ゼロの保管庫 別館

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だれでも歓迎! 編集

637 名前:1/4[sage] 投稿日:2006/10/11(水) 02:09:35 ID:RdWXqUQ/ シエスタが俺の手を胸に押し付ける、ルイズはゆっくりあちこちに口付けている。 開いてる手で、ルイズの胸を触る…… 3人とも目は閉じて、一言も喋らない。 熱い吐息が漏れているのは、皆そろって無視する。 これは遊び、虚無の曜日の午前中だけの。

638 名前:2/4[sage] 投稿日:2006/10/11(水) 02:10:09 ID:RdWXqUQ/ 息苦しくて目が覚める……顔に何かが当たっている。 3人で寝るようになってから、たまにこういう事が起きた。 (今度は枕か?布団の束か?まだ早いのになぁ……) もっと素敵なものだった……シエスタの胸。 起き抜けで渇いた喉が、掠れた音を立てる。 目蓋を、閉じなおす。 (俺はまだ寝てる。寝てるったら寝てる) ルイズは俺の背中だ、まだ身体は起こしていなかった…… (起きてるのはバレて無いはずだ……Goサイト) 寝返りを打つふりをする…… 柔らかい感触が、顔に当たる……そっと呼吸するたびにシエスタの香りが胸を満たす。 カラカラに渇いた喉を自覚しながら、シエスタの胸の谷間で呼吸する。 (至、至福……) このまま死んでも良いかもしんね………そう思っていた瞬間、 自分がまだまだ甘かったことを思い知る。 シエスタが、俺の頭を抱きしめながら寝返りを打った。 (む、胸で……窒息するっ) 名残は惜しいが、頭を横に振って、酸素を補給。 しかし未だに顔の側面は柔らかい感触で覆われている…… さっきのシエスタの様に、寝返りを打つモーションで、シエスタの腰に手を回す。 頭に血が上って、ズキズキと痛みそうな気がする。 それでも俺は止まれない。腰に回した手で、シエスタの感触を確かめる。 『何も遠慮すこと無いんですよー』 シエスタがいつか言った台詞が蘇る……しません、遠慮しませんとも。 寝巻きがめくれ上がっていて、たやすくシエスタの素肌を見つける。 柔らかな感触、スベスベの手触り……足を伝ってじわじわと手を滑らせる。 「むーーーー」 妙な呻きと共に背後で何かが起き上がる気配がする。 最優先で、手を緊急停止。 不自然に見えるのを避けるため、急に動かずそのままの姿勢をキープ。 「………………」 ル、ルイズがじーーーっと見ている気配がする……。 ルイズの目には俺とシエスタが抱き合っているように…… いや、まあ、抱き合ってるけど…見えるはずだ。 むんずと俺の肩をルイズが掴む。 (起きてるのバレタ――――――) 死を覚悟する……が、大の字に俺をひっくり返しただけだった。 何かが隣に倒れる……薄目を開けると………ルイズが横で寝ている…… (ね、寝ぼけただけか……助かった……) が、ルイズがゴロゴロと寝返りを打つ……結構早い。 (いてっ) 勢いよく転がったルイズは俺の腕を枕に……起きてるだろ……ルイズ。 だが、ルイズはまだ止まらなかった。 俺にのしかかるように、寝返り(たぶん本人はそう主張する) を打って、俺の顔にのしかかって来る……唇が塞がれる…… 舌が進入してくる……静かに俺の唇を舌がなぞる…… 段々激しくなってくる…… (ルイズ……本気で寝てたら窒息してるぞ……これ) そう思いつつも、舌を送り返す。 一瞬驚いた気配がしたが、目を閉じたまま夢中でお互いの唇を貪る。 大の字になった俺の上に、何か柔らかいものがもうひとつ乗った…… 本人は眠ったふりをしていても、すっかり起きている息子に、何か柔らかい感触が当たる。 足に当たる感触から、ソレが何かを理解する……シエスタのおっぱい…… 頭の奥が熱くなる。 3人とも眠っているから仕方が無い。 そういう事にして、全身の感触を楽しんだ。

639 名前:3/4[sage] 投稿日:2006/10/11(水) 02:10:40 ID:RdWXqUQ/ 夢見心地はしばらくしたら終了。 「あーーーーーっシエスタあんた何してんのよ。」 いきなりルイズが絶叫した……気づいてなかったのか…… ゆっくりとシエスタが起き上がって言った。 「おはようございます。ミス・ヴァリエール」 「な、なによっ、今の見てたんだからねっ」 「ミス・ヴァリエール!」 少し低めの声に押されて、ルイズが黙り込む……俺も怖い。 「3人とも眠ってたんですから、仕方ないと思いませんか?」 「なっ、あなたっおきてたでしょぉがぁぁぁ」 「だからっ、聞きなさい、ミス・ヴァリエール」 「なっ、なによっ」 「2人とも寝てたんだったら、仕方が無いですよね?」 「?」 ……俺はわかった…… 「おはよールイズ、シエスタ。」 「サイトっ、さてはあんたも起きてたわねっ」 ……あんなキスしてて寝てられるとでも……… 「いやー二人の声で目が覚めちゃったよ」 気をつけているが、声が上ずってしかも棒読みになる。 「ちょっと夢見がおかしくてさ、あちこち寝返り打ったかもしれないな」 にっこり笑ったシエスタが 「えぇ、サイトさんわたしもなんですよ。」 乗ってくる。 「な、なによ、二人そろってぇぇぇぇ」 鈍い……ルイズ、空気読もうな…… シエスタが部屋の端まで引っ張っていく…… しばらく何事かを話し込んでいたが……赤くなったルイズが駆け寄ってくる。 「お、おはよう、サイト。何も無い朝だったわね」 ……変だ、それは変だぞルイズ…… 「おはようルイズ、俺はいい夢見たぞ」 「きききききぐうねぇぇぇ、サイトわたしもよっ」 「まったく奇遇ですねぇ、わたしもなんですよ」 三人そろって乾いた笑い声を上げる。 そして、 次の日3人そろってそれぞれの用事に遅れたため、寝相が悪くなるのは虚無の曜日だけにしようということになった。

640 名前:4/4[sage] 投稿日:2006/10/11(水) 02:11:12 ID:RdWXqUQ/ ルイズの唇を堪能していると、左手がいきなり固定される…… シエスタが、腕の上に寝返りを打ってきた、今はルイズで口が塞がっている。 二の腕に柔らかい感触が添えられて……手を包み込んでいるのはシエスタの太もも。 下着の上から柔らかい箇所を探る。 「……っ」 シエスタが息を呑む。喋ってしまったら、3人とも目が覚める。 そして、目覚めた原因は、ちょっとした罰を受ける。 いつの間にかそう決まっていた、罰は大したものじゃないけど…… ちょっと意地になる、シエスタが声を上げるポイントを探す…… 相手が痛い事は禁止。 あまり自由にならない左手を蠢かせながら、余った右手でルイズの首筋を撫でる。 キスの真っ最中だから、声は漏れないが、ビクビクと感じているのが分かる。 先々週はコレで声を上げたルイズが水汲みに行った。 ルイズに掛かりきりになっていると、シエスタが不満に思ったのか、と頭を寄せてくる。俺の腕は、太ももの間からお尻のほうに付きぬけ、固定されてシエスタを触れなくなる。 俺の身体が痙攣する。 ヤバイ、ルイズとキスしてなかったら叫んでた。 シエスタが俺の首筋を舐め上げる……ビクビクと勝手に反応する体を抑えるために、ルイズの舌を吸う。 呼吸が苦しくなったらしいルイズは、逃れようとするが、右手で抱き寄せ逃がさない。 ルイズが逃げようとした所為で開いたスペースに、シエスタの手が差し込まれ…… 俺の胸を愛撫する……耐えられない……ルイズを抱きつぶすように抱きしめ、夢中で耐える…… ルイズがやっとのことで離れた瞬間、シエスタの唇が、俺の耳を包み、耳朶を舌が這い回る。 声が出なかったのは、肺が空だったからに過ぎないけど……シエスタは意地になって責めかかる。 も、持たない……始めは同じくらいだったこのゲームの腕も、今や俺もルイズもシエスタにまったくかなわない…… (どこでなにを聞き込んでくるのやら……) 次々に覚えてくる豊富な技も、日ごろの気遣いから来るこっちのポイントを探す上手さも、一番上手な理由だ……最もシエスタの一人勝ちにならないのは…… 右手でゆっくりシエスタの胸を揉む、 「っっっっっ………」 この感じ易い身体と、 一瞬緩んだ太ももの左手を、丁度いい位置に調整爪で、下着の上からカリカリと擦る。 もう俺を責めれなくなる、必死で声を抑えて防戦一方だ。 こういう時すら、どこかそそっかしい性格と、 いつの間にかシエスタの背後に回ったるいずが背中を舐め上げて……… 「ひゃぁぁぁぁぁん」 あんまり上手いと、1対2になるって状況だけだった。 くすくすとルイズが喉の奥で笑いながら、 「あら、朝からはしたない声ね、シエスタおはよう」 「素敵な目覚ましだな、シエスタ」 真っ赤になって俯くシエスタは何も答えなかった。 「ず、ずるいです、二人ともっっ、最近いっつも……」 涙目だ…… 「わがまま言っていい?」 ルイズもシエスタも黙り込む。 「今日は皆で食事したいな、シエスタここに朝食運べる?」 ちょっと機嫌を直したシエスタが、笑い掛けてから立ち上がる。 「厨房、行って来ますね。」 メイド服に着替えるシエスタを見ていると、ルイズに目を塞がれた。 「……サーイートー、なーにみてるのかしら?」 何も見えないうちに、シエスタが立ち去る音が聞こえる。残念。 来週のこの時間を楽しみに思いながら、いつまでもこんな時間が続けばいいな、とそんな事を考えていた。

598 名前:1/4[sage] 投稿日:2006/12/05(火) 03:29:48 ID:EDJ2FNmW 三人でふざけあう虚無の曜日、タイプの違う二人の柔らかさを堪能した日。 いつの間にかサイトには日課が出来ていた。 学生のルイズや、サイト付きとはいえ働いているシエスタより、サイトの時間は融通が利くさいとは、二人がいない時間を見計らって部屋に戻る。 いつも入りなれているはずの部屋なのに、朝の出来事のおかげで空気が甘い気がする。 乱れたシーツを見るだけで、朝の記憶が蘇る。 ズボンを緩めながら、ベットに倒れこむ。 サイトはじゃれ合う二人が、自分の股間を触らないように細心の注意を払っていた。 (……男だって意識されたら、もーこんな事しなくなるよなぁ) 自分自身の欲求も大事だったが、毎週のこの時間がとても好きだった。 硬くなった自分を握りしめる。 事前に洗濯物の中から、ルイズとシエスタの下着を一枚づつ抜き出してあった。 二人が毎日休むベットの上で、二人の下着を玩具に……自分の快感を高める。 (もし……触るだけじゃなくて……) 二人が嫌がらずに触ってくれることを想像する。 ルイズもシエスタも、頼めば…… いや、好きだと言えば、許してくれる。 そんな予感は有ったが、自分の欲望で彼女達の想いに答えるのは…… (卑怯だよなぁ……) 身体目当てだと、そう思われるのが怖かった。 とはいえ、毎週あんな事をしていながら、何もしないのは…… (無理、健全な高校生として、不可能) ルイズのオンナノコが当たっているはずの所に、ゆっくり擦り付ける。 本物に同じようにしたい欲求が、毎回狂おしいまでに高まる。 丸めた布団の上に置いたシエスタの下着に触れながら、シエスタの胸の感触を思い出す。 「シエスタ……ルイズ……シエスタ……」 サイトの心境のように、どっちつかずな声が漏れる。 朝の記憶を取り戻すために閉じられた目には、ドアが開くのは映らなかった。 「……サイト……さん」 冷水を浴びせられたように、正気に返る。 二人の下着の上を転げ回りながら、限界寸前まで硬くなったソレを握りしめる様を、シエスタに観察されていた。 (お、終わった……) シエスタもルイズも、本気で怒る。 そんな気がした。 二人が信頼してふざけあってくれたのに、その信頼を裏切った。 二度とあの時間が帰ってこない予感に、涙が出そうになる。 「ご、ごめんなさいっ」 あれ?俺……まだ謝ってないよな? 真っ赤になったシエスタが、深々と頭を下げていた。 「男の子って……そのっ……お話は知ってたんですけど……サイトさんは違うと思ってましたっ」 謝っているのはシエスタだった。 「こ、こっちこそごめん……その……下着とか……その……」 言い訳のしようも無いけど、謝るべきだと思ったことを、そのまま口にした。 「あの……それ、わたしのですよね?」 見れば分かるようなことを、あえて確認される。 「ご、ごめんなしゃい」 惨めな気分だった、これから何を言われるのか竦みあがった。 シエスタが一歩づつ近寄ってくる。 右手がゆっくり上がる。 ……あぁ……殴られるのか…… シエスタにとって当然の権利だ、怒っても良い…… でも、できれば嫌わないで欲しかった。 虫のいい願いだと分かっていたけれど。 それで許してくれるなら……と、覚悟して歯を食いしばる。 ……恐れていた衝撃はいつまで経っても来なくて、頬に触れたには優しい指先。 驚いて開かれた唇は、もう一つの唇で塞がれた。

599 名前:2/4[sage] 投稿日:2006/12/05(火) 03:30:21 ID:EDJ2FNmW 怯えるサイトさんの頬を、そっと撫でる。 泣きそうな目がわたしを見た瞬間、我慢が出来なくなった。 (うれしい) ミス・ヴァリエールの下着も有ったけど…… (ちゃんと、わたしも女の子だって見てくれてたんですね) 毎日一緒に眠って、毎週触りっこして、数え切れないキスをして…… それでも何もしてこないサイトさんは、ミス・ヴァリエールの事しか見ていない。 そう思ってた。 下着が足りないのに気が付いて、戻った時に見たことは衝撃だったけど…… (サイトさんが、ちゃんと男の子で安心しました) 「お、怒らないのか?」 恐々とわたしを見上げるサイトさんが愛しい。 もう一度キスをしてから、サイトさんの隣に腰を掛ける。 「いつから?」 ひょっとして、わたしとミス・ヴァリエールは凄く残酷な事をしていたのかもしれない。 サイトさんに無理をさせていたとしたら……申し訳なかった。 「結構前……その……じゃれ合う様になって……2、3回目から……ごめん」 男の子は出さないとすっきりしないんだよって、聞いてたのに…… サイトさんが普通にしていたから、全然気が付かなかった。 これからどうすれば良いのか……どうしたいのかは決まっていた。 喉がからからに干上がる。 ミス・ヴァリエールを裏切る……そうなるのが分かった。 でも……止められなかった。 「サイトさんは……どうしたいんですか?」 わたしが何を言っているのか理解していない様子のサイトさんは、返答に困っていた。 シュル 小さな音を立てて、胸元を緩める。 「わたしに何が出来ますか?」 サイトさんの目が胸に集中する。 サイトさんの手が、ゆっくり上がる。 じゃれ合うときにはしないような強さで、胸を触る。 痛いけど……我慢。 無心に胸を弄るサイトさんは幸せそうだけど…… (これじゃ駄目なのよね?) サイトさんに気持ち良くなって貰わないといけないんだ。 サイトさんに胸を任せたまま、服を一枚一枚脱いでゆく。 途中で気が付いたサイトさんが、目をきらきらさせて見つめるのが、誇らしくて……恥ずかしい。 「したいようにして良いんですよ?」 サイトさんが見てる……それだけでわたしの身体が熱くなっていく。 「何かして欲しいこと有りますか?」 そう聞いた途端に、サイトさんの視線が、自分のオチンチンに向けられる。 (……き、聞いた事しかないけど……) そっと握ってみると、びくびくと震えていた。 「どうしたら良いんですか?」 柔らかく握るわたしの手に、擦り付ける様にサイトさんの腰が動き出した。 「もっと……強くっ……」 切羽詰ったサイトさんの声にもう少しだけ力を入れる。 「シ、シエスタァ……もっと……」 鳴きそうな声で、力を入れて欲しがるけれど。 (び、敏感な所なんですよね?) 始めての事に、わたしも加減が分からない。 泣きそうなサイトさんが、わたしを見ていた。 上手に出来ないことが悲しかった。 サイトさんに気持ちよくなって欲しかった。 「ご、ごめんなさいっ」 どうして良いかわからなくなったわたしは、その場で謝り始めた。

600 名前:3/4[sage] 投稿日:2006/12/05(火) 03:30:53 ID:EDJ2FNmW シエスタが涙がこぼれるのにも構わず、頭を下げ続けていた。 わざとではないにしろ結果的に、俺は限界まで焦らされていた。 いつまでも逝けない事に、心のどこかがざらついていたが、 それでも……シエスタが泣いているのを見るのは悲しかった。 俺は気持ちよくなれないのが辛くて、 シエスタは俺を気持ちよく出来ないのが辛い。 俺の欲求の為にシエスタが悲しむのは納得できなかった。 綺麗な涙を下ですくう。 「え?」 驚いた顔で俺を見るシエスタの頬を、動物のように舐め続ける。 しょっぱい。 顔中ベタベタにしながら、シエスタが落ち着くのを待つ。 「落ち着いた?」 俺の問いかけに、コクリと頷くシエスタが可愛かった。 涙が止まっても、シエスタの顔を舐める。 唇を舐めていた時に、シエスタの瞳がはっと見開かれた。 思いつめて顔で、俺の分身を見つめる。 流石に恥ずかしくなってきた瞬間、衝撃が来た。 「なっ、ちょっ……シエスタっ」 シエスタが下から上に丹念に俺を舐め上げていた。 「こ、これなら……痛くないですよね?」 シエスタが始めてなのはよく分かった。 よっぽどデリケートなものだと思われているみたいだった。 下から始まったシエスタの愛撫が、先端に達した時に俺の身体が過度に反応した。 「ご、ごめんなさい」 シエスタが慌てて離れた。 ……また、寸止めですか…… 「ちがう……シエスタ……」 自分の気持ち良い所を説明するのは、ある意味裸を見せるより恥ずかしい。 「その……先の方気持ち良いんだ」 驚いた顔で、一番敏感な所を凝視する。 シエスタは試すように、人差し指でソコをなぞった。 ビクビクと反応する俺を見て、ほっとした様に呟く。 「気持ち良かったんですね……よかったぁ……」 納得してくれて良かった、そう思っている間に、シエスタはもう一度股間に顔を沈めた。 執拗に先だけ舐め始める。 「ちょっ、シエスタっっっ」 他の所には一切触らず、先だけ舐め続ける…… (気持ち良いけど、これはこれで辛いぃぃぃぃぃ) 快感は大きくなるが、この刺激だけで逝くのは大変そうだった。 「ちょ、ストップ、シエスタ、待って」 単語でしか喋れない俺だったが、シエスタは俺の声に従った。 「だ、駄目……でしたか?」 ……捨てられた子犬のような目でシエスタが俺を見つめる。 逆です……気持ち良いのは良いんです……恥ずかしくて言えない。 「ほら、その……そこ、汚いし」 そんな言葉でお茶を濁そうとするが、 「サイトさんなら、良いんです……どこだって……いいです」 かえって興奮してしまう。 「なんだってします……何されても良いんです……サイトさん」 シエスタが俺の手を胸に当てる。 柔らかい……そして……いつもより熱かった。 「ドキドキしてるんです……分かりますか?」 分からなかった、多分俺の心拍数も負けてないから。 「ここも……です……」 もう片方の手が濡れた感触に触れた瞬間、俺は理性を手放し始めた。

601 名前:4/4[sage] 投稿日:2006/12/05(火) 03:31:24 ID:EDJ2FNmW サイトさんに触れているだけで、恥ずかしいくらいグッショリと濡れていた。 隠したかった……でも…… (知って欲しい) サイトさんにわたしの全てを見て欲しい、知って欲しい。 そして…… (身体も、心も……全部サイトさんのモノに成りたい) そう思った瞬間、サイトの手を誰にも見せた事の無い所に導いていた。 驚いた顔を見た瞬間、羞恥と後悔が押し寄せる。 (き、嫌われたらどうしよう? ……えっちな娘って思われたら……どうしよう? ) 今更だった。 胸の中が恐怖で一杯に成る前に、サイトの手が動き出した。 ゆっくりと上下に動き、何かを……探していた。 サイトが自分から触ってくる、その事だけでシエスタの理性は解けかけていた。 もどかしげにシエスタを弄るサイトの手が、何かを見つけて止まる。 (あ……) 見つけたのは入り口。 指で入念に場所を確認した後、シエスタはベットに引き倒された。 (……いよいよ……です……か? ) さっきまで舐めていたモノが、自分にあてがわれる。 それだけで気持ちよかった。 でも…… (サイトさんは……これから……なんですよね? ) 自分の味わった快感をサイトさんに返したかった。 もっと気持ちよくなって欲しかった。 入り口で手こずっていたサイトが、丁度良い角度を見つける。 ……何度も驚かされるように来た話を思い出す。 痛いって、幸せだって、色々な事を聞かされていた。 ちっと自分の肉が裂かれる感触と共に、痛みが……そして。 (サイトさんが……来てくれた……) サイトの感触が、シエスタの中を満たす。 痛みに耐えながら、サイトを抱きしめる。 「こ、これっ……」 奥まで差し込んだサイトが、苦しげに息を吐くのが怖い。 (ど、どこか……変ですか?気持ち悪いですか?痛いですか?) 痛みとは別に、涙が出そうになる。 「ご、ごめん、シエスタ……」 祈るように、サイトの言葉を待つ。 「気持ちよくて……止まらない……だめ……これ……おかしくなりそう」 胸の奥が安堵で満たされる。 サイトを迎えた幸せを、やっと心の底から感じる。 「……うれしい……サイトさん」 何かに耐えるサイトの唇を奪う。 「ちょ……だめっ、シエスタ……今なんかしたら……」 荒い息をついたサイトが苦しそうだった。 (どうなるんですか? 何もしない方が良いんですか? ) 「いっちまうっ、もっと……ゆっくり……」 サイトが動ける範囲で動こうとしていた……快感を感じるために。 (でも……) 「何度でも……いいんですから……サイトさんの好きにしてくださいね?」 そういった瞬間、サイトがもう一度奥まで押し入る。 痛かった。 (でも……幸せ) 自分の奥に熱い何かが広がる感触がして、サイトがゆっくりともたれ掛ってきた。

30 名前:1/11[sage] 投稿日:2006/12/08(金) 02:14:53 ID:7bzMhz3E 俺の目の前にはルイズの頭が覆いかぶさっていた。 柔らかい髪をそっと触りながら、俺の方に抱き寄せる。 キスすると見せかけて近づけた唇を、そのまま首筋に当てる。 自分の頭と反対の方に手を回し、ルイズの頭を固定する。 キスを期待していたルイズは、不満気に俺を抱きしめた。 (そろそろ……か……) サイトの期待通りズボンが引っ張られ、大きくなったモノが空気に晒される。 シエスタだ…… あれ以来じゃれ合うときには必ずシエスタに抜いてもらう。 もちろん、ルイズに気付かれない様に。 もうすぐ……そう考えた瞬間、暖かいものが……シエスタの口がサイトを包み込む。 声が漏れないように、ルイズの首を舐め上げる。 サイトを独り占めしている……そう思っているルイズがサイトに身を任せる。 自分は動かずに、サイトの愛撫のみを受ける……好都合な事に。 シエスタはサイトの先端のみを咥えたまま、舌先でカリまでを執拗に舐める。 快感のために荒くなる息を抑えながら、ルイズの胸を摘む。 一瞬ルイズが息を呑むが、これ位で声が出ないことは知り尽くしていた。 全身の神経が股間に集中するなか、シエスタは飲み込む位置をゆっくりと進める。 シエスタの与える快感から逃れようと、ルイズの愛撫に没頭する…… 没頭しようとしていた。 不可能だった。 何度もの練習の末、シエスタは俺を根元まで飲み込む事が出来るようになった。 うねる様な暖かい感触が、全体を包み込む。 シエスタの苦しげな息が、俺をさらに興奮させる。 喉の奥で俺を締め付けながら、舌全体で裏筋をなぞる。 (やばい……) 次に来る行動は分かっていた。 薄目を開けてルイズの唇を捜し、慌てて吸い付く。 うれしげにルイズが喉を鳴らす。 激しく情熱的に……サイトに求められた……その喜びの為に。 シエスタの口が、今度は俺を吐き出していく。 音を立てないために緩慢な動きで。 ただし……強く吸い上げながら。 一瞬でも長く楽しむために、ルイズの唇を貪る。 狂ったように吸い上げる俺に舌を任せる。 一番気持ちいいところでシエスタの口が止まる。 一息ついて、ルイズの唇を楽しむ。 またしばらく、口の中で舌におもちゃにされる。 その間も俺を高めるために、シエスタの手は俺の袋を撫で擦る。 いつ逝ってもおかしくないそんな状態のまま、限界点でシエスタに弄ばれる。 シエスタの頭を掴んで、無理やり動かしたい衝動に駆られる。 ルイズが居なければ……最近はそんなことすら考えてしまう。 シエスタがまた俺を責め始める、俺もまたルイズに逃れようとするが…… 俺が果てる場所を調整したらしいシエスタは、喉の奥で熱いモノを受け止める。 大量の精を嚥下する音が、自分の身体越しに聞こえる。 心地よい快感に脱力しながら、惰性でルイズを責める。 毎日シエスタを可愛がっている成果で、勢い良くルイズが登りつめる。 シエスタはその間、丁寧に俺を舌で清める。 ツボを知り尽くした動きに、俺はまた硬くするがあっさりとズボン仕舞い込まれる。 (後で……) こんなにあっさりと止めたことを、シエスタに詫びさせることに決定。 シエスタと二人きりになるのが、とても楽しみだ…… (さっさと終わらせるか……) シエスタに目で合図する、音もなくルイズの背後に回りこむと、俺の手助けを始める。 ルイズが……声を出すまで…… いや、声が枯れるまで絶叫するのに、そんなに時間は掛からなかった。

31 名前:2/11[sage] 投稿日:2006/12/08(金) 02:15:28 ID:7bzMhz3E ここしばらく、ルイズは毎日ご機嫌だった。 「もーサイトったら、急に情熱的になるし……最近上手よねっ?」 浮かれた様子のまま、唯一この話題で盛り上がれる相手シエスタに話しかける。 「……そうです……ね」 弱々しく微笑みながら答えるシエスタに、ルイズの胸は罪悪感で一杯になる。 サイトの愛撫が自分に集中していると言うことは……その答えがその表情だと、そう思った。 「ご、ごめん……シエスタ」 浮かれていた自分が恥ずかしくなって、しょんぼりと項垂れる。 慌てた様子のシエスタが、フォローに入るくらい落ち込んで見えたみたい。 「そんな、わたしも……そのっ、ちゃんと触ってもらいましたし……上手です……」 段々小さくなりながらも、わたしの問いに生真面目に答えたシエスタが何かに耐えるように、わたしを強く抱きしめる。 「ミス・ヴァリエール……可愛いから、つい集中しちゃうんですよ」 (シエスタの胸の中で聞いても……あんまり、説得力無いわねー) こんなに気持ちいいんだもん、サイトがおっぱい好きなのよく分かるな…… 自分の胸を見て切ない気持ちになる。 「ミス・ヴァリエール?」 自分の胸に手を当てながら、落ち込んでいるわたしに、シエスタが心配そうに声を掛ける。 「サイト……大きいほうが好きよね……わたし……そのうち、嫌われるかも……」 三人で眠るようになってから、ずっと感じていた不安。 だって、シエスタは可愛くて、優しくて……胸だって…… 「そ、そんなことありませんっ」 びっくりするほど強く、シエスタが反応した。 わたしを優しく抱きしめていた手に、痛い位力がこもった。 「サイトさんは……いつも、いつだってミス・ヴァリエールを大切に……」 わたしの頬が何かに濡れる……涙? 慌てて見上げると、シエスタは泣いていた。 「ご、ごめんなさい、シエスタ」 今度はわたしがシエスタを抱きしめる……胸はないけど。 「シエスタは素敵だから、サイト……きっとシエスタの事も……ね?」 ご主人様も大事にしてくれるし……ちょっと位シエスタに貸してあげる。 シエスタは何かに怯えるように、わたしの胸にすがりつく。 わたしがサイトに嫌われるのが怖いように、きっとシエスタもそれがとても怖い。 不安に成っている時は、考えがどんどん悪い方に行く。 わたしはとてもよく知っていて、死のうとまでした事があった。 それを止めて、またサイトに会わせてくれたのは…… あの時のお返しが、少しでも出来ればいいのに。 そう思ってシエスタが泣き止むまで、抱きしめてあげる。 随分時間が経って、やっと少し落ち着いたシエスタにお茶をいれてあげる。 ちょっと失敗気味だけど…… 「はい、シエスタ」 わたしが淹れたお茶を、驚いたように見つめる。 「失礼じゃないかしら?」 怒った様に詰め寄って、やっとシエスタが受け取ってくれる。 恐る恐る口をつけたシエスタが、やっと一言もらす。 「……美味しいです」 わたしも自分の分に口をつける……苦い。 「やっぱり、シエスタが淹れた方が美味しいわねー」 「でも……暖かいです」 「お湯で淹れたんだから、当たり前じゃない?」 変なシエスタ。 飲み終わったシエスタからカップを取り上げる。 「あ、わたしがっ」 慌てて立ち上がろうとするシエスタを押さえて、テーブルまで運ぶ。 「落ち込んでる時くらい……甘えてくれた方が嬉しいわよ?シエスタ」 そんな一言だけで、また泣きそうになるシエスタが可愛い。 「困ったことが有ったら、相談しなさいシエスタ……」 (その方が嬉しいじゃない) 声に成らなかったけど、伝わってるよね? 「あ、でもサイトのことは別よ?フェアに行きましょうね?」

32 名前:3/11[sage] 投稿日:2006/12/08(金) 02:15:59 ID:7bzMhz3E ミス・ヴァリエールに言えない。 『わたしサイトさんに、ほとんど毎日抱かれています』 優しいこの方を、毎日毎日笑顔で騙しながら…… あれ以来サイトさんは暇さえ有ればわたしを呼び出す。 ミス・ヴァリエールに悟られるないように、細心の注意で。 泣きながら、ずっとそう言いたかった。 慰めてくれる優しさが辛かった。 純粋な眼差しが痛かった。 優しい言葉がわたしを追い詰める。 この甘い地獄のような日々が、私を狂わせる。 毎日毎日身体を求められながら、サイトさんが一番優しく見つめる人を毎日見せ付けられた。 求められる身体は、毎日感度が増していくようで…… どれだけ自分を戒めようと、サイトさんに触れられるだけで容易く快感に溺れた。 多分サイトさんがわたしを求めているのは、身体だけ。 優しいサイトさん、大好きだったサイトさんの穏やかな目は、今私に向けられる事は無い。 「はい、シエスタ」 慣れない手つきでお茶を淹れてくれるこの方を見るとき…… その時だけ昔のサイトさんに戻る。 わたしと二人きりの時のサイトさんは…… 「……美味しいです」 そんな一言だけで、嬉しそうに微笑む。 それだけで周りが華やぐ。 綺麗な綺麗なミス・ヴァリエール。 絶望に凍った、わたしの心に暖かい何かが注がれる。 「……暖かいです」 サイトさんがこの方を好きな理由がとてもよく分かる。 意地っ張りだけど、優しくて。 素直になれないけれど、寂しがり屋で。 ずっと側に居て欲しい、そんな人。 デモワタシハ、 「困ったことが有ったら、相談しなさいシエスタ……」 コンナ、ヤサシイコトバヲカケテクレルヒトヲ。 「あ、でもサイトのことは別よ?フェアに行きましょうね?」 ズット、ダマシテイル。 照れながらミス・ヴァリエールが立ち去った部屋で、わたしは一人泣き続ける。 ……本当に一番辛いことは、こんなになっても、サイトさんが好きで。 ミス・ヴァリエールを、騙しても嫌われたくなくて。 いつか破滅すると分かっていても、何も手放したくない……卑怯なわたし。 こんな女じゃ……いつか……貴方に捨てられて当然ですよね……サイトさん。 その日を思うだけで、涙が止まらない。 いくら優しくても……許せる筈無いですよね……ミス・ヴァリエール。 その事を考えるだけで、心が切り裂かれる。 ……本当は、気持ち良い事して欲しいだけじゃないのかしら? ……シエスタ。 自分の身体すら、自分の精神を裏切って苛んだ。

33 名前:4/11[sage] 投稿日:2006/12/08(金) 02:16:35 ID:7bzMhz3E 毎朝起きて最初にルイズを見るのが好きだ。 一生懸命張られる虚勢が、強気の内側の弱気が、全ての仕草が愛らしい。 (あー俺って、ルイズが好きなんだよなぁ……) その事を疑ったことすらない。 でも…… 身体は毎日シエスタを求める。 その最中のサイトは、ルイズを邪魔に思うほど激しく。 シエスタの身体が気持ち良過ぎるのが、いけないんだよなぁ…… そんな勝手な事を思いながら、小さく溜息を吐く。 (最近、妙に抵抗するんだよなぁ……) 結局は抵抗し切れなくて、泣き叫ぶ様を見るのが楽しかった。 ルイズを好きなのは確かなのに、シエスタの身体に魅了されていた。 (俺って気が多いのかな?) 一度シエスタを抱いて以来、欲望に歯止めが効かなくなった。 廊下を歩いていたシエスタを、思わず空き部屋に引きずり込んだことすらあった。 抱くたびに違う反応がサイトを興奮させる。 回数を重ねるほどシエスタは自分に馴染んでいく、初めての時より気持ち良い程だ。 本当に嫌なのか? と、疑いたくなるほど必死に抵抗する時も、始めさえすれば思い通りになった。 (そういえば……今朝のお仕置き、何にするか考えてなかったな……) シエスタに何をするのか、それを考える時が最近何より楽しかった。 (いいよな……シエスタは俺が好きなんだし……) 大好きなルイズと一緒に暮らす。 美味しいシエスタを毎日貪る。 (この世界に来てよかったなぁ……ルイズに感謝だ) 周りの目を気にして、何も考えてないフリをしながら、 内心はシエスタをどう可愛がるか考える。 有るか無しかの笑みを浮かべながら、淫靡な思考に没頭する。 (我慢しなくて良いんだよな、昔そう言われたし) サイトの行動を止めるものは、一切無かった。

34 名前:5/11[sage] 投稿日:2006/12/08(金) 02:17:08 ID:7bzMhz3E シエスタがおかしい。 ルイズは居ても立っても居られなくなる。 (最近、食も細くて……悩み事でも有るみたいなのに……) 相談してくれない事を、恨みに思う。 (頼りないのかなぁ……) 初めての友達だった。 姫さまや、貴族の友達と違う。 最初は眼中に無かった。 その後は生意気な敵だった。 命を助けてくれて、励ましてくれた。 どれもこれも、今まで誰もしてくれなかった事。 サイトとは違う意味で大切だった。 (やつれて……妙に色っぽいけどっ) 憔悴するようになって、前より綺麗になった気すらした。 そういう美容方かとも思ったけど…… 怯えるような目が、眠りながら流す涙が、自分に助けを求めている。 そう思えた。 「さぁ、ちゃきちゃき、真相吐きなさいっ」 半日メイドやクラスメイトに話を聞いて、結局は…… シエスタにあれだけ影響力を持つのは、サイト絡みしかなかった。 「な、なにがだよ?」 部屋の隅に追い込んだサイトが、不思議そうにしていた。 「シエスタ……最近変じゃない?」 そう聞いただけで、サイトの目が反らされる。 ……あやしい (いくらサイトでも、シエスタ苛めるのなら、許さないからっ) 「知ってることが有ったら、素直に吐きなさいっ」 心当たりがありそうなサイトを締め上げる。 「し、しらねーよ」 (白々しい……) 自分が気がついていないシエスタのことを、サイトが気づいているのが悔しい。 そんな自分の内心も分からず、ただ苛立ちをサイトにぶつけた。 「本当に知らないのね?」 サイトは無言で頷いて……言う気がない事だけはよく分かった。 でも、目を合わせ様ともしないサイトが怪しいのは確かだった。 ……少し考えてから、部屋の隅まで退却。 「……何してるんだ?」 「観察よ」 とりあえずサイトから目を離さないことにした。

35 名前:6/11[sage] 投稿日:2006/12/08(金) 02:17:45 ID:7bzMhz3E あれから、ルイズがどこに行くのにも付いて来た。 (授業はどうした……) イライラとそんな事を思う。 ルイズが張り付いているお陰で、昨日はシエスタが抱けなかった。 一日しなかっただけで、欲求が募った。 (あーしてなかった頃が信じられないな……) 大人しくどこまでも着いてくるルイズを眺める…… (あーもう、押し倒しちまおーか……) 一瞬そんな事が頭をよぎる…… (……嫌がるだろうしなぁ……嫌われるの怖いし) 好きな子に無理やりなんて、無理か。 小さく溜息をつく。 (まぁ……嫌がらないシエスタと、どうにかして落ち合えば……) そう思いながらも、既に夕方だった。 (今日も抜けないかも……) 激しい焦燥に駆られ、必死で考える……思いついた。 手早く着替えを準備する。 「どこいくの?」 ちょこちょこ近づいてきて、俺の様子を伺うルイズは……可愛かった。 (あーやっぱり、ルイズ最高) そう思いながらも、シエスタを抱くための作戦を開始。 「風呂、一緒に入る気か?」 即座に固まったルイズが真っ赤になりながら逃げ出す。 「あ、それとも覗く気か?」 「まままま待ってるから、早く帰ってきなさいよねっ」 よし 「長風呂だけど、大人しく待ってたらあとで話でもしような」 シエスタのなんてことは一言も言ってないのに、ルイズの顔が輝く。 「うん、待ってるから……」 思い通りの展開に笑いをこらえながら、学園にある温室に向かう。 シエスタが俺付きになってから、部屋に花が絶えた事は無かった。 普段使わないようなものまで磨かれ、必要なものは一声で出てきた。 (いい子だよな、シエスタ) 感じやすいし、素直だし。 料理上手いし、なんでもしてくれるし。 ……歩いている最中にシエスタのことを考えすぎるのは危険だ…… ちょっと前かがみに成りながら、目的の場所に着く。 シエスタは予想通りの場所に居た。 幸せそうに一輪一輪吟味して、花篭に仕舞う。 周りには誰も居なかった……ここでも良いか? 足音を殺して、シエスタの背後に回りこむ。 後ろからいきなり口を塞ぐ、 「んんんっ〜〜〜〜〜〜」 シエスタの恐怖に染まった声を聞きながら、スカートを捲くり上げドロワーズの脱がせる。 長いスカートで俺の姿が見えないシエスタが、必死に暴れている。 夕日に晒されながら踊る、白いお尻に見惚れていると、指先に鋭い痛みが走った。 「やあっっ、サイトさんっ、助けて……」 泣きながら逃げ出そうとするシエスタを呼び止める。 「ん、なに?呼んだ?シエスタ」 振り向いたシエスタが息を呑む。 「ひ、酷いです……サイトさん……」 まー仕方ないか……けど…… 「ほら、シエスタ」 血の滴る指を見せる。 自分が何に噛み付いたか、シエスタは真っ青になった。 「ごめんなさいっ、サイトさんっ……こ、これで……」 綺麗に洗濯されたハンカチで指が丁寧に包まれる。 (面白いことになったな……) 俺の感想はそんなものだった 「それは、それとしてさ……おしおきなんだけど」

36 名前:7/11[sage] 投稿日:2006/12/08(金) 02:18:24 ID:7bzMhz3E (タオル……届けないと……) シエスタは階段の前で立ちつくしていた。 (今なら……大丈夫のはず……) 分かっていても、足が動かなかった。 すれ違う何人かは、動こうとしないシエスタを不審そうに見ていた。 目立つだけ、時間の無駄。 分かってはいても一歩踏み出すのには勇気が要った。 (サイトさんが……待ってる) 結局その事実に、シエスタは意を決する。 足を上げて階段を上がる。 それだけの行動なのに、頭に血が上り何も考えられなくなる。 しばらく上がった所で、階下の方から物音が聞こえる。 「……………っっっ」 慌てて走り出そうとしたが、翻るスカートを見て足早に歩く程度のスピードに切り替える。 緊張のしすぎで荒くなった息を整えながら、一歩一歩前に進む。 スカートに十分な長さがあるのは分かっていた。 たとえ……サイトに取り上げられたドロワーズが無くとも、誰かに見られる心配はない。理性はそう指摘する。 (サイトさん以外に……見られたくない……) 理屈ではなかった。 いつもある下着が無い。 それだけで、裸で廊下を歩かされている気分だった。 (サイトさんの……意地悪) 自分がどうなっても良いサイトに直接そう言われている気がして、涙まで出てきた。 それでも…… (サイトさんと……約束……しましたから……) (届けてくれるの……待ってるって……) 萎えかけた気力を振り絞る。 心をすり減らしながら、三人で暮らす部屋に転がり込む。 「シエスタ?ちょっと……大丈夫?顔赤いよ?」 幸せそうにまどろんでいたルイズが、真っ青になりながら駆け寄る。 (……わたし……心配してもらえる資格なんて……) うわの空でルイズと話す。 付いて来ようとするルイズを、必死に押しとどめる。 何度も何度も説得して、やっと部屋から出ない約束を取り付けた。 (やっと……半分) タオルを持って廊下に出たシエスタは、安堵のあまり廊下にへたりこむ。 (早く……サイトさんに……) そう思った瞬間に気づく。 (あ……この後……) サイトがこんな事をした後に、自分をどうするか……考えるまでも無かった。 身体の奥に火がつく。 (あ……) 自分の奥から溢れたモノが、足を濡らしていた。 (期待するだけで……もう、こんな風になるんだ……わたし) ゆらりと立ち上がったシエスタの頬に涙が伝う。 それでも身体はサイトの指示に従い、前に進む。

37 名前:8/11[sage] 投稿日:2006/12/08(金) 02:18:55 ID:7bzMhz3E 温めの風呂の浸かりながらシエスタを待った。 (すぐには無理だろうけど……) 真っ赤になって嫌がったシエスタも、指先を見せるだけで大人しくなった。 (は・や・く・こ・な・い・か・な・と) その瞬間を楽しみに、風呂の中でサイトは硬くなった分身をシエスタに差し込む事だけを考えていた。 (馴染んだっていうか……柔らかくなったよなぁ) 感じさせるほどに潤い、強い締め付けでサイトを狂わせる。 何度も味わったシエスタの味を思い出すだけで、いくらでも待てた。 (……シエスタが来れば……) ソレ、をゆっくり味わえる。 夕日が沈みきる寸前、シエスタがふらふらと現れた。 「お、おそくなって……ごめんなさい」 シエスタの謝罪も聞かずに、風呂から出る。 「きゃっ」 何度も見たはずなのに、大きくなったオレを見て恥ずかしそうに目をそらした。 「か、風邪……引きますよ……」 持ってきたタオルで、俺を包む。 拭き残しが無い様に、全身に触れるタオルがくすぐったかった。 (こういうのも良いけど……) 無言でスカートを捲り上げる。 弾かれたように目をそらしたシエスタの反応を楽しみながら、目的の場所に触れる。 「濡れてるね、シエスタ……誰かに見られると思った?」 フルフルと左右に首を振るシエスタを、さらに追い詰める。 「見られると思って、興奮したんだ?」 「ち、違いますっ」 シエスタが必死に俺に取りすがった。 「そんな事で興奮したりしませんっ……わたしは……わたしは……サイトさんしか……」(そんな事は知ってるさ) シエスタの反応を十分に楽しんだ後、シエスタを近くの木に掴まらせる。 これから何が起きるのか察したシエスタが黙り込んだ。 スカートを捲り暫くシエスタを鑑賞した後、メイド服を着たままのシエスタに後ろから突き入れる。 「ひっ……あ…………」 立っていられなくなったシエスタの上体を、服の上から胸を掴んで止める。 「いっ……いたいっ……だめ……ひっぱっちゃ……」 強すぎる刺激にシエスタがもがく。 「じゃ、自分でちゃんと立とうな」 俺の言葉を聞いたシエスタが、目の前の木にしがみ付いた。 (準備できたって事だよな?)……勢いよく腰を使う。 「だっ……サイトさんっっっ、つよっ……」 散々待たされた俺は、シエスタの身体に溺れ始めた。 流石に野外で初めてだ。 シエスタは必死に声を殺していた。 (意地でも声が聞きたくなるな) シエスタの一番奥まで差し込み、オレの先を押し付ける。 ビクビク身体は反応しているのに…… (しぶとい……) もう一度勢いよく動こうとした時、 「おや、サイトじゃないか?」 ギーシュ? 流石に焦った俺はシエスタを近くの茂みに突っ込んだ。 「ど、どうした?」 「散歩さ……君は……風呂の最中に催したのか?」 肝心な所を見ていなかったギーシュが、裸で茂みに向かっている俺を見て都合の良い勘違いをしてくれた。 「連れションでもするか?」 (本気にされたら困るけどな) ギーシュといえども、シエスタの身体を見せてやる気は無かった。が、 「ぐあぁぁ」 思わず声が漏れる。 緊張のためか、シエスタの締め付けが増していた。 (……面白い)

38 名前:9/11[sage] 投稿日:2006/12/08(金) 02:19:28 ID:7bzMhz3E サイトさんがミス・ヴァリエールを一番大事にしているのは知っていた……でも…… 「連れションでもするか?」 見られるかもしれない……わたしのこんな姿を……サイトさんは他の人に見られても平気なんだ…… 悲しみと、 イヤイヤイヤイヤ、わたしを見ていいのは……サイトさんだけぇぇぇぇ 恐怖で全身が震えた。 「ぐあぁぁ」 「ど、どうした?サイト?」 サイトさんが吠えていた。 「いや、なんでもないさ」 そう言いながら、ゆっくりとわたしの腰を動かした。 『んっ……んんっ…………あっ』 唇をかみ締めながら、声を殺す。 ここまでされているのに、サイトさんから離れられなかった。 「ギーシュもどうだ?」 (またっっっっ) 涙が溢れそうになった。 「いや、遠慮しておこう」 ミスタ・グラモンの返事を聞きながら、サイトさんがグリグリと円を描くように腰を押し付ける。 『っっっ……も……だ……』 口の中に血の味が広がる。 それでも声が止まりそうに無かった。 それどころか、唇の裂ける痛みさえ甘美に感じ始めた。 (あぁ……もうすぐ……限界ね……シエスタ) 自分の心の一部が、冷静にそんなことを指摘していた。 「そうそう、サイトお前最近騎士隊の訓練サボって何してるんだ?」 (え?) そういえば……最近のサイトさん……暇さえあれば…… 「いや……ちょっとヤル事が有ってな」 嫌な予感に快感が流される。 「副隊長なんだから、もう少し真面目にやりたまえ」 「はいはい、隊長、明日は行くさ」 サイトさんの声がどこか冷たくなる。 それを察したのか、ミスタ・グラモンが大げさに溜息をついた。 「明日だな?待っているからなサイト」 足音が遠ざかっていく…… 慌ててサイトさんに向き直って問い詰める。 「サイトさんっ、騎士隊サボリって……」 まさか…… 「ん〜ほら、ルイズが側に居て、シエスタ抱いてれば幸せなのに、無理しなくてもいいじゃん」 …………サイ……ト……さん? 「先生だって生きてたしさ、この方が楽しいし」 そう言いながらサイトさんが繋がったままの腰をひねる。 「ひっっっっ」 恐怖で凍り付いていた精神が、欲望にあっさり解かされる。 (だ……め……止めない……と……) 涙でぼやけた視界の中、サイトさんの唇が近づいてきて…… 血の味のキスで何も考えられなくなった。

39 名前:10/11[sage] 投稿日:2006/12/08(金) 02:20:00 ID:7bzMhz3E シエスタの中に注ぎ込む。 「はっ……あぁ……」 蕩ける様な瞳で俺を見るシエスタが色っぽい。 うねうねとオレを奥に引き込むように蠕動するシエスタの中が気持ちよくて、オレはまだ硬いままだった。 シエスタの締め付けに酔いながら、繋がったままオレの方を向かせる。 ぐったりと心地良さそうなシエスタは、好きなように動く人形のようだった。 今度は正面から抱き合う。 裂けた唇と血の味のキスに、流石にやり過ぎたかと少しの後悔。 お詫びに優しく胸を揉む。 「やっっ、だめっ……サイトさん……さっきので、わたしもイって……」 ……わがままだなぁ 強めに握りしめると、甘い声が漏れだす。 「なんだ……まだいけるんだ?」 「ひっ」 何かに怯えるようなシエスタの奥を掻き回す。 「やぁぁぁっ、だめっだめだめだめぇぇぇぇ」 おー元気元気。 俺が出したモノも潤滑液にして、さっきまでよりさらに勢い良く動き出す。 「ひぃっっっっ」 必死にもがくシエスタの逃げ場がないように、背中を木に押し付けた。 慌てて後ろを振り向いたシエスタの瞳に絶望が写る…… (これから可愛がるのに……失礼な) 腰を使って木に叩きつけるように、激しく挿入する。 しばらく叫んでいたシエスタが、いきなり脱力したが…… (この前後の中が……) シエスタの感触の中で俺が一番好きな瞬間。 もちろん止まらずに、動き続ける。 「……かっ……は……」 苦しげに開くシエスタの口に、舌を差し込む。 理性の消えたシエスタの目に、欲望が燃え上がる。 心地よい抱き心地のシエスタの身体を、満足するまで貪った…… 「俺……ルイズとシエスタが居れば……それだけで良いや……」 心地よい疲れに浸りながら、あぁ……俺ってなんて幸せなんだろう…… そんな思いで一杯だった。

40 名前:11/11[sage] 投稿日:2006/12/08(金) 02:20:37 ID:7bzMhz3E ぐったりと休むサイトに服を着せる。 身体が冷えすぎないように、多めに持ってきたタオルでサイトを包む。 くつろいだ寝顔が愛しかった。 「俺……ルイズとシエスタが居れば……それだけで良いや……」 嬉しかった……でも…… 『きみたちは、もっと世のため人のため、というものをだね、考えないといけないよ』 そう言ってわたし達を諭した人は…… (もう……いないの……ね?) 変わってしまった…… (いいえ……) 変えてしまった。 それでも…… (嫌いに……なれない) 心がサイトさんから離れようとしない。 身体がサイトさんに従ってしまう。 決して離れられないと、 二人に嫌われない限り何が有ろうとも自分から離れることはないと思っていたけれど。 (わたしが……サイトさんを歪めるのなら……) 自分のせいで好きな人が変わってしまうのなら。 (うん、サイトさんのためなら……) 大好きなサイトさんからも、 大好きなミス・ヴァリエールの側からも。 「さようなら」 小さく囁いて、立ち上がる。 (当てなんて無いけれど……) 声を殺して泣きながら、シエスタはその場を立ち去った。

150 名前:1/10[sage] 投稿日:2006/12/11(月) 02:53:36 ID:NdtmND0T 一睡も出来なかった。 シエスタが帰ってこない。 「サイト、あんた本当に何も知らないの?」 「…………しらね」 何度も何度も聞いたから、サイトの返事も段々短く不機嫌に成ってくる。 (わたしが……ちゃんと話を聞いていたら……) 「ミス・ヴァリエール、サイトさんお風呂で寝ちゃいました」 やる事が有るからと、連れてくる事をわたしに頼んだシエスタ。 あの、シエスタがサイトのことをわたしに頼むなんて…… シエスタの顔が青ざめていたから、無理に寝かしつけてサイトを迎えに行って。 部屋に戻るとシエスタは居なかった。 体調崩したままどこかに向かっている途中に、どこかで倒れていたらどうしよう……。 学園の医務室には誰も運び込まれていない。 警備にも連絡した。 それでも…… (シエスタが……どこにも居ない) もうすぐ太陽が上がる。 いつもならルイズがまだ眠っている時間だ。 (あれ……?) 窓の外にメイド服? 「シエスタっっ!!」 慌てて窓に駆け寄るけど……ちがった…… 少し驚いた顔をして、見知らぬメイドは仕事を続けた。 (シエスタも……いつもこんな時間から起きていたの?) シエスタが来てから何時も部屋は綺麗で、隅々まで掃除が行き届いていた。 シエスタが片付けてくれた所は、必要なものがすぐに見つかった。 「どこ行くんだよ?」 立ち上がったわたしにサイトが声を掛ける。 「シエスタの事……知っている人が居ないか探しに行ってくる」 メイドや学園の従業員は、起き出したみたいだから。 「大丈夫だって、すぐに帰ってくるから」 「なんで、そんな事が分かるのよっ」 何か知っている様子なのに、何一つ私に教えないサイトに苛立っていた。 「なにかしってるんなら、教えなさいよっ」 ……わたしは……気づけなかった『何か』サイトが気づいたのなら…… 悔しいけど教えて欲しかった。 そして、できれば困っているシエスタに手を貸してあげたかった。 「……っっ、しらねーよっ、でも……シエスタが俺から離れられるわけないだろっ」 ……わたしでもシエスタが何か悩んでいるのは分かった。 「行ってくる」 ……サイトも最近おかしかったんだ…… 本当ならもっと心配する、だってサイトもシエスタが好きだから。 シエスタばかり見て、気付かなかった…… 最近サイトも変だった。 優しかったから、気にしなかった。 ううん、嬉しかったから何も考えなかった。 でも……サイトが優しかったのって……わたしだけじゃなかったかしら? 最近サイトのシエスタを見る目が変わっていたことに……やっと。 もう手遅れかもしれない今になって気付いた。

151 名前:2/10[sage] 投稿日:2006/12/11(月) 02:54:09 ID:NdtmND0T 「なにか知っていることが有ったら……思い出したら知らせて欲しいの」 「ありがとう」 「わたしの部屋は……」 手当たり次第にメイド達に声を掛ける。 仕事の手を止めさせる事になったけど、シエスタの事って分かったら皆答えてくれた。 (好かれてるんだ……シエスタ) 胸の奥が少し暖かくなる。 でも……見つからない。 (誰か……しらないかしら) 食堂まで走る…… 「あら、おはよールイズ」 「早いわね、モンモランシー」 あちこち回ったとはいえ、まだ早い時間で人影はまばらだった。 「ちょっとね」 笑いながら答えるモンモランシーに問いかける。 「シエスタ、知らない?」 「……誰?」 「サイトのメイド……」 少し考え込んだモンモランシーだったけど…… 「黒髪の子よね?どうかしたの?」 ……しらないんだ…… 「居なくなったの……」 他の子に聞きに行くために、席を立つ私をモンモランシーが呼び止めた。 「なんで、ルイズが探してるの?」 「え?」 「ルイズにとって、その子は何?」 そんなの……考えるまでもない。 ライバルだけど……とても大切な……命の恩人そして、なにより…… 「大切な……お友達」 「そう……がんばんなさい」 ちょっと笑ったモンモランシーが手を振る。 「うん、ありがと」 「……ルイズっ」 急に呼び止められる。 「なあに、モンモランシー?」 「……顔色悪いわよ?」 そういえば……寝てないし、頭もちょっと重い。 でも…… 「平気……それより……探さなきゃ……」 「あー、その、ほら学園の外にでも出てない限り安全よ」 ……あ 「がががが、学園の外に出てたらどうしよう?」 敷地内なら大量に要る使い魔のせいで、動物寄ってこないけど…… 「あぁぁぁぁ、違うのルイズ、心配させようとしたんじゃなくって」 「熊とか、狼とか、猪とかっ」 「いや、あの、ほら……ねぇ?」 「ドラゴンとか、グリフォンとか、ヴァンパイアとかっ」 一刻の猶予も無かった。 「シエスタ―――無事でいて……」 「ちょ、ルイズっ」 慌てて駆け出すわたしにかけられた、 「学園の側にそんなの居るわけ無いでしょうっ」 なんて言葉にはまったく気付かなかった。

153 名前:3/10[sage] 投稿日:2006/12/11(月) 02:54:41 ID:NdtmND0T 「さようなら……ミス・ヴァリエール」 サイトさんのところに走るミス・ヴァリエールを見て、どこか安心する。 無理やり寝かしつけられたベットから起き上がる。 「……わたしなんか……優しくしてもらう……資格……ない……のに」 『心配してるんじゃないからっ、こんな所で倒れられたら迷惑だからよっ』 わたしの顔色を見て、自分がどれだけ泣きそうな顔になったのか……きっと本人は知らない。 「さて……と」 もうここには居られない。 スカロンおじさまの所も、タルブも……サイトさんもミス・ヴァリエールも知っているし…… 学園の中だって……きっと……見つかる。 「あはは、いくとこ無くなっちゃいました」 サイトさんに会ったら…… 「わたし……逆らえないから……」 誰にも……見つからない所へ……行かないと…… ふらふらと部屋から出て、思いつくままに足を進める。 どこにも行くあてが無いのに、帰る訳にも行かなくて…… どこにも行けないのに、立ち止まれない。 居場所が無いのって……要らない人って言われてるみたい。 ちょっと違いますね…… 居たらいけないんだもの、それどころか……邪魔。 どこをどうやって歩いたのか分からなかった…… 気がついたら塔の上に居た。 「ここ……火の塔?」 サイトさんから逃げるようにして来たのは、ミス・ヴァリエールとの思い出の場所だった。 「……たぶん、ここで始めて分かり合えたから」 側に居るわけには行かないのに……弱った心がミス・ヴァリエールを求めていた。 「あはは、駄目ですねぇ、わたしって」 塔の石垣にもたれ掛って、景色を見る……月明かりで照らされた景色は綺麗だった。 世界はこんなに綺麗なのに……自分は…… 「ここから……落ちたら楽になるんでしょうか?」 魅力的な考え……でも。 「駄目ね……ミス・ヴァリエールが悲しむもの」 そういえば……ここで、神様も始祖も信じないって言ったんだっけ…… 「バチがあたったの……ね」 立っているのも辛くなって、膝を抱えてその場に座り込む。 ミス・ヴァリエールに気付かれるといけないから……届くはずも無いのに、声を殺して泣いた。 夜の風と冷たい石が体温を奪っていく…… (このまま……誰にも見つからないまま……冷たくなってしまえば良いのに)

154 名前:4/10[sage] 投稿日:2006/12/11(月) 02:55:16 ID:NdtmND0T あれから2日……ルイズは一生懸命メイドを探している…… 授業にも出ず、ろくに眠ってもいないみたい。 「ただいま」 自分の部屋に入る。 本当は、誰も居ないはずの部屋に。 「お帰りなさいませ、ミス・モンモランシ」 泣き腫らした目をしたメイドが居た。 「ルイズがまだ探してるわよ」 「……そう……ですか……」 部屋は隅々まで掃除されていて、ずいぶん綺麗になっていた。 「寝てなさいって、言わなかったかしら?」 「このほうが落ち着くので……」 ちいさく口の中で『スイマセン』と謝っているけど…… 毎日毎日眠りもせず、無理に食べさせなければ食事も取らない。 死んだような目でピクリとも動かないか、 気が付いたら部屋の隅で声も立てずに泣いている、この少女が不憫だった。 「まだ何が有ったのか言う気に成らない?」 見つけることが出来たのは幸運だった。 塔の上は、たまに学院の生徒に無理やり手を出されたメイドや、 ホームシックの下級生なんかが泣きに……たまに飛び降りに。 来るから、まめに覗くようにしていた。 ルイズがあれほど心を許すこの子が、どうしてここまで傷ついたのか…… (わたしの周りに悲しみがあるのは許せないって……決めたのに) 無力なわたし。 「ごめんなさい……」 決して何が有ったのか話そうとしないこの子…… 無理に話を聞くのはこの子をさらに悲しませるだけだと思うから…… 「いいわよ、話したくなったら聞くから……ほら、とりあえず食べなさい」 見つけたときはすっかり冷たくなっていたのを魔法で部屋に運び込んで、 付きっ切りで看病した。 意識を取り戻したこの子が、最初に言ったのが…… 『サイトさんにも、ミス・ヴァリエールにも言わないで下さい、お願いですから』 必死にそう頼まれて約束してしまった。 ルイズには悪いけど、約束を優先させていた。 (それに……理由も分からず返したら、もっと傷つきそうで……) ルイズの所に帰ることを、まるで殺されるかのように怯えていた…… 「ねぇ、まさかルイズが貴方に酷い事したの?」 あの子がそんな事するとは思えないけど…… 「ち、違いますっ……」 「じゃ、もうかたっぽ?」 「……ちがいます……わたしが……いけないんです」 さっぱり事情が分からなかったけど…… 「まぁ……好きなだけ居なさい」 正直部屋片付いたり、色々助かるし。 ただし…… 「ちゃんと、食べて、寝て、元気になることっ」 「はい」 わたしの勢いに押されて返事をする……シエスタだっけ? 「ほら、口にした以上はちゃんと食べて、さもないとルイズ連れて来るわよ?」 「えと……たべます」 あら、効果抜群。

156 名前:5/10[sage] 投稿日:2006/12/11(月) 02:55:49 ID:NdtmND0T シエスタが帰ってこねぇ…… なんでだ? 嫌って言ってたけど……いっつも悦んでたくせに…… 「くそっ」 本気で……ルイズとシエスタが居れば何もいらないのに。 「サイト、今日も来ないのか?」 ……ギーシュ 「……いや……行くよ……」 何人か剣で殴り倒したい気分だった。 「そうか……よかったなぁ、うん」 何も知らないギーシュが喜んでいた。 「そういえば、君は探さないのか?ルイズが探してる……メイドの」 「シエスタ」 「そうそう、そのシエスタ」 うるさい……お前にシエスタの事を語られたくねーよ。 「故郷にでも帰ったのかい?」 「いや……タルブには帰ってないみたいだ」 居なくなったその日に、ルイズが使いを走らせていたし…… ジェシカやスカロンに頭を下げて……あのルイズが頭を下げて、 見つけたら連絡が欲しいと、そう頼んでいた。 (どこに行ったんだよ……) そんなに……逃げ出すほど……俺が…… シエスタが居なくなってから、ルイズは俺に話しかけることもしなくなった。 そもそも部屋にもほとんど戻らない、シエスタを探し続けていた。 (いらつく……) ヴェストリの広場に出ると、騎士隊のメンバーが俺を見てざわめいた。 (そんなに珍しいかよ……) 訓練用の木剣を握る。 あれ?ま、いいか。 「誰か、相手してくれよ……」 一斉にみんな目をそらす……ちっ。 「何人かまとめてで良いから……鈍ってるだろうから、ちょっと動きたいんだ」 何人か乗ってきた奴らを見る……悪いが……憂さを晴らさせてもらう。 「では、僕が合図しよう……いいか?サイト」 「あぁ、任せる」 木剣を握りしめながら、合図を待ち…… 合図の有った瞬間……きり……かかる? 剣を握っているのに……なんだこの鈍さは? 数人に囲まれ、あっという間に一本取られる。 取った方も、俺も呆然としていた。 「駄目だね、相棒……」 俺の代わりに騎士隊の訓練を見ていたデルフが、悲しげに話しかけてきた。 「な……なんでだ?」 何か知っている様子のデルフに問いかける。 左手にはルーンが以前と変わらず刻まれているのに…… 「相棒……何が有ったのか知らねーが……心が凍っちまってる……」 (心……が?) 「相棒、おめーは心が震えねーと……」 (ガンダールヴの力が……消え……た?) 「サイト、大丈夫なのか?」 心配げなギーシュや騎士隊のメンバーの声も…… 今の俺には届かない。

157 名前:6/10[sage] 投稿日:2006/12/11(月) 02:56:20 ID:NdtmND0T 「サイトが騎士隊の訓練に出てたわよ」 毎日そのことを必ず聞いてくるこの子に、やっと伝えられた。 「ほ、本当ですか?」 「嘘ついてどうするのよ」 この子の心の底からの笑顔を……始めてみたかもしれない。 「ちょっと、調子は悪かったみたいだけどね」 「……え?か、身体の調子でも?大丈夫なんですかっ?」 自分で見に行けば良いのに。 「体調は普段どおりみたいだったけどね」 それよりも…… 「ルイズが倒れたわよ」 喜びに輝いていた顔が、あっさり真っ青になった。 「ミ、ミス・ヴァリエールが?ご、ご無事なんですかっ?」 ぐ……この子……力強いわね。 肩をつかまれてガクガクと揺らされながら答える。 「医務室に運び込まれて、今は魔法薬で無理やり眠らされてるわ」 安心したように力を抜くけど…… 「魔法薬で無理に眠らせるのは、身体に良くないのよ?」 「だ、だったらっ」 「起きたらあの子すぐに、あなたを探しに行くのよっ!!」 ぼろぼろになっても、まだこの子を探すために動こうとしたから…… 先生が止むを得ず魔法薬を使った。 この子もルイズも忘れているみたいだけど。 「わたしだって、ルイズの友達よ、心配してる」 その場に崩れ落ちたシエスタに声を掛ける。 「話なさい、何が有ったのか。わたしも手伝うから」 今日はもう引かない、ルイズが倒れたと聞いたときそう決めた。 「……はい、お話します……でも……」 「えぇ、誰にも言わないわよ」 うそ、必要なら……憎まれても、嫌われても、悲しみを止めるためにソレを使う。

158 名前:7/10[sage] 投稿日:2006/12/11(月) 02:56:57 ID:NdtmND0T 長い話が終わった…… 一言喋り始めると、歯止めが利かなくなったみたいに喋り続けた。 今はわたしの腕の中で、ただ泣き続けていた。 (あんの……使い魔ぁぁぁ) 『サイトさんは悪くないんです……わたしが……』 『ほ、本当に嫌なら……もっと抵抗すればよかったけどっ…… わたしが……わたしが、溺れちゃったからっ』 繰り返し繰り返し『サイトさん』を庇うこの子…… ぽんぽん頭を撫でてあげると、泣く勢いが増した気がした。 「おもいっきり泣きなさいね?」 ほんの数日だけど、一緒に暮らして……いつも何かに耐えるように泣いていたこの子が、わたしも少し大切になっていた。 なにより…… (わたしの目の前で悲しんでいる) 助けたかった。 『ミス・ヴァリエールを……裏切ってしまった』 『嘘をついて……優しいあの人はそれでも……』 わたしの友達のために泣く子を、放っておくつもりは無かった。 「今日はゆっくり休みなさい」 わたしのベットにシエスタを横たえる。 泣き疲れて眠るまで側に居る。 暫くして寝息を立て始めると、そっと机に向かって音を立てないように幾つかの品物を取り出す。 口の中で呪文を唱えて、気分の落ち着く香に火を付けて香炉に入れる。 昨日までよりは、少しマシになった寝顔を眺める。 さて…… 悲しみを癒すために、できる事を始めよう。

159 名前:8/10[sage] 投稿日:2006/12/11(月) 02:57:28 ID:NdtmND0T ガンダールヴでも無くなって…… 部屋に帰ると、ルイズが倒れたって連絡が来て…… 「……あーあ、なーにやってんだかなぁ……俺」 「いいのか?相棒、嬢ちゃん所行かなくて」 デルフを鞘にも入れずに部屋まで引きずってきていた。 「いいんだよ……」 どうせ……行っても…… シエスタも、ルイズも居ないこの部屋は広くて…… 「なぁ、なんか喋ってくれよ」 デルフの声でも聞かないと、気が狂いそうだった。 寂しくて、寂しくて、寂しくて。 「なぁ、相棒……何が有ったんだ?」 やっと掛けられるデルフの声に安心する。 「ん〜そうだなぁ……お前になら……良いよな……話して」 「おれさ、シエスタと寝た」 ルイズが倒れている時に、最低の話題……でも多分最低の俺には相応しい。 「気持ちよくてさ、シエスタも悦んでくれて、毎日シテた」 デルフはピクリとも動かずに、声も出さずに、まるでただの剣みたいに聞いていてくれる。 話を聞いてくれて、口も堅くて、一緒に考えてくれる。 理想的な相談相手だ。 「シエスタ、最近いっつも嫌がったりもしたけど、最後には気持ち良くなってくれてたし」 「シエスタとルイズさえ……二人さえ居れば何もいらないのに……」 「なぁ、相棒おめー、どっちが好きなんだ?」 「……ルイズ」 ルイズが好きなのと、身体がシエスタを欲しがるのは別。 そう思っていた。 「んじゃ、いーじゃねーか、居なくても」 「っっっんっでだよっ」 シエスタが要らない、ふざけた事を言うデルフに真面目に腹が立った。 「どっち道いつか選ばないと駄目なんだろ?機会が来たと思って、嬢ちゃんと一緒になっちまえよ」 ……ルイズと? 「嬢ちゃんと寝ればいいんじゃねーの?メイドの事忘れて」 ……シエスタを、忘れる? ダメダ 「嫌だ、そんなのっ……ふざけるなよ、デルフ」 「ふざけてんのはそっちだろうがっっ!!相棒!!」 デルフが突然大声を上げた。 「どっちも大事?どっちも傷つけたくない?そりゃー結構なこって、んで?結果は? 一人行方不明、一人意識不明?なにやってんだよ!」 返す言葉も無かった。 「せめて、どっちかだけでも大切にしろよ、二人が居れば何も要らないって、 騎士隊までほっぽってたんだろ?残った方だけでも守れよ、相棒!!」 デルフが正しい……頭では分かっていた。 「いやだ……そんなのいやだっ」 「駄々っ子かよ、相棒」 調子のいい事を言っているのは分かっている。 でも、シエスタを居なかったことには出来ない。 忘れることも…… 「シエスタも……ルイズも……両方大事だ」 声に出してみると、妙に納得できた。 (あー二股男か……サイテー俺) 認めると何もかも楽になった。

160 名前:9/10[sage] 投稿日:2006/12/11(月) 02:58:00 ID:NdtmND0T 相棒がやっと何かを決めたようだ。 なら、俺は手助けするだけだーね。 「メイドもそうだったんだろ」 不思議そうな顔をして俺を見る相棒に、考える事しか出来ない俺が、 今まで見る事しか出来なかったことを伝える。 「メイドも、相棒と嬢ちゃんが大事で」 思い出すだけで、涙目になるくらい大事なんだなぁ。 「嬢ちゃんも、相棒もメイドも大事なんだろ」 「じゃ、じゃあ三人でずっと一緒に居れば……」 本気で言ってやがるなぁ…… 虚無の嬢ちゃんと、ガンダールヴの相棒を世界が放っておくわけねーだろう。 まぁ、今回の問題はそれじゃねぇ。 「相棒……嬢ちゃんが友達要らないって言ったらどうする?」 「へ?」 「メイドが、相棒が居るだけで良いからって回りに挨拶もしなくなったら?」 「それって……何か関係有るのかよ?」 「生きているだけで、人同士は関わり続けるだろー、相棒だって……」 俺が騎士隊を見ている間、相棒の事を何人に聞かれた事か。 「本当にそうするわけにはいかねーよな?」 そうし始めていた自分を省みている相棒の顔が面白い。 (やっぱり今回の相棒は当たりだーね) 「……え?……じゃあ……シエスタ、俺の事を……」 相棒の顔が、サッと青ざめた。 「俺っ、居なくなる寸前、 『俺……ルイズとシエスタが居れば……それだけで良いや……』 って言った……」 おー、当たったか。 「相棒の事心配してたんだろ、メイドも」 「それになー、相棒」 男がぼろぼろ、泣くなよー 「嬢ちゃんたまに、騎士隊の練習に相棒が顔出してないか見に来てたぜ?」 「ル、ルイズが?」 「もてもてだーね色男、騎士隊の連中だって毎日相棒の話してたぜ」 世界がどれだけ自分を大切に思ってくれているのか…… 相棒は少しそれを知るべきだーねぇ 「でも……俺……二股……」 「どっちも諦められないなら、両方に相談してみろよ、相棒」 おりゃーあんまり、心配してねーんだけどな。 結構ちゃんとまとまりそーだぁね。 「それよりなぁ相棒、優しくしてくれた人たちに、ちったぁ恩返しとけよ?」 嬢ちゃんもメイドも……どれだけ相棒を想っているのか。 「愛想付かされる前になぁ」 暫く悩みぬいた相棒が立ち上がった。 「俺……まだ何やって良いのかわかんねーけど……さ」 俺を鞘に入れながら、悩んだ結果を伝えてくれる。 「ルイズのところに行って出来る事が無かったら、シエスタ探すよ。 ルイズの代わりに……シエスタ俺に会ってくれるかわかんないけど」 鞘の中で俺の意識が閉じる。 俺を使う戦いでなくとも、俺は相棒の武器であれたことを誇りに思う。

161 名前:10/10[sage] 投稿日:2006/12/11(月) 02:58:32 ID:NdtmND0T ルイズの枕元に使い魔が居た。 「消えなさい」 睨みつける私を、不思議そうに見ながら遠ざかる。 「どうしたの?モンモランシー」 何もいわずに、使い魔が離れるのを確認する。 足音が十分な距離まで離れてから、ルイズの側に行く。 「体調は大丈夫?ルイズ」 「うん……あのね……サイトがシエスタ探してくれるって……ちょっと休めって……」 嬉しそうに話すルイズには悪いけど…… (当然よ……あのクズ) わたしの感想はそんなところ。 「シエスタの居場所、分かったわよ」 「ほんとっ?」 薬が抜け切っていないのに、立ち上がろうとするルイズを押さえながら聞いた。 「どうして姿を消したのか……分かってる?」 あの子はこれを裏切りって言うだろうけど……どう転んでもルイズは知るべきだった。 「多分……サイトのせい、直接の理由はわたしに気を使って」 この子…… 「分かってたの?」 「ちがうの……分かったの、シエスタがサイトから離れようとする理由なんで、そんなに無いもの」 ルイズも……シエスタも……優しい子達…… それだけにあの使い魔が許せない。 「シエスタ……見つけたときは火の塔の上で死に掛けていたわ」 青くなるルイズに構わず、あの男の事を話す。

193 名前:1/7[sage] 投稿日:2006/12/13(水) 02:47:37 ID:Gf2rKI/H 「で……てって」 もう何も聞きたくない。 不思議と怒りはおきなかった。 ただ……悲しかった。 「シエスタはわたしの部屋に居るから」 モンモランシーはそれだけ言うと静かに部屋から出て行く。 ……モンモランシーもシエスタを隠してたんだ。 シエスタはサイトと…… サイトはずっとそれを黙ってた。 わたしは……どれにも気が付かなかった。 わたしのばか。 考えない事が、見ない事が、どれだけ楽なことだったのか、今更ながらに思い知る。 「ごめんね、シエスタ……」 ずっと……見て、考えて、悩んだに違いない貴方。 死に掛けるまで追い詰めたわたしとサイト…… 許してくれるか分からないけど…… シエスタに謝りたかった。 シエスタとお話がしたかった。 サイトの馬鹿って、一緒に盛り上がりたかった。 (……でも、まだ貴方に会うのが怖いよ……シエスタ) なんて勇気の無い惨めなわたし。

194 名前:2/7[sage] 投稿日:2006/12/13(水) 02:48:09 ID:Gf2rKI/H 「すまん、今日も訓練休む」 いったん騎士隊の所に顔を出した俺を、ギーシュが呼び止めた。 「……見違えたな、サイト。どうしたんだ?」 驚いたように俺を見るギーシュの目に、嘘を言っている様子は無かった。 「?……どっか変か?」 「視線が定まってる、腹を決めたみたいだな」 流石だ……わが心の友よ。 「聞いてくれ、ギーシュ、決めたんだ……俺は……俺は」 『お、とうとう副隊長が……』 『おぉ、どっちが空くんだ?』 勝手なことを呟くギャラリーは無視っ 「二人とも好きだぁぁぁぁ、てか、選べるはずねぇだろぉがぁ」 うおぉぉぉぉぉぉと隊員がざわめく。 「二股と、節操無しと、ゆーじゅーふだんと、いわば言え!! 俺にはどっちも大事なんだよ。 騎士隊もルイズもシエスタも全部取る。 一個も中途半端にはしねぇ、全部に納得してもらう」 皆が勢いに押されて何もいえない中、ギーシュだけが俺を止める。 「えーと、ルイズがそんなの許すはずないだろ?サイト」 「ギーシュ、俺には故郷に伝わる『土下座』が有る、この奥義を使って許さないと、 許さなかった方が悪役に見えるという、究極奥義だ」 見えるだけ、という事実に誰も気付かない。 「お、俺にもそれを教えてくれ」 「すまない、これは誰にも見られるわけには行かないんだ(情けないから)」 悩みすぎたサイトはどこかの線が数本切れていた。 勢いに乗ったまま、シエスタの探索を始めようと…… 「二股」 ぐぁっ。 「節操なし」 ……ダ、ダイレクトに心に響く静かな声……こ、これは…… 「ゆーじゅーふだん」 ぐはぁっ、ひらがなで言うんじゃ無かった…… は、破壊力が……破壊力が…… 「タ、タバサさん……勘弁してください……」 地面に這いつくばったまま、無表情で俺の言葉を繰り返した少女に懇願。 「おぉ、あれが『土下座』確かに何て惨めな……許さざるをえない風格を……」 うるさい、お前ら黙れ。 無表情のまま小首を傾げたタバサの唇がまた動いた。 「二股?」 もー許してーーー

195 名前:3/7[sage] 投稿日:2006/12/13(水) 02:48:41 ID:Gf2rKI/H わたしに何か出来ることないかしら…… ミス・ヴァリエールが倒れた…… わたしの所為だ。 わたしが逃げたから。 わたしが隠れたから。 倒れるまで探してくれたミス・ヴァリエールに申し訳が無かった。 自分が楽になるために、あの人から逃げて…… 楽になった分、ミス・ヴァリエールを苦しめた。 「ごめんなさい。ミス・ヴァリエール……」 あの人を傷付けたくなかったなんて、ただの言い訳。 きっと……わたしが三人で向き合う勇気が無かっただけ。 皆揃っている時がなんて幸せだったんだろう。 それが分かっているのなら、前を見据えるべきだったのに。 今からでも……間に合うのかな? ミス・ヴァリエール、許してくれるかな? そんなはず無いよと、囁くわたしの想像に、まだ自分の勇気では勝てなくて…… (あいたい……なぁ……) 幸せなひと時を思い出しても、そちらに向かう勇気は出なくて。

196 名前:4/7[sage] 投稿日:2006/12/13(水) 02:49:14 ID:Gf2rKI/H 無表情なタバサの淡々とした精神攻撃に屈してしまった…… 「何が?」 そう聞かれただけなのに…… 全部話してしまった…… 隊員達の目が……目が……こえーよ。 『……ひでー』 『いや……それよりうらやましー』 『女の敵だけど、二人共って時点で男の敵だ』 『限りある資源を大切に』 いつのまにーか、皆杖握ってやがる…… 「サイト……質問があるんだが?」 「な、なんだギーシュ」 妙ににこやかなギーシュに違和感を覚えた。 「どうやって死にたい?」 「まてぇぇぇ」 一斉に動き出そうとした瞬間、騎士隊全員が地面に叩きつけられた。 「ま、真上からのエア・ハンマー……」 這いつくばった野郎共の中で一人立つ……タバサ。 「この命は、あなたに捧げた」 騎士隊の全員が見守る中、意味深な台詞と共にタバサの唇が…… 優しく触れるだけのキス。 (うわ……なんか、無性に恥ずかしい) うぉぉぉぉぉぉぉ 地面が揺れた? 「ひっ」 あまりの事に言葉が出なかった。 「血、血の涙?」 ゆらりゆらりと、一人一人立ち上がる男達の目から、赤く染まった涙が流れていた。 「サァァァァイトォォォォォ」 『おぉぉぉおぉぉっぉ』 『ルイズのみならず……タバサまでぇぇぇぇ』 『コロセッコロセッコロセッコロセッ』 (しゃ、洒落になってねぇ) 今にも始まろうとする聖戦を遮るように、タバサの手がサイトを背後から抱きしめる。 「きさまぁぁぁぁぁぁぁ」 一気に膨れ上がる殺意の波動に、辺りが黒く染まって見えた。 「ちょっ、待って……」 全員の手が伸びる寸前、俺とタバサはあっさりと逃れていた。空に。 『まてぇぇぇぇ』 『置いてけぇ、タバサ置いてけぇ』 亡者のような集団を尻目に、屋上に逃れる。 「タ、タバサ……何のまねだ?」 「釣り」 答えはシンプルだったが、意味が今ひとつ分からなかった。

197 名前:5/7[sage] 投稿日:2006/12/13(水) 02:50:12 ID:Gf2rKI/H シエスタに会いに行こう…… その決心がやっと付く。 妙に騒がしい廊下を抜けて、モンモランシーの部屋に着く。

ミス・ヴァリエールに謝ろう。 次に会ったら、『ごめんなさい』をちゃんと言おう。 嫌われるのは怖いけど……

モンモランシーの部屋の前で深呼吸。 (行くわよ……) ドアに手を掛ける。

小さく軋むドアに向かって反射的に頭を下げる。 「お帰りなさいませ、ミス・モンモランシ」 って……あれ?足の位置が……あれ? 恐る恐る顔を上げると……ミス・ヴァリエール!!

「「ごめんなさいっ」」 二人同時に頭を下げる。 ? 「「どうして、あやまる……」」 完全に重なる声に、二人とも最後まで喋れなくなる。 どちらとも無く笑い出し、ぽつぽつとお互いの話を始めた。 「モンモランシーから、話を聞いたわ」 (……ミス・モンモランシのうそつき――――) 「あの……倒れたって……」 (か、かっこ悪いとこ知られてるしっ) 二人で乾いた笑いを交わす。 喋る言葉を捜しながら、 掛ける言葉を選びながら、 二人の胸にあふれるのは、 ((やっぱり、一緒に居ると楽しい)) そんな想いだった。 核心に踏み込まないように、丁寧に話を繋ぐ。 「無茶しちゃ駄目ですよ?」 「だ、だれのせいよっ」 赤くなったルイズをシエスタが抱きしめる。 「わたしのせいですね……ごめんなさい」 はっとしたルイズが慌てて言い募る。 「ちっ、違うのっ、シエスタのせいじゃないっ」 シエスタ一人に押し付けていた、それを反省した所なのに。 小さく唇を噛む。 「いいえ、わたしが悪いんです……もっと……早くに……」 あなたとこうやって、ゆっくり話すべきだった。 ……まだ手遅れじゃないですよね? 「わたしが……もっと、シエスタもサイトも見ればよかったの」 側に居てくれる優しい手を離さないように。 魔法が使えなくても、わたしを優しく包んでくれる。大切な世界。 お互いの想いを重ねながら、段々と踏み込んだ話へ進む。 薄氷を履む思いだったけど……楽しかった。 大切な相手を大切だって自覚して、相手を思いやりながら話すのが幸せだった。 お互いの大切さを確認し終わった頃、結論が出た。 『サイトさん次第だけど、一緒に居たい』 「サイト、探しに行こうか?」 「はい、ミス・ヴァリエール」 硬く繋がれた手が、お互いの距離を確認しているみたいで……くすぐったかった。 「サイトが見つかったぞぉぉぉぉ」 「タバサにまで手ぇ、出しやがって、あの獣!!」 ……へー、そうなの? 力の入りすぎで、お互いの手が痛かった。心の距離はさらに縮まったけれど。

198 名前:6/7[sage] 投稿日:2006/12/13(水) 02:50:48 ID:Gf2rKI/H 屋上で血走った目の男達に…… 「って、数増えてるしぃぃぃぃ」 『ルイズ!ルイズ!ルイズ!ルイズ!ルイズ!』 『メイド!メイド!メイド!メイド!メイド!』 『タバサ!タバサ!タバサ!タバサ!タバサ!』 屋上の入り口から、続々と増え続ける人に戦慄する。 腰が抜けた俺は恐怖のあまり、タバサの腰にしがみついた。 そんな俺の頭に、タバサの手が添えられて…… 「死ぬ時は一緒」 …………えっと 「し、死にたくねぇぇぇぇぇえ」 生徒のみならず、学院の従業員とか……学院長まで居るし。 (死ぬ……殺される、コロサレル) 死を覚悟した時に、聞きなれた声が響いた。 「まちなさいっ!!」 「ルイズっっ!」 地獄に仏……そう思った瞬間不思議なことに、いきなり人の海が割れる。 ……納得した。 ルイズの目が……目が…… 『邪魔したら殺す』 そう書いてあった。 「久しぶりですね、サイトさん」 ……シエスタの目も、優しげなのに…… ひ、光が一切反射してない……まるで闇そのもののような瞳。 「「すてきな、格好ですこと」」 二人の声が見事にハモる。 「へ?」 ……俺は……タバサの細い腰に手を回したままで。 「釣れた……帰る」 あっさりと俺の手が振り払われて…… そーいやタバサ……飛べるんだ……屋上に追い詰められてるのって…… 俺……だけ? 見たくない……見たくないけど…… ルイズに視線を向ける――その杖はなんですか? シエスタをの方を見る――フライパンは厨房で使うものでは? 「あの……コロサナイデ」 震える哀願にルイズはあっさり了解してくれた。 「あたりまえよサイト、そんな楽なことはしないわ、ね?シエスタ♪」 「もちろんです、死んだらそこで終わりですから……サイトさん頑丈ですよね♪」 ……いっそ殺してください。 助けを求めるように、周りを見ると……って 「なんで?いつの間に誰も居なくなってるんだぁぁぁぁぁ」 いつのまにやら屋上に居るのは……三人だけ。 「だぁれも、見てないわねぇ、サイト」 「何か有っても、分かりませんね、サイトさん」 「ひっ……」 鬼が……鬼が居る…… 響き渡るサイトの悲鳴を聞いた学院中の男は、一様に微笑んだという。

199 名前:7/7[sage] 投稿日:2006/12/13(水) 02:51:21 ID:Gf2rKI/H 「浮気禁止」 「ひゃい」 ズタボロになったサイトが部屋の隅に転がされていた。 「イヤって言ったら、止めて下さいね?」 「ひゃい」 ハイ、以外の答えだと、傷が増えるこの問答は、部屋に戻ってから延々続けられた。 「騎士隊より、わたしたち優先よねー」 「ねー、サイトさん」 「えっと……それはっ」 言った瞬間に二人の目が細くなる。 「ひゃい」 こ、怖い…… ルーンが消える……消えてしまう……サイトはそんな恐怖を味わっていた。 「ほら、相棒何とかなるもんだーね」 「納得いかないわ……」 デルフとモンモンまで居るし……回復魔法は助かったけど。 「去勢しない?いい薬有るわよ?」 俺をジロリと睨みながら、モンモンが恐ろしいことを言う。 「そ……それは、駄目です」 「だめよっ、わたしまだっっ……」 シエスタとルイズが反対してくれて……って 「まだ?」 「うるさぁぁぁぁぁい」 「ぐはっ」 「もてもてだーね相棒、まだ何人かいけるんじゃねーか?」 デルフの声にルイズとシエスタが反応する。 「溶かすわよっ」 「……フライパンで曲がるまで叩きますよ?」 シエスタの声が聞こえた瞬間、デルフが黙り込んだ。 「あ、ミス・モンモランシ、そういえば嘘つきましたね?」 「あー、わたし部屋に帰るわね、またねー二人とも〜」 逃げた……シエスタ……つぇー 喋るのが二人だけになった途端に、ルイズがにじり寄ってきた。 「……シエスタに色々シタって?」 ……ヤバイ……ばれてる。 「む、無理やり何て駄目なんだからっ……だから……わわわわ」 わ? 「ちゃんと加減してくださいね?サイトさん……だったら……いくらでも……」 「たしっ……って、シエスタずるいっ」 へ? ……ひょっとして…… 「あの……いいの?」 赤くなったルイズが耳元で囁く。 「わたしにも……しなさい……サイト」 もう片方の耳にはシエスタが…… 「ミス・ヴァリエールと一緒なら……前みたいに苛められませんよ?」 「「ただし」」 へ? 息も付かせぬ早口言葉スタート! 浮気禁止抜け駆け禁止秘密禁止無理矢理禁止……エトセトラ (俺……の……自由……は?) ちょっと泣きそう。 二人が息を整えている……終わった? 「「なら……いつでも……」」 シエスタが俺の手を胸に導いて、それを見たルイズが暫く悩んだ後ぺったりと俺の脚にまたがる。 (あちこちやわらけ―――――) 「自由に」 「していいんですよ?」 頬に近づく二人の唇を感じながら、これから始まる幸せの予感に酔いしれた。

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