ませたと?」 「で、では失礼します」 とにかく頭を冷やして落ち着こう。王宮なら情報の第一報が真っ先に届く。 姫殿下も調査団を組織して現地調査や情報収集の指示を出してくれたらしい。 「国を上げての大騒ぎになっちゃたじゃない…」「ふぅ〜あのバカ犬…」 大きな溜息を一つ付くと…ぱふ!とアンリエッタの隣に腰を下ろした。 「そういえば…」談笑を始めたアンリエッタを尻目に、ルイズの頭の中は 才人の事で一杯になっていた。 「寂しいのですね…?」ふいの言葉に驚いた。 「え?えと…何がでしょう?」 「隠しても分かります…好きなんでしょ?」 何とも姫殿下らしい極めて的確な的を射た物言いである。 「あ、あれはタダの使い魔で、好きとかそういうんじゃなくて…」 「そ、そりゃキスもしたし…その…色々あったけど…別に…」 自分でも顔が赤くなっているのが分かる、余計なことまで口走っている。 「私、使い魔さん…だなんて、一言も言いませんでしたよ♪」 いたずらっぽく笑うアンリエッタに、ルイズはますます恥ずかしくなった。 「大丈夫、心配ありません。だって…彼はルイズ…アナタの使い魔なのでしょ?」 真っ直ぐな瞳に見つめられ…ルイズは硬直した。 「羨ましいわ、でも少し寂しい…まるで大切な人を奪われてしまった様…」 「ひ、姫様は…いつまでも何があっても私のお友達であり理解者で…」 その言葉が終わらない内…ルイズの唇はアンリエッタの唇によってふさがれた。 「ひ、姫さ」「黙って、お願い…今だけ」 アンリエッタのしなやかな指の動きに反応したランプは、その灯を消し去り、 部屋は暗闇に包まれた。

680 :ものかき ◆XTitdn3QI6 :2006/10/02(月) 18:56:29 ID:vBbTRVxw

『シエスタin秋葉原』

「才人さん、ここがアキバララという街ですか?」 何を見ても、何をやっても、全てに興味を示すポジティブ・シエスタ! とにかくどこに連れて行っても目立つ。衣装だけではない…スタイル抜群、 顔も可愛い、声も可愛い…ここまできたら目立たない方がどうかしている。 むしろおかしいとも言える。 昨夜のラブホテルからのチェックアウト、朝っぱらから流石にセーラー服で 街を出歩かせる訳にもいかず…仕方なく標準装備のメイド服にした訳だが、 メイドがいても違和感が無く一番目立たない…という事で、秋葉原に来た。 それでも「挙動」という面では充分すぎる程に目立っているシエスタだった。 「こんなにお店が沢山!城下町でもこんなに大きくないですよ♪」 町の小さな商店街を「お祭りみたい」と称したシエスタである。 秋葉原大通りは想像をはるかに超えた街並みに見えている事だろう。 幸い休日で、大通りは歩行者天国になっていた…一安心。 「あの、才人さん、歩行者天国って何ですか?」 エンジンで走る自動車が道に入れず、人が安心して往来出来る日だ。と、 簡単に説明をすると 「素晴らしい♪貴族の馬車も避けずに自由に道を歩いても良い日なんて♪」 まぁ、解釈としてはそんな感じでOKですハイ。 電脳都市(古)秋葉原…ここならネットから色々と調べる事が出来るだろう。 シエスタを連れていても不審者扱いで通報される事もあるまい…って? あれ?シエスタ?ど、どこ?? 「はい、そこで笑顔お願いしまーす」「振り向きポーズいいですかぁ?」 「こっち視線お願いしまーす」「ちょい胸を強調して貰ってもいいかな?」 シ、シエスタさ〜ん…お〜い、何をしているのかな〜? 「あ、才人さん、この方達がシャシンと言うものをとりたいとかで…」 「あ、すいません、くるっと回転お願いしま〜す!」 「はぁ〜ぃ♪」くるくる〜人差し指を立てて「お、ま、た、せ、♪」 周囲から一斉に 萌え〜♪萌え〜♪ の大合唱…。 「良く分からないんですけど、ポーズをお願いしますと言われたもので…」 「あの…いけなかったでしょうか?」 いや、いけないでしょうか?というより…むしろイイ!なんだけど、いや、 今はそういう事じゃ無くて…。俺と離れて迷子になったら困るでしょ? 「あ、すいませんでした」 ちぇ、もうお終いかよ…と言いながら散っていくカメラ小僧…その中に、 妙にローアングルから撮っていたヤツを見つけ…蹴り一線で取り押さえた。 珍しくデルフが口を開いた…「相棒よ、おめぇ、女絡みだと強ぇなぁ」 そういうとカタカタと震えた、どうやら笑ってるらしい。 気弱そうなカメラ小僧は「ごめんなさい」を繰り返していた。 「今まで撮ったヤツ…」全部消せ!と言いかけて… 「そうだ、シエスタ、一緒に写真を撮ろう!」 カメラ小僧にシエスタとのツーショット写真を撮らせ、近所の写真屋に行き、 その場で今まで撮った写真を全てプリントさせた後、メモリーを消去させた。 ツーショット写真はルイズに見られたら面倒だから、シエスタにあげよう… シエスタは貴族の肖像画よりも綺麗でそっくりだと感心していた。 しばらくして、二人の写真は家宝にしますと鞄の奥に大切そうに仕舞い込んだ。 残りのパンチラ写真は、もちろんしっかりと才人の所有物となった。しかし… もう二度と戻らないであろう世界にいる、ルイズの事をまだ考えている… そんな自分に少し戸惑いを感じていた。

681 :ものかき ◆XTitdn3QI6 :2006/10/02(月) 18:57:03 ID:vBbTRVxw

『ショッピング』

さぁとにかく服を買いに行こう! 「私、この服で何の不自由もありませんよ?無駄遣いは勿体無いです」 「それに…」「皆さんも同じような服装みたいですが?」 しまった秋葉原は逆効果だったか?見渡せばコスプレで溢れかえっている。 「あ、あれはね…個人の趣味嗜好の産物というか…特殊なというか…」 あ、あれ?シエスタ?シエスタさ〜ん?また消えてるしぃ〜。 この世界に警戒心の欠片も無い彼女は、少し目を離すとすぐに消えてしまう。 まぁ幸いな事にシエスタの方からは才人の姿を常にロックオンしているらしく、 そのまま見失い、はぐれてしまう様な事は一度も無いのだが…。 「才人さ〜ん、こっちですぅ〜!こっち〜!」 見ると狭い横道を入った奥で数人のメイド姿の子達と談笑しているではないか。 「へぇ〜アンタ面白いね〜それってサイコーだよw」 「メイドたるもの、そのような言葉遣いは感心できません!」 「いいのいいの、アタシ達…今は休憩中!お昼休みなんだからさ〜」 「そ、それでも、そんな醜態をこんな往来で殿方に晒すなんて!」 「かったいこと言わないの♪アンタドコのお店?そんな厳しいの?」 お世辞にも談笑と呼べる物では無かった。休憩中のメイド喫茶の店員達に、 シエスタが腰に手を当て胸を張り、しっかと睨み説教の真っ最中だったのだ! え、えと…シエスタさん…いったい何をなさっているので…? というか、出来るだけ現時点でのトラブルは避けたいところなんですが。 3人組のリーダー格と思われる髪の長い女性がすっくと立ち上がって言った、 「この子アンタの連れ?っていうか店外デート?」 「あ、いやまぁ…そんな感じで」 するとケラケラと腹を抱えて笑ったかと思うと残りの2人に向かって言った、 「少しは見習ったほうがいいかもね!この子ってば最高だよ♪」 そして耳元で…アンタは見る目がある、この子は大当たりだ…と囁かれた。 シエスタはまだ納得し切れていない様子だったが、別れ際に三人に挨拶され、 それがとても丁寧で、シエスタが教えた通りの儀礼だったので上機嫌になった。 後に「まるでメイド長になったみたいでした♪」とその時の感想を述べた。

まずは服だ…目立つのは良くない、派手過ぎず地味すぎず…と思った所で… あぁ無理だ、万年童貞・出会い系にまで手を出した俺に、女性の服を選ぶ… そんなセンスがあるわけがないじゃないか。 シエスタはキョロキョロと興味津々で見ている、何の躊躇も無く店内に入る。 え?ま、まさか…こ、ここは?噂のアニオタの聖地と呼ばれる店なのでは? 思った時には時既に遅し…シエスタは店内の巡回コースの流れに乗っていた。 いきなり現れたメイドに店内は騒然としていた!いや、メイド自体は珍しく無い。 ここは秋葉原だ。しかし、このメイドは一癖も二癖も違っていた…。 魔法少女やエロフュギア、果ては着ぐるみ系までも「可愛い、着てみたい」と、 なんとも嬉しい…いや、困った事を言い始めたのである。 どうやら秋葉原のコスプレ系衣装がお気に召された様である。 「ほら才人さん!私にプレゼントしてくれたセーラー服も売っていますよ♪」 一斉に周囲の視線が突き刺さった!い、痛い…。 才人は慌ててシエスタの手を引くと…店を後にした。シエスタの希望を聞き、 結局「ドン・キ・ホーテ」で「セーラー服っぽい」無難な服を購入した。 その足でネットカフェに立ち寄り、戦没者名簿を調べることにした。 大き目のペアシートの個室を取り、今夜はここで一晩を過ごすことに決めた。 「慣れないせいか…なんかスースーしますね♪」 着替えを終えたシエスタが呟いた…あれ?以前にも似たようなセリフを…。 才人はある言葉を…反芻していた 『意地悪だわ…わたし、貴族の方みたいにレースの小さな下着なんて…』 『持ってませんもの…それなのに、こんな、短いスカートをはかせて…』 小さな下着なんて…小さな下着なんて…小さな下着なんて… 持ってませんもの…持ってませんもの… 服のことに夢中で…し、下着…買ってなかった…。 才人の心を見透かしたように…シエスタはスカートを少したくし上げ… 「確認してみますか?」と、頬を赤らめながら囁いた…。

682 :ものかき ◆XTitdn3QI6 :2006/10/02(月) 18:57:38 ID:vBbTRVxw

『競艶』

灯りの消えたアンリエッタの寝室… 押し殺すような小さく艶のある声が響いていた… 「ひ、姫様…そんなにされると…こ、声が、声が出てしまいます…」 「構わないわ、私の可愛いルイズ…この部屋には誰も来ませんもの…」 「で、でも扉の外には…女官が控えて…聞こえてしまいます…」 「聞かせてあげたら良いのですわ…黙するのも女官の役目…」 「で、でも…」 「愛しいルイズ…ここでは…案ずることは何も無いのですよ…」 ルイズはアンリエッタのされるがままだった…元より姫殿下に逆らうなど、 抵抗することなど出来ようはずがなかった。 「ルイズは感じやすいのですね…」 「そ、そんなことは…あ、ありません…」 アンリエッタが産毛のような柔らかいピンク色の薄い茂みをかき分けると、 そこは既にシーツに地図を描くほどに潤っていた…。 「あん、姫さま…」「あぁ可愛いわ…ルイズ…とっても…」 ルイズの幼い渓谷に指を滑らすと…中指を軽く中央に差し入れる… その瞬間ルイズの身体が大きくうねり、そして背中をのけぞらせた。 「もう…こんなに…」 ふいに目の前に差し出された指を、一度摘む様にしてから広げると… ルイズの体内から分泌されたその体液は…長く糸を引いた。 「姫さま…恥ずかしい…」ルイズは真っ赤になり両手で顔を覆った。 その手を強引に払いのけ…アンリエッタは唇を重ね、下を絡ませた。 無意識にルイズも…アンリエッタの下腹部に手を伸ばしていた…。 既にアンリエッタは下着を着けてはいなかった… ゆっくり恐る恐る手を伸ばす…その様子に気づいたアンリエッタが、 「構わないのですよ♪さぁ一緒に…」 太股に触れるとそこには溢れる体液が…涙の跡のごとく通り道を作り、 それは既にシーツにまで達して、ルイズと同じ様に地図を描いていた。 「ルイズ…アナタと私は…何も変わらない…ただの…女…」 「さぁ…」 ルイズは促されるままに、黒いふかふかな森をかき分けアンリエッタの 秘部に指を這わせる…。 一瞬ひざをガクンと落とし、そのままルイズに覆いかぶさった…。 「ご、ごめんなさい、初めてだったもので…ケガは無かった?」 「いえ、姫さま…大丈夫です」 「もしかしたら…刺激が強すぎるのかもしれませんね…」 ルイズはおずおずと…言葉を選びながら精一杯の提案をした。 「あ、あの…姫様…お、お互いに…舐める…と言うのは…」 アンリエッタの目が輝いた! 「それ、そうしましょう!舌先なら刺激も弱いし柔らかいし…」 そう決めると2人は身体の向きを入れ替え…互いの股間に顔を埋めた。 アンリエッタは『ディティクト(探知)マジック』と『ロック』の呪文を 改めてもう一度掛け直した…。2人の競艶は明け方まで続いた…。

29 名前:ものかき前スレ『競艶』の続き投下 ◆XTitdn3QI6 [sage] 投稿日:2006/10/03(火) 01:08:48 ID:Sfuo01+Y 前スレ『競艶』の続き投下

『確認1』

才人は激しく動揺していた…。「確認してみますか?」確認するまでもなく、 それを履いてない事は、火を見るよりも明らかであった。 「い、いいの?」実に間の抜けた童貞丸出しのセリフである…。 「ですから、才人さんが見たいと言ってくれれば…私はいつでも…」 スルスルとたくし上げられるスカートに目を奪われ、頭の中が沸騰し掛けた時、 予想外の出来事が起きた!シエスタが半ば強引に唇を重ね…舌を絡めてきたのだ。 視線を太股に集中していた為に不意打ちを喰らった形の才人は呆然とした。 長い…長い…気の遠くなるような…永遠とも思える時間のキス…時が止まる。 長いキスの後…シエスタは「ぷはぁ♪」と息をつきながらやっと唇を離した。 「てへ♪もうディープ・キスは完璧にマスターしちゃいました♪」 上気した顔でニッコリ笑い、おどけて見せるその仕草はとても可愛かった。 「あの…シエスタ。ここはネットカフェといって、壁も薄いし、天井も…」 「私、村娘ですから♪気にしません♪」「あ、いや…そうい事じゃなくて」 「そうですね…ちょっと狭いかもしれませんね〜♪」

30 名前:ものかき ◆XTitdn3QI6 [sage] 投稿日:2006/10/03(火) 01:09:44 ID:Sfuo01+Y

『確認2』

2人きりになるとやたらと積極的なシエスタである。 「では…こういうのはどうでしょう?」 と言うが早いか…シエスタの手が才人の股間に伸び、ベルトを器用に外す。 いつの間にこんな技を…と思った頃には漢の武器が引きずり出されていた。 「シ、シエスタ?!」 「大丈夫です、弟達のなら何度も見た事がありますし…」 「ただ…こんなに大きくて…硬くなったモノを見るのは初めてです」 「無理しなくていいんだよ…」 「いいえ、大好きな才人さんのモノですもの♪」 そう言いながら、拙い手つきで…とても愛しそうに優しく握りしめた…。 「どうすれば殿方が喜んでくれるのか…最低限の教育は受けているんですよ」 それは貴族の家に売られたり…そういう時の為なんだろうか? 階級社会で生き残る為に仕方ない事なんだろうか? 少し考え込んでいる風の才人の表情を読み取ったのか…シエスタは言った。 笑顔で振り返り…「花嫁修業だと思ってください♪」と。 手でしごいた後、少し口に含み…また手でしごく…。やがて胸をはだけて… その豊満な胸の間に挟みこんで刺激を与える…。唾液で濡らす…。 体中の血液が下半身に集まるのを感じながら…方手でシエスタの股間に触れた。 一瞬動きがピクリと止まったが…まるで競争でもするように刺激を増してきた。 シエスタの股間は日本人のそれと変わらず(と言っても才人は童貞だが)・・・ 指を動かす度にクチュクチュという湿った音が聞こえた。 シエスタは『先にイカせた方が勝ち』とばかりに一心不乱にしごき続ける…。 やがて才人は自らの限界を悟ると、素直にシエスタに告げた…。 「外に出すと汚れてしまうので…このまま口の中へどうぞ…」とだけ言った。 その言葉に後押しされた才人は…最上の快感の中…シエスタに放出した! それを搾り出すように、吸い出すようにシエスタは残らず飲み込んでしまった。 少しの間…余韻を楽しみ…お互い寄り添い、体温を確かめ合う…。 シエスタはグッタリとしている…このまま寝てしまうのかな、と思った時… 薄いレースのハンカチで軽く口の周りをぬぐうと、神妙な顔でこう言った、 「今宵はお情け…確かに頂戴致しました。有難う御座いました…」 「あ、えと、いえ…お粗末様でした」 あ〜やっぱり俺はバカだぁ、こんなセリフしか言えないなんて最低だ。 「才人…さん?」「え?」「私…どうでしたか?上手に出来ました?」 「と、とっても!凄く気持ち良かったよ!うん、最高!」 最高も何も…童貞じゃないか…これが始めてなんだから、そりゃ最高だよ。 そこまで思って考えた…そういやシエスタも初めてだったんだよな…。 「なぁシエスタ?」「はい?何でしょう?」 「え、えと…シエスタはどうだった?」 すると急に顔を真っ赤にしてうつむきながら消え入りそうな声で呟いた… 「大好きな才人さんの指でしたし…恥ずかしいけど…実は…二度も…」 それ以上は才人の胸に顔を埋めたまま、ただモジモジするだけだった。 しばらくすると、やはり疲れが出たのだろうか…寝息を立て始めたので 備え付けのソファに寝かせ上着を毛布代わりに掛けた。 才人はシエスタを起こさないように注意しながらパソコンの電源を入れ、 検索を始めた・・・「海軍少尉」「佐々木武雄」

32 名前:ものかき『確認』の次 ◆XTitdn3QI6 [sage] 投稿日:2006/10/03(火) 01:10:56 ID:Sfuo01+Y

『事実』

朝は早かった!やはり…シエスタはそのように教育されているらしく、 「殿方より遅く起きるなどもってのほかです!」と言い放った。 どうせ慌てる事も無いのだから、ゆっくりすればいい。と言っても、 一向に聞き入れてはくれなかった。 ネットカフェの厨房に入り自分で朝食を作ると言い出したのには困ったが、 電子レンジ調理品やファーストフード系の物しか置いて無かったらしく、 不服そうな顔をしながらも、やがて諦めて戻ってきた。 トレイには飲み物とハンバーガー・ポテト、いわゆるモーニングセット。 「才人さん凄いんですよ!こう押すと甘い水が出てくるんです!」 「それに、冬でもないのに氷が沢山あるんですよ!」 「貴族のお屋敷にだって、こんなにすごい仕掛けはありませんよ!」 興奮気味に息せき切って話すシエスタは、まるで小さな子供の様だった。 ハンバーガーを器用に食べるシエスタは意外だったが、ハルケギニアにも 似たような食べ物はあるという話だった。ストローの使い方を教えると いたく感動していた。同様に熱いスープを飲もうとして火傷しかけた事は、 シエスタの名誉の為に、ここだけの秘密にしておこう。 早々に朝食を腹に押し込むと清算を済ませ、また街へと繰り出した。 清算時にメイド姿の少女に「昨夜の宿代の清算をお願いしたいのですが…」 と言われ、戸惑う店員が滑稽だったが…シエスタは気にも留めなかった。 今日はシエスタの下着を買うことも忘れないようにしないと…と再確認。 「まずは、今日は実家に連絡してみようと思うんだ」 「才人さんの、ご実家ですね?直接行かないんですか?」 「昨日調べてみたんだけど…無いんだ…」 「無い?」 「たぶん…引っ越したか…良く判らないけど、見つからない…」 「とにかく電話して…それから考えてみるよ」 シエスタには電話の仕組みが理解出来なかったが、遠くの人と話せる、 そんな便利な仕組みがこの世界には有る…と、それだけは判ったらしい。 探すと意外と見つからない電話BOX。しばらく歩いた後、大通りに面した 少々騒音でうるさい場所だが、やっとのことで電話BOXを見つけた。 シエスタと一緒にBOXに入り、緊張しながら自宅の番号を押す… しばらくの無音の後…呼び出し音…番号は生きている! 1回2回3回…出ない、、、平日だからか?いやそれなら母親が… 4回5回…『プッ』と小さな音がした!繋がった!誰かが出た! 『も、もしもし・・・』 『何?悠二?』 『あ、えと、才人だけど…』 『はぁ?何言ってんのよ?!悠二でしょ?』 『いえ、平賀才人と…』 『自宅にイタ電してど〜すんのよ!大体どこまでメロンパン買いに行ってんの?』 『あ、いや、だから…』 『駅前のパン屋って言ったでしょ!』 『あ、あの…話を…』 『ちゃんとモフモフのカリカリを買ってくるのよ!』 『もしも〜し?』 『メロン果汁入りは邪道だからね!ちゃんと網目模様があるヤツね!』 『聞いてますかぁ〜?』 『じゃ、早く帰ってきなさいよね!』 『は、はぁ…』 『待ってるんだから!』 「ガチャン!ツー・ツー・ツー・ツー…」 どうやら現在の我が家にはルイズの分身が住み着いてしまっているらしい…。 「才人さん…?」 「あ、大丈夫!大体…こんな予感はしてたから…あはははは…はぁ〜」 まぁ、仕方ないか…。向こうの世界に行ったときに一度は諦めた事だし。 あいも変わらず順応性が高いのか、諦めが早いのか、楽天的な才人だった。 (しかし…俺、メロンパン…買わなくてもいいんだよなぁ?) などと思いつつ、とりあえずシエスタの下着を買いに行くことにした。

33 名前:ものかき『事実』の次 ◆XTitdn3QI6 [sage] 投稿日:2006/10/03(火) 01:11:56 ID:Sfuo01+Y

『試着』

ランジェリーショップ…才人とは全く無縁の場所…のはずだった。 しかしシエスタをこのままノーパン・ノーブラのままというのはまずい。 個人的には嬉しいが…道徳的?世間の目?いや才人の理性の為にだ! 店頭に並ぶ色とりどりの下着にシエスタは目を丸くして驚いていた。 「こんな貴族の方がお召しになるような…こんな高価な物、私には…」 この世界では普通に誰もが着用していると説明するが、信じてくれない。 仕方が無いので店員にお願いする事にした。 元よりワゴン売りの安物ではシエスタの胸を収める事が適わなかった。 一通りの説明を受け、何とか納得した様子のシエスタに下着を選ばせ、 専門の店員に着けて貰う。(フィッティングというらしい) 一着付けるごとにカーテンを開け「才人さん!これ、どうですかぁ」 と、周囲の視線を釘付けにするシエスタであった。 「これなどいかがでしょう?まぁお似合いですわぁ♪」 売り子の常套句だと分かっちゃいるが、俺にだって下着の良し悪しなど 判るはずも無い…せいぜい布面積と色くらいなもんだ。 「じゃ、そこで一回転して見せて下さいますか?」 え?おいまて!一呼吸置いて…予想通りカーテンの中から 「お ま た せ ♪」の声が。 店員の絶句する姿が目に浮かぶ…条件反射か?条件反射なのか? かくして一週間分という事で7セットを購入。 先がまだ見えない現状では、最低限のもので我慢して貰うしかない。 さて…買い物が済んだ所で午後の予定を話し合う。 「シエスタ…次は、ここだ!」 才人は小さなメモの走り書きを見せながら言った! 「才人さん…ここって!」 「才人さん…私…」 「どうしたの?嫌?怖い?」 「いえ、そうじゃなくて…」 才人は首を傾げた…どうしたというのだろう?シエスタらしくもない…。 『才人さん…私…その…字が読めませんので…』 才人はその事をすっかり忘れていた。

『研究成果』

コルベールは王宮から直々の呼び出しを受け、才人達の失踪の原因を究明すべく、 尽力すべしとの命令を受け、王宮内の一角をあてがわれ研究を進めていた。 才人がいない今、零戦の事に一番詳しいのは彼一人しか居なかったし… 日蝕時の異世界移動の仮説を立てたのは、他の誰でもない彼であったのだから。

彼は日蝕の起こる仕組みから、太陽を隠す「影」の存在の関連性を検証した。 そして突発的に起こった日蝕の原因を調べるにあたり、どの系統にも属さない、 すなわち「虚無」の与えた影響に行き着いたのである。 アルビオン艦隊の先遣隊が現れた日、あの日あの空で起こった「虚無」の発動。 魔法を構成する粒子…それを構成する更に小さな粒子…それがあの空に舞った! 余りにも巨大で…拡散し漂い続けたその粒子はやがて太陽に影を落とした…。 偶然の出来事ではあっただろうが、理論上はそれを再現する事は可能だろう。 研究の成果をまとめ、彼は報告に向かった。

「ですから影を作り出せば良いのです!」 コルベールは自分の研究成果を興奮しながら会議室で熱弁していた。 「つまり、大きな光は…同時に大きな影を作り出すのです!」 少し落ち着いて…という仕草でコルベールを制したアンリエッタが言った。 「虚無の魔法を使って日蝕を作りだせば、異世界に行けると言うのですね?」 かしこまった口調でコルベールは訂正を加えた… 「擬似的な日蝕です。しかし先日観測された物も同じ現象と考えます」 それから「しかし…」と言葉を続け 「あくまでも彼が異世界に行った…という前提での話ではありますが…」 少し語調を弱め「その確証までは、私にも判りかねます…」と加えた。 今までコルベールの話はチンプンカンプンとばかりにイラついていたが、 要するに…という段になり、それなら話が早いとばかりにルイズが言った! 「行ったのよ!間違いないわ!」ルイズは小さな胸を、精一杯張った! 「アイツは行ったの!異世界に!間違いないの!だから…行くの!」 コルベールは確信に満ちたその表情に迫力負けしながらも進言した… 「しかし何の保証も無いんですよ、ミス・ヴァリエール」 「保証なんてどうでもいいの!とにかく行くの!絶対に見つけるの!」 ルイズの決意には一点の曇りも見られなかった…。

コルベールは少し呆れたようにコホンと一つ咳払いをすると言った… 「実を言いますと…ひとつ…問題があります」

(ここで短編に書いたカトレアのエピソード。エロ追加書き直しあり)

『カトレア』

カトレアは窓の外を眺めていた… 優しい日差しは庭の木々を照らし…時折り吹く心地良い風がその葉を揺らしていた。 どこからか羽音が聞こえたかと思うと一羽のつぐみが窓枠の隅に舞い降り… …しなやかな動きで差し出した指先を、そっと優しいキスをする様に啄ばんだ。 「あなた…まだみんなのところに戻っていなかったの?」 カトレアは少し悲しげな顔で尋ねた。 「そう…でも、帰らなくてはいけないわ…きっと…あなたを待ってる…」 「私なら…大丈夫」そう微笑みかけると… ツグミはクイっと小首を傾げた後…木漏れ日の中へと姿を消した。

午後の日差しはカトレアには強すぎ、散歩は専ら早朝か夕刻に限られていた… それでも遠出は出来ず、せいぜい庭先が今のカトレアの世界の全てだった。 その日も夕刻になってからの外出だったが…二頭立ての馬車で少し遠出を… というのがカトレアの思惑だった。夕刻に湖畔に水を求めて集まる動物達… 目的地は領地の外れにある小さな湖。時折りそこで動物達と戯れることを とても楽しみにしていた。

その日はいつもと様子が違っていた…湖の辺が何やら騒がしい…動物達が… あの子達の怯えた声が聞こえる…。 馬車を止め、馬達に「いい子で待っていてね」と伝えると湖畔へ向かった。 するとそこには自分の背丈の2倍はあろうかという竜の姿が、夕日を背に 黒いシルエットを描き出していた…。 なるほど…みんなそれで怯えていたのね…。 恐れるそぶりも無く竜に近づくカトレアに、隣にいた男が声を発した! 「いけません!なだめすかしてはいますが、今は危険です!離れて!」 初対面のしかも男性相手で戸惑ってはいたが、動物の事なら話は別である。 それでもカトレアは、おずおずと言葉を紡いだ。 「その子、怯えています…それに、右足に怪我を…」 男は驚いて竜の右足を見た!「あ、いつの間に…なんでお前言わないんだ?!」 「主人に余計な心配を掛けたく無かった…そう言っています」 「言葉が判るのですか?」 少し戸惑いながらもカトレアは正直に話した…動物達と会話が出来るのだと。 男はカトレアの前に膝を付くと、仰々しく言葉を継げた。 「恐れながら私も同じく動物の気持ちがわかるのです」そして… 「しかしながら私はメイジではありませんので治癒の術を持ちません…」 そこまで聞いたカトレアは…メイジでもないのに竜を操る男に興味を持ったが、 治癒が先決とばかりに「わかりました、では私が…」とだけ言った。

竜の足の治癒が終わった頃には、もうすっかり日は落ちていた。 「感謝致します…ミス…」 「カトレア…カトレアです」 「感謝致します、ミス・カトレア」 「とても、お美しい方だ…妖精に出会ったかと思った程です…」 良く見れば端正な顔立ちのその男は左右の目の色が違う「月目」であった。 初めてその顔を正面に見たカトレアは…頬を染めた…胸の鼓動が高鳴った。 いつもの気分が悪くなる兆候とは明らかに違っていた… 見詰め合ううちに自然と近づき、やがて寄り添い…そして… 月明かりに2人のシルエットが重なり、いつしか抱きしめ合っていた。 「今は軍役に付いていますが…私はロマリアの神官で…平民です」 貴族と平民の恋の行方は誰もが知っている。叶わぬ恋、辛い別れ…。 「…構いません…」消え入りそうな声でカトレアは言った。 その直後、彼女の唇は塞がれた…。 湖畔の大木にもたれかかり激しく求め合う2人…月明かりは淫靡な影を 足元に落としていた。 「服が…汚れてしまっては…困ります…」と、懇願するカトレア。 「大丈夫です、私の言うとおりに…」 胸のボタンを器用に外し…優しく手を滑り込ませる…初めての刺激に 「あ…」と思わず声が漏れる。 程よく育った胸を揉みしだき乳首に刺激を与え、時折り口付ける…。 「いつもより…」と思わず口走り、ハッとして口を押さえるカトレア! 「いつも?いつも…どなたと?」と子供のような目で尋ねる… 「だ、誰とも…初めてですもの…」と顔を真っ赤にしながら答える。 「一人で…慰めておられたのですね…」 図星を指され更に顔を赤くする。その隙に乗じてワンピース型の服を するするとたくし上げ下着に手を掛ける…。 「そ…それは…いけません…そんな…」 言葉とは裏腹に充分に濡れた陰部はクチュクチュと音を立てて泣いた。 大木に両手を付き、桃のような尻を突き出した形のカトレアは… 後ろから受け入れた…。服が汚れないようにとの配慮であったが… まるで動物の交尾のような体位での行為にカトレアは興奮していた。 頭の中は淫靡な行為に没頭し、痛みなど感じる余裕すら無かった。 月目の男が果てる頃には、自ら腰を振り…自分でも信じられ程に、 「もっと…もっと…」と喘いでいた。 動物達の交尾は何ども見た。興味が無かったと言えばウソになる。 寂しい夜は…一人で慰めていた、何度も、何度も、何度も…。 でも今は…暖かい、心を通わせた人と…。 カトレアは今までに感じたことの無い程の幸せを感じていた。

熱い抱擁、口付けを交わし、別れを惜しみながら… カトレアはあまりに夢中で…大切な事を忘れていた事に気付いた。 竜にまたがり飛び立とうとする男に向かいカトレアは尋ねた… 「あの、あなたのお名前は?」 「これは大変失礼しました、すっかり忘れていました」 「急ぎますゆえ竜上より失礼致し…」言葉尻を遮ってカトレアが言う、 「構いません」 「私の名はジュリオ!ジュリオ・チェザーレと申します」 そう告げると一瞬で竜は虚空に舞い上がり見えなくなってしまった。 その男の目は両眼の色が違う、いわゆる月目であった。その月目の様な 二つの月に照らされた小道を馬車に向かって歩きながら呟いた… 「ほんと…動物と話し、竜の心を読んでいるのね…」

竜で飛び立ったジュリオは名残惜しそうに湖畔を眺めていた…。 「また逢えるさ、きっとな!そんな気がするんだ。さぁ行こう」 ジュリオはカトレアに運命的な出会いを感じていた。 そしてカトレアもまた同様に、これを運命的な出会いと確信していた。 そう…まるでルイズと才人の出会いのような。

『都会での出会い』

「才人さん!ここでしょうか?」 そこは大きなマンションの入り口だった。インターホンで呼び出して、 施錠を解除して貰うタイプの、まぁそこそこ立派な建物だった。 「住所はココであってるはずだよ、いるといいんだけど…」 2人は零戦の戦没者・行方不明者の名簿からその子孫を探し出していた。 『吉田一郎』それがあの零戦パイロットの孫に当たる人物であり、 ここの住人の名前だった。シエスタの遠い異世界の親戚でもある。 「ところでシエスタ?」 「はい?才人さん、何でしょう?」 「今朝のネットカフェでも思ったんだけど…どうしてメイド服なの?」 そう、折角買った平服を着ないで、なぜかまたメイド服を着ている。 「基本です!」人差し指を立てて胸を張る。 「朝目覚めたらメイド服!これは基本です!常識です!当然です!」 「そ、そういうもんなの?」 「メイドとはそういうものです!」 「でもホラ、遊びとか外出とかは…普通の服でいいんじゃないかな?」 「才人さん?何を言っているんですか!」 「はぁ?はい?」 「今日は遊びではありません!ひいおじいさんの異世界のご家族に…」 そこまで言われて初めて『メイド服はシエスタの正装』なんだと、 そう理解した。 「ですから、身なりはキチンと!」 才人は、その通りだね…と相槌を打った。

メモに書かれた部屋番号を押してしばらくすると返答があった。 「は〜い♪どちらさまでしょうか?」 高校生くらいだろうか?かなり若い女性の声である。 正直に「佐々木武雄」さんの事で訪ねて来た旨を簡単に伝える。 シエスタは不思議そうにずっと声の主を一生懸命に探していた。 それだけでも充分に面白かったのだが・・・ やがて1階エントランスの自動ドアがゆっくりと開かれる。 いきなり開いた扉に「ビクっ!」と驚き反射的に飛びのくシエスタ。 驚いて飛びのいた時にスペシウム光線ポーズになるのは異世界でも 同じなのかぁと…シエスタを見て笑ったら頬を膨らませていじけた。 「才人さん、笑い過ぎですぅ〜!」 「ごめん、ちょっと面白かったから」 目ざとくエレベーターを見つけたシエスタがニコニコして乗り込む。 「私、この乗物はもう憶えましたから大丈夫です♪」 「じゃ、まかせるよ」 「はい、まかせて下さい♪」ニコニコ♪ニコニコ♪ニコニコ♪ 「………」 「………」 「えと、シエスタ?」 「はい?」ニコニコ♪ニコニコ♪ニコニコ♪ 「それ…押さないと動かないんだけど…」 「え?え?どれですか?これでしょうか?」あたふたあたふた。 「それ、そこの5番目のを…」 「は、はい!これで完璧です♪」 ボタンを押せば勝手に着くエレベーターだけど、シエスタは満足気。 「ありがとうシエスタ」「どういたしまして♪」 一仕事終えた満面の笑みで微笑んでいた。まぁいいでしょ。

「ごめん下さいまし〜」メイド口調で大声で呼びかける…もう慣れました。 インターホンを押すまでも無くドアが開き、少女が顔を覗かせた。 「先ほどお話した平賀です、お父さんかお母さんい…るか…な…って?」 誰かに似ているなぁと思っていたら、シエスタが叫んだ! 「ジェシカ!?」 そうそれは魅惑の妖精亭の娘でシエスタの従妹ジェシカに瓜二つだった。

『異世界の親戚』

「こりゃおでれーた!」思わずデルフが口を開いた。 「こら、こっちの世界では黙ってろって教えただろ!」 「でもよ相棒、これは大当たりって事だろ?良かったじゃねぇか!」 デルフを鞘に深く押し込み、話を続けた。 「生憎と両親は旅行中で不在ですが、とりあえず中でお話を…」 と促され、あまりの驚きに言葉を失ったシエスタと共に部屋に入った。 吉田一美と名乗ったこの家の娘はお嬢様育ちらしく物腰も柔らかかった。 両親は長期の旅行中で留守で、今は母方の実家の従妹が受験勉強の為に 泊まりに来ていて2人で暮らしているとの事だった。 「ジェ…じゃなくて、吉田さんは、ひいおじいさんの話はご存知ですか?」 「一応知っています。零戦のパイロットで…戦死したと」 才人は思い切って、その零戦は異世界に行った事、そして自分達はその 異世界から来た事。才人自身は元々こっちの世界の人間で、シエスタと 君は異世界の遠い親戚筋に当たる事を…出来る限り判りやすく…。 ひとしきり話し終えるとお茶をすすり…反応を待った。 しばらくすると… 「あれ…本当だったんだ…」 遠い目をして小さく呟くと…シエスタの手を優しく握ってこう言った。 「ようこそ♪異世界の私の親戚さん♪」

失踪した曽祖父と共に飛んだもう一機の零戦のパイロット… この世界に帰還できたパイロット… その人も既に亡くなっていたが「異世界を見た」「彼は異世界に残された」 と、言い続けていたのだそうだ。誰一人信じなかったが… その話だけは笑い話程度に語り継がれていたのだ。

「日蝕と…広い…とても広い…綺麗な草原を見たんだ」 彼の墓標にはそんな言葉が刻まれていると聞いた事がある…と彼女は言った。 「それ…私の故郷の風景です」シエスタは遠い昔を思い描き…涙した。

その時インターホンが鳴り、従妹が帰宅した…と伝えられた。 シエスタとまた今夜の宿を探さないといけないなぁと思っていると… 親戚なのだから泊まっていけばいい!と、シエスタは引き止められた。 「いえ、でも才人さんが…」 「そんなの一緒でいいわ。どうせ行くアテも無いんでしょ?」 俺…一応、男なんですが…危機感とかは無いのね?!夜這いしたろか! 「ただいま〜♪あれ〜お客さん?友達?」 帰宅した従妹と紹介されたその人物… 才人はその場に凍りついた! シエスタは思わず膝を付き、その場に控え…小刻みに震えていた!

そこにいたのは、紛れも無くアンリエッタ姫その人だった。

『胸の内』

「それ、どういう事?詳しく説明して!」 ルイズは凄い剣幕でコルベールに食って掛かっていた! もはや教師と生徒という関係…姫の御前であることすら頭に無かった。 「ですからミス・ヴァリエール…日蝕を作り出しても、そこに入る…」 「それはもう聞いたわ!あのぜろせんってのが無いからでしょ?」 「その通り。飛び込むには…その速さタイミング…様々な条件が…」 「だから、それは何度も聞いたわ!私が聞きたいのは」 テーブルを両手で「バン!」と叩きつけて叫んだ! 「どうすればいいかって事なの!わかる?」 アンリエッタが思わず口を挟んだ… 「皆さんお疲れでしょう…少し休憩しましょう…」 「でも姫さま!」 アンリエッタは「こちらで話しましょう」とルイズを自室に向かえた。 立ったままのルイズを自分の隣に座らせ…アンリエッタは聞いた… 「そんなに心配?」 「べ、別にそういうわけじゃ…ただの使い魔だし…」 「今では国を挙げての大騒動になるほどの出来事…ですよ?」 「そ、それは申し訳ないと思っています…」 「意地悪な言い方でしたね…ごめんなさいルイズ」 「そんな姫さまが謝るなんて…そんな必要ありません」 「私の愛しいルイズ…あなたの本当の心の内を知りたいの…」 「姫さま…」 「ルイズの大切な人は…私にとっても大切な人…そうでしょ?」 「才人が…あのバカ犬が…」 「彼は人間でしょ?」アンリエッタは優しく微笑んだ。 「アイツがこのまま帰って来ないかも…って…」 「まだ異世界に行ったと決まったわけじゃ…」 「分かるんです!私!だから…行きたいんです!」 「危険な事だと…保証も無いと…そう言われても?」 話をしている相手が姫である事も忘れ、気持ちが一気に爆ぜる。 「…だって…帰って来ないなら…迎えに行くしかないじゃない!」 我慢していた涙がルイズの瞳から溢れ出した…。 「バカだけど…サカリの付いた犬だけど…いないのは嫌なんだもん!」 子供のように泣きじゃくりながら思いの全てを吐き出すように… 「才人のバカ〜!どこに行ったのよ〜!使い魔の癖に〜!」 「一緒にいてくれるって言ったじゃない!キスだってしたじゃない!」 「今なら何だって許して上げるのに…帰ってきなさいよ!」 しゃくりあげるように泣き続け、やがて泣きつかれたルイズは… アンリエッタの膝枕で…涙の地図を描き上げながら眠ってしまった。 やがてルイズを起こさないように静かに側付きの女官を呼びつけると 小声で指示を与えた…。 『あらゆる手を尽くし、一番早く飛べる竜と、その乗り手を探すべし』 しかし零戦に匹敵する早さで飛べる竜を見つけたところで、その竜を 正確無比かつ自由に扱える乗り手など、簡単に見つかろうはずも無かった。 そう…その運命の日が訪れるまでは…

『嵐の前の…』

「姫さま?」才人は面食らった…アンリエッタそっくりのその子に。 シエスタは姫の御前とばかりに恐縮しまくりでガタガタ震えている。 才人はすぐに…ジェシカに似てる子がいるくらいなんだから、 姫さまに似てる子がいたって不思議じゃないよな…と妙に納得した。 いやまてよ?シエスタの親戚がジェシカで…その従妹がアンリエッタ? つまり…向こうの世界で…シエスタとアンリエッタの祖先が同じ? そういえば…シエスタとアンリエッタは雰囲気や容姿が似ているかも。 そんな思いを巡らせていると…その少女は軽い調子で挨拶をした! 「やぁ!一美の親戚なんだって?じゃ私とも親戚って事だよね〜♪」 「ひぃじぃちゃんの代じゃ…従妹?鳩子?ひょっとこ?にゃははは」 やたらと明るく軽薄そうな姫さまである。ノリが良いというのか…。 「江田杏里!よろしくねっ♪」 エダ・アンリ? アンリ・エダ? アンリエッタ? 嘘だろ? ご都合主義にも程がある…まぁ名前なんてこんなもんだろう。 「シ…シエスタと申します…」 「それって苗字?名前?あ!もしかして、シエ・スタとか?きゃはは」 「杏里ちゃん!今日の夕飯どうする?」と一美が口を挟んだ。 「そうだね、人数も増えた事だし…買出しに行こっか?」 「近所のスーパーだけどシエスタちゃんも行く?」 「お…お供させて頂きます…」 シエスタそいつは偽者だ!早く気付け!っていうかそれも条件反射か? 「才人君はお留守番お願いね!」 「あ、あでも…」 あ、いや…シエスタ連れて行っちゃって…大丈夫かなぁ…なんて… 「私がいますから…心配しないで下さい。すぐに帰ってきます」 一美が才人に耳打ちした。事情も話してある事だし…大丈夫かな。 じゃ…3人の留守中に下着の物色でも…と良からぬ事を考えていると、 「下着はクローゼットの下の引き出し!洗濯物は洗濯籠だよ〜ん♪」 「見てもいいけど…後が怖いよ〜♪」杏里に先手を打たれた! 「じゃ行こうか!」 捨てられた子犬のような目で不安をあらわにしているシエスタ…。 しかし…メイド姿を見て、良くツッコミ入れなかったなぁと思っていると、 ドアの外で… 「ところでシエスタちゃん、なんでそんな格好してんの?きゃはは!」 「はい…メ、メイドですので…」 「そっかぁ!じゃしょうがないね、きゃははは!」 軽い…こっちの世界のアンリエッタ姫は…軽過ぎる…。

さて…お約束タイムである!世の男性諸君!留守中の女性の部屋だ! ご丁寧に下着の場所まで教えて頂いた!覗いて見たかどうかなんて、 元通りに戻しておけば分かりゃしないさ。 ルイズの下着は腐るほど見ているが…それはそれ、これはこれ。 さてさて…彼女達はどんな下着をお召しになられているのかなぁ?? 引き出しを…そ〜っと開ける。 「・・・」 え? ・・・絶句・・・ そこにはタオルや枕カバーなどが入っていて…下着は一枚も無く…

『やっぱり見たね?!エッチ!』

と書かれた紙が一枚入っていた。 良く見れば漫画などでよく見る…一度ドアを開けたら分かるように… 髪の毛を一本貼り付けて…という古典的なトラップまで仕掛けてあった。 俺…ダメダメじゃん…ベタ過ぎる。

しばらくするとインターホンが鳴った。 「才人く〜ん!エントランス開錠してぇ〜!」 後ろでは何やら話し声も聞こえ賑やかだ!女三人寄れば何とやら…。 再びインターホンが鳴りドアを開けてくれというので開けてみれば、 いったいどんな宴会を始めるつもりなんだと思わんばかりの買い物を 両手一杯に抱えた3人組が立っていた。 シエスタはすっかり打ち解けていた…偽者と気付いたか?エライぞ! と思ったら…スーパーの試食コーナーのシャンパンやらワインやらを しこたま飲んで上機嫌になったとか。酒乱モードで上機嫌っすか? 「シエスタ!今夜は鍋パーティにすっからね♪」 「私もお手伝いさせていただきましゅ!」 「宜しいシエスタ!ではこちらの下ごしらえを頼もうかな?」 「はい!やらせていただきましゅ!」 一応の主従関係は無意識とはいえ有る様だ…しかしそいつは偽者だ! 「シエスタさん目立ってましたよ、スーパーで♪」 一美が思い出し笑いをした。 「な、何かまずい事しちゃった?」 「杏里が…シエスタさんを連れ歩くのが面白くなっちゃったって…」 「メイド姿で『はい』『はい』って後を付いて歩いてるから…」 「周囲の人が『どこのご令嬢かしら?』って…勘違いし始めて」 「あの子、調子に乗って…面白がって…ごめんなさいね」 才人はホっとした。トラブルがあったわけじゃないならそれでいい。 「大丈夫!シエスタはそういう事には慣れているし…それにきっと」 「明日になれば半分くらいは忘れてるから」

『大嵐』

その夜は皆が酔っていた…未成年なのに? シャンパンは正月の祝い酒や甘酒みたいなもんだから問題無い! それが杏里の言い分だった。シエスタは素直にそれに従った…。 異世界には未成年の飲酒の規制は無かったように記憶している。 学院でも食事中に普通に飲まれていたし、咎められる事も無かった。 一美は元々、酒には弱いようで少量で既にヘロヘロになっていた。 杏里とシエスタの飲みっぷりは実に見事だった! 「なんと!?これはヨシェナヴェじゃないですかぁ?」 「そうよ〜♪寄せ鍋よ!わかってんじゃない♪」 「才人さん才人さん!これヨシェナヴェですよ〜故郷の料理です〜」 はいはい…何度も聞きました。 シエスタは料理を手伝いながら、その言葉を何度も繰り返していた。 「さっすがシエスタ!異世界から来たって言っれも親戚よね〜♪」 「ちゃぁんとわかっれるじゃなぁ〜ぃ♪」 ろれつが回っていませんよ杏里さん?!っていうか…え?え?え? 異世界から来たって…なに? 「一美さん…説明してくれたんですか?」 「一応簡単には話しておいたけど…」 もっと驚くとか、どうして?とか、疑うとか…気にならないのか? 「んっとね…シエスタの事を気に入ったから…いいんだって」 そ、そんなアバウトな! 「細かい事はこの際ど〜でもいいのらよ♪君ぃ〜♪」 さすが異世界の姫殿下…器が大きくていらっしゃる。 「才人さんったら〜私がこんなに思っているのに」 シエスタが絡み始めた…やばい。 「あんな傲慢で我侭な女の事なんて!忘れちゃえばいんですぅ!」 いきなり抱きついてきたかと思うと強引にキスをされた。 「おぉ〜やるねぇ♪シエスタがんばれ〜♪」 「あなたもあなたです!」 杏里を指差し、激しい口調で続けた… 「立場を利用して、才人さんに色目なんて使わないで下さい!」 杏里はただ笑っていた。シエスタ…それは似ているが…偽者だ。 「私、絶対に負けませんから!」 完璧にマスターしたというディープキスが…才人を襲う…。 杏里は大喜びで囃し立て、一美は目を覆い指の隙間から見て赤くなった。 「才人さん!いいかげんハッキリ決めて下さい!」 「シ、シエスタ?今ここでそんな話をしなくても…」 「私…と〜っくに覚悟は出来てるんですよ!」 おいおい、そんな嬉しい…いや、困らせるような発言を…。 杏里は「え〜そんな関係なんだぁ?♪」と、はしゃぎまくり、 一美は、さすがに少し酔いを醒ました方が良いと判断したのか、 「少し、換気しましょうか…」と窓を大きく開け放った。 と同時に心地良い夜風が吹き込んで来る。 窓から見えるその夜空には大きな月が…ひとつ…浮かんでいた。

『ガリア王国』

ガリア王国のヴェルサルテイル宮殿を造る煉瓦は青く彩られている。 青い髪はガリア王家血筋の特徴でもあり、宮殿のレンガもそれに倣い …宮殿はグラン・トロワと呼ばれていた。 その宮殿の一番奥の部屋に、先の戦争を終結へと導いた張本人、 ガリア国王…ジョセフはいた。 なにやらテーブルの上にチップを並べ…考えては…また並べていた。 「閣下…何かまた新しい遊びを始めましたのね?」 モリエール夫人は不安げに覗き込んだ。 「なぁに、ただの独り遊びだ!心配しなくても大丈夫だ!」 以前は巨大なハルケギニアの模型を使い戦術を巡らせていた策士、 いったい今度は何を始めたのやらと夫人は気が気では無かった。 「ふむ、なるほど…」 盤面には格子状に線が引かれ、そのマス目にチップを並べている。 奇妙な事にそのチップは表裏で色が違う不思議なものであった。 「ときにモリエール夫人?」 「は、はい?何でしょう閣下!」 「これを、どう見るかね?」 「どう…とは?」 「二つの色…どちらの数が勝っていると思うかな?」 モリエール夫人は、見たままを答えた。 「白い色のほうが多いように見受けられますわ」 そうか…というと1枚のチップを盤面に置き…指をパチン!と弾いた。 するとみるみる内に盤面の多くのチップが音を立てながら裏返り… 気が付くと盤面の殆どが黒い色で多い尽くされていた。 モリエール夫人は訳が分からず、ただ唖然とそれを見ていた。 「わからぬか…まぁ無理も無い」 立ち尽くす夫人に1枚のチップを見せるとこう言った… 「どうだね?試しに1枚、好きな場所に置いてみるがいい」 先の戦で自分がサイコロを振り戦局を左右した記憶が蘇る…。 「めっそうも御座いません閣下!ご遠慮申し上げます…」 そう告げると、夫人はそそくさと逃げるように部屋を後にした。

「そこにいるのだろう?」 扉の陰からフードを被ったシェフィールドが静かに進み出た。 「どうだった?」 「確かに…生きているようです」 青い髭を摩りながら少し考えるような仕草をして見せる… 「お考えは…とうにお決まりかと存じます」 「アルビオン王家の者なら生かしておくのは得策では無い」 「承知しております」 「何者だ?」 「王弟が妾に産ませた子と…」 「なるほど…サウスゴータ…か」 「おそらくは」 「兵も与えよう!必ず見つけ出し亡き者にせよ!」 「仰せのままに」 「ときにシェフィールド…」 「はい」 「これをどう見る?」 先程と同じように盤面を指し尋ねる…。 「既に勝敗は決しているかと思われます」 「ふむ、そうか…」 1枚のチップを盤面に置き、先程と同様にパチン!と指を弾くと、 黒一面だった盤面が、白一面に変わった。 「先をいかに見通すか…2手3手…常に先を読まねば」 「機を逃さぬ事は、とても重要な事だ!…しかし」 「先を見通してこその『機』なのだよ!」 「肝に銘じます…閣下!」 そう…これはまだ序盤の一手に過ぎぬのだ! シェフィールドを下がらせると深く椅子に腰をおろし… オルゴールを開け…その調べに耳を傾けた。

『ラ・ヴァリエール家』

ヴァリエール家では久しぶりに帰った公爵を囲み夕食を取っていた。 エレオノールはまた婚約を解消され…ひとしきりの説教を受け終り 一段落してホッと一息ついたところであった。 相変わらずカトレアは食が細く……もっと食べなきゃいかん!と、 公爵や夫人、皆から心配された。 「最近ルイズは帰って来ないわね」 とエレノアが言うと 「あんな親不孝な娘などいらん!」 と言われてしまった。 ルイズの様子を心配して王宮や学院にふくろうを飛ばしてるくせに! 先週も飛ばしたの知ってんだから…とエレノアは心の中で思っていた。 意地っ張り…。 食事も終りくつろいでいる所に…ふくろうが舞い込んできた。 ふくろうが話す 「書面にて!王宮からの勅命です」 どれどれ…と羊皮紙を広げる。

…各領主に通達…

「いったい何事だ?」 「どうしたの?お父様?」 高速で飛べる竜と、それを正確無比に自由に扱える乗り手、 心当たりがあるなら至急報告せよ…と書かれ、最後に王宮印があった。 「何をバカな!竜にも得手、不得手がある!」 「何のために部隊を分けているんだ?全く何を考えているのやら」 何も分かっちゃいない…と手紙に一瞥をくれるとポイ!と放った。 「飛ぶのは竜だ!竜と一体化でも出来なきゃ無理な相談だ!」 「大体、何だってこんな竜が必要なんだ?また戦争か?!」 公爵の機嫌を損ねたふくろうはカトレアが連れて行った。 執事のジェロームは機嫌を直すよう気を使い…ワインを注いだ。

カトレアは部屋に戻り羊皮紙に羽ペンを走らせていた。 『心当たり有り、ついては事の詳細をお知らせ頂きたく…』 小さく丸めた羊皮紙の手紙をふくろうに託すと、窓から放った。

翌朝、食卓は大変な騒ぎになっていた。 「ど、どういうこと?カトレア!」 エレオノールは目を白黒させて驚いた。 「カトレア!なぜ突然そんなことを言い出す?」 「父さま?私が使い魔を欲しがるのがそんなに変ですか?」 コロコロと笑いながらカトレアは言った。 「だって便利でしょ?色々と♪」 「そりゃ呼び出す幻獣にもよるが…」 「竜やヒポグリフやグリフォンだったら、お散歩が楽になるわ♪」 「そう言われればそうね…」 エレオノールは妙な説得力に得心したようだ。 「身体にも負担が掛かるんだぞ!」 「構わないわ♪」 「全く…言い出したら聞かないんだな…我が家の娘たちは…」 「えぇ!それがラ・ヴァリエール家の血筋ですもの♪」 血筋か…まぁ仕方なかろう…戦争に行きたがる娘よりはマシだ。 「私は今日発たねばならん!」 「エレオノールとお前が、しっかり見届けるんだぞ!」 公爵夫人は黙ってニッコリと微笑み… エレオノールは「はい!お父さま!」と姿勢を正し… カトレアは「お父さま…ありがとう…」と頭を下げ礼を言った。

『月目の理由』

右手にはめた手袋を見つめ大きな溜息を1つ、2つ、3つ目を吐こうと 息を吸った時…背後から声を掛けられた。 「疲れているのではないかね?」 「これは教皇…こんな場所に、何用で?」 「右手のルーンは、まだ痛むか?」 「いえ、大丈夫です」 手袋を外すと…そこには見慣れぬ不完全なルーンが刻まれていた。 「このような偽りのルーンに何の意味がありましょう…」 「我がロマリアは知恵の国だ!長年の研究の成果のルーンだ!」 「虚無を手に入れ、エルフを滅ぼし、東方へと至る為に…」 「しかし私がルーンを刻んだとて、担い手が居なければ…」 「それも時間の問題だ、案ずる事は無い」 何も分かっていない…担い手と使い魔は絆で結ばれるものだ… 造られた…偽りの絆など…何の意味がある。 ロマリアの虚無の研究により右手にルーンを刻まれたジュリオは、 その時の影響で片目の色が変わってしまっていた。 失うものばかりで…いったい自分は何を得るというのだろう? 「今しばらくの辛抱だ、やがて全てが手に入る…」 「それまでは手袋で隠していろ」 そう言うと教皇は建物の中へと消えていった。

湖の辺で出会ったあの女性…カトレアと言ったな…綺麗な人だった。 以前にもどこかで会ったような気がしているんだが… 世話をしていた風竜がキュイキュイと鳴いた! 「あぁ、アズーロもそう思うかい?どこだったかなぁ?」 綺麗な桃色の髪で…と思い出していると…風竜がまた鳴いた! 「偉いぞ!アズーロ!あのお嬢さんだ!ミス・ヴァリエール」 ガンダールヴの主人にして虚無の担い手…ミス・ルイズ。 彼女に良く似ていた…確かにあの辺りはラ・ヴァリエール領だった。 なるほど…そうか…そういう事か…絆…真の絆! ロマリオに囚われている偽りの絆…鎖から解き放ってくれるのは、 あの人なのかもしれない…。 ふいに不完全なルーンに痛みが走り、左手で痛みを押さえ込む。 「大丈夫…たぶん…きっと…もうすぐだ」 アズーロが答えるようにキュイ!と鳴いた。

『ルイズの提案』

「そうよ!タバサがいるじゃない!」 ルイズのその一言で王宮から学院に勅使が向かい、早朝にも関わらず タバサとシルフィードは呼び付けられる事になった。 「なによぉ〜こんな朝っぱらから」 大きなアクビをしながらキュルケは言った。 「なんでアンタまでいるのよ?呼んで無いわよ!」 「気にしない気にしない!才人のトコ行くんでしょ?」 「そ、そういうわけじゃないわよ!」 「聞いたわよ〜♪アンタ…またピーピー泣いたんですって?」 「な、な、な、なんでアンタが知ってるのよ?」 「あ、やっぱり♪」 「あの子がね…」とタバサを指差し 「アンタはきっと泣いているだろう…って言うからさぁ」 「ちょっとカマかけてみただけ♪」 既にバレバレだが、ルイズは顔を真っ赤にして反論した! 「な、泣いてなんかいないわよ!」 「あらそう?まぁどっちでもいいんだけどね〜」 「あぅ〜」 ルイズを散々からかうと満足したのか真顔になって言った。 「でもルイズ!たぶん…あの子、ダメよ」 え?とタバサの顔を見るが…その表情からは何も読み取れない。 「どうして?」と尋ねるルイズ。 「…速さ…足りない」 「…まだ子供…」 キュルケが説明を補足する。 「あのね、確かにタバサは優秀だけど…使い魔のシルフィード…」 「あの子はまだ子供なの。だから成竜ほど速くは飛べないの」 ルイズは肩を落として…うつむいた… 「……がい」 「え?何?」 キュルケが聞き返す。 「おねがい!ねぇお願いだから!」 「試すだけでいいの!1度だけでいいから!」 「お願い…」「お願い…」「…ねぇ…お願い…」 気が付けば、ルイズは大粒の涙をポロポロとこぼしていた。 「お願いだから…」 キュルケにすがり付くように泣きじゃくるルイズ…。 「そんなに心配?」 「もう…あんな思いは…嫌」 先の戦いで才人が死んだと思い、一度は自らの死をも覚悟したルイズ。 もう二度と離れたくないと心の底から思っていた。 「ずいぶんと素直になったものね?驚きだわ!」 「な、なによ!?」 「まぁいいわ…試すだけよ」 「え、偉そうに…やってくれるのはタバサじゃない!」 「まぁそうなんだけどね♪」 キュルケは鼻の頭をポリポリかいて、おどけて見せ…タバサに向い、 「いいかしら?」と聞いた。 タバサがシルフィードに何か呟くとシルフィードはキュイ!と鳴いた。 「…いい」 「…試すだけなら」 「じゃ、試験飛行としゃれこみましょ♪」 「だからぁ、アンタは関係無いでしょ?!」 「気にしない!気にしない!」 詳細な説明を受ける為に3人と1匹は王宮の中央庭へと向った。 そこにはコルベールが待っていた。キュルケは嬉しそうに手を振った!

『王家の血筋』

街道から森を抜けたウェストウッドの村に彼女は暮らしていた。 先の戦いで傷ついた際、才人がしばらくの間、身を寄せていた村… 誰も知らない…ティファニアと子供達だけが暮らす平和な村。 サウスゴータの森を抜けた先にある世間とは隔絶した隠れ里…。 「ティファニアおねぇちゃん!また考え事?」 「え?あ、ち、ちがうわ」 「また、あのにいちゃんの事だろ?」 「ちがうったら、もう!」 顔を真っ赤にして否定しても子供達には何の意味も無かった。 「ねぇティファニアおねぇちゃん?一緒に行きたかった?」 少女の真っ直ぐな問い掛けに正直戸惑ったが… 「ううん、みんなと一緒にいたいし…それに」 「また会える…から…きっと」 ティファニアは人間とエルフとの間に生まれたハーフエルフだった。 王弟の妾だった母は疎まれ、その身をサウスゴータ家に寄せていた。 やがて情勢が変わりその身を追われると、なんと王家は母を匿った サウスゴータ家から貴族の称号を剥奪し取り潰したのだ。 母は殺され…必死の思いで逃げ延びたティファニアは転々とし… 人間ともエルフとも交われず…そっと隠れ住むようになった…。 「また…会えるよね」 自分を見ても怖がらず接してくれた初めての人。 こんな私を見て…綺麗だと言ってくれた心優しい人。 誰とも関わりを持たないと決めていた頑なな心を開いてくれた人。 胸の事をあれこれ言われたけど、楽しかった賑やかな人達。 でもいつも目に浮かぶのは…才人さん。 生まれて始めて話をした…同世代の男の子…。ドキドキした。 ううん、今でも…思い出すだけで胸が…高鳴る。 毎晩、夜になると彼の事を思い出しながら…独り慰める…。 初めて知った自分の胸の大きさ… 才人さんは…本当はどっちが好きなのかな?大きいのは嫌? 今度会ったらハッキリ聞こう! 才人さんは知らない…私が本当は男の子に興味津々だってこと。 怪我で寝込ている時…デルフリンガーさんを別の部屋に置いたのは、 本当はうるさかったからじゃないんですよ。 私のしている事を見られないように、聞かれないように…。 隅々まで見た…男の子の大事な所だって…ちゃんと確認した。 怪我がちゃんと治ったかどうか…ちゃんと機能するかどうか… 仕方ないです…これは…治癒魔法の…その…確認だったんだから。 でも…手で触っているだけで何か出てきた時は驚いた! 最初は傷口が開いちゃったのかと思って大慌て…。でも才人さん、 とっても気持ち良さそうにしてたから…気付くまでの間…何度も 何度も出して上げていたんですよ。手でシコシコって感じでしたり、 胸の間に挟んだ事もあったかなぁ…お口でした時は勇気がいったけど 才人さんのモノだから嫌じゃなかった…ちゃんと飲んだんですよ。 だから…いつも通りにしてあげよう♪って部屋に入ったときに… もう気付いて起きていて…だから、あんなに驚いてしまったんです。 今思えば…最後までしちゃえば良かったかなぁ…なんて思ってたり。 もう毎晩独りでするのは切ないです。寂しいんです。 また会えるように…記憶も消さなかった…いつかまた…きっと。

ウェールズ亡き後…唯一の王家の血筋とも言えるティファニア。 その王家の血が今再び災いを飛び寄せている事に彼女はまだ 気付いてはいなかった。

余談ではあるが… 王家のお家騒動に巻き込まれる形で没落に追い込まれた貴族… サウスゴータ家の1人娘…「マチルダ・オブ・サウスゴータ」 土くれのフーケもまた、王家の血に翻弄された1人だった。

『松の湯へ』

「ここが銭湯よ♪」 「そうそう、うちのお風呂は小さいからね」 「へぇ〜凄いお屋敷ですねぇ〜」 一同はマンションから少し離れた場所にある老舗の銭湯にやってきた。 シエスタが銭湯の話を聞き「ぜひ経験したいです!」と言ったからだ。 才人は少し面白くなかった。 「一緒にお風呂に入ろうか?」という話に喜び勇んで飛びついてみれば、 なんの事は無い…銭湯だ。それなら「入ろうか?」じゃなく「行こうか?」 って言えよ!期待させやがって。 門構えの立派な銭湯で、聞けば昭和の時代から外観は代わってないそうだ。 入り口で靴を脱ぎロッカーに入れる。へぇ…木板の鍵かぁ懐かしいなぁ。 シエスタがそれを見て何やら騒いでいる様だ。 「靴はここで脱ぐんですか?これが鍵ですか?面白いですね?うわ〜♪」 鍵の掛かる仕組みが気になるようで、しきりに覗き込んだり眺めたり…。 「これは何ですか?…この記号」 「あぁそれは『ひらがな』っていう文字よ」 「他の人と区別して間違えない様に全部違う文字が書いてあるのよ」 「あ、ちなみにシエスタは『し』ね。で私は杏里の『あ』♪」 「私は一美の『か』です」 「でもココに同じ文字がありますよ?」 「それは『つ』よ♪向きも横だし逆でしょ?」 「じゃコレは?」 「『め』と『ぬ』!字なら後でゆっくり教えてあげるよ♪」 「はい!」 シエスタは偉いなぁ…文字を覚えようとしてるのか…それに比べて俺は、 未だに読み書き出来て無いし…っていうか覚える気は皆無だったしなぁ。

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