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401 名前:ルイズとタバサ[sage ] 投稿日:2006/11/15(水) 16:55:14 ID:98XUyCAm タバサを呼ぶときはいつも少し緊張する。 何故ならば、二人きりの時に本名の『シャルロット』で呼ばないと、すぐにへそを曲げるからだ。 もし『タバサ』で呼んでしまえばどうなるか。 へそを曲げたタバサのご機嫌を取るために、無体なお仕置きに堪えなくてはならないからだ。 そして今日も。

「なあタバサ…あっ」

周囲に人影があるかないかを確認し忘れると、こういうことになる。 呼ばれたタバサは眉をへの字に曲げて、すたすたと才人に歩み寄る。 でもって無言のまま両手を広げて、

「ん」

と一言。 もう恒例になった、『罰として抱っこで部屋まで運べ』である。 もう一度周囲に人影がないか確認する才人。 …なんていうか、こんな所見つかったらロリコン呼ばわりされるの目に見えてるし。 才人が抱き上げるのが遅いので、タバサはあからさまに不機嫌な声で言った。

「誰もいない」

…しょうがねーなーもー。 才人は覚悟を決めると、ひょいとタバサを抱き上げた。 相変わらず軽い。本当に成長しているのかと疑いたくなる。 この間年を尋ねたら十五だと言っていたが、どう見ても十二、三にしか見えない。

「っとに。軽すぎるぞシャルロット。もっと食べろよ」

軽すぎるタバサの身体を心配して言う才人。 実はタバサは一度に結構食べるのだが、しょっちゅう食事を抜くせいで成長が遅いのだ。

「心配しなくても大丈夫」

言ってタバサはんー、と才人に密着する。 そして才人には見えない顔の横で、満面の笑みを浮かべて言った。

「すぐサイト好みの大きさになるから」 「だー!そういう意味じゃないって!」

才人の突っ込みに、しかしタバサは反論もせず、もう一度んー、と才人の首筋を抱きしめる。 その視界の隅に、桃色の何かが写った。 …ライバル発見…。

402 名前:ルイズとタバサ[sage ] 投稿日:2006/11/15(水) 16:56:00 ID:98XUyCAm …なにあれ!なにあれ! 抱っこ!?タバサを抱っこしてたわあの犬!! 私は廊下の柱の影で怒りに震えながら、もう一度二人のいた廊下を覗く。 あっ! あのチビっこと目が合った。 タバサは一瞬驚いた顔をしたけど…。 …今、笑った?ねえ!今、笑ったわよあのチビっこ!普段仏頂面なのに! まるで全てに勝ったような、勝利を確信した笑みだったわよアレ! なによソレ!抱っこ程度で勝ったつもりなワケ!? 私なんかサイトとあんなことやそんなこともしてんだから!! でも何!?この、心の奥底から噴出してくるドロドロしたものは何!? ええい、どーでもいーわ! 現行犯逮捕よ!あのバカ犬今日こそ徹底的に調教しなおしてやるんだから! そう思って私が柱の影から飛び出すと…。 そこには誰もいなかった。

いつもこの状態でタバサの部屋に着くと、まずタバサが降りて扉を開け、もう一度才人が抱っこして部屋の中に入る。 しかし今日は違っていた。

「おかえりなさいー。お姉さまー」

人間の姿に化けたシルフィードが、扉を開けて二人を出迎えたのだ。今日は、いつぞやの村で、騎士に化けた時の服を着ていた。 …み、見られたっ!? 思わず硬直する才人。

「あー。お姉さま、抱っこされてるの。羨ましいのー」

しかしシルフィードは羨ましがるだけで、特に何の感慨も抱いていないらしい。 …こいつにそういう概念はないよなあ。 才人がほっとしていると。

「こういうの、人間の言葉で『ろりこん』って言うのよね!シルフィお勉強したんだから!」

才人の精神を見えないエア・ハンマーが直撃した。 それと同時に、タバサが抱っこされながら器用にシルフィードの頭を杖で殴った。 ごすんといい音をたてて、杖がシルフィードの頭にめり込む。

「痛いの、痛いの〜」

涙目でうずくまるシルフィードの前に、タバサはぴょこんと固まる才人の腕から飛び降りて、シルフィードの襟をむんずと掴んだ。 表情が完全に固まって、赤黒いオーラがタバサを覆っている。 普段は幼い見た目の事をからかわれてもなんとも思わないタバサだが、才人との年齢差を指摘されると怒る。 『つりあってない』と指摘されているようで、不機嫌になるのだ。 …これは本気で怒ってるな。

「あっ、お姉さま何するの!離して、離して!」 「…お仕置き」

ずるずるとシルフィードが扉の内側に引きずり込まれると、扉は魔法の風でばたん、と閉じた。 長く切ないシルフィードの悲鳴が部屋の中から響く。 ルイズに折檻されてる時の俺もこんな感じなのかなぁ、と思いながら、おいてきぼりにされた才人は、部屋の前でぼーっとしていた。

403 名前:ルイズとタバサ[sage ] 投稿日:2006/11/15(水) 16:56:31 ID:98XUyCAm 俺が部屋の前でぼーっとしていると、背後から殺気を感じた。 こ、この感じ慣れたドス黒いオーラは! 俺は慌てて振り向くが…。 そこには誰もいなかった。 俺がほっとしていると。

「…ねえ」

…背後から、聞き慣れた声がする。 その声には。十分すぎる殺気が載っていた。 俺は振り返ることも出来ず、体中に吹き出る脂汗を感じながら、返事をする。

「ふぁ、ふぁい」

唇が震え、うまく言葉にならない。

「…なにをやっていたのかしらこの節操なしのバカ犬は?」

ごくりと喉を鳴らす。カラカラに喉が渇いていたからだ。 そのドス黒い声は、嫌でも俺に回答を強制させる。

「…抱っこ、しておりました」

その答えだけでは背後の恐怖の大王は当然満足しない。 続けて質問を繰り出してくる。

「誰を?」 「…た、タバサをであります」

その回答に、殺気が三倍以上に膨れ上がる。 …ああ、俺もシルフィードと同じ道を辿るのか…。 そう、俺が覚悟を決めていると、背後から再び声が掛けられた。

「こっち向きなさい」

俺は黙ってその言葉に従う。 で、振り向くと。 …ルイズが両腕を広げている…??? 何が起こったのか理解できない俺に、ルイズは赤くなりながら言った。

「…私も」

…え?えええええええええ!? あのえとこれは、『私も抱っこして』って意味?

「あ、あのー?」

俺が混乱していると、ルイズはさらに赤くなって、語気を荒げてもう一度言った。

「私も!」

404 名前:ルイズとタバサ[sage ] 投稿日:2006/11/15(水) 16:57:08 ID:98XUyCAm …あ、ダメ、なんかコレ癖になりそ…。 私はサイトに『抱っこ』されていた。 誰かに抱っこされるなんて、八歳の時以来だけど、なんてゆーか、これは。 安心できるっていうか、あったかいっていうか。 なんか、問答無用でしあわせー、な気分になってくる。 そんな風に私がほわほわしていると。

「あ、あの、ルイズ?」

顔の横で、サイトがものすごく信じられないものを見るような目でこっちを見ていた…。 …そ、そんな目で見ないでよ!恥ずかしいじゃないの!

「いーから黙って抱っこしてなさい!いいって言うまで下ろしちゃだめなんだから!」

言って私は真っ赤になった顔を隠すために、サイトの首を絞めるがごとく、ぎゅうっとサイトに抱きついた。

「わ、わかったよ」

言ってサイトは、私の背中をそっと抱きしめてくれた。 あーダメ、これすっごいイイ…。 あのチビっこがしたがるのもムリないかなー。 私はさっきまで怒ってたことも忘れ、サイトの首筋に頭を預ける。

「ルイズも、抱っこ好きなのか…?」

…なななな、何よその呆れた声! しょうがないじゃない!ここんとこ誰かに抱かれることはあっても、『抱っこ』されることなんてなかったんだから!

「黙って抱っこしてなさいって言ったでしょ!余計なこと気にしなくていいの!」

言ってさらにサイトの首をきつく絞める。

「ぐえ」

あ、いい感じに入っちゃった。

「ご、ごめんサイト」

私は腕の力を弱める。 でも、サイトの身体の緊張は解けない。 ?どーしたのかな? 隣のサイトの顔を覗くと、何かに怯えた顔をしている。 サイトの視線の先を見ると、そこにはあのチビっこがいた。

405 名前:ルイズとタバサ[sage ] 投稿日:2006/11/15(水) 16:57:49 ID:98XUyCAm …よくも、よくもよくもよくも! そこは! お兄ちゃんの腕の上は!

「私の特等席…!」

言って私は、サイトを巻きこむのが嫌なので、杖を放り出して逆サイドからサイトの首に飛びついた。 サイトはびっくりしてバランスを崩し、ルイズと私は床に放り出される。

「ちょっと、何すんのよ!」 「…そこは私の特等席」

別にいくらルイズがサイトとえっちしようと構わない。 でも、そこは、そこだけは。 サイトの腕の上だけは譲らないんだからーーーー!!

「ちょ、ちょっと位いいじゃないのよ!  …っていうかサイトは私のモノなのよ分かってんの!?」 「…サイトの抱っこは私のもの」

言って私は、上半身を起こしたサイトに抱きつき、彼の腰の上にちょこんと収まる。 うん、ちょうどいいサイズだと思う。 ルイズを見ると、怒りにふるふる震えている。

「何よ!私のモノだって言ってんでしょ!どきなさいってば!」

言って逆サイドに抱きつき、私を押し出そうとしてくる。 …負けない。 私も負けじと押し返し…私とルイズは、お互いに手を組み合う格好になった。 そんな私たちに、サイトが声をかけてきた。

「あ、あのー。いい加減どいてくんないかなあ…?」 「犬は黙ってなさい!」 「サイトは黙ってて」

私たちの剣幕に、サイトは「ふぁい」と気の抜けた返事をして黙りこくってしまった。 そして私たちは、サイトの上で喧々囂々、口げんかを始めた。

「…痛いの」

ようやくお仕置きから開放されたシルフィードは、開けっ放しの扉を目にすると、それを閉じるべくまだ痛むお尻をさすりながら、扉へ向かった。 そして、開けた扉の向こうで展開する光景に、あきれ返った。

「どきなさいよこのチビっこ!」 「…どかない」 「むきー!強情なんだから!親の顔が見たいわっ!」 「こっちの台詞」 「なによなによなによ!このムッツリメガネ!」 「サド貴族」

才人の上で、自分の主人とサイトの主人が、はしたなく髪を振り乱しながら、大喧嘩している。 …まるっきり子供のケンカなのねー…。 呆れたシルフィードが扉を閉めようとすると、才人の助けを求める視線と目が合った。 にっこり笑って、シルフィードはその視線に応える。

「『自業自得』なのねー。あ、あと『ろりこんはしね』なのねー♪」

そして、笑顔のままで、シルフィードは扉を閉じた。 絶望に塗りつぶされた才人の顔だけが、やけに印象に残った。 〜fin