ゼロの保管庫 別館

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だれでも歓迎! 編集

532 名前:純愛センター[sage] 投稿日:2006/11/17(金) 19:04:00 ID:58qVfhNd オレは七万のアルビオン軍を止めた 「死ね」と命令されたご主人様を守るために… ご主人様も、大切な人達も助けることができた だけどオレは失った…

大好きなご主人様を守る力を…

アルビオン軍を止めてから三週間 サイトはティファニアの水の指輪のおかげでギリギリで生き延びた 村に来た商人に聞くと、トリステイン軍はアルビオン軍から何とか逃げ出すことが出来たらしい 多分ルイズも無事だろう

だがその代償として左手の紋章と「ガンダールヴ」としての力を失ってしまった ガンダールヴでなくなってしまった自分にはもうルイズの側にはいられない…

ルイズに必要なのはガンダールヴであり、平賀才人ではないからだ もう会えない…そう考えると、どうしても涙が溢れた

そうしている内に銃士隊のアニエスが現れ姫様が自分を探している事を知った だが…行けるない 「あの…、姫様には、オレが死んだと伝えてくれませんか?」 「何故だ?平民の身分で陛下に捜索願を出されるなど、ありえない名誉だぞ?」 サイトは言った 「姫様はルイズに伝えると思います」 「そりゃそうだろう。貴様はミス・ヴァリエールの使い魔なんだから」 「もう、違うんです」 サイトはアニエスに自分がもうルイズの使い魔ではないことを説明した 「使い魔じゃないオレは、誰にとっても必要のない人間です。だから、死んだと伝えて下さい」 アニエスはその願いを聞き入れてくれた そしてアニエスに剣の稽古をつけてもらったり、テファや子供達とご飯を食べたり…そんな日々を過ごしていたある日…

大好きなご主人様がオレを探しに、すぐ近くに来ていることを知った

会いたい…どうしようもなく会いたい。 自分の命を賭けて守ったご主人様… 世界で一番大切なオレの好きな人…

だからサイトはこう言った…

「テファ…ルイズの記憶を消してくれないか…?」

533 名前:純愛センター[sage] 投稿日:2006/11/17(金) 19:39:59 ID:58qVfhNd 彼女はルイズと同じ虚無の担い手であった 「どうして?大切な人なんじゃ…」 サイトは答えた 「オレじゃダメなんだ。」 本当は今すぐに出ていって思いっきり抱きしめたい でも自分はルイズの側にいるべき人間じゃないから 「本当に良いのね?」 サイトは辛そうな顔をしながらも頷いた

死んで…ないよね? 生きてる…よね? ルイズは自分にそう言い聞かせながらシエスタと森を歩いていた 「大丈夫です!きっと生きていますよ!」 シエスタは自分に笑顔でそう言ってくれた シエスタも自分と同じように辛いはずなのに…

しばらく歩くと、大きな帽子を被った少女が茂みから出てきた 「あの、ちょっとお尋ねしたいんだけど」 「ルイズさんとシエスタさんですね?」 ルイズは驚きに目を見開いた 「どうして私の名前を…サイトがいるのね!?どこ?どこにいるの!?」 ルイズは我を忘れて金髪の少女に詰め寄った その時 「落ち着け!ルイズ」 後ろからどうしても会いたかった使い魔の声が聞こえた 「え…」 驚いて振り向くと背中に大剣を背負った黒髪の少年、夢にまで見た使い魔が立っていた 「どこ…行ってたのよ」 すぐに走り出し、思いっきり抱きついた ずっと我慢し続けていた涙が一気に溢れる 「バカぁ…生きてるなら、なんで早く帰ってこないのよ…」 サイトは何も喋らない ただ辛そうに俯くだけだ 「どうしたの?」 「オレは…もうお前の側にはいられない」 何を言い出すんだこの使い魔は 「もうオレはお前を守れない」 「何言ってるのよ!アンタはガンダールヴでしょ!?なら私をずっと守って…」 「オレはもうガンダールヴじゃないんだ…だから…」 ティファニアが呪文を詠唱し始める 「アンタがガンダールヴじゃなくたって私は…」 「だから…忘れてくれ…」 サイトはルイズを抱きしめながら、最後に言った 「大好きだ…ルイズ…」 ティファニアの虚無が発動し、ルイズからサイトという存在を奪った

572 名前:純愛センター[sage] 投稿日:2006/11/18(土) 14:14:47 ID:J5J8eS4Z 虚無の魔法は容赦なくルイズからサイトを奪った ルイズは、サイトを探すために歩き回った疲労と、自分の大部分を占める「大切な人」を失った反動で、サイトの腕の中で気を失う

驚いてパニックになりながらもシエスタが口を開く 「な、何をしたんですか!?サイトさん」 ルイズを、まるで水晶のように腕に抱えながらサイトは言った 「ルイズの記憶からオレを消したんだ…」 「なんでそんなことを!?」 「もうルイズを守れなくなったから…」 「なんでですか!?ミス・ヴァリエールはサイトさんを探してここまで!」 「だからだよ…もうオレはルイズの使い魔じゃない。ルイズに必要なのは、ルイズを守れる使い魔なんだ…」 サイトはシエスタにルイズを預けた 「オレのことは話さないでやってくれ。学院のみんなにもオレは死んだって言っといて…」 「待って!」 呼び止める声も聞かず、サイトは森の中に消えて行った

「相棒…」 「何だよ」 「オレは相棒の味方だかんね。誰が相棒のことを忘れようが死ぬまで側にいてやるよ」 しばらく何も言えなかったが、小さな…震える声で、優しい伝説の剣に感謝の言葉を言う 「ありがとな…」 もう元には戻れないという悲哀がサイトの心を押しつぶそうとしていた

573 名前:純愛センター[sage] 投稿日:2006/11/18(土) 14:58:24 ID:J5J8eS4Z ルイズは目を覚ますとシティ・オブ・サウスゴータに作ったテントの中にいた 周りを見渡すとシエスタが料理をしている 「シエスタ?」 彼女はビクッと驚いたような反応をしたが、すぐにいつもの笑顔を作った 「やっと起きましたか、ミス・ヴァリエール」 自分はかなり長い時間眠っていたようだった 「心配したんですよ?半日も目を覚まさなかったんですから」 シエスタはついさっきまで作っていたヨシェナヴェ持ってきてくれた 「ありがとう」 「いえ、気にしないで下さい」 ルイズは暖かいスープを啜りながら何故半日も寝ていたか考えていた (確か…森を歩いていて、そしたら…) その後の記憶が全くない 「ねぇシエスタ?私、何で半日も寝ていたの?」 どうしても思い出せない… それどころか、何故自分はあの森に入っていったか…いや、何故アルビオンに来ているのかすらも思い出せなかった 何かを探しに来た…でも何を探しに来たか全くわからない 「えぇと…い、今は疲れてますから!ゆっくり休みましょう!」 返答に困ってしまったシエスタはその場をなんとか凌ぐように言った 「そう…ね…」 とにかく今日は疲れた 考えるのはこの疲れが取れてからにしよう そう思った時に不意に涙が流れ落ちた 「あれ?あれ?」 心に空いた大きな穴 その穴の意味が判らずに、ただただ涙を流すしかなかった 「泣かないで下さい…泣かないで下さい」 シエスタが自分を抱きしめてくれた 「その涙を…忘れないであげて下さい」 もう好きな人を思い出すことすら出来ない少女を抱きしめる 2人は2つの月に見守られながら眠りに落ちていった

668 名前:純愛センター[sage] 投稿日:2006/11/19(日) 23:46:21 ID:wrhKFw51 ルイズは次の日、学院に戻る船に載っていた シエスタは自分が半日も寝ていた理由を教えてはくれなかったが、そこまで気にすることはないだろう 「それにしても…」 何故自分は急に泣き出してしまったんだろうか… 悲しかったわけではないし、ましてどこかケガをしたわけでもない 「ミス・ヴァリエール、到着は夕方頃になるらしいです」 「夕方なら学院に着くのは明日になるわね」 「私は学院に連絡して来ますので、少しここで待っていて下さい!」 と言って走って行った 「やっぱり良い娘よね…」 優しさ…素直さ…清楚さがにじみ出ている 自分には何もない ただ下手なプライドをかざしてワガママを言ったりするだけだ 「これじゃあ…」 と考えた所で、何故彼女に対抗しようとしているのか全くわからないことに気付いた 「なによ…これ…」 ルイズは自分に何が起こっているかわからずパニックになった 「なんで?なんで思い出せないの!?」 わけがわからない 無理やりにでも思い出そうとした時、ルイズを激しい頭痛が襲った 頭が割れるんじゃないかという頭痛でルイズはその場に座りこんでしまった そこに連絡を終えたシエスタが駆け寄ってきた 「どうしたんですか!?ミス・ヴァリエール!」 「なん…で?いない…思い出せない…」 「ダメです!何も考えないで下さい!!」 頭痛で薄れていく意識の中、シエスタの黒髪を見た時、たった一つの映像が…

記憶が無くなっても心が覚えていた映像

左手に大剣を持った黒髪の剣士の背中…

その背中を見た時ルイズは極度の安心感と頭痛による疲労で気を失った…

18 名前:純愛センター[sage] 投稿日:2006/11/21(火) 01:06:45 ID:id+BY6ci その頃サイトは日課となったアニエスとの剣の修行を終え、デルフリンガーを横に置き、木の下で丸くなっていた これでよかったんだ…ルイズはオレに必要ないんだと言い聞かせながら必死に後悔の念を抑える 「相棒、これからどうするんだい?」 デルフリンガーがいつものくだけた話し方で聞いてきた 「相棒よぉ、なんで娘っ子の記憶を消したんだい?」 「オレはガンダールヴじゃないから」 「だからもう守れないと?」 「あぁ…だからオレはルイズの前から消えなきゃいけないんだよ」 「ならなんで相棒は剣の修行なんかしてるんだい?」 サイトは答えられなかった 「代わりに答えてやろうか?相棒はまだあの娘っ子を忘れきれてないんだよ」 「…」 「どんなに自分に言い聞かせようが、相棒の心に迷いがある。欲と言っていいだろうね。」 「でもオレは!」 「あぁ、ガンダールヴじゃないな!だからルイズは守れない、だから一緒にいられない、でも諦められない!違うかい?」 完璧に図星だった 「どうしようもねぇだろ…」 自分はもう誰からも必要とされてない 「良いことを一つ教えてやる。あの娘っ子も相棒と同じようなことで悩んでたんだぜ?」 「え?」 そんなこと聞いたことがなかった 「本当さ。更に言えば無理やりこっちに連れて来ておいて、使い魔は伝説のガンダールヴなのに、自分はゼロ…口には出さなかったが、かなり悩んでた」 さらにデルフは続ける 「そんでやっとの思いで使えた魔法が「虚無」。あの娘っ子はそりゃ喜んだだろうさ。やっと相棒に見合う貴族になれたってね。まぁ悪魔で多分だけど…」 サイトは何も言わずに聞いていた 「そんな娘っ子がガンダールヴの力が無くなったくらいで相棒を捨てるはずが無いだろ?」 「でも!ルイズに必要なのはガンダールヴで!!」 「ガンダールヴがどうした?今まで娘っ子を守りきれたのはガンダールヴの力だけかい?違うだろ、相棒の想いそれが無きゃ、今頃どっちも死んでたね」 「…」 「相棒のその想いに勝てるヤツなんかいやしないさ。そんなヤツらにあの娘っ子を任して良いのかい?」 「でも!今のオレじゃ守れなくて…」 「大切なのは想いさ、強さはそれからでいい!」 サイトは目を瞑り考える そして… 「もう一回…最初から出きるかな…」 震える声で…別れの森とは違う声で呟く 「出来るさ、相棒には誰より強い想いがある」

19 名前:純愛センター[sage] 投稿日:2006/11/21(火) 01:08:10 ID:id+BY6ci 「でもやっぱりダメだ」 「なんだよ拍子抜けだな…次はなんだい?」 「ルイズの記憶を消したんだ…今更やり直すなんて…」 後悔の念がサイトを襲う なぜ自分はあんなことを!? ガンダールヴなんか気にせず守るって言ってやれば… 「あ〜それ…治せるかもしれんよ」 クソっ!なんで…って 「治せるのか!?」

ルイズが気がついたのは自室のベットの上だった まだ頭が酷く痛む そしてそれと共に頭に焼き付いた一人の剣士の背中… 「誰なの?」 その背中を見るだけでとてつもない安心感が生まれる 「あなたは私の何?」 その背中を見るだけで心の奥の暖かい何かが疼く 「あなたは…」

そして机の上にある、いくつかの見慣れぬ物に目がいく 一つは黒い箱、一つは買った事のない貝のペンダント、そして誰に編んだかわからないセーター しかしルイズはそれが要らぬ物とは思えなかった もしサイトとの思い出が全て消えていたなら迷わず全て捨てていただろう

だがルイズの記憶ではなく、心…そこに刻み込まれた愛しい人への想いが、ルイズの大切な物の消滅を拒んだ それと同時に底の無い絶望感が溢れ出す 「なんで…いないのよ…」

誰に言った言葉かもわからず、ルイズは泣き出した… 何が何だかわからない だが2つわかったことがある 自分は一人だということ

そして

「私が…殺した…」

愛する者が死んだという事実

27 名前:純愛センター[sage] 投稿日:2006/11/21(火) 08:38:55 ID:id+BY6ci 少し更新

シエスタがルイズの部屋に入った時、目を覚ましたルイズが泣いているのを見つけた 「どうしたんですか!?ミス・ヴァリエール!」 また記憶を戻そうとしているのかもしれない 「シエスタ…」 ルイズはシエスタに崩れるようにもたれた 「私が…私が殺したんでしょ?」 「違います、あなたは誰も殺したりしていません!」 「でも…私のせいで…それなのに私…その人の顔もわからない」 シエスタは驚愕した サイトは確かに記憶を消したと言っていた だがどうだろう この小さな貴族はそれを覚えているではないか そして自分を守ってくれた使い魔のために涙を流している なら… 「ミス・ヴァリエール、今から私の言うことをしっかりと聞いて下さい」 ルイズは涙を拭い、シエスタの方を見た 「この話はとっても辛いお話しです。ミス・ヴァリエールは耐えきれなくなるかもしれません。それでも…それでも聞きたいですか?」 ルイズは頷く 目には先の涙の跡があったが、しっかりと自分を保とうという強い意志が感じられる 「では…」 シエスタは話した 私には使い魔がいたこと その使い魔が人間でいつも私の側に居てくれたこと 「大丈夫ですか!?」 「大丈夫…続けて…」 また酷い頭痛がする 気を失いそうだ でも聞かなきゃ 自分を守ってくれた人のことを 「…わかりました。ミス・ヴァリエールはアルビオンの軍隊を足止めするように命令されました」 そう、自分は確かに「死ね」と命令された 「そう命令されたあなたを守ったのがミス・ヴァリエールの使い魔さんです」 黒髪の剣士の背中が今までで一番激しい頭痛のなか蘇る 「その使い魔さんはあなたを睡眠薬で眠らせました。そして一人、アルビオン軍へ…」 そこまで話すとシエスタは泣き出してしまった 彼女も辛くて辛くてどうしようもないのである 好きな人が生きていることが分かっていても、自分にはどうしようもない そんな無力感に必死に耐えていたのだ 「ごめんなさい…」 「謝らないで…教えてくれてありがとう」 「まだあるんです。その使い魔さんはまだ生きてるんです」 「え!?どこにいるの?」 「今はわかりません…」 酷い頭痛の中、深い絶望感と悲壮感の中に光が生まれた 会いたい…顔も…声も…何もわからないけど あなたの背中しかわからないけど

会いたい…会いたい…

28 名前:純愛センター[sage] 投稿日:2006/11/21(火) 10:38:25 ID:id+BY6ci 自分の代わりに命を賭けてくれた優しい使い魔 「その使い魔の名前は…なんて言うの?」 シエスタはちょっと考えて 「教えません!」 「なっ、なんでよ!?」 「ちょっとイジワルです♪本人に会ったときに聞いてあげて下さい」 多分2人は会うだろう こんなにも想い合ってるんだから だからほんの少しのイジワル 「うん、わかった」 「それと…」 シエスタは記憶を消したのはその使い魔だと言おうか悩んだ 自分が言うことで2人を引き裂かないだろうか そう悩んでいるとルイズの目を見る 鳶色の真っ直ぐな目 決心に満ちた信念の目 悩む必要なんてなかった 「ミス・ヴァリエールの記憶を消したのはその使い魔さんです」 ルイズは驚かなかった なんとなく気付いていたのだろう 「それでも会いに行く、あっちが会いたくないって言っても…せめて御礼を言うまでは絶対に諦めない!」 ルイズはそう言って立ち上がった 「無理です、ミス・ヴァリエール…」 「なによ!不可能なんかないわ!絶対できる!!」 「お金が…」

2人の所持金はすでに底をついていた

34 名前:純粋センター[sage] 投稿日:2006/11/21(火) 22:29:21 ID:id+BY6ci チマチマとしか更新できなくてスマン… 毎日更新はするから許してくれ

ってことでチョット投下

35 名前:純粋センター[sage] 投稿日:2006/11/21(火) 22:31:23 ID:id+BY6ci ルイズは顔もわからない使い魔に会いに行くことを決心したが、大きな壁が立ちはだかった 「アルビオンに行った時に全部使っちゃって、今はもう…」 『お金』である ドラゴンやグリフォンが使い魔でない限り、アルビオンに行くには船しかない だが2人の持つ全てのお金をかき集めても雀の涙程度 誰かから借りようにも、ギーシュ、モンモンは貧乏貴族。アンリエッタに借りようにも私財を投げ売らなければならないほど国庫が枯渇したと聞いていたので、自分に出せるような金などないだろう 「せめてアルビオンに行ければ手もあるのに」 ルイズは爪を噛んだ 「あるには…ありますよ?」 シエスタが迷いながら言う 「ただ…使える人が居ればの話しですが」 「何!?どうすれば良いの!?」 「多分、ミス・ヴァリエールには無理です。っていうかあれを使えるのはこの学院には…」 「だから何なの!?はっきり言って!」 シエスタは自分が考えている、限りなく不可能に近い方法を言った 「…」 「ね?無理でしょう?あぁ、ならどうしよう…」 「あんた、アレ使えないの?」 シエスタは世界の終わりが来たかのような怯えた目で言う 「むむむむむむ無理ですよ!操縦の仕方は教わってますが…」 「なんで?元々はあんたの家の物じゃない」 「でも飛ばしたことなんて無いですもん!」 「物は試しよ!お金は無いし時間も無いの!私の使い魔がどっか行っちゃうじゃない」 あぁサイトさん…戻って来ても尻に敷かれるのは間違いないです シエスタは目線を伏せて申し訳なさそうに言う 「でも無理な物は無理ですよ…一度も飛ばしたことないですし…」 確かにルイズの力にはなりたい がっ、それでもし自分が操縦に失敗すれば元も子もない 罪悪感にさいなまれながら目線を戻すとルイズは有り得ない行動をしていた 「お願い…一回だけで良いから…お金だって…今は無いけどいつか払うから!一回だけで良いから…」 ルイズは頭と膝を床につき、震える声でシエスタに懇願していた 「やめて下さい!ミス・ヴァリエール!」 貴族が平民に土下座したなど聞いたことがない 「なぜ顔も知らない人の為にそこまで出来るんですか…」 ルイズはその姿勢を続けて答える 「会いたいの…なんでかわからない…けど、どうしようもなく会いたいの…だから…」 あぁそうか… 「拒絶されるかもしれませんよ…?」 顔が思い出せなくてもこのコは… 「それでも…会いたいの…」 サイトさんを愛してるんだ

65 名前:コピーミスった…[sage] 投稿日:2006/11/22(水) 22:57:53 ID:Ljha/dsJ スマン!!コピーミスったんでこっちを見てくださいm(_ _)m

「あぁ、あれが魔法なら大丈夫さ」 「どうすりゃいいんだ!?」 驚いて声を上げるサイトをデルフはなだめるように言った 「あれは要するに水の洗脳魔法と同じようなもんさ。」 デルフの説明によると、あの魔法は記憶そのものを奪うものではなく、その記憶を取り出そうという信号を消すものだということだった 「記憶本体を奪うなら虚無の力なら脳みそごと消せばいいだけさ。ブリミルがそうしなかったのは、後でそれを解除できるようにってことで信号を消すって手段をとったんだろうね」 「ディスペル・マジック…」 「そうさね。それであの娘っコの記憶は戻るさ」 また大好きなご主人様の所へ…ルイズの所へ戻りたい しかし記憶を奪ったという罪悪感がその欲救を抑え前に踏み出せない… 「あとは相棒が決めな。オレはもう何も言わんさ」

一方、トリステイン魔法学院ではシエスタが必死になってゼロ戦を整備していた 「ミスタ・コルベールが設計図を残してくれて助かりました」 彼はゼロ戦にとても深く興味を持っていたので、分解した時に書き記したであろうメモや設計図が見つかったのだ ルイズが操縦席の後ろの隙間から声をかける 「飛びそう?」 ルイズは最初は手伝おうとしていたが、操縦席から転げ落ちそうになったので後ろで小さくなっていた 「はい!軍の方でもしっかり整備されていたみたいですし、固定化の魔法のおかげで部品の劣化もないので大丈夫だと思います。ただ…」 「ただ?」 「燃料が保たないと思います…せめてあと樽が3本分は必要かと」 コルベールが予備のガソリンを置いておいてくれたが、なにしろ目的地は空である たどり着くにはかなりの燃料が必要であった 「どうしましょうか?」 「「土」の系統のメイジに頼むしかないわね。手頃な「土」系統のメイジといったら…」 いるではないか、頭のネジが10本は抜けた「土」系統のメイジが! 「ちょっと待ってて!」 ギーシュが暖炉の前でとてつもない寒気を感じたのは言うまでもない

121 名前:純愛センター[sage] 投稿日:2006/11/23(木) 22:13:18 ID:N3Z4Crs7 ギーシュは屍と化していた 前にモンモラシーに秘密で後輩に手を出したことをダシにされ、精神力を限界以上に使わされたのだ 「ほら、早く練成しなさいよ!」 「も、もう無理だっ…」 ルイズはこれまでサイトに向かっていた、溜まりに溜まったドSっ気をギーシュへ発散しまくっていた 「へー。モンモラシーにバラしても良いのね?」 そんなことをされたら今以上にヒドい目に会うだろう 「わ、わかった!わかったからそれだけは…」 「ならさっさと仕事する!」 ギーシュは文句を言いながらも協力を惜しまなかった シエスタからルイズの記憶からサイトが消えてしまったと聞いた時は出来るだけ触れないでおこうと思ったが、そのルイズがサイトを探すと言ったのである。協力しないわけがない 「まったく…彼も果報者だね」 「いいからさっさと呪文を唱える!」 ルイズの鞭が生物のように襲いかかる 「ギャァァァァ!!!!」 ギーシュの夜は長い…

サイトは森から戻っていた 「サイト」 ティファニアが声をかけて来た 「どうしたの?テファ」 「実は…いつも来てくれていた商人さんが急に倒れちゃったらしくって」 「えっ!?大丈夫なの?」 「うん、ただ少しの間来れないみたいで…」 ティファニアの村は食料や日常生活に必要な物の殆どをその商人から買っていた 「だから街まで買い物に行かなきゃいけないんだけど…」 サイトはティファニアが言いたいことを理解した 「いいよ、オレが行く!」 ティファニアはハーフエルフである。街へ出ていけば何をされるかわからない かと言って子供達に街まで行かせられるハズもない 「本当!?」 「うん、やることっていっても剣の修行しかないし」 「じゃあ明日、サウスゴータまでお願いね」 「わかった」 運命の歯車は動きだす…

122 名前:純愛センター[sage] 投稿日:2006/11/23(木) 22:15:34 ID:N3Z4Crs7 「で、できたぞぉ…」 ルイズの脅迫と鞭を体に受け満身創痍の中、ギーシュは樽三本分のガソリンを完成させた 「ありがと、助かったわ」 ルイズは素直にお礼を言った 「まったく…これで見つからなかったら君を呪うからね!」 「大丈夫。必ず見つけるから!」

できたガソリンをゼロ戦の中に入れる 「入ったわよ!シエスタ」 「わかりました。エンジンをかけるので乗って下さい!」 ルイズは操縦席の後ろに乗り込んだ 「ミス・ヴァリエール、エンジンをかけるので魔法でプロペラをお願いします」 ルイズは軽くルーンを描きプロペラの前の空間を爆発させプロペラを回転させる それを見てシエスタは操縦桿を握る 「さぁしっかり捕まってなよルイズ!」 口調がおかしい… 「シエスタ?」 「この振動…この緊迫感…私はこのために生きている!」 「ちょ…落ち着きなさいよ!」 「私は風よ!!風になるのよ!!」 「待ちなさい、ってキャー!!!!!」 二人を載せたゼロ戦はアルビオンへ向かって空に飛んだ ルイズの悲鳴とシエスタの狂声を発しながら…

184 名前:純愛センター[sage] 投稿日:2006/11/24(金) 23:37:42 ID:YqH/Cp8C 「じゃあ、これお願い」 そう言ってティファニアは食品や生活用品などが書かれたメモを取り出した 「往復するのに1日かかっちゃうだろうから明日の夜あたりに戻ってくるね。」 「うん、わかった」 そしてティファニアから買い物分の金貨と宿代をもらい、サイトはサウスゴータへ歩きだした

二人はロサイス近くの平原に降り立っていた 「し、死ぬかと思ったわ…」 ルイズはゼロ戦の操縦席の後ろでモグラのようになっていた 「えっと…私、何しましたか?」 とゼロ戦を操縦していたシエスタが聞いてきた どうやら本人は操縦していた時のことを全く覚えていないらしい… 「あんたはねぇ!「私は風になる女!こんなガラスなんていらないわ!」とか言い出して海のど真ん中で周防を割り出したの!死ぬかと思ったんだから」 他にも「私はトリステインの守護神フェニックス!不死鳥のシエスタに勝てるものなどいないわ!!」とか言い出して貴族の船に空からガソリンをバラまこうとした… 急に泣き出して「私も後を追います」とか言い出して、操縦席の後ろに積んであるガソリンに火をつけようとした… 他にも…etc. その度にルイズがシエスタを必死になって抑えたのでルイズは疲労困憊していた 「ご、ごめんなさい!ひいおじいちゃんに操縦を教わった時も記憶が飛んじゃったらしくて…気づいたら隣に息をしてないひいおじいちゃんがいて…」 ルイズは金輪際、シエスタの運転するゼロ戦には絶対に乗らないことに決めた 「ま、まぁアルビオンにつけたんですし!早くサウスゴータへ行きましょう!」 「そ、そうね。」 「じゃあ早くゼロ戦に…」 「絶対にイヤァァ!!!!!!」 ルイズのワガママ、及び自己防衛のために二人はサウスゴータまで歩くことになった 二人はまだ気付いていない 小さな人形が二人を追いかけていることに

185 名前:純愛センター[sage] 投稿日:2006/11/24(金) 23:39:26 ID:YqH/Cp8C 「さて、どうするか…」 サイトは夕方にはサウスゴータの街についていた しかしこの世界の店じまいは早い… すでに食料品を買えるような時間ではなく、仕方がないので宿を探すことにした ティファニアは余裕をもってお金を渡してくれたので安宿だが宿を見つけることは出来た しかし安宿は安宿…前にどこぞのお姫様と泊まった宿よりも汚い… 部屋に入り体に染み着いた使用人根性で掃除を始めるとデルフリンガーが口を開いた 「相棒、あの隊長様に何も言わずに出てきたみたいだが…大丈夫かね?」 忘れてた… 「あの姉ちゃんはヘタすりゃあの娘っ子よりドSだからねぇ。帰ったら相棒、死ぬかもしらんね」 ぷるぷる震えながら言う。恐らく笑われている… やはりいつか溶かすしかない 「なぁデルフ…」 「なんだね、相棒」 「散歩…行かないか?」 「オレぁ、相棒の行くところならどこだって行くさ」

ルイズとシエスタもサウスゴータの街へ着いていた が、お金が無いので前と同じように広場にテントを張る 「じゃあ私は晩御飯を用意しますので」 と言ってシエスタは料理を始めた こうなるとルイズはすることがない… 貴族の習性というヤツで自分から何かするということをするような人間ではないのだが、いくらなんでもシエスタに任せすぎた 自分も何かしないと…という気持ちになる 「シエスタ、私何かすることある?」 シエスタはそんな自分の不安を汲んでくれたのだろう 「ではかまどの火を見ていて下さい。私はもう少し食材を調達してきますね」 「うん、わかった!」 シエスタは街の外へ歩いて行った 周知の事実だが、ルイズは料理がダメである。 貴族だからというのもあるかもしれないが、それに輪をかけた料理オンチである… そんな娘に「火を見ていて下さい」と言えばどうなるかは想像に難くない 案の定、ハリキリ過ぎたルイズはかまどの火を消してはならないと思い、薪を入れすぎる 「キャー!!何よコレー!!」 すると次に「火を消さないと」と躍起になる もちろん天性の才能から水ではなく油をぶっかけてさらに火は大きくなる 痛感させられた 私はやっぱり一人じゃ何も出来ない… 意地ばっかり張って、最後には人に泣きつくばかり… 「ごめん…なさい…」 燃え盛る炎の前で、ルイズは泣き出してしまった 自分が何も出来ない悔しさ…それからくる涙だった そして本格的に火事になりかけた時 「大丈夫か!?」 一人の平民が私を救い出してくれた

238 名前:純愛センター[sage] 投稿日:2006/11/26(日) 01:25:01 ID:jZje8mnM しかもsage忘れ…orz

夜の街はまだ少し肌触かった 「前歩いた時は…シエスタに泣かれちゃったんだっけ」 降臨際の夜に一人あてどなく歩いていた時に泣きながら自分を引き止めてくれた そして自分に「生きて」と言って眠り薬をくれた優しい女の子 「眠り薬のお礼…してなかったな」 そのおかげで大事な人を守ることが出来た そんなことを考えていると、デルフリンガーが話しかけてきた 「相棒」 「どうした?」 「実はよぉ。言おうか迷ってたんだが…」 「なんだよ、早く言えばいいだろ」 「いや、もう遅かったみたいだ」 「へ?」 「サイトさん!!」 その声が聞こえた瞬間、ハルケギニアでは珍しい黒髪のメイド服を着た少女に腕を掴まれた 「シ、シエスタ!?」 「見つけ…ました…」 肩で息をして涙目になりながらも握った腕は離さない 「な、なんでここに…」 「探しに来たに決まってるじゃないですか!」 自分を?なんで… 「オレは誰からも必要とされてないよ…」 だからご主人様の記憶も奪った 「それにオレはキミが憧れた貴族に勝てる平民じゃない…ルイズを守る力も無いんだ」 パァーーン! 左頬をひっぱたかれた 「何を言ってるんですか!ミス・ヴァリエールはあなたが死んだと思っていた時、自分も後を追おうとしたんですよ!?」 ルイズが…オレの? 「それだけじゃありません!サイトさんに記憶を奪われた後、ミス・ヴァリエールは泣きました!記憶も無いのに…サイトさんの顔もわからないのにですよ!?」 「な…んで…」 「それに私が好きなのは貴族に勝てるサイトさんじゃありません。どんなことがあっても諦めないサイトさんが好きなんです!」 シエスタは息もつかずにまくし立てた そして最後に… 「少しは自分が他人にどう想われてるか…考えて…」 そう言ってサイトの胸に頭を預け、泣き出してしまった

239 名前:純愛センター[sage] 投稿日:2006/11/26(日) 01:28:18 ID:jZje8mnM シエスタはしばらくサイトの胸に顔をうずめ泣いていた サイトは思った このどうしようもなく優しい子は自分を好いてくれている 今も自分を好きだと言ってくれた でも… 「ルイズも…来てるの?」 命を賭けると決めた人がいるから シエスタはそれだけでわかってくれたらしい 「やっぱり…私じゃダメですよね…」 何も言えない。この優しい女の子を悲しませたくはない… でも自分の心にこれ以上嘘はつけない 「ミス・ヴァリエールは広場にいます。サイトさんのことは忘れたままですが…」 「シエスタ…」 「早く行ってあげて下さい!」 「うん…ありがと」 サイトはそう言って駆け出して行った 「もうちょっとだけ…好きでいても良いですよね…」

広場ではちょっとした混乱が起きていた 混乱のヒドい方向から歩いてきた男を引き止める 「どうしたんですか?」 「ボヤ騒ぎさ。どっかの貴族がかまどを燃やしちまったらしい」 そう聞いた瞬間、サイトは走り出していた 魔法が使える貴族がボヤ騒ぎなんて起こすはずがない 考えられる人物は一人しかいない そして

見つけた

オレの大事な

全てを賭けて守りたいと願った

大好きなご主人様…

「大丈夫か!?」 彼女は泣いていた

317 名前:純愛センター[sage] 投稿日:2006/11/28(火) 01:13:31 ID:BYDRGXFY 黒髪の彼は私を救ってくれた 燃え盛る炎からではない 孤独、不安、無力感から… 大剣を背負ったその背中は与えてくれた 安心、歓喜そして希望を…

サイトが火を消し止め後もルイズはずっと泣いていた その涙はさっきまで流していた孤独の涙ではない 歓喜の涙…

しばらくして泣き止んだルイズが口を開く 「アンタ誰よ?」 「お前…恩人に「アンタ誰」は無いだろ!?」 「アンタ平民でしょ?なら貴族に名前を聞かれるだけでも光栄に思いなさい!」 すっかりサイトと出会う以前のルイズである 「ヒラガ…っておい何泣いてんだよ?」 「うるさい!アンタ見てると…」 心が喜んでいる 記憶になくともサイトともう一度会えた、また話せる、その溢れ出す喜びをルイズは止めることが出来なかった 「もう、アンタ訳わかんない…」 サイトはルイズの頭を左手で抱えた 「な、何すんのよ…」 だが言葉とは正反対に体全体に心地よさが走る 「泣いてる女の子はほっとけねぇよ。」 ルイズの精神は不安や緊張で固く強ばっていた が、この平民の腕に抱えて貰っただけで、それら全ての物が溶けていく 「なんでかしら…アンタがそばにいるだけで…」 「安心して眠くなっちゃうってか?」 「なっ!?ち、ちち違うんだから!へへへへ平民の前で眠るわけないじゃない!」 サイトは吹き出した やっぱりルイズだ 「なら貴族がこんな所で野宿なんかしちゃダメだろ?」 ルイズは懐かしい…真っ赤にした顔で反論する 「さ、探し物を探しに来たのよ!それでこの街に着いて宿を借りようとしたら満室で…」 「オレは借りれたぞ?」 「わ、わわわ私は貴族よ!アンタ達みたいな平民が泊まる安宿なんかに泊まれるわけないじゃない!」 (ヤバい…可愛いすぎる…) 興奮やら怒りやらで言葉を震わせながら反論するルイズがどうしようもなく可愛い だからもう少しイジワルをしてみたくなるのも仕方ない うん、絶対仕方ない 「オレの宿に泊めてあげようかと思ったけど…泊まれないんじゃ仕方ない…」 そう言うと、あわあわと口を開きながら 「で、ででででもどうしてもって言うんなら泊まってあげないこともないわ!」 サイトの予想通りの答えが返ってくる 「いえいえ、平民が泊まる安宿に貴族様を泊めることなど…このしがない平民にはとても…」 「き、気にしなくていいわ!たまには平民の生活を体験するのも良いことだし…」 この言い合いは裏で我慢していたシエスタが出てくるまで続いた

318 名前:純愛センター[sage] 投稿日:2006/11/28(火) 01:15:14 ID:BYDRGXFY 「もう、何やってるんですか!」 およそ30分に渡る不毛な言い合いに痺れを切らしたシエスタがそれを止めた (シ、シエスタ!?まだ言ってないから黙っててくれ) という信号をジェスチャーでシエスタに送る シエスタはその信号をなんとか理解してくれたらしい 「ミス・ヴァリエール、この方は?」 「ただの平民。宿に泊めさせてくれるって」 「ちょ、まだ泊めるとは…」 「ありがとうございますね!」 シエスタが大きな声でハッキリと、サイトの声を遮るように言った 後ろから何か黒い物が出ている… 逆らっちゃいけない 逆らっちゃいけない 「どうぞご自由にお使い下さいませ…」 「よかったわ。じゃあ早く案内なさい!」 サイトが奴隷扱いなのはもう彼の運命なのだろう…

宿に案内するとサイトはルイズに追い出された 「平民が貴族と同じ部屋で寝ようなんて何考えてるのかしら」 仕方がないのでサイトがルイズ達が張ったテントの中で野宿することになった 「相棒、楽しそうだねぇ」 「そう見えるか?」 「あぁ。あの娘っ子にどやされてる時なんか至福の顔だった。叩かれて嬉しそうにするなんて相棒はやっぱり変態だねぇ」 「まぁ…確かに楽しかったしな。…やっぱりオレはルイズが好きだわ」 「戻すのかい?」 「…まだ迷ってる」 「言っておくが相棒…娘っ子のあの涙は相棒が流させたんだからな」 「うん…わかってる」

ルイズは部屋のベッドの上でボーっとしていた 「よかったですね。親切な方がいて」 シエスタが話しかけても反応がない… 「ミス・ヴァリエール?」 やっぱり何も反応がない… シエスタは諦めて、さっき蒸発してしまったヨシェナヴェをもう一度作り直しに行った ルイズは混乱していた (なんなのよ!さっきのアイツは!) 楽しかった…あの平民と会うまではどうしようもなくギリギリまで心が追い詰められていたのに あの平民と話してからは安らかな安心感が溢れてくる (名前…聞いてなかったな…) と思った所で本来の目的が頭から飛んでいたことに気がついた 絶対に見つけてやるんだから! 明日はあそこへ行こう 戦争の時に何故行ったか覚えていない… けど心に一番強く残っているあそこへ…

402 名前:純愛センター[sage] 投稿日:2006/11/29(水) 22:18:04 ID:N3KDcKKL 「起きなさい!平民」 「ひでぶっ!」 サイトは寝起きに北斗…ではなくトーンキックを鳩尾にくらい悶絶していた 目を開けると桃色の少女が仁王立ちしていた 「ごめんなさい、ご主人様!今すぐに洗面器を用意するから飯抜きだけは…」 サイトの奴隷根性は二、三ヶ月では抜けないらしい 「洗面器はいいから。アンタこれから暇なの?」 サイトはまだ半分寝ぼけた頭を使って考える (なんだ急に…これから暇かってオレには買い物が…イヤ、ちょっと待て。女の子が男に暇を聞くって…まさか!?) いや、有り得なくはない。あっちはオレのことわからない訳だし、昨日のオレの格好良さに惚れて… 参ったなぁ。ルイズさんオレに一目惚れですか。一目じゃないけど… 「暇なの?暇じゃないの?どっち!?」 「はい!暇でしゅ!」 「ならついてきなさい」 と言って向かった先は昨日サイトが追い出された宿屋だった (おいおい、まさかいきなりGo To The Bet!?まだ朝だぜ!?ルイズさん、ちょっと大胆すぎ…って鼻血があぁぁぁああ!) 「ハイ、これ」 鼻血を吹き出していたサイトにルイズがとても大きな荷物を渡した 「これからロサイスに行くから。アンタ荷物持ち兼用心棒。いちおう剣士みたいだし」 サイトはやはり奴隷だった

406 名前:純愛センター[sage] 投稿日:2006/11/29(水) 23:02:15 ID:N3KDcKKL

サイトとルイズはロサイスへ続く道を歩いていた 「なぁ、ルイズ」 「何よ、っていうか何でアンタ私の名前知ってんのよ」 「そこは気にするな。なんでシエスタは連れてこなかったんだ?」 「これから行くとこはシエスタには見られたくないの」 あそこは…私の一番大事な場所だから 「オレはついてきてよかったのか?」 「荷物持ちと護衛はいないと不安じゃない」 でもそれだけじゃない… この平民が側にいてくれるだけで安心する 街にいるもっと強そうな傭兵を雇わなかったのはお金の問題だけではない この人なら絶対に私を守ってくれる そう感じたからこそ彼を選んだのだ

サイトはもちろん行き先はわかっていた だから敢えて聞く 「そこに何しに行くんだ?」 「前言った探し物を探しに来たの。正確には人だけど…」 「どんな人なんだ?」 ルイズは考えた どんな人だったんだろう… わかるのはその人の背中とシエスタが話してくれたことだけ 「顔は思い出せない…けど大事な人」 サイトは「オレがそうだ」と言いたい衝動にかられながらも必死にそれに耐え、言葉を紡ぐ 「もし会えなかったら?」 「会うまで探す。」 「会ってどうすんだ?」 「…決めてない」 サイトは心で願った そして誓った 神様…イヤ、ブリミル様か? ガンダールヴにしろなんか言わない オレとルイズをくっつけろなんかも言わない 「なら…」 どんな辛いことされたっていい 次こそ、この命をあげたっていいから だから… 「お前がソイツに会えるまで」 このワガママだけは許してくれ 「オレがお前を守ってやる」 もう一度…命を賭けて…

592 名前:純愛センター[sage] 投稿日:2006/12/04(月) 23:13:53 ID:ohcY1ndg そろそろクリスマスネタを考えないといけない時期に…

ちょっと更新

この平民は何を言っているんだろう。 自分とこの平民はほぼ初対面であるはずだ。 だが彼は。

「オレがお前を守ってやる」

そう言った。 なんでこんなことが言えるのだろうか… しかし、ルイズにはさらにわからないことがあった。 彼が守ると言った時…心の奥の方に生まれた懐かしいような、嬉しいような気持ち… これはなに?

ルイズは何も言わずに走って行ってしまった。 「あ〜やっぱり急すぎたかな…」 背中のデルフが口を開く。 「相棒、2つほど聞いていいかい?」 「なんだよ?」 「相棒が名乗らないのはあの娘っこの中に残らないようにするためかい?」 記憶を戻せばまたルイズと一緒にいられる。 だが自分はもうガンダールヴではない…。 そんな自分がルイズと一緒にいれば恐らく…いや、確実に自分は死ぬだろう。 そうなればまたルイズが深く傷つく… 優しいご主人様のことだ…今度こそ虚無の運命に押しつぶされるかもしれない。 なら自分は「平賀才人」という名を捨てる。 名前も知らない平民であれば、もし自分が死ぬことがあっても代わりがきく。 「今のオレは代わりがいるからな。」 全てはルイズを守るため… 「もう一つ…相棒があの娘っこの記憶を戻すとすればどんな時だい?」 少し考えて… 「オレがガンダールヴだった時みたいにルイズを絶対に守れるようになってからだ。」 いくら側にいたくても、自分には力が無い… ルイズの前に平賀才人が現れて良いのはルイズを絶対に守れるようになった時だけ。 「その道は辛いぜ…相棒」 「一回死んでんだ。なんとかなるさ。」

そして走り出す。 愛する人のもとへ…

255 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/05(火) 00:58:07 ID:YT0Rn6oc 寺院の中はほとんど変わってはいなかった。 夕日に照らされたステンドグラス、荘厳な雰囲気をかもし出している祭壇、そして最奥に二人を歓迎するかのように立つ始祖の像。 だが変わっているものも見つかった。 少しだけ埃を被ったイス、旅人が訪れでもしたのだろうか、ロウが溶けきってしまったロウソク、そして落ちている二つのグラス。 「ここ…」 私はしっかりと覚えている。戦場から味方を逃がす、そのために敵軍に特攻する直前、最後に来た場所。最後にいようとした大切な場所。 なぜ自分はこんなところを最後の場所になどしようとしたのだろうか。 なんのためにこんなところに来たのだろうか。 わからないその理由。わからないからわかる。 ここは私とあの背中の人最後にいた場所なのだと。

寺院奥、祭壇近くまで進む。 「ここはね、私の一番大事な場所なの」 町から連れてきた平民に、ただの気まぐれで声をかけた。 「なんで…一番大事な場所なんだ」 男も寺院の奥にまで歩いてきた。 私は始祖の像を見上げながら質問に答えてやる。 「ここが最後に会った場所だから」 「そんな場所にオレなんかを連れてきてよかったのかよ」 バカ 「あんたは私のことを守るんでしょうが!離れてちゃ意味ないじゃない!」

256 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/05(火) 01:00:14 ID:YT0Rn6oc 「そうだな」 後悔が心で渦巻く。 もしあの時に記憶を消していなかったら。 そんな思いを無理やり頭の中から追い出す。 ルイズの記憶を戻したい。でもそれをすればガンダールヴでない自分は必ず死ぬ。また自分が死んでルイズを泣かせるような真似はできないし、もとより自分が決めたことだから。 オレは強くならなきゃならない。ガンダールヴじゃなくてもルイズを守れるくらいに。 わかってる。理解している。 ―そんなことは不可能だ― これまでルイズを守ることができたのは虚無の力、ガンダールヴの力があったからである。 『平賀才斗』なんかになにができよう。どんなに修行しようと、どんなに時間をかけようと不可能は不可能、せいぜいそこいらの兵士一人を相手にするのが精一杯である。 できることと言えば次のルイズを守る者、次のガンダールヴが現れるまで命を賭けてルイズを守ることくらい。 それでも…なにかの拍子で、いつの日かルイズを守ることができる力が手に入るかもしれない…そうして記憶を戻せばまた前みたいに… そんなくだらない希望、妄想に心が縋りつこうとする。 「お前方向音痴っぽそうだしじゃじゃ馬っぽいし、近くにいてやらないとどこ行くかわかったもんじゃないしな」 「あんですってぇ!?」 「ここに来る時もさんざん迷って迷ってだったしな」 「ああああああやって来るのが一番の近道だったのよ!」 怒ってる。 「へいへい、わかりやしたよ貴族様」 「なんか感じ悪いわねぇ」 むくれてる。 やっぱ無理。 「ちょ!!!ああああああああんたなにすんのよ!!!」 気づいたら腕の中にルイズがいた。

257 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/05(火) 01:04:58 ID:YT0Rn6oc 「悪い…悪い…」 耐えられるわけがない…我慢など出来ようはずがない。 半年。半年一緒にいて、寝て、食べて、歩いて、生きた好きな人がそこにいるんだ。そこからいなくなっちゃうかもしれないんだ。いらないと言われるかもしれないんだ。 会った瞬間は我慢したんだ。二人っきりになっても我慢したんだ。 だから、許されないかもしれないけど。 でも…それでも… 「今だけ、もうしないしお前にも半径十メートル以内には近づかない!雑用だろうが奴隷だろうが犬だろうがなんだってするから…」 気づいたら泣いていた。 「許してくれ…」 その懇願はどこに向けたものなのだろうか。 今自分を抱きしめていること? それとも全く違うこと? 男は滝のように涙を流し自分を抱きしめる。 不思議と嫌悪感はなかった。平民にだきしめられているのに、男のだれにも抱きしめられたことなんてなかったのに。 さらには心地良さまで感じてしまう。安心感という名の。 だから 「うん、許したげるわ」 男の肩がビクンと震えたが気にせず続ける。 「その変わり!あんたはこれから一生私を守りなさい!わかった!?」 男は驚いた顔をして 「オレで…いいのか?」 とかきいてきた。 聞かれてからなぜかのすごく恥ずかしくなってきた。 一生ってなんかプロポーズみたいじゃない!!ダメダメ!!ダメなんだから! 貴族が平民なんかと結婚できるわけがないんだから!! 「べべべべ別にあんた以外のやつでもいいんだけど探すの面倒だし、高貴な物のなかに一つくらいは汚い物があったっていいじゃない!」 「ルイズ…」 「そそそそそれに家に一匹くらいペットがいたっていいじゃない!よかったわねぇ、私がまだペットを飼ってなくって」 「ルイズ!」 男の顔には涙の跡など微塵もない。あるのは… 「オレ、守るから…」 揺るぎのない覚悟だけ。 「お前を一生…命を賭けて」

そうして数分、二人の間に会話が生まれなかった。

瞬間

その静寂を破る者が現れた。 「あら、もう茶番は終わり?」 冷たい女の声と無数のガーゴイルの群。

248 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/09/07(金) 22:55:29 ID:IhPYOVUi とっさにルイズを背に隠し剣を構える。 「こいつぁ…かなりヤバいことになっとるねぇ」 幾度も共に死線をくぐってきた相棒が最大限の注意、警告を発する。 「あいつらは人間じゃねぇ。人っぽい形はしているがアルヴィー、つまりメイジやそこいらの戦士を倒すことに特化したガーゴイルみたいなもんだ」 周りには剣で武装したもの、銃のようなものを構えているもの、果てには人間の形ですらなくトラと鷹を合体させたようなものまでいた。

「ごめんなさいねぇ。もうすこしだけ付き合ってあげてもよかったんだけど、中睦まじいカップルが自分達の世界に入ってるのを見るとどうにも抑えがきかなくって」 と乱入者は笑いながら、というより口の端を吊り上げて睨みつけるような顔で言い放つ。

「この無礼者!!貴族にも関わらず、名も名乗らずに貴剣を向けるとは!万死に当たると思いなさい!」 アルヴィーといえばれっきとしたマジックアイテム。もちろん平民などに扱える代物ではなく、当然ルイズは「相手は貴族」と考えた。 しかし 「あら、悪いわねぇ。私、貴族なんかじゃないの」 「馬鹿言わないで。これだけの数のアルヴィーを平民が使えるはずがないじゃない」 「ええ、だから私が平民だと言ったおぼえもないわよ」 女は楽しそうにそう言って前髪をたくしあげた。 「お初にお目にかかりますわぁ。虚無の使い魔ミョズニトニルン。以後お見知り置きを…」 額には使い魔である証、古代文字のルーンが浮かび上がり、強い光を放ち続けている。

サイトにはあのルーンに見覚えがある…この半年の間ルイズを守り切ることができた一番の理由。そして今もっとも欲しているものと同じものを忘れられるはずがない。 「ほんとのことらしいな…」 「ええ、もちろん」 人を馬鹿にしているのか、それともこちらの予想通りの驚きに笑いをこらえられないのか、邪悪に声を弾ませている。 「でその虚無の使い魔さんが俺達に何のようがあるんですかね」 もちろん、あちらさんが友好的な行動をとってくれるかもなどという考えは接触した瞬間から捨てている。話し合いをしようという人間が剣を持ってくるはずがない。 これは相手がどの程度自分達に敵意を持ち、どの程度の攻撃を受ける可能性があるのかを計るためのもの。それによりこれからの行動が変わってくる。 相手が自分たちを捕獲、誘拐しようというのであれば抵抗さえしなければ、すぐに殺されるということはない。 しかし、もしも相手が自分たちを殺す目的で襲ってきているのだとすれば… (最低、ルイズだけでも) と考えたところでルイズの様子がおかしいことに気がついた。

249 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/09/07(金) 22:56:10 ID:IhPYOVUi 肩を震わせて必死になにかを呟いている。

「虚無の使い魔…なんで…」 としばらく考えたあと堰を切ったように大声でミョズニトニルンへと詰め寄った。 「ミョズニトニルン!!あなたは私の使い魔であったことがあったかどうか、答えなさい!!」 ルイズは自分が虚無の使い手であることは覚えており、そして自分の使い魔が虚無の使い魔であるということも、普段の勉強による知識から理解していた。 しかし肝心の使い魔がガンダールヴであるのか、ヴィンダールヴなのか、それとも他の二つのどちらかなのか… 自分が理由もわからなく覚えている場所に現れた虚無の使い魔が自分の探している人であると考えるのは自然の摂理である。 女はそれを聞いて、弾んでいた声をさらに震わせて話す。 「さ〜あどうかしら。もしかしたらそうなのかもしれないし、そうじゃないのかもしれないわよ」 「ふざけてんじゃないわよ!」 「あら、ふざけてなんかいないわよ?からかってるだけ♪」 「なっ!?」 先まで困惑と期待で震えていた肩が列火の怒りで震える。今すぐあの女に飛びかかりたいがそれでも… (あれが私の使い魔かもしれない) その希望が消えない。どんなに嫌な奴であったとしても自分の命を救ってくれた人である。7万の軍隊から身を挺して、命を賭けて救ってくれた人である。 その人かもしれない人物に襲いかかるなど誰が出来ようか。 「ついでにボウヤの質問にも答えてあげるわね」 楽しそうな悪魔が死の宣告を告げる。 「もちろん『殺しに』に決まってるじゃない」

250 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/09/07(金) 22:56:52 ID:IhPYOVUi (左からの胴への斬撃。相手の持つ武器は大剣、間合いは読みやすい) 前足で地面を蹴り斬線が通るであろう場から逃れる。 唸る風、1ミリ前を通り過ぎる刃。 大剣が通り過ぎた刹那、後ろ足を蹴り懐に入る。 死の特等席。ひとつの間違い、読み違いが生の方程式を死のそれへと連れていく場所。 (剣を振っても間合い不足…!) 「うらぁああああ!!」 そのまま力任せの当身をくらわせる。懐に潜りこんだ後の不自由な体勢、不十分な間合いで剣を振っていれば敵を切り裂くどころか皮一枚を切り裂くのが精いっぱい、ガーゴイルの返しの太刀で胴ごと一刀両断されていただろう。 アニエスとの修行のなかで戦いで散々狙い打たれた点である。そしてこれまでの教えを死の最前線で思い返す。 (いいかサイト。相手が重量の重い武器、斧や大剣だな。あれを相手にするときは敵の体勢を崩すことを考えろ。やつらは…) 当身によって体勢を崩された敵はわずかな時間、持つ武器の重さからそれを振る余裕がなくなる。 そしてその刹那を見逃さず首を一太刀のもと跳ね飛ばす。 「その武器の重さから二の太刀が遅く、体勢を崩されると決定的な隙が生まれる…だったな」

「あら、やるじゃない」 関心したようにつぶやく。自分のガーゴイルが倒されたことな蚊に刺されたこと程度にも気にしちゃいない。 「なら今度はどうかしらね?」 すると今度は二体のガーゴイル。一人は対の短剣を、一人は先と同じ型の大剣を持っている。 「くっ…」 まず短剣を持つ死が襲いかかってくる。 斬撃の暴風、死の雨。先のように前に出て避けられる隙間などあろうはずがない。 それを下がりながら大きめにかわす。 (一、二、三…) 短剣には弱点が二つある。ひとつは長所でもあるその重量の重さ。 その軽すぎる剣は相手の斬撃を受けるに細すぎるのである。 そしてもうひとつ… (一、二) 「三!!」 サイトは避けられるはずのない剣線をかいくぐり、デルフリンガーを思い切り敵に振りぬいた。 (短剣は相手が未熟なものであればあるほど対処はた易い。その斬撃の多さから本人は全く意識しなくとも回数、斬撃の種類にリズムが生まれる。そこをつけ) その剣は一対一であれば確実に敵を両断するものであった。しかし… ギィン!! それは重たい鉄と鉄がぶつかり合う音で遮られる。今の彼の敵は一人ではなく二人。簡単に倒せるはずがない。 そして斬撃を止められたことによる硬直で二の太刀が振るえないサイトに死神がその身を切り裂こうとその凶刃を振り降ろす。 (まずい!!) その時、秒にも満たないその瞬間、耳に入った聞きなれた声、呪文。

エオルー・スーヌ・フィル・ヤルンサクサ

サイトはすぐさま後退、短剣による斬撃を左腕にもらうも、衣服を少し裂かれる程度ですんだ。 その数瞬後サイトのいた場所が爆発しそこにいたガーゴイル達は塵と化した。

251 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/09/07(金) 22:57:40 ID:IhPYOVUi 「ハアハア…ありがとな、ルイズ」 切れる息を整えながら守るべきご主人様に声をかける。 「そんなことはどうでもいいから!いまはあっちに集中しなさい」 いつもの気丈な声。しかしどこか不安そうな声だ。 「はいはい、まかせとけって」 その声に明るく答えてやる。誰が聞いてもカラ元気に聞こえる声で。 二人ともすでに理解している。

このまま戦いが進めば確実に殺される。

それがわかっていながらもどうすることもできない。 正面入り口はすでに幾重にもガーゴイルの包囲が完成している。 虚無の魔法で窓、壁をぶち抜いても、相手のガーゴイルの数だ、外側の包囲も完成していると判断すべきであろう。突破するにはそれこそガンダールヴの力でもない限り不可能である。 「どうにかできんかね。伝説の剣様」 「こういう時だけ伝説扱いなんて…という冗談は後回しにして。あちらさんがこっちを殺す気満々ってなら助かる道は一つしかないね」 剣は無情に告げる。 「あのねーちゃんをぶっ倒す。それしかないわ」

不可能な話である。 この剣はこの平民に数百の剣撃、弓、敵の中に単騎で突っ込めと言っている。 この剣はこの男にその数百の剣、矢、凶刃を全てかわし敵の頭を落とせと言っている。 この剣はこの人にかわしきったあとに一撃のもとに敵を屠れと言っている。 確かに生きるためにはあの女を倒すしかない。 あの女を倒すにはあのガーゴイルの攻撃を全てかわさねばならない。 そしてそのすべてをかわせたとしても、おそらくチャンスは一刀。そのあとに斬撃を繰り出したとしても…否、繰り出せずしてガーゴイルに葬られるのがオチだろう。 「なに無茶言ってんのよ!!この馬鹿剣!!」 「そうは言ってもねぇ…これしか手はないんだよ」 そんなことはわかりきったことである。しかしこれでは 「あの時と…同じじゃない…」 あの背中の剣士と…自分を助けるために7万の軍隊に突っ込んだというあの人と… また自分は同じことを繰り返すのか。 それ以前にこの平民が自分を守るはずが、会って一日しか経っていない剣士が、自分のために命を張るはずがない。 そうルイズは思っていた。 だが、その考えには間違いである。確かにこの状況はそこいらの剣士、使い魔ですら逃げ出すものである。 ならばなぜ逃げないのか

なぜならそこにいるのは 「きっついなぁ…」 虚無の担い手を半年の間守り通し、今もその身の盾となっている男である。 「…よっしゃ」 主人を守るために7万の軍隊に単騎による突撃をかけ、それを止めた使い魔である。 「しゃあないな」 そしてルイズ・フランソワーズ・ル・ブランド・ラ・ヴァリエールに 「指示をくれ、デルフ」 世界で唯一、ただ一人、心から 「突っ込むぞ!」 好きだと言い、愛していると告げられる者であるから。

252 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/09/07(金) 22:58:39 ID:IhPYOVUi 「待ちなさい!!」 少女は剣士を呼びとめる。 少年は目線を敵から魔法使いへと移す。 「なんで!?なんでそこまでするのよ!!あんたはただの平民、さっさと逃げなさい!今ならまだ見逃してもらえるわ!!」 寺院の中に少女の怒号が響く。 「えぇ、見逃してあげるわよ♪用があるのは虚無のお譲ちゃんだけだし。それにね」 女は舌舐めずりをし、冷たい眼、冷たい笑いでこちらを一瞥し告げる。 「味方を見捨てて逃げていく輩を眺めてるのがとおおおっても大好きなの♪」 冷酷な告白は続く。 「この小さいアルヴィーを使ってね。逃げた相手を観察するの。逃げたヤツは大体が『俺が殺した』とか『なんで逃げたんだ』とか言ってボロボロになっていくの。そこにね、見捨てられた人間の骨とか髪の毛を送りつけてね、こう書き置きしておくの」 そして女はこみ上げる笑いを堪え切れないかのように一気にセリフを吐きだす。 「『あなたが殺したお友達です』ってねえええ!!アハハハハハハハハハハハ!!」

(あの女、狂ってる…) ルイズは恐怖に震えた。このような狂った頭の持ち主の人間会ったことがない。こいつと関りたくないという気持ちが一気に増大する。 そしてあの狂人に向かおうとしているバカに思い出すように告げる。 「聞いたでしょ?あんたは今すぐ逃げなさい。運が悪くても命だけは助かるから。大丈夫、私もなんとかはぐらかして「黙ってろ」 剣士はその言葉とは裏腹に、温かく、包み込むように呟いた。 「オレは何があっても逃げない、見捨てない。そんでお前は殺させない。俺も死なない」 その眼はもう私を見ていない。 「な、何言ってんのよ!バカ剣、あんたも伝説の剣なら止めなさ…」 そこでルイズは気がついた。 私はこの剣を知っている。私が買ったインテリジェンスソード。 それを持つ剣士つまり… 「だとよ相棒。やめとくかい?」 デルフリンガーは軽く剣士に喋りかけた。 「冗談、約束したからな」 目は敵の方を向いたまま。 「ずっと守るってな」 サイトは死へと駈け出した。 駆け出す直前の背中は少女が見た背中よりも大きかった。

144 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/09/19(水) 20:37:51 ID:DzgO0N+T 「はあああああああああああああああああああああああああ!!」 敵を一声で粉砕せんと轟き敵陣に突っ込む。その声に委縮したのかアルヴィーたちの出足が遅れる。 (守るんだ。オレが!!) 目の前の敵を一刀のもとに切り伏せ、走る速度を落とさずに目標への最短距離を突っ切る。 剣が槍が矢が数瞬前の自分を切り殺す。彼は走る走る走る。 (誓ったんだ!ルイズに!!) 前に二人のガーゴイル。 「どぉけええええええええええええええええええええええええ!!」 走りながらデルフリンガーを横なぎに払い、一体を胴から切り裂く。 しかしもう一体は仕留められない。剣の切っ先が少しずつ、停止した時間のなかで迫ってくる。それを返しの刀で受け止める。そのまま鍔迫り合い持ち込もうとするが 「ダメだ相棒!止まるな!!」 突き抜けてきた敵達が集まってくる。 ここは敵陣、サイトからしてみれば死が生を侵食している場所である。すなわち停止は自らの生を諦める行為に他ならない。 だがここで剣を離せば間違いなく目の前のガーゴイルが自分を殺す。八方塞がり、絶体絶命である。どんな戦士であってもここから無傷で離脱することはできないであろう。それはサイトにとっても同義。彼の身は背から放たれた矢に確実に貫かれる。 サイトの持つ剣が普通の剣であったならば。

145 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/09/19(水) 20:39:29 ID:DzgO0N+T 迫りくる凶器の渦 (くそ!だめかよ…かっこわりぃ…) 痛みへの恐怖で体を強張らせたそのとき。にまるで羽根になったような、そしてあの時の、ルイズの使い魔であったときのような懐かしい感覚が全身を駆け抜ける。 (これ、なら!!) 相手の剣を巻き込み地面へ叩きつけ、上段回し蹴りを叩き込む。 「そのまま走んな!」 デルフリンガーが檄を飛ばす。 彼の体が軽くなったのはこの剣の「魔法を吸い込めば吸い込んだだけ持ち主の体を動かすことができる」のおかげである。 しかしここには普通の魔法使いはいない。ルイズは虚無の使い手であり、サイトとミョズニトニルンなどは魔法使いですらない。ではどこからサイトの体を動かすだけの魔力を蓄えていたというのか。 答えは敵であるアルヴィー。 アルヴィーはマジックアイテムである。メイジが人形の魔力を込め、込めた分だけそれを動かすことが出来るというもの。 デルフリンガーはその込められた魔力を吸い込み、彼を体を動かす補助を行っているということである。あくまで補助なのは彼の体を操り切るだけの魔力が足りないから。 また、切りあっている最中に魔力を吸い込めないのか。これは出来ない。 いくら切りあっているとはいえアルヴィーとの距離がある。 デルフリンガーが吸い込めるのはむき出しの魔力だけ。つまり魔力がそのまま顕現したウインディアイシクルやエアーハンマーなどなら吸い込める。 しかし間に魔力ではないものが挟まっていたり覆われていたりすると、たちまちその効力は力をなくす。彼がアルヴィーの魔力を吸い込むことができたのはサイトが剣を振るい、敵に刃を刺すことができたため、剣と魔力の間に仕切りがなくなったためである。

「ちぃい!」 女は急に速度、力、正確さが段違いにあがった敵にたじろく。 そして心の中で笑う。

146 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/09/19(水) 20:40:11 ID:DzgO0N+T はああああああああああああああああ!!」 昔と同じような力があるのなら。 これまで数多の敵を撃退してきたこの力があるのなら。 7万の大軍すら止めて見せた力があるのなら。 数百の戦士の集まりなど紙屑に等しい。 「そのまま突っ切れ!相棒!」 残り10M程度。目標は目と鼻の先。残るアルヴィーは三体。 先の瞬間までは死と隣り合わせ、敵がまさに悪魔であった。 しかし今は違う。こんな愚鈍な奴らに負けるはずがない。

一人目は剣を振り降ろす…いや、剣を振り上げたところで頭が飛んだ。 二人目は一人目がやられたことを気にもせず槍を突き出す。目標は舞い落ちる葉や柳のようにそれをすり抜ける。そのまま横を通り過ぎたかと思うと既に足がついていなかった。 三人目は少し離れた位置から弓を構える。この距離からならば一息の間に殺されることはない。一本目の矢が外れても相手の体勢が崩れた所に二本目の矢を放てる。つまりここからなら殺せる。そして弓を撃とうとしたとき… 「いっけええええええええ!!」 大きな砲孔と共にまったく予期していなかった攻撃が…というより剣が鳩尾に突き刺さる。 残りは一人!!

三人目のガーゴイルを倒した。残りはあの女のみ。 デルフは投げてしまったが相手は女一人、アニエスと無手の場合の訓練もしている自分が負けるわけがない。 サイトは思い切り右の拳を叩きつけた。

「さすがはガンダールヴ。主を守るためならば力を失っても盾となるか」 殴られた女はそう呟きこう続けた。 「ぜひ欲しい。その力、私のために使ってもらうぞ」

すると教会の出入り口が開く。 中に入ってきた女の指輪が青く鈍く光りサイトの意志は消えた。

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