ゼロの保管庫 別館

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だれでも歓迎! 編集

323 名前:1/8[sage] 投稿日:2006/11/28(火) 03:18:11 ID:oBQGagYZ 開会式がつつがなく進んでいるけれど、ルイズも使い魔さんも退屈そう。 「退屈ね、マザリーニ」 「そう思っていても、口に出してはなりませぬ陛下」 女王になろうと口うるさいマザリーニ、彼の言うことは為になるのかもしれないけれど…… 「退屈ね」 「ですからっ」 片手でマザリーニを制した後、言い訳をしておく。 「この行事のことではありませんよ、枢機卿」 不思議そうな顔で、まだ何かを言い募るマザリーニを放って、外に注意する。 学園長の挨拶の途中で、一斉に外が沸いた。 苛立たしげなマザリーニは、わたくしに聞こえるように呟いた。 「まったく、学生の行事にしては賞品が豪華すぎますな。」 国庫が厳しい折に……続きは聞かなくても分かった。 散々我侭を通して、この大会の諸経費は王宮も負担。 貴族から取った入場料については、経費分を差し引いて、 戦災孤児の育英に当てることになっていた。 「人気取りにしてはやりすぎでは有りませんかな?」 ……彼らに流れたお金が使われれば、税金になって戻ってくるでしょうに…… 「国民には少し楽しんでも欲しいのですよ、枢機卿」 わたくしの我侭で国はずいぶん疲弊したのですもの。 「忠誠には報いなければね。」 ……本当は、もう一つ目的があるのだけれど。 魔法によって向こうからは見えないけれど、使い魔さんを見つめる。 (少し待っててくださいね……すぐに……) 「しかし、来賓に貴族が妙に多いですな、父兄以外も来ているようですが……」 マザリーニが不思議そうにしている。 (当然よわたくしが、直々に招待したのですもの) 今日の事を思うと、自然に頬が緩む。 ルイズを合法的に処理する…… 誰の非難も受けずに。 ヴァリエール公の許可は既に受けているし。 「楽しみですね」 「……陛下?さては先ほどから、お話を聞いてませんね?」 「うふふふふ枢機卿、生徒さんに手を出したらいけませんよ?」 いつもはそんなことを言わないのに、ついマザリーニをからかってしまう。 「なぁっ、あ、あのような、けしからん衣装!! 私は。まーーーったく興味有りませんぞ、陛下!!」 ……わたくし衣装の事なんて言ったかしら? あまり苛めるのも可哀想だから、この辺にしておきましょう。 アニエスが外をとても気にしていた。 生徒と近衛が会うたびに、見て分かるほど緊張していた。 騎士の見習いのうち、十代の前半の者のみ、 ユニフォーム着用の上競技に参加させる事になっていた。 鼻の下を伸ばしながら騎士の選定をしていたオールド・オスマンはそれはそれで凄い人ですわね。 うってかわって真面目に開会の挨拶をしているけれど…… (どいちらが本性なのかしらね?)

324 名前:2/8[sage] 投稿日:2006/11/28(火) 03:18:42 ID:oBQGagYZ 長い挨拶もまったく苦にならなかった…… 「サイト………」 同じく目じりが下がったままの親友の肩を掴む。 何度も危険な目にあった、 レコンキスタの包囲網から助け出した事も有った。 ……だが……こいつを助けて、友達で居てよかった…… 「サイト……お前は天才だぁぁぁぁぁ」 目の前に並ぶ、制服とはまったく違う薄手の装い。 (ちちぃぃぃぃ、しりぃぃぃぃぃ、ふとももぉぉぉぉぉ) 血走ったサイトの目が、雄弁に語りかけてくる。 多分僕の目も同じだろう。 「ギーシュ、まだだ、まだ終わらんよ」 「何だとぉぉぉ、親友、まだ何か有るのか?」 一瞬だけこっちを見るサイトだったが、慌てて視線を戻す。 ……今は一瞬でも長く、目の前の楽園を見つめて居たかった。 「くっくっく、競技が初めって見れば分かる……分かるのだよ、ギーシュ君」 あまりに異様な、サイトの雰囲気に飲まれてしまう。 「な、何が有るんだ?」 「……ちがうよ、ギーシュ君………ここには無いんだよ」 ニヤニヤと笑うサイトが……素敵だっ!! 何かを想像したサイトの鼻の下が伸びる。 頬が緩む……あ、よだれ。 な、なんだっ?なんなんだ? 「ブラ……それだけ言っておこう、ギーシュ君」 なんだ?なんなんだ?その呪文…… 「こ、心ときめくぞ、サイトォォォォ」 「おぉ、分かるかギーシュ……震えるなぁぁ」 心臓が高鳴る。 オールド・オスマンの挨拶が終わった。 競技の開始まで、クラスごとに分かれて座ることになっていた。 『健闘を祈る』 『お互いになっ』 目だけでサイトと会話する。 整列中なら思う様見れたが…… 「なに見てるのよぉぉぉぉ、犬ぅぅぅぅぅぅぅ」 ……逝ったか……サイト…… 迂闊に目移りするとそうなる、愚かな。 「ギーシュ?」 「やぁ、モンモランシー、この衣装はまるで君のためにしつらえたようだ、素晴らしい、よく似合うよ」 「……びみょーに、嬉しくないわね」 顔は正面を見ながら、モンモランシーに向き合う。 至近距離から見た瞬間、僕はサイトの天才性に慄いた。 「………………」 時が止まる。 何も考えることが出来ない。 全ての音が止まり、視線はそこに釘付けになる。 「ちょっ、ギーシュ……大丈夫?様子おかしいわよ?」 ぽ、ぽっちがぁぁぁぁぁぁ 胸ーーーー、おぱーーーーー 「はぁはぁはぁ、モンモランシー……素敵だ」 周りの奴に見せないために、モンモランシーを抱き……しめ…… ふにゅん…… ふにゅりましたぁぁぁぁぁぁぁ 「きゃっ、ギーシュ……大丈夫?医務室……行く?」 僕の余りの挙動不審さに、モンモランシーは心配してくれる。 しかし…… 「大丈夫だよ、モンモランシー、さ、応援席に行こう」 一瞬たりとも見逃すものかぁぁぁぁぁぁ

325 名前:3/8[sage] 投稿日:2006/11/28(火) 03:19:15 ID:oBQGagYZ 魔法を使って声を送る。 「首尾はいかがですか?」 『上々です、陛下』 この大会に並行して進めている作戦。 これさえ上手く行けば…… 今この学園には十代の貴族の子女が大量に居て…… 『で、この中から嫁を見繕うわけですな?』 戦争で跡継ぎを失った貴族たちに、嫁探しに来ませんか? と連絡してみたら、大好評。 「えぇ、お勧めは………」 『うぉぉぉぉ、あのゲルマニアの娘……いぃ』 あの……あのね……お勧めはルイズなの 『まてぇぇぇぇ、あの青い髪のっ……』 『ダマレェェェェ、ロリコンさんめっ、アレは観賞用だろう』 ……聞いて…… 人選間違えたかしら? 十分に地位もあって、お嫁さんを捜しているのを選別したはずなんですけど…… 『なにを言うぁぁぁぁ、育っちゃだめだろおがぁぁぁぁ』 ……どうしてこんなに飢えてるのかしら? 『おぱーーー』 「あの……みなさん?」 つ、繋がってるわよね?この通信魔法。 『うおぉぉぉぉぉ、見ろっ』 『ず、ずれた、ぶるまぁを、指できゅって……』 『『『『すーばーらーしーーーーーー』』』 ぜ、絶対人選ミスっちゃった。 でも、ヴァリエール公が納得するような血筋の貴族って、そんなに居ないもの。 少し落ち着いてもらってから、ルイズを勧めることにしよう。 うん。 「あー陛下、ソレはなんですかな?」 「す、枢機卿」 いつの間にか背後にマザリーニ しまった、妨害されるっ。 「レ、レディの背後に忍ぶなんて……えっち、マザリーニのえっちぃぃぃぃ」 全力で叫ぶ。 「何事ですかっ!!」 私の声を聞きつけたアニエスが駆け込んでくる、計算通り♪ 「アニエスっ、枢機卿が……えっちなの……わたくしの背後からっ……あぁっ、これ以上言えないっ」 何も無かったら言えない、うん。 「き、貴様ぁぁぁぁ、陛下の玉体にっ」 「ちょ、まっ」 怒り狂ったアニエスの一撃。 えっちなマザリーニさんは、砕け散った。 「え、冤罪……だ、わーたーし……は、やって……な…ぃ」 結構余裕? 文句を言いながら倒れたマザリーニが、近衛に運び出される。 「ご無事ですか?陛下」 ……アニエスにも協力してもらおうかしら?

326 名前:4/8[sage] 投稿日:2006/11/28(火) 03:19:46 ID:oBQGagYZ 「はぁ?嘘ですってぇぇっぇえ」 陛下に対する口の聞き方に気を使えなくなった。 う、嘘で枢機卿殴り倒してしまった…… 「へ、陛下ドウユウコトデスカ?」 陛下の後ろで魔法装置が何か動いていた。 それに意識を向ける前に、私の手が陛下の手に包まれる。 「聞いて、アニエス。」 陛下の澄んだ瞳が、私を見つめる。 あぁっ、美味しそう。 ちがっ、まだダメだっ。 「ルイズがお嫁に行ったら、使い魔さんは一人になるわよね?」 「……はぁ?」 何か忘れている気がするけど…… なんだろう…… 「そうしたら、使い魔さんにはお城に来てもらって、わたくしの近衛にして……きゃっ」 陛下、陛下、よだれ、よだれ。 「ふむ……でしたら、遠くの領地で……」 「えぇ、ヴァリエール公も納得の血筋ばかりよ、グラモン元帥とか」 ……元帥だけど、ミス・ヴァリエール位の息子居なかったか? 『萌えー、萌えー』 …何か聞こえてきてるし。 「お部屋は隣が良いわよね?いきなり同室なんて……ですものっ」 …陛下は話聞いてないし。 キャーキャー言いながら妄想にふける陛下を無視して、 さっき気になったことを聞いてみる。 「陛下」 「なーにー、アニエス……式には呼ぶわねー」 ……飛んでるし。 小さく溜息を付いてから、質問 「メイジは嫁入りの時、使い魔おいていくものですか?」 「やーねー、そんなはずな……いじゃ……ない……」 一瞬で陛下が真っ青になる。 深く深呼吸して気を取り直して、震えながら私を力強く指差す。 そして……勅が下った。 「何とかしなさいっ、アニエスっ」 ……あーもー 「はっ、陛下直ちに」 ………私、何してるんだろーなぁ

327 名前:5/8[sage] 投稿日:2006/11/28(火) 03:20:18 ID:oBQGagYZ 廊下を曲がると、そこは銃口だった。 「って、なに?おかしいからっ、日本語として変だからっ」 見たことない、女の子に銃を突きつけられる。 こんなの初めて♪ って、混乱してる場合じゃねー 「シュヴァリエ・サイト様ですね?」 「ひゃいっ」 ……噛んじゃったよ。 そう言った途端に両手が背後から押さえられる。 女の子が一人づつ俺と……手を組む…… 「危害は加えませんので、逃げないで下さい」 「はいっ、決して逃げません」 ……胸がっ……腕にっ……あぁ……幸せ…… 暫く至福をさまよった後に、教室に連れ込まれる。 「ここです」 ……ま、まさかぁぁぁぁ、い、今から……4人で? そんな期待は一瞬で裏切られる。 「遅い!」 ……アニエスさん…… 「任務だサイト……」 「今、俺忙しい」 ……イヤマジデ、ブルマーの鑑賞とか、胸の観察とか、脚線美の追求とか。 そういうと、ニヤニヤとアニエスさんが笑い出した。 「そうかー、残念だなサイト」 「へ、……いいの?」 「聞け、シュヴァリエ・サイト、この学園は狙われている」 へ? なに、何の話だ? そんな思いをよそに、アニエスさんは慎重な口調で話し続けた。 「特に、ミス・ヴァリエールが危ない、お前のせいだぞ?サイト」 「ちょ、ちょっと待ってくれ、アニエスさん、どういうことだよ?」 「この学園に独身貴族たちが忍び込んで、貴族令嬢の品評会を開いている。 目的は……嫁探しだっ!!」 ……頭のどこかが冴え渡る………てーことはあれか? 「誰かが、ルイズ狙ってるんだな?」 重々しく頷くアニエスさんを見て腹を決める。 「何処だ?」 満足そうに笑うアニエスさんに乗せられてやることにする。 「場所は?」 詳しい説明を受けている最中に、廊下で何か音がした。 「誰だっっっ」 俺がそちらを見た瞬間、教室のドアが開け放たれる。 「……羨ましいぞぉぉぉと付けて来てみれば…… そういう事なら、僕も行かねばなるまいなぁぁぁぁ」 ……ギーシュ? 「決して、4P覗こうと思ったわけではないぞっ、サイト」 黙っとけばいいのに……だがっ 「モンモランシーは僕が守るっ」 心の通い合った親友として、ギーシュと硬く手を取り合う。 「ルイズは俺が守るっ」 地図を持って、廊下に飛び出した。 「行くぜぇ、相棒っ」 「おうよっ、サイト!」 『……それ、俺の立ち位置じゃねー?相棒よぉ』 どこかで小さく何かが聞こえたが……

328 名前:6/8[sage] 投稿日:2006/11/28(火) 03:20:50 ID:oBQGagYZ 校庭からかなり離れた所にソレは有った。 「うひょぉぉぉぉ、来賓席さいこぉぉぉぉ」 「け、けしからん、魔法使いですなっ」 ……入りたくねーよ、この部屋。 そっと、部屋を覗いた瞬間、そんなことも言えなくなった。 部屋においてある大きな鏡に…… 「むひょー、ヴァリエールたん、サイコー」 「ぺたん娘、サイコー」 「むぁたんかぁぁぁぁ、オラァ」 キモイ親父の群れに突っ込む。 部屋の空気が一瞬で変わる。 「な、何かね?君たち、生徒のようだが……」 「あーここは、関係者以外立ち入り禁止だ、立ち去りたまえ」 ……こ、こいつら…… 鏡の魔法を解いて、僕たちなにもしてません、そんな顔してやがる。 無言でデルフリンガーを抜き放つ 『はっはー、相棒の真の相棒、このデルフさまが、抜かれたからにはー』 何か言ってるが無視して、鏡に向かってデルフを投げつける。 『ギャーひでーぜ、相棒っ』 ズマン、デルフ…… 鏡の破片から逃げ惑う貴族達の真ん中まで進む。 今魔法を使われれば負けだろうが、混乱している貴族たちの間を抜けてデルフを手に取る。 『あいぼーよー、ひでーよ今日』 あーすまん、デルフ。まだなんだ。 デルフを壁に叩きつける。 ガキーーンという硬い音と共に、デルフの悲鳴が聞こえたけど……後で謝ろう。 「このふざけた集まりはこれで終わりだ……いいな?」 ガクガク頷く貴族達の一人一人を見回しながら、部屋の入り口まで戻る。 最後に言うべき事を思い出す…… 部屋の入り口で、向き直った俺を見て貴族たちは息を飲んだ。 睨み殺すくらいのつもりで、一人一人を見た後、大きく息を吸って全力で叫んだ。 「ルイズは俺んだぁぁぁぁぁぁぁ てめぇらぁぁぁぁぁ、手えだすんじゃねぇぇぇっぇえ」 密室だったこともあり、俺の声は響き渡った。 「あー次は僕の番だね」 ……ギーシュ……お前なにかしたか? 「モンモランシーは僕のものだっ、手を出さないで貰おうかっ」 部屋から出た俺達は、ハイタッチを交わして応援席に向かった。

329 名前:7/8[sage] 投稿日:2006/11/28(火) 03:21:23 ID:oBQGagYZ 「あーもー、何処に居るのよっ」 鎖でも付けとけばよかった…… もうすぐ犬の番なのにぃぃぃぃ。 あっちで見かけた、って話を聞いて校庭の外れの方に向かう。 ………こんな所で何が有るのかしら? ……女?オンナカ?ムネ?ムネナノカ? サイトが発案したって言うこの服…… 「ちょっと……あんまりよね……」 身体の線が出すぎよ……サイト………他の子ばっかり見る…… 目のふちが熱くなる……べつに……いいもん。 サイトになんて……見て欲しく…… 『ルイズは俺んだぁぁぁぁ、てめぇらぁぁぁ、手えだすんじゃねぇぇぇ』 ……え? サ……イト……の声……だ サイトが……わたしを……わたし……サイト……の? 「ふ、ふざけるんじゃないわよ……わ、わたしがなんであんたのなのよ……」 でも……だ、だめ……頬が……緩む……か、顔が……笑うぅぅぅぅぅ 状況は分からないけど……サイトがわたしを自分のだって。 思わずその場に座り込んでしまう…… 立っていられなくんったから。 そんなに遠くじゃなかったから……サイトすぐこっち来るよね? そのことに気が付いて、表情を元に戻そうと……無理…… ……顔が……顔が…… 「ルイズー、ギーシュしらないっ?って、わぁっ、あんた何企んでるのよ?」 ……押し殺した人の笑顔を見てモンモランシーが失礼なことを言った…… 「べ、別に、何も企んでないわよっ」 モンモランシーがさらに何か言おうとした瞬間、 『モンモランシーは僕のものだっ、手を出さないで貰おうかっ』 ギーシュの声……モンモランシーの顔が一瞬で真っ赤に染まる。 「……ばか………わたしが居る所で言いなさいよ……」 素直に言葉に出来るモンモランシーが羨ましい。 思わずその場にしゃがみこんだ私の横にモンモランシーが座る。 「……ちょっと、待っててあげよっか?」 ………そうね 「こ、こっちから会いに行くんじゃ、探しに来たみたいですもんね」 モンモランシーが優しい目でわたしを見てる…… 「もうちょっと素直になったら良いのにね、ルイズは」 ……分かってるわよ 近づいてくる足音をドキドキしながら待ち続けた。

330 名前:8/8[sage] 投稿日:2006/11/28(火) 03:22:43 ID:oBQGagYZ 「あぁっ、麗しのモンモランシー」 ギーシュがいきなり走り出した……げ、ルイズまで居る。 そういや、俺もうすぐ競技に出るんだっけ……怒られる覚悟をしながら近寄る。 「ギーィーシュ、もぅ、だめじゃない、ほら、行くわよ?」 あーいいなぁ……ギーシュの奴モンモンと腕組んで…… うぉ、しかもギーシュの歩調に合わせて、少し後ろから静々と付いていってる…… な、何が有った、ギーシュ……羨ましい…… 「い、いぬっ」 ……あー、犬来ましたよー……って、いつもより迫力ねーな 「どうしたルイズ、風邪?」 よく見ると真っ赤なルイズのおでこに手を当てる。 あ、ちょっと熱い。 「あ、う……い……ぬ……な……」 言動もおかしい…… 「医務室行くか?」 無言で左右に首を振るルイズ……でも、心配だなぁ…… 「無理はすんなよ?」 「うん」 お、いつになく素直。 いつもこうなら可愛いのになぁ…… 「んじゃ行くか」 先に行こうとすると、ルイズが何か言いたげに俺を見つめていた。 ルイズを見返すと、視線をそらされる………そらした先には……モンモン? 「どうしかたのか?」 「……な、なんでもないもん」 真っ赤な顔に、潤んだ目……泣きそう…… 「本当になんでもないんだな?」 コクコク頷いてるけど……頷くたびに涙がこぼれて、説得力なんかまったく無かった。 仕方ない。 デルフを鞘にしまって、両手を開ける。まだ謝罪中なんだけど、こっちのが急用。 頭を胸の中に抱き寄せた後、右手でルイズの両足を拾う。 「きゃっ……サ、サイ……ト?」 「ほらっ、医務室行くぞ?」 俗に言うお姫さま抱っこ。 「で、でも……運動会……サイトが……」 「ん〜ほら、ご主人様の身体の方が大事だし……な?」 しんどい時にまで意地張るなよなー 黙り込んだルイズが、俺にしっかりと掴まった。 (離さないから) そんな言葉が聞こえた気がしたけど……きっと幻聴。 なんだか小さく震えるルイズが心配で、俺は全速で走り出した。

……もう……わたし……サイトの……なんだね。 サイトの胸の中で、そう思った。 軽々とサイトに抱きかかえられた瞬間。 心の一番深い所が、サイトに捕まった……そう……感じたから。 なんだか心配そうに走るサイトを見ながら、この運動会の残りをサイトとどう楽しもうか、ゆっくりプランを立てていた。

412 :1/4 :2006/11/30(木) 02:45:29 ID:yUmEFYQ1 腕の中のルイズの身体が熱っぽい…… 潤んだ瞳が、熱く俺を見つめている。 「ルイズ、もうちょっとだけ我慢しろよ」 俺の言葉も耳に入っていないようだった。 黙って俺の身体にしがみつき、俺の胸に唇を押し付ける。 荒い呼吸が服を通して感じられる。 (本当に大丈夫か?) 「サイト……あの……ね?」 いつもキャンキャン喋るルイズが、ぽつぽつと搾り出すように喋りだす。 ………もっと早く……なんで俺の身体はこんなに遅いんだ…… 「いいから黙ってろ、大人しくして俺の言うことをきけっ!!」 病気の時くらい大人しくしろ、そう言いたかった。 でも、口走った瞬間自分の馬鹿さ加減に嫌気が差す。 『なんて言い方よっ、わたしはわたしがやりたい様にするわよっ』 『ご主人様に命令?……へー、いい身分になったわね?』 等々、ルイズの言いそうな言葉が俺の頭の中をよぎる。 体調が悪い時に興奮させるわけには…… 「はい……サイト……ごめんなさい、大人しくしてるね」 ……へ? それだけ言うと、黙って俺を見つめている…… うれしそうに微笑みながら…… ヤ、ヤバイ……… 「き、気をしっかり持てよ?大丈夫だからな?」 ……絶対変な病気だぁぁぁぁ、 ル、ルイズが壊れたぁぁぁっぁあ 気ばかり焦る俺の胸に、ルイズの手がそっと添えられる。 俺の形を確かめるように、そっと撫で擦る。 熱っぽい目で自分の手を、俺の身体を見ながら幸せそうにしているルイズを見て。 何かいけないものを見てしまったような、罪悪感を覚える。 ルイズが大変な時に…… (色っぽいって……思ってしまった) 見ていられなくなって、前を見て全力で急ごうとする。 「……やだ……わたし……みて?」 ……急ごうとした………これ……だれ? 「あ……ごめんなさい、大人しくしてるね」 ……いや……本当に。 「すぐに医務室に着くからな、ちゃんと掴まってろよ?」 一刻の猶予も無さそうだった。 剣を抜いている時に比べると、絶望的なまでのスピードで前に進む。 「はい」 小さく答えたルイズが俺の身体に掴まる。 一瞬、ずっとこのままでもいっかなーと思ってしまう自分が許せん。

413 :2/4 :2006/11/30(木) 02:46:02 ID:yUmEFYQ1 「ほんとーに、申し訳有りませんでしたっ、枢機卿」 ひたすら頭を下げる。 この国の実質的な最高権力者を誤解で殴り飛ばした。 ……どこかに飛ばされるかもしれない。 それだけは避けたかった、たまには鄙びた女の子も良いかも知れんが…… 都会の方が数が多いからな、女の子の。 「まったく、けしからん。ちょっと背後からうなじを見つめたり、胸の谷間覗き込んだだけではないかっ」 こぶしを握りしめ、目を見開いて叫びだした……いやマテ。 「あと、結構鈍いからこっそりクンカクンカとかしただけだろうに」 ……このおっさん、有罪? 謝ってるのが馬鹿らしくなってきた。 「こーっそり部屋に居たら、気づかずに着替えだしたりとかした時は捕まらなかったではないかぁぁぁ」 えーっと、おっさん、ちょっとまてや。 エキサイトして今までの戦歴の数々を語りだす、鳥の骨を冷めた目で見つめる。 陛下……よく今までご無事で……ってか隙多すぎです。 「……なんじゃ、その目はっ」 しまった……謝罪中だった。 「もっとみろぉぉぉぉ」 ……いや、ポージングとかいいから。 この国の中枢って……大丈夫か? 騎士って転職できるのか? そんなことを考えていると、部屋のドアが開け放たれる。 「誰かいるかっ?」 サイトが勢いよく飛び込んでくる。 誰かを腕に……あれは…… ……いや、正直助かった。 「失礼、枢機卿。ミス・ヴァリエールです」 彼は虚無を知る人間のうちの一人だ、 「うむ、彼女は我が国の最重要人物の一人だ、行きたまえ。 先ほどの事は不問にふそう」 鳥を揶揄される小さな目を細め、うってかわった静かな声で指示する。 やはり、上に立つものは違う。 枢機卿を見直した瞬間 「あー、お互いに口外無用ということで」 ……そんな理由だったのか…… 脱力したままサイトの前に立つ。 「どーしたー?」 「ルイズが変なんだよっ」 自分を心配するサイトをうれしそうに見つめる、ミス・ヴァリエール…… 「いつも通りじゃないか?」 「いや、だって、うれしそうに俺見つめたり、熱っぽい瞳だったり、 切なげに溜息ついたり、………」 のろけに来たのか?こいつは。 「あー心配いらん、そのうち冷める。」 馬鹿馬鹿しい。 パタパタ手を振ってサイトを追い払おうとするが、食い下がってくる。 「ほ、本当ですか?」 「あー間違いない、間違いない。経験者は語る、だ。」 そう言った瞬間、サイトの腕の中で小さな活火山が破裂した。 「そんなとこないもんっ、わたしとサイトはずっと、ずっとぉぉぉぉ」 ちっ、色ボケめ。 「ほら、元気になっただろう?」

414 :3/4 :2006/11/30(木) 02:46:33 ID:yUmEFYQ1 アニエスに医務室を追い出されて、応援席に向かう。 サイトは何かぶつぶつ言ってるけど……ちょっと緊張が解けた。 アニエスわざとだったのかしら? ありがとうって、後でお礼を言うべきかしらね。 校庭が見えてきた……サイトに抱っこしてもらえるのもあと少し…… 「あの……あのね、サイト」 サイトが黙って頷く。 照れてるのかしら? 「わたし……ね、サイトが使い魔で良かったよ」 コクコクって動く首が、『聞いてるよ』って言うみたいで…… 「その……ね、でもね、使い魔じゃなくても…… サイトが側に居てくれるのがうれしいの。」 目を瞑って、一世一度の覚悟を決める。 小さく息を整える 「大好きだよ、サイト。 あの……ね、この運動会が終わったら……わたし……部屋で待ってるね?」 シエスタは片づけで遅くなるって……そう聞いたから。 意味、分かってくれるかな? もうわたしサイトのものだから。 好きにして、良いんだよ? そっと目を開くと、サイトが優しい瞳で頷く。 わたしの小さな胸の奥が、狂ったように切なさで満たされる。 「…………っ」 声が……出ないよ……サイトォ…… コクコク は? サイトの視線は……遠くに固定されたまま……コクコクって…は? 視線をたどる。 ………走ってるツェルプストー? たゆんたゆん? コクンコクン! ……サ……イト? 「あっ、わりぃ、ルイズ。なんか言った?」 視界が真っ白になる。 ……そう……サイト……へー、そうなの。 妙に静まり返った頭が、次の瞬間沸騰した。 ムネか?ムネなのかぁぁぁぁぁぁ 「ごめんね?サイト♪、聞いてなかったなら別にいいのよ?」 サイトの首に手を回してから…… 全身を使って足を跳ね上る。狙いは顔面。 膝が目標を捕らえて、ペキって小さな音が肌で感じられる。 うふふふふ 「ぐおぉぉぉぉぉ」 「聞いてなかったんなら……残念なことねぇぇぇぇぇ」 二度と言わないわよっ、この馬鹿ぁぁぁぁっぁあ。 この運動会で、今一番運動しているのは間違いなくわたしだ。

415 :4/4 :2006/11/30(木) 02:47:07 ID:yUmEFYQ1 馬鹿犬馬鹿犬馬鹿犬馬鹿犬馬鹿犬 思考がループしていた。 「あーもうっ、馬だか鹿だか犬だかはっきりしなさいよっ!」 校庭で揺れる胸たちを横目に、わたしは叫ぶ。 周りが変なものを見る目で見るけど……しらないもん。 「あんなの、脂肪のかたまりじゃないっ」 ……これ見よがしに揺れてる…… くやしくないもん。 ……エクスプロージョンのスペルってどうだったかしら? ………… はっ、危ない。 怒る対象間違えたらだめよね? 「サイトのばかぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」 周りが皆逃げて行く中、叫ぶわたしを呼び止める娘がいた。 「ルイズ、ちょっとこっち来なさい。」 モンモランシーがわたしを無理やり引っ張っていく。 モンモランシーの手……暖かい。 人気のないところまで来てから、モンモランシーはわたしに向き直る。 「恥ずかしいわねー、あんな人前で……ってルイズ?」 モンモランシーが少し屈んでわたしを覗き込む。 驚いたようにわたしを見ているのは……どうして? 「ルイズ、あなた泣いてるの?」 え? 言われるまで気がつかなかった……わたし……泣いてたんだ。 モンモランシーがわたしを抱き寄せてくれる。 「何か有ったのね?」 ……モンモランシーも……柔らかい……いいなぁ…… 「……あの……あの……ね……」 しゃっくりあげながら……モンモランシーに訴える。 「わたしも胸欲しいよぉぉぉぉぉ」 モンモランシーは固まりながらも落ち着くまで側に居てくれた。

「サイテーの男ね」 事情を最後まで聞いたモンモランシーがサイトをばっさり切り捨てる。……で、でもね 「良い所もあるもん」 ほんとだよ?いいところあるんだから。 「ふっちゃえば?そんな男」 …………少し考えてみたけど…… 「無理……よ」 大げさな溜息をついた後モンモランシーは言った 「じゃ、運動会で最優秀選手になりなさい」 え? 「な、なんで?」 脈絡無い……わよね? 「最優秀選手に贈られる商品の目録に……『革命の秘薬』があったから」 ……そ、それって 「聞いたこと有るでしょ?」 「む、胸が……革命的に……」 噂でしか聞いたことがない秘薬。 「えぇ、数年前にアルビオンで存在が確認された秘薬よ、アルビオンのはどこかの貴族が使ったらしいけど……目録には未開封って書いて有ったわ」 涙が止まった。 自分の足でしっかりと立ち、校庭を睨みつける。 「モンモランシー……」 「なぁに、ルイズ」 「……わたし……行くわ」 参加者を募集している受付に向かって踏み出す。 「そう……がんばってね」 目指す位置はたった一つ。 そして……最終目的は、 「これでサイトの視線は独り占めよぉぉぉぉ」

570 名前:1/9[sage] 投稿日:2006/12/04(月) 03:07:43 ID:Uew+wWsS 死ねる。 7万の大軍に突っ込んだ時より、今の方が遥かに死が側に有った。 あの時と並ぶ…… いや、あの大軍を超える殺意。 だが同時にソレより恐ろしいのは…… 「で、娘とはどういう関係なのかね?」 冷静に話し続ける、その理性だった。 「お、お義父さん……」 「貴様に、お義父さんなどと呼ばれる心当たりはないが……」 しまっ…… 「君には有るのかねぇ?」 怖いぞ、凄いぞ、ルイズパパ… 笑顔のままにじり寄ってくる、おっさん。 ……悪夢だ。 しかも邪険に出来ない。 ギラギラ光る目が俺からそらされることは一瞬もなかった。 「まあまあ、父さまその辺にしませんか?」 救いの手の主は、俺にとって理想の外見して、 しかも天使の心を持つ奇跡の存在。カトレアさんだ。 「ほら、ルイズが走るようですよ?」 そう聞いた瞬間、ルイズパパの首が180度回転する。 って、こわっ。 「ルイズ、ヴァリエールの名を汚すことのないようにな」 硬いことを言っているが、目じりが下がりっぱなしだし。 なによりルイズの名前聞いただけでこの反応…… 「親馬鹿?」 つい口に出る。 「……何か言ったか?使い魔」 首がきりきり元に戻ってこっちを見る……だから怖いって。 「あら、ルイズの方見なくていいのですか?」 カトレアさんの指摘に、壊れた機械のように首がガクガク揺れた。 ものすごい葛藤の挙句、ルイズの方に身体ごと向き直る。 とりあえず助かったのか? そう思っていると、ちょんちょんと袖を……カトレアさん? 視線が合った瞬簡に小さくウィンク。 人差し指で俺の質問を封じると、そのまま席を離れる。 「カトレアみなさい、ルイズの可愛いこと……可愛いこと…おぉっ……」 放置されたルイズパパの声が段々小さくなる。 十分に離れた後、カトレアさんが話しかけてきた。 「お願いがあるのですけれど?」 少しはにかみながら、頬を染めたカトレアさんのお願い…… 「俺に出来ることだったら……」 そもそも鼻砕かれて、のたうってる俺に魔法をかけて治療してくれた時から、 カトレアさんはなにか言いたそうだった。 ……運動会だから保護者も来るって事をすっかり忘れていた俺に、カトレアさんがいるのは衝撃だった。 衝撃から立ち直る前に、父兄席に誘われて……鬼に会った訳だが。 きっとずっと何か頼もうとしていたんだろーなぁ。 いつもすっぱりと物を言うカトレアさんが、おずおずと口にしたのは、 「わたし……学院て初めてですので……案内……していただけせん?」 そんな些細なお願いだった。 「いいですよ、ここで暮らしてるんで、なんでも案内できますよ」 カトレアさんって、学院に通ったこと無いんだっけ? 始めてきた学院が運動会。 ……凄く楽しそうに見えているのかもしれない。 「よかった。よろしくお願いしますね、騎士様」 あたりの空気の色が一瞬変わった、 俺はそんな錯覚を覚えるほどにっこり笑ったカトレアさんの手を引いて、案内を始めた。

571 名前:2/9[sage] 投稿日:2006/12/04(月) 03:08:16 ID:Uew+wWsS 唐突に決まったため、運動会の出場者は基本飛び入りだった。 受付で予約するだけ。 参加者が少ないことが心配されたけど、姫さまの用意した商品のおかげで、かなり賑わっていた。 「全部」 人ごみをかき分け、受付に着いたわたしはそれだけ告げる。 「は?あの……どのような競技でしょうか?」 「全部よっ、全部!!」 鈍いわねっ、この係員。 少しでおくれちゃったから、一つでも多くの競技に出たいのにっ。 「……正気ですか?」 「失礼ねっ!!」 「団体競技はチーム等がございますが?」 ……あーもう、面倒ね 「何でもいいわよ、とりあえず全部よ」 わたしが必死になるのには理由がある、他の子達は知らないこと。 ……ティファニアを見たことがあるから。 アルビオンの奇跡の胸。 この中でわたしだけが唯一真剣に、あの秘薬の効果を信じているはずよ。 モンモランシーに聞いてから、ティファニアの胸がわたしの頭から離れない。 (あ、アレを手に入れれば……) 「サイト……わたし……を………」 「は?なんですか?」 ヤバっ、声に出てた。 「なんでもないわっ、次はなんなの?」 大声でごまかす。 「スプーンレースですね」 「………なにそれ?」 魔法を使ってスプーンを飛ばすのかしら? ……風の魔法使いしか勝てないじゃないっ 「あー、運動会ですから、魔法は使いませんよ」 何度も同じ説明をしたらしい係員が、苦笑いをしながら教えてくれる。 「スプーンに卵を載せて運ぶんです。落としたらやり直し。 発案はなんと運動会の考案者です。」 ……サイトが考えた競技………負けられない。 「ま、と言ってもほとんどの競技は彼の発案ですけどね」 そこで落とさないでよ。 「とりあえず、それに出るからその間に他の競技にも登録しておきなさい、いいわね?」 「分かりました……けど、しんどいですよ?」 「……女にはやらねばならないときが有るのよっ!」 言い切ってもまだ動こうとしない係員に苛立ったわたしは続けた。 「商品がほしいのよっ」 最後まで言わせる気なら……溶かそう。 人だけど。 女の子に恥ずかしいこと言わせる気なら当然よね? 「あーそれでしたら、参考に……」 受付の向こうから、手を伸ばして校庭を指し示す。 「彼女が今、各種競技で最多の入賞者ですよ?」 ………その指の先にいたのは……シエスタ

572 名前:3/9[sage] 投稿日:2006/12/04(月) 03:08:49 ID:Uew+wWsS さて……次の競技に向かわないと……待っててくださいね、サイトさん。 学園の関係者なら誰でも参加できるとはいえ、参加するつもりはなかったけど…… 『以前アルビオンで発見された胸が成長する秘薬』があるって、貴族の方々がざわめいた時、わたしは参加することに決めた。 ……だって、アルビオンですよアルビオン。 ティファニアさんの胸を見たことある人間としては、見逃すわけには行きません。 「シ・エ・ス・タ?」 耳元で甘えた声がした。 「い、いきなりなんですかっ、ミス・ヴァリエール」 さっきまで校庭にすら居なかったのに……まさか……気づいたんですか? 「ありがとうっ、シエスタ」 混乱する私をよそに、ミス・ヴァリエールはいきなり抱きついてくる。 「わたしのためよね?」 「は?」 ……秘薬のことに気づいたに違いないですけど…… って、 「い、痛いです、ミス・ヴァリエール」 抱きついた腕が容赦なく絞まっていく。 「ありがとー、シエスタ。わたしのために商品とってくれるのよね?」 「いたいっ、いたいですっミス・ヴァリエール」 やっぱり気づいてるぅぅぅぅ きゃあっ、パキって……ペキって鳴った…… 「お、折れます、ミス・ヴァリエール……」 この細い身体のどこにこんな力が…… そういえば、ミス・ヴァリエール男子生徒を3秒でKO出来るって噂が…… その真偽を自分の身体で確かめることになるなんて…… そんな間にも肺の空気が空になって、しかも吸い込むことが出来ない。 「……ぇ……ぅ」 視界が真っ黒になる直前に、腕が緩む。 「げほっ、はあっはあっはぁっ……」 し、死ぬ……ミス・ヴァリエールにコロサレル…… 「わ・た・し・の為よね?」 ミス・ヴァリエール……本気だ。 『胸の為なら、一人や二人、殺す』 顔に書いてある…… 仕方ない、ここはとりあえず、ミス・ヴァリエールにあげる事にして…… 手に入ったらすぐ自分に使うことにしましょう。 「も、もちろんですよ、ミス・ヴァリエール、胸がお気の毒な貴方の為に、 最初っからあげるつもりでしたともっ」 緩んでいた腕が、ぴくりと震える……ま、まだだめなんでしょうか? 「わたしが貰っても仕方ないですし、ミス・ヴァリエールは運動苦手でしょうから、 わたしが手に入れて、その後で差し上げますね?」 <ルイズ意訳> 『こんなのミス・ヴァリエール位しか欲しがりませんよ? ご自分じゃ無理でしょうから、恵んで上げますね?』 き、気のせいかしら? う、腕の力が……また強くなっていってるような…… 「ほら、こんなのなくてもわたし平気ですしっ」 『ミス・ヴァリエールと違ってありますし』 「本当に増えるか分かりませんし、差し上げますっ」 『元が虚無(0)だったら、何か掛けても0ですよね? 』 また絞められるのかと思っていたら、今度はいきなり突き放される。 「……ば、馬鹿にしないでっ、こんなの……こんなの……」 要らない……そういうと思ってたら…… 「自分でとってやるもんっ、覚えてなさいっ、シエスタぁ」 要らないとは口が裂けてもいえないんですね……ミス・ヴァリエール……

573 名前:4/9[sage] 投稿日:2006/12/04(月) 03:09:22 ID:Uew+wWsS スプーンをもってスタートラインに並ぶ…… 犬の世界ってこんなシュールなことをいつもしてるのかしらね? 左右を見回すと、皆微妙な表情をしていた。 少し離れた所にある卵の山。 それをスプーンに乗せた後、校庭を一周してゴールらしいけど…… ここはポイント稼ぎって割り切ろう。 ……それに…… 隣にいるのはシエスタ……さっきの屈辱は忘れない。 (許さないわよ) そう思ってシエスタを睨む。 一瞬目が合って。 シエスタはにっこりと微笑んだ。 (わわわ、笑われたっ) わたしの恨みはさらに深くなる。 うーふーふー、許さないからっ、シエスタっ。 微笑み返したわたしを見て、シエスタがなぜか怯えたけど。 勝負のことだけ考えて、スタートを待つ。 いつでも走り出せるように構えてから、ちらりとシエスタを見る。 『走りなれてますっ、わたし』 全身がそう主張していた。 でも、わたしが勝つ、だってわたしは伝説の魔法使いだから。 サイトの発案で、スタートの合図は空砲が使われている。 初めて間近で聞く銃声に、一瞬身が竦む。 (しまった……) 後悔してももう遅い、慌てて駆け出すけど…… (ス、スタートの所為なんだからっ) 全然追いつける様子がなかった。 ぐんぐん加速を増す周りに追いつくため、息を詰め目を瞑って無心になって加速する。 前を走っていた皆の背中が、見る間に近づいてくる。 (見なさいっ、わたしが本気を出せばこんなものよっ!) もう一度目を瞑りなおして、手足を全力で動かす。 「だ、だめです。ミス・ヴァリエール止まってくださいっ」 シエスタの叫びが聞こえる。 わたしの邪魔をしようとしたって、そうはいかないんだから。 「きゃあぁぁぁぁあ」 シエスタの叫びと…… 「危ない」 「止まれ、止まれ!!」 観客の?叫び? それを疑問に感じる頃、わたしは卵の山に頭から突っ込んでいた。 ――――――――痛い 卵の殻がチクチクする。 口の中もジャリジャリした。 「えー、続行不可能により、この競技は中止といたします」 どこかでアナウンスが流れていたけど…… そんなの聞いてる余裕はなかった。 「いやぁ……ぬるぬるするぅ……」 体中に浴びた卵が、全身をベタベタに染め上げていた。 泣きそうになりながら、立ち上がる。 「だめですっ、ミス・ヴァリエール、座っててくださいってば」 シエスタの叫びが最後まで聞こえる前に、観客席と生徒の応援席からの歓声が聞こえた。 ウオォォォォォォォォ 主に男子生徒からなる叫びが、校庭を揺るがす。 な、何? 向こうの方でシエスタが男子生徒の服を剥ぎ取ってる。 「透けてます、透けてますってば、ミス・ヴァリエール」 何か言いながら、慌ててこちらに服を持ってくる。 ……す、透けて……る?恐る恐る自分の身体を見ると…… 黄色と透明の液体で濡れたわたしの身体に、ぺったりと…… 「やあああああああぁぁぁぁぁぁ!」

574 名前:5/9[sage] 投稿日:2006/12/04(月) 03:09:54 ID:Uew+wWsS 「サイト以外に見られた……見られた……見られた……」 ぶつぶつ言い続けるミス・ヴァリエールを貴族用のお風呂に連れて行く。 『見ないでよぉっ』 って泣きじゃくるミス・ヴァリエールに、容赦ない視線を注いだ男の子たちが許せないです。 抱き上げて、服を身体に掛けてあげたときには、 『胸を大きくしたかっただけなのにっ、なんでこんな目にあうのよぉぉぉぉ』 って、叫んでらしたけど……お風呂で誰も居なくなって、落ち着いた途端に 「ごめんなさい、サイト……見られちゃった……見られちゃった……よ」 ひたすら落ち込んでいた…… えー、それはサイトさんならいいって事でしょうか?ミス・ヴァリエール。 聞きたかったけど、これ以上追い詰めるのは……ちょっと。 「はい、お風呂入りましょうね?ミス・ヴァリエール」 ベトベトになった服を、そーっと脱がせる。 ぺったりと身体に引っ付く服が脱がせにくかったけど、気力の萎えたミス・ヴァリエールが抵抗しなかったおかげで、そんなに大変でもなかった。 この服色々問題はありますけど、脱ぎやすいのは利点ですよね。 手を引かないと、その場で泣き続けるだけのミス・ヴァリエールを立たせたまま、わたしも服を脱ぐ。 ……一瞬胸に注がれた視線が怖かったんですけどっ。 服を脱いでもベトベトのままのミス・ヴァリエールをお風呂まで連れて行く。 貴族用のお風呂は、いつも魔法で適温になっているらしい。 噂には聞いていたけど、本当だったのね。 湯船の側まで手を引いて、風呂桶にお湯を注ぐ。 「ほら、ミス・ヴァリエール、卵って髪に良いらしいですから、もっと艶々になって、サイトさんも釘付けですよ?」 お湯を掛ける前に、少しは元気になって欲しくて一声掛ける。 「……そんなことない……」 「あら、こんなに綺麗な髪なのに?」 「……サイト、髪なんかより、胸のほうが好きだ……もん」 自分の胸を押さえて、堰を切ったように泣き出すミス・ヴァリエールが愛しかった。 「ほら、全然無いわけじゃないですし……」 まだぬるぬるする胸に手を這わせる。 ……あら 「ミス・ヴァリエール?」 声を掛けるわたしに、もの問いたげな視線を向ける。 傷ついて怯える小動物みたい♪ すこ〜し、苛めたくなる。 「立ってますよ?」 何を言われたか理解出来なかった。 そんな顔をしていた。 小さく自己主張をする敏感な部分を抓る。 「ほら、ここ」 「っったいっ」 痛みと怒りの為に、一瞬でいつものミス・ヴァリエールに戻った。 「何するのよっ!」 勢いよくわたしの手を払う。 あら、強気ですね。 杖も無いのに。 「感じたんですか?」 気づかれないように入り口の方に身体を動かしながら、ミス・ヴァリエールを壁際に追い込む。 「なななな、何のことよっ」 この人は本当に分かってないですね。 かわいいっ。

575 名前:6/9[sage] 投稿日:2006/12/04(月) 03:10:27 ID:Uew+wWsS ……やだ……こんなのいつものシエスタじゃない…… 怖かった。 にこにこ笑いながら、ゆっくり近づいてくる。 怖いよぉ、助けてよ……サイト…… 「ほら、ここですよ」 またわたしの胸を触る。 こんなの触っても面白くないと思う。 シエスタみたいに立派ならいいのに…… ぬるりとした感触が、わたしの胸を下から上に這い上がる。 「ひっ」 初めて受ける感触に、声が漏れた。 そんなことはお構い無しに、シエスタはしつこく触り続ける…… 一箇所だけ手の感触が違う所があった……あれ? 「ほら、分かりますよね?」 「なに?これ」 寒い時なら……たまに……でも…… 「見られて、感じちゃいました?」 うれしそうに問いかけるシエスタの声を聞いて、それがとても恥ずかしいことだと感じた。 「ち、違うわよっ」 そんなはず無かった。 サイト以外に見られるなんて、今思い出しても…… 「あら、思い出したんですか?」 なっ! 「また硬くなりましたね……へ・ん・た・い・さんっ?」 うそっ、うそうそうそうそうそっ。 混乱したわたしは、あっさりシエスタの腕に絡め取られる。 シエスタの腕の中で、背中から抱きしめられる。 背中に当たる胸が気持ちよくて……切ない。 いいなぁ……これ、そう思って一瞬力が抜けた。 「こっちも素敵ですよ?」 シエスタのかわいい声が耳元で囁く。 ……これ……何? 理性が溶ける。 シエスタの声……キモチイイ。 ぼぅっとなった頭に、シエスタが胸を触り始めていることが伝えられた。 「ふっ……くっ……」 一生懸命声を殺す。 ぬるぬるが、ゆっくり広げられて…… 快感から逃れようと後ろに下がると、そこにあるのはシエスタの胸。 「ひゃあぁっ」 柔らかい胸が背中に当たる感触に、思わず声が漏れる。 「へぇ……やっぱり気持ちいいんですね?」 ……っっっだめっ、シエスタの声っ。 頭が声に抵抗する間にも、胸は触り続けられる。 前からも後ろからも伝えられる快感に、頭の奥がゆっくり焼けていく。 「気持ち良いですか?」 シエスタの声に、全力で首を左右に振る。 認めたら何かが終わる。 そんな確信が有った。 片方の硬くなった先端を、指先で強く擦りながらもう片方の手がにゅるにゅるとお腹の方に降りていった。 お、おなかも気持ちいいよぅ……でも……胸ほど……じゃ 心のどこかで、少しがっかりする自分を戒める。 甘かった。 「ひっ」 太ももの辺りを這い回る手も、十分脅威だった。 ぬるぬるを丁寧に広げて、集めて、また広げた。 「………んっ……」 でも、耐え切れるかも…… そんな希望はあっさり砕かれた。

576 名前:7/9[sage] 投稿日:2006/12/04(月) 03:11:03 ID:Uew+wWsS 激しく震えるミス・ヴァリエールが可愛い♪ 「触ったこと無かったんですか?」 一番敏感な所を、人差し指で転がしながら質問する。 「……っ……ぁ……っ」 声に成らない声を漏らしながら、ガクガクを首を振る。 わたしの手は、卵以外の感触を捕らえていた。 「ねぇ、ミス・ヴァリエール、これ、な〜んだ?」 驚いたように一瞬見つめた後、絞り出された声は、 「た、卵に決まってるじゃないっ」 透明な粘液は、確かにそうかもしれないけれど…… 「じゃ、念入りに落としますね?」 素直じゃない子にはおしおきっ 「えっ、だめっ、やめっっっ」 無視。 卵なら別に良いですよね? 股間に差し込まれた手を、勢い良く動かす。 胸もにちにちとしつこく責め続ける。 卵を吸って重くなった髪が振り回される。 わたしの手を邪魔するように、太ももが締め付けられる。 「やぁっ、だめっ、シエスタぁ……やめてよぉ……」 こちらを向いて哀願する唇が…… わたしは悪くないですよ?どう見てもわたしを誘っていた。 塞いだ途端に、ミス・ヴァリエールの目が大きく見開かれる。 混乱している間に、唇を舌でほぐす。 混乱から立ち直るよりも先に、快感に酔い始める。 ……堕ちた? そんな予感を確かめるため、唇を少し離す。 「んっ……あ……」 ミス・ヴァリエールの方から舌を絡めてくる。 ……完璧。 えもいわれぬ達成感に酔いながら、指を中に進入させる。 怯えた瞳のミス・ヴァリエールに問いかける。 「指入れたことないんですか?」 「……うん……」 小さな返事が聞こえる。本人も含めて始めて触るわけですね。 「じゃ、教えてあげますね?」 返事に困っている間にも、もちろん小さく手は動き続ける。 何も言えないままのミス・ヴァリエールの唇をもう一度塞ぐ。 口を塞いだまま、今度は親指で敏感な所を潰す。 目を見開き、熱い呼吸を繰り返すミス・ヴァリエールで遊び始めた。

577 名前:8/9[sage] 投稿日:2006/12/04(月) 03:11:35 ID:Uew+wWsS わたしの身体が震える。 力が入らなくなって、シエスタにもたれ掛ったわたしを、身体を仰向けに転がした。 お湯も浴びてないのに、すっかり火照った身体にひんやりした床が気持ちいい。 「いくら、拭っても止まりませんね、た・ま・ご」 ……たまごって何? ……もっとして……シエスタ。 「食べ物ですもの、無駄にしてはいけませんよね?」 シエスタが何か言ってるけど、そんなのどうでも良かった。 シエスタがわたしの足を持ち上げる……あ……見られてるぅ…… ゾクゾクとした快感が背筋を上る。 へんたいなのかな……サイトにも嫌われるかな…… そんな恐怖がわたしを襲うのは一瞬。 両手で太ももを抱えたシエスタの頭がゆっくり降りていく。 わたしの理性が急速に蘇る。 「な、なにっ?だめっ……だめぇっ、そこ……きたないっ!」 慌てるわたしをよそに、シエスタの頭は止まらない。 「汚くないですよ?卵なんでしょう?」 ち、違うのっ、うそなのっ 「ミス・ヴァリエールはわたしに嘘ついたりしませんよね?」 本当のことを言う前に、シエスタに口を封じられる。 「嘘だったら、もう止めちゃいますよ?」 …………ごめんなさい、ごめんなさいシエスタ…… 心の中で謝るけど、期待に震える心は本当のことを喋ろうとしなかった。 シエスタの口が近づいて行く。 恥ずかしさのあまり、私は両手で顔を塞ぐけど…… どうしても目が離せなくて、指の隙間から覗いてしまう。 ちゅ 小さな音が響く。いままでで一番強い快感に何も考えられなくなる。 強すぎる快感から逃げようと、わたしの手が床を押さえて体を上に逃がそうとする。 本物の方の卵が、嘘をついた罰とばかりに行動を邪魔していた。 逃げられない…… そんな恐怖と共に、シエスタを見る。 シエスタもこちらを見ていた……笑っていた。 わたしの嘘なんて、全部分かっている。 そう悟った瞬間シエスタの責めが再開されて、わたしはゆっくり変わって行った。

578 名前:9/9[sage] 投稿日:2006/12/04(月) 03:12:15 ID:Uew+wWsS ミスった…… 「シエスター、ごはんー、一緒に食べましょー」 ミス・ヴァリエールに妙に懐かれた。 サイトさんを手に入れるために、上位に立とうと全力で責めすぎた…… しかも…… 「あー、貴方がシエスタさんね?ちょっと協力して欲しいんだけど?」 「だめよっ、モンモランシー、シエスタはわたしのよっ!」 ……わたしはサイトさんのですってば。 妙な噂が広がっていた。 「ルイズの胸を一時的にでも大きくした方法を、教えなさいっ!!」 貴族の方々に会うたびに聞かれる。 なんでも、わたしがミス・ヴァリエールを連れて行った後、 サイトさんが胸の大きいミス・ヴァリエールと一緒に居る所を見た人が沢山居るんだとか…… どういうことかしら? 「ジャンの為に更なる美の探究に協力させてあげないことも無くってよっ」 ……また増えた…… 「教えて」 わたしも知りたいですってばっ 次々と来る来客に、流石に辟易してくる。 「皆さん、運動会はどうしたんです?」 「「「「どっちが大事だと思ってるのよっ」」」」 部屋の外にまだまだ足音が近づいてくる…… ど、どこで何を間違えたのぉぉぉ 泣きそうになりながら、これからの事を考えていた。

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