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142 名前:1/4[sage] 投稿日:2006/11/09(木) 01:52:04 ID:Z5mBIefQ 「これから訓練だってゆーのに、何したんだよ?、ギーシュ」 「失礼な、君こそ何かしたんじゃないのか?」 「お前と違って、覗きなんかしてねーよ」 「な、なんだとっ、サイト!!」 「冗談だって」 「何でそれを知っている?」 「……ぉぃ」 「いや良いスポットが有ってだな……」 「……ルイズ見るのは禁止な」 「………了解」 ギーシュと二人話しながらオールド・オスマン。 つまり学園長の所に向かう。 ギーシュと俺は授業終了と同時に呼び出された。 学園長の部屋の前まで来て、ギーシュが声を張り上げる。 「水精霊騎士隊、隊長ギーシュ・ド・グラモン。お召しにより参上いたしました。」 そう、唐突な呼び出しは、騎士隊長と副隊長名義だった。 「入れ」 あれ……今の声 ドアを開けて室内に入ると、学園長の他にもう一人…… 「アニエスさん?」 学園のメイドに出されたお茶を、俺の方を見もせずに飲み干す。 「おいっ、サイト、あの美人知り合いか?」 ギーシュが唇をぴくりとも動かさず、聞こえるか聞こえないかの小声で問いかけてくる。 ……器用な奴。 「わたしは近衛騎士隊、隊長アニエスだ、サイトとは前に会っているが、グラモン隊長とは始めましてだな。」 アニエスさんが自分で……って 「こ、近衛っ!」 ギーシュがいきなり緊張する。 「おーい、ギーシュどした?」 「ば、馬鹿っ、サイト……おまえ……な、なれなれしいぞ」 「アニエスさん、何かしたんですか、あ、ギーシュに覗かれたとか?」 ギーシュががちがちに凍り付いていた。 「覗き?」 「なんか、良いポイントがあるとかって聞きましたけど?お説教ですか?」 学園長が割り込んできた。 「……それは興味深い、ぜひっ是非に後で詳しい話をっ」 「あー失礼、オールド・オスマン」 「し、失礼」 冷ややかなアニエスさんの視線で学園長が黙らされる。 「君たちを呼んだのは他でもない、仕事だ水精霊騎士隊。」 何時もと違う厳しい声、張り詰めた目。 それだけで気おされる俺。 「はっ、何でありましょうか、シュヴァリエ・アニエス」 ……そーいやギーシュって従軍経験者だった。 背筋を伸ばし、敬礼して答えた。 「この任務は国の浮沈に関わる、重要な仕事だ。良く考えて返事をしろ」 「はっ」 ……俺の入る隙がない………モグラ、邪魔でしゅか? 「シュヴァリエ・サイトを戦力として借りたい。グラモン隊長にはその期間不在を隠すための欺瞞工作を行ってもらう」 何するんだろ?でもギーシュが裏方って嫌がりそうだなぁ 「はっ、了解いたしましたっ」 「おいっ、待てギーシュ俺のへんじはぁぁぁぁ?」 戦力って、動くの俺じゃねーの? 「サイト、そういうものなんだよ、気にするな。」 あ、いつものアニエスさんだ。

143 名前:2/4[sage] 投稿日:2006/11/09(木) 01:52:36 ID:Z5mBIefQ 「明日の早朝、馬でこっそり迎えに来るからサイトは門の所で待ってろ。」 「いいですけど、何するんですか?」 「3日ほど出かけることになる、ミス・ヴァリエールにも秘密だ、いけるか?」 「同室なんですけど?いや、だから何するんです?」 「大丈夫であります、問題ありません」 ……だからなんでギーシュが返事するんだ? 「では、また明日な」 「はっ、失礼します」 ギーシュに部屋から押し出される。 「ササササササイトォォォォ」 「なんだよ?」 「近衛ってのは偉いんだ、エリートだ怖いんだ」 「………そうなのか?」 「頼むから大人しくしててくれ、それに隊長が返事するのは普通だろ?」 「…そうなの?」 やたらと脱力したギーシュが泣きそうな顔のまま言った。 「……隊長になんかなるんじゃなかった……」 「がんばれ、中間管理職」 「いや、普通は副隊長がそうだろ?」 「しらね」 廊下の隅で泣き始めたギーシュを無視して訓練に向かった。

144 名前:3/4[sage] 投稿日:2006/11/09(木) 01:53:08 ID:Z5mBIefQ 「研修ですか?」 数日分の着替えをシエスタに頼む。 「うん、もうすぐ出かけるから」 「……何勝手に決めてるのよ」 「まぁ、急に決まったんだ」 嘘だけど。 「あやしいわね」 「あやしいですね」 ……ルイズもシエスタも鋭い。 でも重要な任務とか言われたしなぁ 「イ、イヤ。ナンデモナイヨ?」 二人の目が白くなる。 「……女の人絡んでませんよね?」 ひっ、アニエスさんの事ばれてる? 「……しつけが必要かしら、犬?」 ……こ、怖い二人とも怖い。 「サイト〜準備は済んだのか?」 「ギギギギギギーシュ!!」 助かった。 「ルイズ、サイトは借りていくよ」 「人の使い魔を勝手に使わないでもらえるかしら?ギーシュ」 ど、どう切り返すんだ?ギーシュ 「すまないなルイズ。愛しのサイトとの時間を邪魔してしまって」 「なななななんのことかしらぁっぁぁ」 ルイズが慌てている……ちょっと嬉しかったり。 「君がサイトと離れたくないのはよく分かる。しかしだね……」 「べべべべつにっ、サイトと離れたくないわけじゃないわよっ!!」 ……分かってたけど……切ない 「じゃ、借りていくとしよう」 ルイズが固まっている間にあっさり廊下に連れ出される。 「ギーシュ、着替えとか持ってないぞ、俺」 「……後で僕が取りに来てやるさ、今日は僕の部屋で泊まるといい」 「…やだなぁ……」 「就寝前の日課として、女性の着替えの観察を行っているんだが……」 ………… 「しかたないから泊まってやるとするか。」 かなり楽しみだ。

145 名前:4/4[sage] 投稿日:2006/11/09(木) 01:53:40 ID:Z5mBIefQ まだ日が昇る前、身を切るような寒さに耐えながら、近づいてくる人影を待つ。 「アニエスさん……おはようございます」 やたらと張り切ったギーシュに、一時間前からここで立たされていた。 正直くじけそうだ。 「早いなサイト」 「なんか、ギーシュが張り切って……」 実はギーシュは徹夜でルイズを騙す作戦を練っていた…… 「失敗すると思うけどなぁ……」 「なにがだ?」 「いや、なんでもないです」 アニエスさんが手を伸ばしていた。 「?なんすか」 「お前の馬が使えないからな、ほらそこに足をかけろ」 言われたとおりにして手を取ると、勢いよく引かれる。 「うわっ」 ……アニエスさんの胸に突っ込む 「す、すいません」 「ミス・ヴァリエールじゃ物足りないのか?」 笑いながらそんなことを言われる。 「だ、だから、そんなんじゃないですって」 アニエスさんはもう一度手を伸ばしながら、笑い飛ばす。 「分かっている、お前の馬が使えないから相乗りしようってだけだ、今度はちゃんと乗れよ?」 「先に言って下さい……」 まぁ役得だったけど。 次はちゃんと乗れて、俺とアニエスさんを乗せた馬が走り出す。 ぴったりと密着してて恥ずかしい。 「どこに行くんですか?」 俺の質問も無視してアニエスさんは馬を駆り続けた。 「俺何したらいいんですか?」 「もうすぐ分かるさ」 耳元でアニエスさんの声が………くらくらする。 「わ、分かりました」 ……これ以上喋られると、脳が麻痺しそうだ。暫く馬を走らせていると、遠くに……馬車?が見えた。 疑問系なのはやたらと豪華なのと…… 「ユニコーンですか、あれ?」 「あぁ、よく知っているな」 馬が引いていないからだった。 馬車の前まで来て馬を降りる。 「お前の任務は重要人物の護衛だ、失敗すると国が滅ぶな」 え? 「因みに、護衛対象はな」 「おはようございます、使い魔さん」 「えぇぇぇぇぇぇ姫さまっ?」 馬車から少し眠そうな女王が降りてくる。 「お忍びで数日旅行でな、少人数で最強の護衛としてお前が選ばれたんだ」 「よろしくお願いしますね?」 「なっ、え?うそ?でも任務って」 「女王の護衛は近衛の重要任務だぞ?」 「旅行中はアンって呼んでくださいね?……そのっ……サイト♪」 「はっ、はいっ、姫さまっ……じゃなくて、アン……」 アニエスさんが姫さまをもう一度馬車に乗せて、俺の方に近寄ってくる。 「ちなみにな、サイト」 痛いくらい力任せに肩を抱かれる、 「女王陛下は今日の為に、……不敬な例えだがそれこそ馬車馬のように働いた。」 ……な、何が言いたいんだろう? 「日頃の激務でお疲れなのだ、くつろいで貰いたいものだよな?」 「は、はぁ?」 「ちなみに、目的地は温泉で……混浴だぞ?」 「なぁぁぁぁぁぁぁ、マジデスカァァ!!」 「しっかり仲良くしてくれよ?」

377 名前:1/6[sage] 投稿日:2006/11/15(水) 01:57:10 ID:x53nsIw2 朝起きて手が無意識のうちにサイトを探す。 ……居ない。 「そういえば……出かけてるんだったかしら?」 寝ぼけた頭で部屋を見回す。 「いつお戻りになるんでしょうね?」 シエスタもつまらなそうだ。 サイトのついでに、と朝の支度を最近はシエスタがしてくれるけど…… 「シエスタ〜、髪梳いて」 「わたしはサイトさんのメイドですから、ミス・ヴァリエールのご命令は聞けません」 て成る。 サイトが言うことなら……そもそも言う前に片付ける癖に。 起きぬけのぼーっとした頭でそんなことを考えてると、頭が小さく引っ張られる。 「今日は特別ですよ?」 シエスタが髪に櫛を入れてくれていた。 ちょっと意外。 「寂しいのはお互い様ですから」 ……こういう事を素直に言える様になったら、サイトは……かなぁ? 「寂しくなんて……別に居ても居なくても同じよ」 わたしが喋るとこうなるのが悲しい。 「そうですねー」 喉の奥でくすくす笑いながら、シエスタの手がゆっくり動く。 ………気持ち良いな 「……そのうちサイトに頼んでみようかしら?」 つい思っていたことを喋ってしまう。 シエスタの手がピクリと震えて…… 「これから毎日して差し上げますね?」 痛くないのに力が入っているのが分かる。 こ、こわっ 「そ、そうね、お願いするわね、シエスタ」 ……なんだか、最近シエスタに勝てない気がする。 そんな事をしながら、朝の準備を終える。 「いってらっしゃいませ」 サイトだともっと気楽に優しく送り出すくせに、あえて堅苦しく慇懃に。 「……意地悪」 「何のことでしょうか?ミス・ヴァリエール?」 シエスタは結構裏表があると思う。 サイトの前でも見せるから、陰湿な感じはしないけど。 「いってきまぁ〜す、シ・エ・ス・タ♪」 あえてこんな切り返し。 口を押さえてその場にしゃがみこむシエスタ。 「もうっ、ミス・ヴァリエール何やってるんですかっ」 笑いを堪えるシエスタを見て…… (勝った) ……そんなことを思ってしまう。 「誰かにいつサイトさんが戻られるか、聞いておいて下さいね?」 「分かってる」 少し前まで、『あのメイド』で、今はお友達のシエスタ。 いまだにルイズって呼んでくれないのが寂しいけど。 「いってきます」 「いってらっしゃい、ミス・ヴァリエール」 サイトだけじゃなくて、わたしにも笑ってくれるようになったし。 最近は毎日が楽しい 「後はサイトが居れば良いのに……」 そんな事を……本人には言えない事を呟きながら教室に向かった。

378 名前:2/6[sage] 投稿日:2006/11/15(水) 01:57:53 ID:x53nsIw2 「さ、乗ってくださいな、使い魔さん。あ……サイト」 自分でサイトって呼ぼうと思っていたのに、いきなり失敗。 「え〜〜〜っと姫さま?なんで?」 ……さっきわたくしちゃんと言いましたよね? 「ア・ンです!!」 たっぷり5分ほど悩んでから、ようやく小さく 「アン……いきなり、なんで?」 ……嬉しい。愛称なんて、ウェールズさまも呼んでくださらなかったから。 使い魔さんだけの、わたくしの呼び名。 「……えーっとアン?大丈夫?」 あら、つい物思いに耽ってしまいました。 「そのっ、アニエスが最近忙しいので、気分転換にお忍びでって……」 使い魔さんは 「お……お忍び?」 そんな事を呟きながら、馬車やユニコーンを見つめている。 どうしたのかしら? 「あの……なにか?」 「い、いや良いけどさ……そのっ……久しぶり……」 ……使い魔さんに会うのはスレイプニィルの舞踏会以来…… 最後にお会いした時に…… 「そのっ……オヒサシブリデス」 頭に血が上っているのが分かる。 あ、あの時は周りが暗かったから…… そうっ、夜のせい、夜のせいで大胆に成れたから…… 本当のわたくしは、使い魔さんとお話しするのが恥ずかしくて…… 一度だけ……ルイズに気づく一瞬前のその瞬間だけ、 使い魔さんに抱きしめてもらった体が熱くて…… 「ひ、姫さま?……あの……アン?」 「ひゃんっ」 き、気が付いたら使い魔さんが私の身体に触ってます。 「えっと、あのっ、そのっ」 「い、いや、なんか急に固まったからさ、大丈夫かなーって?」 ……わ、わたくしまた……うぅ…恥ずかしい。 「お、俺温泉とか始めてだ」 気まずい思いをさせないように、使い魔さんから話を振ってくれる。 ……やさしい。 「わ、わたくしも……です」 「どんな所か知ってる?」 アニエスの意地悪ーー 「着くまで秘密って、アニエスが教えてくれませんでした」 知ってたら、使い魔さんに教えて差し上げられたのに。 「あ、学院の方や、騎士隊はいかがですか?」 今度はわたくしから話題を振る。 ……裏を考えなくて良い会話は久しぶりで…… 「あ、毎日充実してるよ、まぁアニエスさんとかから見たらまだまだだろうけど」 「アニエスは厳しいですからね」 サイトさんとお話しするのは楽しい。 ルイズのお手紙に、サイトさんのお話が良く出てきたのが分かります。 ……気に成って、『好きなのですか?』ってお手紙したら、 そんな可能性がいかに少ないか、情報収集よりたっぷり否定したくせに…… 頬を張られた……まだ痛い気がする。 「毎日大変そうですね。」 「いやーそうでも無いっすよ、姫さまが……っと、アンがシエスタ付けてくれましたし」 「……シエスタ?」 …嫌な予感 「ほら、学院内より選びし使用人を〜って奴です。」 「あぁ、お役に立ちましたか?」 「そりゃもう、シエスタって俺がこっちに来た時から優しくしてくれてる……」 ……使い魔さんは楽しそうに話し続けて……わたくしの胸はシクシク痛み始めた。

379 名前:3/6[sage] 投稿日:2006/11/15(水) 01:58:24 ID:x53nsIw2 話せば話すほど姫さまの顔色が悪くなっていった。 「だ、大丈夫ですか?」 「え、えぇ大丈夫です、サイト……その……それで」 全然大丈夫そうに見えなかった。 乗り物酔いかな? 「体調悪いなら、横になりますか?」 魔法でも掛かってるのか、この馬車ほとんど揺れないし、クッションふかふかだし。 横になっても大丈夫そうだ。 「辛いなら無理しない方が良いですよ?」 そう勧めても、フルフルと無言で首を左右に振るだけで…… 沈黙が辛くなり始めた頃に、御者席から話しかけられた。 「あーサイト、こっちに来い」 アニエスさん? 「えーーっと、どう行けばいいんですか?」 そんな事を言いながら、前の方に向かうといきなり手を引っ張られる。 実はドアだった所が開いて、引きずり込まれたようだ。 「よーく聞けサイト」 頭から御者席に突っ込んだ俺の首に、流れるような動作で腕を絡める。 アニエスさんはにこやかに……そのまま腕で首を絞める。 む、胸が……顔にあたるっ……ってソレどころじゃねぇぇぇぇ 「ア、アニエスさんっ、苦しいっ、絞まってる絞まってる」 表情と行動があってません、師匠! 「人生においても重要な教訓だ。」 目の前がチカチカしだした頃にやっと開放される。 肺が酸素を求めて喘いでいた。 アニエスさんは俺を隣に座らせて、正面から見つめる。 ……密かにこの人も美人だから、ドキドキする……節操の無い俺。 「女と話をする時にはな?」 息が荒くて、まだ返事はできないけど…… 聞いている事を伝えるために、首を大きく振る。 「他の女の話をするなっ!!」 アニエスさんの手がいきなり霞んで…… 「ぐはっ」 俺の鳩尾に……って…… 肺の中の空気が全て吐き出される……な、何の修行っすか?コレ 「いきなり刺されるよりはましだろ?勉強になって良かったな」 アニエスさんの言葉を聴きながら……俺の意識は閉じていった。 ………… 頭が何か柔らかいものに包まれている、そんな感じだった。 あまりに心地よくて、感触を堪能するようにグリグリと頭を動かす。 「きゃっ」 ……あれ?姫さまの声? 薄く目を開けると……… 小さな馬車の振動で、ゆらゆら踊るたわわな果実…… 胸? 「へ?」 間抜けな声を上げてしまう 「気がつきましたか?体調を崩されたとか?」 心配そうな姫さまの顔が……って……ここ……姫さまのひざまくらぁぁぁぁ 「なんでも、この旅の為に無理をなさっていたとか……申し訳有りません」 ………無理させたのはアニエスさんです、しかも短期的に。 「その……おわびにっ……あのっ」 姫さまが俺の頭をやさしく撫でてくれる。 うわ……きもちいー 「目的地に着くまで………このままで……」 まじっすか? ゆっくり背中まで降りた姫さまの手が、また頭に…… 「ご迷惑……ですか?」 「そんなことはけっしてぇぇっぇぇ」 結局目的地に着くまで、国でもっとも高貴な枕を……たまに大きく揺れた時にはエアバック付きで……俺は十分堪能した。

380 名前:4/6[sage] 投稿日:2006/11/15(水) 01:58:57 ID:x53nsIw2 「あれ?ギーシュ?」 「ななななな、何でここに居るっ!!」 ??ソレはこっちの台詞 「あんた、研修どうしたのよ?」 「まてぇぇぇぇ、シミュレーションパターン150通りの中に廊下でばったりは無いんだぁぁぁルイズっ!」 何の話よ? 「ま、いいわ、ギーシュが居るって事はサイトも戻ってるのよね?」 ……ギーシュが不自然な……冷や汗?をかいてる。 どゆこと? 「サ、サイトハ」 ……怪しい。 「サイトはどこ?」 「タビニデテイマス・サガサナイデクダサイ」 かくかく喋るギーシュの首元を掴む。 「大人しく喋りなさい」 「ヒミツデス」 ……わたしをなめてるのかしら? サイトに叩き込む時みたいに、足が小さく弧を描く。 「がぁぁっぁぁ、ル、ルイズ……そ、それは淑女らしからぬ……せ、せつな……」 もう一発 「ぐあぁぁぁ、つ、潰れるぅぅぅぅ」 ……まだ?ま、おまけに〜 「って、ルイズ止めなさいって」 モンモランシーがわたしを止める。 なんで? 「使い物にならなくなったら困るでしょーがっ!」 「何の話?」 赤くなって黙り込むモンモランシーを放って、ギーシュに更なる一撃を…… 「ま、まて、待ってくれルイズ」 ……最初からそう言えば…… 「い、言えないんだ」 ……へぇ……小さく動いたわたしの足を見て、焦ったようにギーシュが喋りだした。 「に、任務でっ、詳しいことは言えないんだっ」 ……任務?サイトに? 「詳しく説明しなさい」 「ぼ、僕も詳しいことは聞いてないけど、近衛の隊長が来て……」 ……アニエス>姫さま……抜けがけぇぇぇぇぇ 「どゆことぉぉぉぉ?」 相応の覚悟って……そういう意味かぁぁぁ! 「ひぃっ〜〜」 怯えるギーシュを放ってサイトの行き先を求めて、わたしは走り出した。 タバサにシルフィードで空から……ってシルフィード居ないじゃ無いっ 門番に……美人が迎えに来たってなによぉぉぉぉ 学院中を走り回るわたしの前に、立ちふさがるものは誰も居ない。 というか、目が合うとみんな逃げていった。 太陽が真上に来る頃まで、延々さがし続けても……手がかりが無くて… ぬ、抜かった……学院から連れ出されると、ほとんど打つ手が無い。 ど、どうしよぉ……サイト……姫さまに取られちゃうよ…… 「ミ、ミス・ヴァリエール!!」 あ、シエスタだ……さっき事情だけ話したんだっけ? 「何か分かったの?」 「はいっ!!」 え?うそぉ、わたしまだ何も分かってないのに 「メイド仲間のネットワークでっ、陛下が休暇をとられていると。」 やっぱりかぁぁぁっぁぁあああ、って、地味に凄いわねメイドネットワーク。 「宿も特定しましたっ!!」 「どこっ!?」 すごいっ、シエスタ!! 「ここから馬で半日、温泉宿ですっ!!」 …な、なんですってぇぇぇぇっぇぇ

381 名前:5/6[sage] 投稿日:2006/11/15(水) 01:59:31 ID:x53nsIw2 う、馬じゃ間に合わない……追いつけない、途中で宿取らないと……って 「姫さまと一泊しちゃうじゃないっ!!あのっ、馬鹿犬ぅぅ!!」 スレイプニィルの舞踏会の……あのときのサイトを思い出す。 私に気づかなかったら、 「絶対美味しく頂いてたぁぁぁぁ」 タバサにシルフィードで……って 「さっきいつもの所に居なかったし」 ………他に追いつける手段なんて……… 「ど、どうしましょう……」 泣きそうなシエスタ……私だって泣きそうよ。 いらいらと周りを見渡す……照りつける日差しがまぶしくて……あ 「あったぁぁぁぁ」 駆け出すわたしに、シエスタが一生懸命ついてきていた。 「ミスタ・コルベール!!」 「な、なにかね?」 太陽の象徴、もといっ!!ミスタ・コルベールに詰め寄る。 「オストラント、貸して下さい」 「あの……ミス・ヴァリエール……授業中なのだがね」 丁度その時にチャイムが鳴った……復帰したミスタ・コルベールの授業は何時もみんな真面目に聞いている。 でも、昼前のこの時間だと、流石にチャイムと同時に席を立つ子が多い。 小さく溜息をついたミスタ・コルベールがわたしのほうを見る。 「何に使うのかね?」 「サイトが危ないんです!!」 「ふむ、好きにしたまえ」 ……即答 「って、何か有ったの?」 ミスタ・コルベールの授業のみ皆勤、学年違っても出席の……キュルケだ。 「姫さまが、サイト連れて温泉なのよっ!!」 ミスタ・コルベールがその場で崩れ落ちた。 「そ、そんなことなのかね?」 「わたしにとったら重大事なんですっ」 微妙な表情のミスタ・コルベールを見て、キュルケがここぞとばかりに言い放った。 「そんな事じゃ、貸せないわねー、ヴァリエール」 「あんたに聞いてないわよっ、ツェルプストー」 心のそこから嬉しそうに言い返された 「聞いた方がいいんじゃなくって?ヴァリエール、あれうちの船よ?」 へ? 「うそっ、だって……」 「船籍はゲルマニア、所有はツェルプストーですな、確かに」 ミスタ・コルベールのお墨付き…… うそぉ…… 「お願いしますって、言ったら考えなくも無いわねー」 ……ツ、ツェルプストーに……お、お願い。 い、言えない。 「お、お願いします、ミス・ツェルプストー」 あ、ナイス、シエスタ。 「あら、可愛いメイドさん……でも、あたし、ヴァリエールに言ったの♪」 だめ……か 「さ、ヴァリエール諦めなさい、あれ動かすの大変なのよ?」 しかた……ない……よね? 「ジャンが掛かりきりになっちゃうし、魔法だって要るし」 ごめんなさい……ご先祖様。

382 名前:6/6[sage] 投稿日:2006/11/15(水) 02:00:13 ID:x53nsIw2 「お願いします、ミス・ツェルプストー、オストラントを貸して下さい」 ……え? ヴァリエールがあたしに頭下げてる? 日頃のルイズを知っている、メイドも……ジャンも……固まって… 「どうしても、必要なんです、頭でも何でも下げます……だから、お願いします」 ……このこ……本気だ。 ヴァリエールが必死で頭を下げ……って、 おそるおそる、ジャンを見る。 いやぁぁぁぁぁ、目がっ、目が冷たいっ! 「ミス・ヴァリエール、オストラントを飛ばしましょう」 「ほ、本当ですか?ミスタ・コルベール」 ……あぁぁぁぁ、ヴァリエール泣いてるぅ…… あたし、悪役?今悪役? 「それはそうと……」 ヴァリエールに視線を合わせていたジャンが立ち上がって、あたしを見る ……まだ目が冷たい。 「見損ないました、ミス・ツェルプストー」 ……それだけ言うと、もうこっちを見てもくれない。 部屋の中なのに、身体が急激に寒くなる。 辺りが一斉に暗くなった……そんな気がした。 ……ヴァリエールがジャンに手を引かれて……ジャンに手を引かれてぇぇぇぇ 教室から…… 「ご、ごめんなさぁぁぁぁぁい」 あたしの喉からありったけの声が出る みんなが見ているのも構わず、一生懸命続けた。 「ジャンが困ってると思ったの、動かさない方がいいと思ったの、悪気は無かったからっ」 霞む視界の向こうで、ジャンがこちらに向かってきてくれるのが分かる。 安心のあまり膝から崩れるようにその場に座り込む。 「き、嫌いにならないでぇぇぇぇ、ごめんなさい、ジャン―――」 「わたしに謝る所ではないと思うがね。ミス・ツェルプストー」 「ご、ごめんなさいっ、ヴァリエール」 「い、いいけどっ……凄いわね、ツェルプストー」 ヴァリエールも向かってきていた。 「あんたって、こんな性格だったっけ?」 ……あたしだって知らなかった。 「だって、ジャンって夜這いかけても、手出さないしっ、 いつまで経ってもミス・ツェルプストーだしっ、迷惑そうだしっ、」 胸の奥に溜め込んでいた何か、が次々と吐き出される。 「オストラント作ったら、もうあたし用済みなのよ〜〜 お金出すだけの都合のいい女だったのよ〜〜」 ずーーっと怖かったことを、つい口に出してしまう…… ジャンに……肯定されたら……怖いから言えなかった事。 頭の上に、温かい何かが……ジャンの手? 「本気だから、生徒に手が出せなかったんですがね……」 ……ほん……と? 「疑わせてしまったようで、……すまないね………その……キュルケ」 し、心臓が……壊れそう……さっきまでと違う痛みで……胸が……痛い。 「……丁度いいですし、一緒に温泉旅行でもどうですかな?キュルケ」 返事なんか決まっていた。

511 名前:1/6[sage] 投稿日:2006/11/17(金) 02:47:18 ID:UBugm7o2 ずっと探していた………見つからなかった。 出来る事なら何でもしてあげたかった。 助けられた命に代わりなんて無いから。 「おねーさまー」 …… 「どこにもいないの、行方不明?きゅいきゅい」 最初っからわかってる! そんな事しても仕方ないのに、シルフィードを怒鳴りつけたくなる。 朝からずっと続いている胸騒ぎが気になって…… でも、あの人は見つからなくて……… 何度かルイズを見かけた以上、そんなに遠くにいるとは思えない。 でも……… 「かっこつけて怪我して、動けなくなってるかもー」 背筋が寒くなる。 ……もし、そうだったらどうしよう……… 「探す」 わたしに出来る事は、いつも少なくて。 出来る事を、出来るだけ頑張ろう。 「あ、まってーお姉さま。」 駆け出した私にシルフィードが着いてくる。 「あっち」 「あとでねーお姉さま」 ばらけたほうが効率がいいから、シルフィードに方向を指示。 わたしも、キュルケみたいにお友達が沢山居たら。 ……こんな時頼れるのかな? ちがうね、お友達は頼るために居るんじゃないもの。 きっとこんなことをすぐ考えるから、 わたしのお友達は優しいキュルケと…… キュルケのおかげで知り合った、あの数人だけ。 朝からずっと走り続けて、体が悲鳴を上げていた。 少しだけ……少しだけ頼りたくなる。 キュルケ達にお願いするのは少し怖い。 ……面倒な子って思われたらどうしよう? こんな面倒な奴、もう友達じゃないって思われたら? ……そんな事思うはず無いって、分かっていても信じるのは難しくて。 父さまが亡くなった途端に、わたしのお友達は誰も居なくなったから。 お友達がどれだけ儚い物かを、わたしは他の人より感じているから。 怖くて誰にも頼れなくて、結局いつも一人だった。 頼られるのが嬉しいって、キュルケ達が教えてくれた。 ……………ぁ……… キュルケの……泣き声? この時間のキュルケは……ミスタ・コルベールの授業を受けているはずだけど? ここまで聞こえる距離じゃないし…… 最近のキュルケはとても綺麗で……前からずっと綺麗だけど、ずっとずっと綺麗になっていて。 いつも笑っているのに……心配になった。 わたしが大事なのは、あの人だけじゃないのに。 あの人のことばかり考えて……キュルケの事を大事にしなくなちゃったのかな? 自分自身の浅ましさに胸が痛くなった。 ……深呼吸して気持ちを切り替える。 目を瞑る。 キュルケのことを思い出して、目を開く。 ごめんね。 心の奥で小さく詫びると、キュルケの居るはずの方に向かって走り出した。

512 名前:2/6[sage] 投稿日:2006/11/17(金) 02:48:10 ID:UBugm7o2 ……しまった。ツェルプストーが思いっきりミスタ・コルベールに甘えていた。 「あの……いつ終わるんでしょうか?」 「わたしが聞きたいわよ。」 シエスタと……聞こえるように、ヒソヒソ話すけど…… 「あぁっ、ジャン、離さないでっ」 「……キュルケ…ああキュルケ……ここは教室だよ?」 「何を言っているの?ジャン違うわよ!」 ……ツェルプストーぼけた?色惚け? そんなことを考えている間にも、ツェルプストーはミスタ・コルベールに回していた手にさらに力を込めた。 「ここは貴方の腕の中ですもの!教室なんかよりずっと素敵な、あたしが一番幸せな場所ですわぁ」 「キュルケ……」 ……いつ終わるのかしら? ミスタ・コルベールもあんまり喋らないけど、しっかり抱き返してるし。 「これ終わるまでオストラント飛ばないのよね?」 「……こ、こまりましたねー」 飽きるまでほっとくしかないのかしら? ……昼休みなのに、人だかりできてるし。 皆ニヤニヤしながら眺めて……人が上手くいって何が嬉しいのかしら? 「よかったですねっ、ミス・ツェルプストー」 ……シエスタまで。 付き合ってられない…… 先に出かける準備だけでも…… (よっよく考えたら、サイトと温泉じゃないのっっっ) あんまり時間は無い気がしてきた。 シエスタに気づかれないように、そっと教室の入り口に…… 「きゃっ」 何かがぶつかってくる、軽い? 「ごめん」 タバサだった。 一言だけ謝ったタバサは教室の中を見て…… あ、笑った。 結構可愛いというか、かなり可愛い。 安心したように笑ったタバサはそのまま振り向いて……止まった。 困ったように、恐る恐るわたしを……え?わたし? 緊張したタバサなんて始めてみた気がする。 よく見ると、汗まみれで……これも珍しい。 わたしの前で視線を彷徨わせる。 「……あの人はどこ?」 ……えっと 「サイト?」 「そう」 ……あのひと?あのひとですってぇぇぇぇぇぇ 「何の用なの?」 「ずっと探してた」 だからっ、何の用なのよっ! 「……ぜんっぜん心当たり無いわ」 そっちがそのつもりなら、私も答えない。 うぁ……表情変わってないのに……泣き出しそうな女の子に見える。 はー、わたしももう立派なタバサのお友達よね……仕方ない、教えてあげるとしましょう。 「あ、ミス・ヴァリエール、終わりましたよー。」 シエスタ? 「サイトさんの所には一時間後の出発ですって、オストラント前に集まってくださいってことです」 ……ば、ばか……タイミング……悪すぎ。 シエスタのほうを向いていた視線を、タバサに……って やっぱり表情変わってないのに、怒ってるぅぅぅ こ、怖いっ 「わたしも行くから」 有無を言わせずそれだけ言うと、わたしをちょっと睨んで駆け去った…… 「……シエスタ……間が悪いわよ?」 「?何の話です?」

513 名前:3/6[sage] 投稿日:2006/11/17(金) 02:48:42 ID:UBugm7o2 ……馬車ってスバラシィィィィ そういやシエスタと乗った時も……当たってたな。 今は、はさまれてますがっ。 「きゃっ、お、おかしいですね。こんなに揺れるの初めてです。」 「そ、そうなんですか」 多分アニエスさんが何かしてるんだろうけど。 揺れるたびに顔ごと胸に突っ込む、この素敵シュチュエーション!! 落下先はやわやわふとももー アニエスさんGJ! 「ごめんなさい、座った方がいいですか?」 「そんなっ、滅相も無い」 姫さまは俺がどれだけ幸せに浸ってるか……分かってない? ……ということはっ、今の俺の状態に気づいてない? 「お、落ちないようにつかまって良いですか?」 凄いぞっ、俺!チャレンジャー! 「はい、落ちないようにしっかりつかまってくださいね」 ……すーげー、姫さま状況把握能力ねぇぇぇ 「ではではー」 しっかりとつかまるために、姫さまの細い腰に手を回す。 「ひゃっ、」 「何か?」 声が震えそうなのを隠して、平然と尋ねる。 「い……いえ、何でもありません」 もう片方の手は腰に……… 「はっ……あ……」 視線だけで姫さまの顔見る……真っ赤だった。 つかまっている様に見せかけながら、姫さまのお腹に頭を押し付ける。 うぁ……香水? 甘い、花のような香りが胸を満たす。 思わず深呼吸。 「やぁぁっ、だめっ、そんな所で深呼吸しないでくださいっ」 姫さまの体温が上がっているのが、皮膚で感じられる。 足がもじもじ動いていた。 「すいません、胸がちょっと苦しかったので」 「あ……ごめんなさい、使い魔さん…あ……サイト」 そんな間ももじもじは止まらなかった。 「なんだか恥ずかしかったので……わたくし、おかしいのかしら?」 いたって正常かと。でもなー、手が……気持ちいい。 「この体勢楽なんで、暫くこうしていて良いですか?」 「……は……ぃ……その……好きに……どうぞ」 やたらと呼吸が熱っぽい…… 「姫さまこそ、大丈夫ですか?」 「……アンって……言って下さい」 しまった 「アンも大丈夫なの?」 さっきまでのお礼に、背中をさする。 「ひぁっ、」 ? 「な、なんでもありません、大丈夫ですよ、サイト」 にしては、目が潤んで、全身熱っぽいんだけどなぁ…… 「あーさっきまでのお礼に、俺背中さすります?」 「はふ……んっ、もっと……強くても……いいですよ……」 膝枕してもらったまま、背中をさすると……胸もゆっくり鑑賞できるし。 「っっっはぁ」 「あ、すいません」 たまーにお尻に手が当たったり……(あくまでハプニングを装う) 「……いじわる」 今日は姫さまやたらと色っぽいなー不思議に思っているうちに、 「着いたぞ、サイト」 てことらしい。

514 名前:4/6[sage] 投稿日:2006/11/17(金) 02:49:14 ID:UBugm7o2 「さ、先に降りてください、サイト」 ……使い魔さんの意地悪……わざとなのかしら? 「んじゃ、お先にアン。顔赤いけど大丈夫?」 本当に分かってないのかしら……分かってないのよねきっと。 「はい、少し疲れてしまって。」 本当は……その……足というか……腰に…… 「アニエスを呼んでいただけますか?」 「ん、了解」 元気に馬車から飛び降りる使い魔さん。 うぁ――――ん、ばかぁ、いじわるっ。 「陛下?」 「アニエス……腰が……動きません」 一瞬空気が固まった。 「……その……陛下?」 アニエスがこっちを見つめてるけど、気恥ずかしくて目を逸らす。 「馬車の中で……何を?」 してないもん、まだなにもしてないもんっ、これからだもんっ! むかしむかし、ルイズとケンカしていた頃の様な言葉が、口から飛び出しそうになったけど。 「……まだ……です」 それだけしか言えない。 泣きそうになりながら、うーーってアニエスを睨む。 「……はぁ」 あー溜息ついたっ、近衛なのに、女王に溜息ついたぁぁぁ アニエスがわたくしの背中に手を回す。 一瞬ピクンって反応しちゃう。 ……また呆れた顔で見られた…… 「よっ」 もう片方の手は足に……これって…… 「女王陛下ですが、おひめさま抱っこですねぇ」 アニエスが疲れたように言った。 無性に恥ずかしかった。 「無礼者」 小さく呟く。 「……それは申し訳有りません、陛下」 あら? 「折角ですので、サイトに代わってもらいましょう」 えぇぇぇぇぇぇ 「だめっっっっ」 そんなの、わたくし恥ずかしくて、心臓止まってしまいます。 ……心配しながら、アニエスを見ると…… 笑ってるし。 「まだまだお時間はありますゆえ」 ………今回はアニエスに頼りっぱなしね。 「……えぇ、ルイズに負けません」 ルイズは毎日会えるんですもの、これくらい……。 「今日は引きません。」 最近は自由に使える時間少ないですものっ 「がんばりますね、アニエス」 頼りになる近衛隊長は、苦笑しながら馬車を降りた。

515 名前:5/6[sage] 投稿日:2006/11/17(金) 02:49:45 ID:UBugm7o2 「あっれー、やっぱりサイトくんだー」 見覚えのある、黒髪……と胸。 「ジェシカ?なんで?」 向こうの方にスカロン店長もいるし…… 「ここ、ひいおじいちゃんの発案で作られたらしいんだよー」 くるくると表情を動かしながら、魅惑の妖精の看板娘は笑う。 「なんでも今日す〜〜〜ごいVIPが来るんですって、それで急遽応援ってわけ」 「あれ、店長だよな?」 見間違いだろうか?って思うくらいピクリとも動かなかった。 「うん、わたしは聞いてないんだけど、今日ここにお忍びで来るVIPの事聞いてから、ずーーーっとあんな調子なの。」 ユニコーンに引かせたあんな馬車でどう忍ぶのよー、俺とまったく同じ思いをひそひそ耳打ちされた。 「貴族って、結構馬鹿よねー」 王族なんだけどな。 「サイトくんあの馬車から降りてきたけど、サイトくん相変わらず得体知れないわよね〜」 「いやー、俺はおまけ、本命は……ほら」 お姫さま抱っこで姫さまが降りてくる……なんでだ? 「へー、あれ誰?」 ……あれ? 「有名な貴族?馬車に家紋とか入ってないし、わからないよねー美人だけどさ」 ……結構忍べてるんだ。 「へー女王様と同じ髪だね、大貴族かな?」 本人です。 そっか、俺やルイズほど姫さま側で見るのって…… この世界、写真もTVも無いしなぁ。 聞いてないとわからないんもんなんだなぁ 「いらっしゃいませぇぇぇぇぇ」 聞いてたらしい、スカロン店長はいつもとまったく違う口調で挨拶してるし。 「うわー、あんなパパ見るの初めてだよー」 ジェシカが驚いてる 「あ、そうだサイトくん」 「なに?」 「予約客の仲にサイトくんの名前が有ったから、つてを使ってシエちゃんに連絡とってみたけど……まずかった?」 ……ちょっとまずいかも。 「いや、大丈夫だと思うよ。」 さすがにここまで来れないだろう、ルイズも。 一応任務なのは……本当だし。 馬車で役得はあったけど。 多分この後はきっちり警備して終わりだろう。 「サイト」 アニエスさんが呼んでる…… ジェシカに小さく手を振って挨拶。 ジェシカも手をふりかえしてくれる。 「さて、サイトお前なんできたか覚えてるか?」 「はい、姫さまの……」 いきなり指でおでこを弾かれる。 「やり直し」 ……あー 「アンの護衛ですね」 深々と頷いたアニエスさんは恐ろしい台詞を続けた。 「この後の予定では、陛下は入浴なさる、しっかり護衛しろよ?」 へ? 「その……外で、ですよね?」 「何を言っている?離れてて守れるのか?」 え?え?え? 「ここは混浴だ、問題ない」 うそだぁぁぁぁああああ

516 名前:6/6[sage] 投稿日:2006/11/17(金) 02:50:32 ID:UBugm7o2 飛ぶまで少し掛かったけど…… 「シルフィードより…はやーい」 それこそあっという間に着きそうだった。 「うるさいっ、平面」 ……誰こいつ?って……へいめんですってぇぇぇぇぇ 「なによっ、あんた誰?」 妙になれなれしいし……なんだか知ってる気もするけど……だれ? 「お姉さま、平たいのが苛めるの、こわいよこわいよ、きゅいきゅい」 窓の外をじっと見つめるタバサに……って 「いもうと〜〜〜?」 なにこの、絶望を覚える成長っぷり、こ、これで年下……死にたい。 無反応のタバサに抱きついた、タバサの妹が…… 「あ、お姉さまもひらたいっ」 タバサの杖が妹の頭に炸裂……結構本気だった? 「うるさい」 「ひどいのひどいの、シルフィ本当の事言っただけなのー」 タ、タバサって身内に容赦の無いタイプなのかしら? 窓の外を見つめていたタバサがポツリと呟いた 「居た」 へ? 「どこどこどこどこ?」 杖で指す向こうには豆粒みたいな建物 「見えるわけ無いじゃない!」 シエスタも寄って来るけど……… 「よく見えますね、わたしには分かりませんけど……」 嘘ついたのかしら、この子 「魔法」 目の前の空気がたわむ。 少し向こうでも同じように空気が曲がっていた。 ……この子トライアングルだったっけ、うらやましくなんか無いけどっ。 目を逸らしてる間に、シエスタの声が響く 「サ、サイトさんっっ、なぁぁぁぁにやってるんですかぁぁぁぁぁ」 はい? 気になってそっちを見ようと……あれ?タバサも怒ってる? 何が見えたのか不思議に思いながら…… 「……犬」 勝手に声が出ていた。 遥か向こうに見えるのは……裸のサイト…… 温泉 湯浴み着を来た女の子の山 ……ここまでは許してもいい。 殺すけど。……でも 「裸のアニエスぅぅぅぅぅ」 ちょっとは隠しなさいよっっっ なにより…… 「ひーめーさーまあぁぁぁぁぁー」 何でサイトの手を引いて……あぁぁぁぁぁ犬ぅぅぅぅ見るなぁぁぁ 「サイトさん、楽しそうですね」 どこまでも静かなシエスタの声。 「心配……した」 深い深いタバサの声 「……………」 わたしは言葉も出なかった。 「もーすぐつくわよーーーーひぃっっっ」 のんきに部屋に入ってきたツェルプストーは皆の注目を浴びて…… 「し、しにたくなぁぁぁぁぁい」 逃げた。 「もうすぐ着くのー、楽しみなのーきゅいきゅい」 「「「そうね、とても楽しみ」」」 3人とも何故か溢れる笑い声を上げながら、サイトに会うのを心待ちにしていた。

600 名前:1/8[sage] 投稿日:2006/11/19(日) 03:38:53 ID:pXaBKZma 「どうぞ、お客様こちらです」 ……ジェシカはプロだった。 「あのージェシカ……」 「なんでしょうか?」 よそ行きの笑顔は綺麗だけど。 知り合いに対する応対としては寂しすぎた。 「普通にしてくれた方が嬉しいんですけど」 笑顔を固定したままのジェシカが、空気が抜けるような息をついた。 「ふあ―――やっぱり、この方が楽だねーサイトくん」 俺も肩の力が抜ける。 「それで、ね?ね?何者なの?サイトくん」 「なにものって?」 俺の顔を下から見上げるようにして、ジェシカが胸を押し付けてくる。 「アルビオンにいってたのは知ってるけど、兵士じゃないって言ってたのに、シュヴァリエになっちゃったらしいし、あんな馬車に便乗してくるし……それに、あのお客さん……美女ぞろいだし。」 姫さまお忍びらしいから……俺からは言えないよなぁ。 「あ〜ルイズの知り合い……かな?」 これくらいなら良いよな。 「えー、あ・や・し・い・な」 む、むねがぁぁぁぁ、むにゅむにゅ形を変えながら押し付けられる。 ……いってもいいかなー って駄目だろ。 「いや、本当だって」 「ひっどーい、ここまでしてあげたのにぃ、あ、それともぉ……」 スカートを翻しながら、距離をとるジェシカ…… 離れた胸が悲しいが……理性復活。 姫さまの貴重な休暇邪魔しちゃ駄目だよな。 「サイトくぅん」 クルリと一回転したジェシカが、深く前かがみになりながら、 こちらを見て…・・・って 胸……見えてるっ。 た、谷間がぁぁっぁぁ 「サービス足りないの?ご・しゅ・じ・ん・さ・ま?」 押し付けられるのも良いけど……見えてるのがにじにじ寄って来るのって…… 「ヒ、ヒミツデス」 かろうじてそれだけ言う。 もーちょっとで、先っちょが見えるでありますっ 「ちぇー残念」 へ? 「も、もう終わり?」 「んふー、折角だからじっくり聞き出すとするよー」 がんばれ、俺の理性。 ……負けても良いぞ? 戦ったことに意義があるんだしなっ そんなことを考えている間にも、ジェシカがするりと近寄ってきて…… 腕を絡める。 「んじゃ、お客様、お部屋に案内しますねー」 「は、はい」 あ、あたってるぅぅぅぅ 感触を堪能していると、腕をぐいって引かれる。 「ねぇ、サイトくん」 ジェシカが押し殺したような声で、耳に熱い吐息を吹きかける。 「わたしの部屋、あそこだよ」 「そ、それって……」 い、行ってもいいんでしゅか?お呼びでしゅか? 「喋る気になったらいつでも来てねー」 あっさり手を離したジェシカの先導で、俺は部屋に案内された。

601 名前:2/8[sage] 投稿日:2006/11/19(日) 03:39:25 ID:pXaBKZma 「遅かったな」 あれ? 「アニエスさん?」 「なんだ?」 えっと……俺自分の部屋に案内されたんだよな? 「なんか用事ですか?」 そか、先回りして用を言いつけようと…… 「わたしが、わたしの部屋に居るのが不満か?」 …ジェシカ部屋間違えたのか。 「あー、ちょっと俺、自分の部屋聞いてきます」 走り出そうとする俺に、姫さまが声をかける。 「サイトの部屋もここらしいですわ」 え? 「えっと、アニエスさんと……ひ、アンは?」 「平民は同じ部屋に泊まると聞きました」 そ、それって…… 「少し狭いですけど、のんびり出来そうでうれしいです。」 ……広いですよ? 家具は減ったらしいけど、住んでいる所が王宮だとこの辺の感覚は変わらないんだな。 「ちなみにわたしは、夜は廊下で寝るからな、不寝番だ」 え……それって。 「二人っきりですねっ」 姫さま〜なんでそこで嬉しそうっっっ 「あのっ、サイト」 何か硬い表情で姫さまが寄ってくる。 「折角の温泉ですものっ、先にお風呂にいたしませんか?」 ……そんな思いつめた内容でも無い気がしたけど。 「いいですねー、まずはのんびりお湯に浸かりましょうか……あーその…アン」 硬かった表情が、弾ける様に明るくなる。 「ふつつかものですが、よろしくお願いいたします。」 えっと、それってお風呂に行く挨拶でしょうか? 案内を呼んだアニエスさんが、姫様のところに帰って来た。 「準備が出来たようです。」 それだけ言うと、俺の側にきて耳打ちをした 「普通一緒に風呂入らんよな?」 「はあ、そうですね」 ……うぁ、内緒話してるだけで、姫さま泣きそうな顔してるよ。 可愛いなぁ 「陛下には、好きな相手同士で無いと一緒に風呂は入らないといってある。」 えっ……てことはさっきのって。 「サ、サイト!」 いきなり駆け寄ってきた姫さまが、飛びついてきた。 俺にしがみ付いたまま、アニエスさんの方を見つめる。 「アニエスとお話しするより、わたくしの方が先約です」 ……嫉妬? 「さあ、……そのっ……お風呂に……」 俺に抱きついたまま、案内の方に…って、ジェシカだし。 『へー、サイトくんやるねっ、見直したよー』 目だけで語る。 『ち、ちがうっ、誤解だっ……多分』 あとでシエスタにどんな伝わり方するか不安だ…… 「……サイト………」 腕の中の姫さまが、つんつんと服を引っ張って自己主張する。 「……わたくしを……見てくれませんか?」 ……よ、余所見も駄目ですか? 「わ、分かったよ……アン」 『おぉぉぉぉぉ、やるねっ、サイトくん』 もう反論も出来ない…… ルイズに知れたら………背筋が凍る。 ……でも、もうどうしようもないし。この旅の間だけでも楽しむことにしよう。

602 名前:3/8[sage] 投稿日:2006/11/19(日) 03:40:07 ID:pXaBKZma 脱衣所は凄かった、というか…… 「そもそも、何で俺ここに居るんです?」 壁際にずらりと並んだ美女の群れ。 なにこれ? って……姫さま脱いでるしっ 正確には脱がされてるし。 「何か問題あるのですか?」 隠さないしっ。 不思議そうに俺を見ないでー ジェシカがにこやかに俺に服に手を掛ける。 「さ、シュヴァリエも」 慌ててジェシカの手を押さえながら、周りに聞こえないようにこの異常事態について質問した。 「ナニコレ?」 「んー、サイトくん貴族なれしてないねー、シュヴァリエなのにこれから大変じゃない? ちなみに、貴族は自分で服なんか着ないんだよー」 そーいやルイズが昔言ってたな…… 「あんまり脱がせるの遅いと、わたしの不手際みたいだからー 覚悟するといいよー、サイトくん」 悪い予感がしたが、既に手遅れ。 いつの間にか背後に回りこんでいた、別の女の人に手を掴まれる。 「え……あの……ジェシカ……さん?」 「うふふふふ、覚悟ー、サイトくん」 …………数人掛りで、あっという間に真っ裸に…… 「うぁぁぁぁぁ、もうお婿にいけない……」 部屋の隅でしくしく泣いていると…… 「どうした?」 「ア、アニエスさっ、てぇぇぇぇぇ」 アニエスさんまで真っ裸で……しかも隠す様子が無いし。 「風呂だからな、脱いで当然だろ?」 俺の喉が鳴った。 ……こ、これか……ら、皆脱ぐの? そんな期待に気を取られた一瞬に、アニエスさんが俺を引き起こす。 「ほら、立てって……元気だな、サイト」 うあぁぁぁぁぁ、座ったまま立ち上がっていたのが、アニエスさんにばれる。 「い、いっそ殺して……」 しかも手を掴まれていて、座り込むことも出来ない…… 「どうしたのですか?」 ひ、姫様までキタ―――――― 「うあぁぁぁぁぁ、ひえぇぇぇぇさぁぁぁぁ」 俺は既に喋れなくなってた…… 側まで来て姫さまが、まじまじと俺を観察する。 「男の人の身体って見るの初めてです」 み、見られてるぅぅぅぅ 「ずいぶん傷だらけなのですね」 ……そういう姫さまは、真っ白で滑らかで……一方的に見るだけならどれだけいいか。 「陛下、コレは特別です。」 アニエスさんも、コレとか言わないでぇぇぇ 「そうなのですか?」 「戦争でずいぶん怪我をした様子です」 はっとした様子の姫さまが、俺に近づいて一つ一つ傷跡を指でなぞる 「ひぁっ、ちょっ姫さ……だめぇっ」 「わたくしの……せいなのですね」 少なくとも、今股間が凄いことになってるのは全面的に姫さまのせいですっ 心臓の真上辺りに、姫さまが優しく口付ける。 「このお詫びは………後で……いたしますね?」 そんな言葉が聞こえた気もするけど、テンパった俺はほとんど何も分かってなかった。

603 名前:4/8[sage] 投稿日:2006/11/19(日) 03:40:43 ID:pXaBKZma 連れて行かれたのは広々とした温泉。 姫さまの世話をするためらしい女の人の一団。 裸のアニエスさん…… そして、 「サイト、こないのですか?」 ……裸の姫さま 見られることを、まったく恥ずかしがってない姫さまに、かえって俺の方が恥ずかしい。 直接見ないように気をつけてはいるけど…… 確かに出て引っ込んで、見事な曲線で……恥ずかしくは無いけどっ。 「……わたくしとお風呂は嫌ですか?」 本気で悲しそうな姫さまに、俺の良心は痛むけど、それの十倍股間が痛い。 「陛下、サイトは照れているのです。」 そんなことを言いながら、アニエスさんは俺を睨む。 『うだうだ言うと、即殺す!』 『か、勘弁してくださいよ!』 『うるさい、黙れ』 ひ、一言も喋ってないのに、うるさいと目で言われた…… 氷のような声が脳裏に響いた。 そんなやり取りの間にも、姫様は俺の側まで寄ってきていた。 「いっしょに……はいりましょう?」 すっと、手を伸ばしてくる。 なぜか唐突に背筋が寒くなって、それから逃れるように手を取る。 ……震えてる? 姫さまの温かくて柔らかい手が、小さく震えていた。 「……わたくしは、サイトと……一緒に居たいです」 そういえばアニエスさんが、何か吹き込んでたんだった…… 「わたくしは……嫌われているのかもしれませんけど……」 俺の身体に走る傷を目で追いながら、震える声で語りかけてくる。 「わたくしは……嫌われてても……それでもっ……」 ヤバイ、これ最後まで聞いたら引き返せなくなる。 そんな予感と振り払うように、姫さまの手を引いて温泉に向かう。 「さー姫さま、お風呂ですよー」 張り詰めていた表情がやっと緩み、こぼれるような笑顔で 「アンです、サイト」 そう言いながら付いて来た。 姫さまの体温を感じるだけで、身体の奥が熱くなる感じがした。 ……でも不思議なことに背筋はさっきからずっと冷たいままだった。 ずっと裸で居たせいだろう。 姫さまと手を繋いだまま、掛かり湯をーって 温泉に近づくだけで、お湯がかけられたり、姫さまは髪をまとめられたり…… 俺は何もする必要が無かった。 手を繋いだまま、温泉に浸かる。 わき目も振らずにまっすぐ来たのは、振り向くと色々見えるのが分かってたからで。 肩まで使った後、背後の水音を確認して振り向く。 ……しまった 「きもちいいですね、サイト」 ……姫様もちゃんと浸かってるけど……お湯に入ったせいで上気した顔が… 「い、色っぽい」 思わず口に出てしまった。 「え……あ……その、うれしい」 誉められ慣れてると思ったのに、意外に喜んでくれる。 「その……綺麗とか、美しいとかは……よく……でも、色っぽいは、初めてでした」 ……納得、女王に向かって『色っぽいですね』死にたい奴位だろう。 赤くなったまま、俺の手を握りしめる姫さまが可愛くて…… お、お湯に浸かってて良かった……

604 名前:5/8[sage] 投稿日:2006/11/19(日) 03:41:16 ID:pXaBKZma ミスタ・コルベールにお願いして、オストラントをサイトたちから見えない所におろしてもらう。 シエスタ・タバサと3人でお願いしたら、すぐに船を動かしてくれた。 なんだか震えてたけど。 「いい人ですね、ミスタ・コルベール」 「キュルケが選んだ」 ……まったく、どこかの犬とは大違い。 着陸と同時に船を出る。 ……何?宿の周りに妙に大量の銃士がいる。 「今日は貸切だ、遠慮してもらおうか」 ……へー、用意周到ですこと。 目の前の銃士を見つめる。 「ひぃっ、い、威嚇してもむだだっ」 ……威嚇? 不思議に思って回りを見渡す。 タバサもシエスタもなにもしてないじゃない。 「あーきみきみ」 ミスタ・コルベール? 「大人しく通した方が良いと思うが、その……忠告なんだがね」 「し、しかしっ、われらも任務ですゆえっ」 切羽詰った様子でミスタ・コルベールに食って掛かる。 ……わたし達とは目もあわせないくせに。 「あー、しかしだね。抵抗は無駄ではないかな?」 「なっ、……喧嘩を売っているのか?」 目の前の銃士は、腰の銃に手を掛けながらミスタ・コルベールを睨んでいる。 ……こんなことしている間にも……犬は……… 焦れたわたしは一歩踏み出す。 ほぼ同じタイミングで、シエスタもタバサも歩き始めていた。 「……わたし達急いでるんです」 「邪魔」 そのままつかつかと進み続ける。 銃士たちが、怯えるように道を開けてくれる…… 役立たずねー 宿の入り口まで結局誰も邪魔は出来なかった。 「あらぁ、シエシエにルイズちゃん?どうしてこんな所に?」 おねぇ口調の巨漢に、タバサだけが一瞬たじろいだ。 「サイトさんはどこですか?」 珍しいことに、シエスタが挨拶もせずに問いかける。 「あー、そのー、ねぇ……今日はちょっと……」 歯切れ悪い。 「通るわよ」 「だめよぉぉぉ、ここを通りたいなら、わたしを倒してからにしなさぁぁぁい」 廊下を塞ぐように、スカロン店長が立ちふさがった。 ……手ごわいかも。 そんなことを考えている間に。 「邪魔『エア・ハンマー』」 「ぎゃふっ」 店長が壁に叩き付けられる。 「……タバサ……あんたって……」 「急ぐ」 空から見ただけで構造を把握したのか、迷う様子も無くまっすぐ走り出す。 「あ、わたしも行きます」 シエスタも付いて行く。 わたしだって遅れる訳にはいかなかった。

605 名前:6/8[sage] 投稿日:2006/11/19(日) 03:41:47 ID:pXaBKZma 「隊長、侵入者ですっ!!」 俺と姫さまがお互いの手を気にしながらとりとめの無い話をしていると、いきなり誰かが飛び込んできた。 「なっ、外回りの警備はっ?」 「突破されましたっ」 驚いた様子のアニエスさんが、手早く身体を拭いて銃と剣を腰につる。 ……裸に武器だけも……いいな。 って、それどころじゃないし。 「サイトッ」 俺の方にデルフリンガーが投げ渡される。 「万が一の時は頼む」 そのままの格好でアニエスさんが駆け出そうとするけど…… 「待ってください」 急いで止める、立ち止まったアニエスさんが、怪訝そうにこちらを見る。 「なんだ?」 「俺が行きます」 ……女の人に守られるのは趣味じゃない。 「俺の仕事……ですよね?」 お湯から上がった俺は、アニエスさんが使ったタオルを腰に巻く。 「し、しかし……それは……」 アニエスさんが口実に使ったのは分かっているけど…… 「危険は承知のうえです」 デルフリンガーを抜く 「よー、相棒、今日一日は退屈だったぜぇ」 「あぁ、もうすぐ、十分に楽しめると思うぜ」 手に馴染んだ感触が心強い。 後ろから姫さまに抱きつかれる 「……行かないで下さい……と、言っても無駄なのですね」 「あぁ……姫さまを……アンを守るため……行って来るよ」 姫さまの唇が何も言わずに俺に重ねられる。 「……お気をつけて」 ……今なら、何が来ようと負ける気はしない!! 「いいねぇ、相棒!!心が震えてるぜぇぇ」 「おうよっ」 音が段々近づいてくる…… 「行くぜっ」 姫さまの手を振り払って、脱衣所を掛けぬけ廊下に飛び出す。 その瞬間俺の頭の上を、誰かが飛んで行った…… 「ずいぶん手ごわそうだな」 「……いや、おりゃーちょっと覚えがある魔法のような気が……」 デルフが気になる事を言っている。 「敵は知ってる奴なのか?」 「あー多分……手ごわい」 ……誰だ? 「相棒……多分負けるなー」 デルフの判断はいつだってほぼ正確だった…… 「そうか……」 「ここで相棒死ぬかもしれんね」 「……そこまで……か」 でも……引けない 「俺は姫さまを守るっ!!」 自分に活を入れるため、大きく叫ぶと廊下を曲がろうとしている人影に向けて構えた。

606 名前:7/8[sage] 投稿日:2006/11/19(日) 03:42:19 ID:pXaBKZma 心配したのにっ。 半日走り回って、探してやっと見つけたら…… どうしてか分からないけど、魔法で姿を見つけたときからイライラが止まらなかった。 嬉しそうな表情を思い出す。 ……あれって、アンリエッタ女王……だった。 嬉しそうに胸……見てた。 小さく魔法を唱えて、銃士を吹っ飛ばす。 殺さないように、加減したエア・ハンマーは使いやすい。 廊下だし、相手はほとんど抵抗も出来ずに気絶していく。 ……温い、ガリアの警備もこのレベルなら良いのに。 いつもより魔法の切れが良い気もするけど…… もう少しで、さっきの温泉に着くはず。 そう思うと、少し足が鈍る。 わたし……何してるんだろう? 自分の胸を見る。 いつもはそんな事無いのに、急に胸の奥が痛くなる。 ああゆうのが良いのかな? 嬉しそうだった……邪魔して……嫌われないかな? わたし……そんな資格無いのに。 好かれている訳でもなんでもなくて、 わたしが勝手に、命を捧げるって決めただけ。 もし……好きな人の側にいる時間を邪魔してるだけだったら…… 迷惑……だよね。 足が止まる。 「ちょっ、タバサいきなり止まらないでよ」 ……いいな 使い魔だからって、何も理由無く怒れるって……うらやましい。 動こうとしないわたしを、それでも暫く待ってくれる。 …優しいね。 「あーもうっ、先にいくわよっ」 「えっと、失礼しますね」 二人とも迷わず走り出す。 いいなぁ…… 丁度次の角を曲がろうとした所で、次の護衛と鉢合わせそうになる。 エア・ハンマーで援護 振り向いた二人が手を振る。 うれしい、お友達の役に立てるのって、素敵だねキュルケ。 でも、わたしはここまで。 あの二人みたいに自信ないもの。 そう思って引き返そうとした瞬間、聞きたくない言葉が聞こえてきた。 「俺は姫さまを守るっ!!」 心が……壊れるかと思った。 関係ないはずなのに、彼が誰を守っても、私が命を捧げることに変わりないのに。 涙が……止まらなくて、その場にしゃがみこむ。 遠くで何かが言い争っていた。 『俺たちを何度も助けてくれた』 あの人がくれた言葉を思い出す。 これからも助けよう、あのときの決心を思い返す。 あの人が、誰を見ていても…… わたしが見つめることに問題ないよね? ……大切なことをもう一度伝えよう。 誰が居ても良い。 私はもう一度立ち上がって、あの人のほうに歩き出した。

607 名前:8/8[sage] 投稿日:2006/11/19(日) 03:48:11 ID:pXaBKZma 「俺は姫さまを守るっ!!」 ―――――へー、良い度胸ねぇ、犬ぅ わたしは笑ったまま廊下を曲がる 「かかってこんかぁぁぁってぇぇぇぇ」 「今行きますねー」 シエスタもサイトの方に歩き出す。 わたしも何も言わずにサイトの側まで歩く。 「ななななな、なんでルイズとシエスタがぁぁぁぁぁ」 「あー相棒、多分まだいるぜ?」 「黙りなさい、棒っ切れ」 わたしはサイトと話に来てるんだから。 「犬?」 「はいっ」 その場で直立不動。 「何でここに居るの?」 「ご、護衛でありますっ」 「誰の?」 「姫さまです」 ……やっぱり 「なんで、服着てないの?」 サイトの目が彷徨って……何かを決心したように、わたしを見つめる。 「風呂に入っておりましたっ、一人でっ!!」 ………ご 「ご、ごまかすこと決心してるんじゃないわよっ!!」 まっすぐサイトの股間を蹴り上げる。 いつもと違う感触がする…… それに…… 「「きゃぁぁぁぁぁぁぁ」」 タオルが飛んで…… 「は、恥ずかしいもの見せてるんじゃないわよぉぉぉぉぉ」 わたしとシエスタは指の隙間から、苦痛にもがくサイトを見つめていた キャーキャーキャー、わー、こうなってるのね。 サイトに見られる機会はあったけど、見るのは……かも。 「ル、ルイズ……なの?」 私の声が聞こえたのか、姫さまが出てきた…… 「こんにちは、姫さま。」 この状況で言い訳も出来ないことを確信して、わたしは姫さまを睨む。 「サイトを連れて帰りますね、姫さま」 泣きそうな姫様は無視して、サイトを引き起こす。 「さ、行くわよ」 「ま、待ってくれ……まだ歩けねぇ……」 「帰ってから、じーーーっくりお話聞かせてくださいね、サイトさん」 もう片方の手をシエスタが握る。 歩けないなら引きずっていこう。 そのつもりでサイトの手を引こうとすると、姫さまが後ろからサイトを抱きしめた。 「い、行かないで………ここに……いて……」 ……言う様になったわね。 「あ、あたる……」 サイトが何か呻いてるけど…… 「姫さま、コレはわたしのです、連れて帰ります」 「わたしのご主人です、あなたが誰か存じませんけど、連れて行きますね?」 「でもっ、一応ちゃんとした護衛任務ですしっ」 3人とも手を離さずに口論を続けていると、廊下の向こうからとぼとぼとタバサが歩いてくる。 目を真っ赤に腫らして、思いつめた表情でこっちに向かってくるタバサに、皆何もいえなくなる。 いきなり静まり返った廊下を、サイトの目の前まで来たタバサは、暫くの躊躇の後サイトの胸に飛び込んだ。 「「「なぁぁぁぁぁ」」」 サイトの三方向から上がる悲鳴を無視して、タバサは思いつめたようにサイトを見上げる。 いつもの凍りついた美貌が、溶けて流れ出したような透明な涙を流しながら、 「(わたしの命)貴方に……捧げた」 わたしも、シエスタも、姫さまも……誰も何も言えなくなった。