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261 名前:イザベラ慣らし1/4[sage] 投稿日:2006/12/15(金) 06:48:41 ID:LbTLt3Fr 大国ガリアが王都リュティス、その東端ヴェルサルティル内プチ・トロワ 薄桃色の宮殿に今日もヒステリックな声が響き渡る

「あぁ、もう!どいつもこいつも使えないやつばっかりじゃないか!  少しは気の利いた趣向で主人の退屈を紛らわせてみたらどうなんだい!!」

主人イザベラの怒声に呼びつけられた侍女達は身をすくめた、がそれで主の怒りが収まるでもない。 しかも最近のイザベラは機嫌が悪くなると自分の中でそれを拡大再生産するかのように暴れる。

グルノープルから戻ってきた直後は一言も口をきかずに寝室に直行し、一週間は傍付きの者達にすら メモで指示、食事こそ部屋に運ばせるが使用人が退出するまで寝所の幕を閉じてしまうなど 使用人たちは何事かと思いつつも突然訪れた平穏を始祖に感謝していた。 その平穏が嵐の前の静けさだったことを思い知るのは侍女部屋の呼び鈴が鳴ってからそう時間はかからなかったのだが。 ある者は魔法でマリオネットのように踊らされ、ある者は自分の血を吸わせたスキルニルとの勝負を強いられた。 その全てをイザベラは他人事のようにつまらなげに見下ろすのである。 幾人かは耐えられずに郷里に去ったがそれすら適わぬ者たちはひたすら耐える、そんな日常がまた突然変わることがあるとも思えずに。

世はアルビオン神聖帝国のトリステイン侵攻にはじまりトリステイン・ゲルマニア連合軍による反攻、 都市サウスゴータ占領からの膠着、降誕祭を機とした混乱、それらから時を経ずして終戦を迎えていた。 他ならぬイザベラの父ジョゼフの放った一つの詔勅が全てを決めたのである。

イザベラは父を一層誇らしく思うも、むしろ思うがゆえに父の役に立ちたい想いが先行してしまう。 北花壇騎士団長に甘んじねばならぬ自分の才、自分がアゴで使いまわしてはいるものの内心認めざるを得ない?7号?の才… 父ジョゼフが叔父オルレアン公に感じていた恐怖は娘イザベラにも伝承されてしまっていた。  その?北花壇7位の座?が叔母の移送幽閉とともに空席となることを知らされたときは 「ようやく父上も私の能力とあの人形のダメさを判ってくださったのね」 と喜んだ半面玩具を取り上げられた子供のようにふてくされた。 「どうせお払い箱にするなら私の好きにさせてくれたら良かったのに。ふわぁぁぁ」

そんな愚痴をこぼしつつ手も当てずにあくびをした所に一つの声と一つの影が近寄っていた。 「暇を持て余してるって感じだな姫様、といっても俺にゃとても王女様にゃ見えねぇ仕草だけどな」

262 名前:イザベラ慣らし2/4[sage] 投稿日:2006/12/15(金) 06:52:28 ID:LbTLt3Fr 「誰よ、わたしが呼びもしないのにここに踏み込むようなんて。衛士連中もガーゴイルも一体何をしてるんだい!」

思いがけない侵入者へ向けられたイザベラの問いに返る言葉もよどみない

「衛士だか使用人だかは知らないが食事に一服もらせてもらったからな、運が良けりゃ明日の昼には目が覚めるだろうさ。 ガーゴイルは通り道に邪魔そうな分と目に付く分は片付けさせてもらったけどちょいと道具に頼りすぎなんじゃねぇ? 人間用に持ってきた薬に余裕ができたおかげでこっちは助かったけどよ、っと 掃除する音が姫さんに聞こえないように気ぃつかったんだから姫さんも静かに頼むわ」

侵入者の口上を聞き流しつつ呼び紐を引こうとするイザベラの手には途中から切り取られ用をなさなくなった紐があるだけだった。

「っ!」 ならばと杖を向けようとするが先程まで声がしていた方向に向けられた杖先は何もとらえてはいなかった。そして喉元に受ける金属の感触。 「多少余裕が出たとはいえ、手間はかけたくないんだ。俺の手元はともかくあんたが暴れて刃を引いちまうなんて寝覚めが悪いしな」 「だったらアンタが出てけばいい話じゃないか、わたしが誰か判らないなんていうほど馬鹿じゃないんならね」 『いいから黙って従いな、娘っ子。というよりホントにやるのかね、相棒?』 「あぁ、ここまで来たんだからな」

 首筋に刃を添えられつつも付いた悪態に応じたのは先程まで言葉を交わしていた者とは全く違う声音であった。 しかも賊は背後から自分をからめとっているはずなのに声は前、というか自分の喉元から聞こえた。 そして喉元と背後で会話が行われている……一瞬『地下水』を思い浮かべるも、あいつは あの忌まわしい事件の記憶とともに処分したはずだと思い直す。  では今ここにあるのは別のインテリジェンスアイテムとその使い手ということになる… さすがに情勢の不利は認めざるを得ないようだ。 「判ったよ。で、わたしにどうして欲しいんだい?」

「まずは杖を向うに放ってもらおう」 その言葉とともに、部屋の隅を指す賊の指が視界に入る。賊が満足する程度に放り投げる。 「次はその椅子に座ってこのロープで両足首と膝下を椅子の脚に結んでもらう」 目の前にロープが投げ出されたかと思うと、首筋を少し冷えた手でつかまれるのと入れ替わりに 刃の感覚が背中のほうへと移動し動くことを暗に要求される。渋々従うと言葉はさらに続く。  首をつかむ感触が去ったかと思うと初めて賊は正面からイザベラの視界に入り視線を受け止めた。 歳は自分とそう違わないであろうし黒い髪にしても少ないにせよ特段にいわくがあるようにも見えない少年。 ただ、貴族にも平民にも見慣れない衣服と目元辺りを隠す銀白色の仮面、そこから覗く黒い眼だけが特徴 といえなくもないくらいで身元をはかるには余りにイザベラの範疇を外れていた。

彼は手近の水差しからグラスに注ぎ、裾から一つの薬包を取り出し問い掛ける。 「自分で飲んでくれるか?」 「ここまで言う事聞いてやったんだからあとはアンタがやりな」 『まぁそうなるわな、となるとあれかい?相棒』 「あぁ、最初の手筈どおりだ」やはり手にした剣と会話している・・・と見ているうちに 賊は剣を背負い直し裾に手を入れた…と思った直後に左の二の腕に針のような刺激を感じる。

263 名前:イザベラ慣らし3/4[sage] 投稿日:2006/12/15(金) 06:54:34 ID:LbTLt3Fr ―吹き矢 と思い咄嗟に払おうとする右の二の腕にも刺激が走る。 その二撃で両腕の感覚が遠くなりだらりとぶら下げる格好になってしまう。 椅子に下半身を固定させられた上に両腕は麻痺、しかし意識だけは生かされている ……というのは状況が認識できるだけになおいっそうの屈辱である。

「アンタ、王女のわたしにここまでして楽に死ねると思うんじゃないよ!」 初めは大胆な物盗り程度と思い捕えたあとはさっさと処刑する、その位で良いと思っていたが図に乗ったかのように王女を自縛させる。 こうまでされては磔にして四肢を魔法で撃ち抜き悶死させてやるくらいはしなければ腹の虫が収まらない程にまで昂ぶっていた。 そんなイザベラの激情に水を差すような答え。 「誰が王女だと?そんな高貴な人間がこの場のどこにいる」 「お前の目は節穴かい?此処にいる人間で?女?は私だけ、なら誰が王女かも当然だろ!」 「へぇ、女ってだけで王女様になれるのか、気楽でいいなガリアって国は」 「私を弄ぶに飽き足りず王家まで侮辱すると…  (パァン) 再度の返答を遮り部屋に頬を張る音が響く 「何するのさ!」 「うるさいんだよ、ぎゃんぎゃん喚きやがって。人の話は最後まで聞くよう親に習わなかったのか?」

理解しがたい非難にせめて抵抗の意思表示としてそっぽを向こうとするも顎をつかまれ振り向かされる。 顎をつかんだまま、のぞきこんでくる視線に対し憎悪を込めて睨みかえすが相手はさして気にもせずに語りを続け始めた。 「噂には聞いていたがホント、慎みとか愛嬌の欠片も感じられねぇ。  これなら父王が見限ったというのも納得がいくってもんだな、お飾りの人形王女様」 「誰がお飾りで人形よ!私はお父様に信頼されてる!あの人形娘なんかよりずっと大事にされてる!  でなきゃ騎士団長を任されるはずがない!」

今度は平手は飛んでこなかった、しかし酷薄な言葉が畳み掛けられる。 「そうやって自分をごまかしてるだけだろう?  他人に明かせない影を任されてるのが信頼だと思ってるのか?  表だって名乗ることもできず、賞賛を浴びることもない地位が大事か?  館をもらって豪華に着飾って使用人を従えたところでお前である必要なんか無い。  命令を伝達するだけなら、鳩の使い魔でもこなすさ。  お前はその程度の価値しか認められてない、それを自分でも感じているのに認めたくないだけだ。  だからといって従姉妹ほどの才能も人望もないお前は腹いせに周囲に当り散らすのが精々、  それすらも、いつ家来や召使に寝首をかかれるかという恐怖しかもたらさない。  そしてまた周囲に晴れることの無い鬱積をぶつける堂々巡りの日々だ。  俺には王女と言うよりも虜囚の責め苦を受けてるようにしか見えねぇ」

始めのうちは睨み付けていたものの、次第にその表情からは激昂と苦悶の感情が入れ替わりはじめ 何も聞くまい、何も見るまいとするかのように顔を背けてしまっていた。 認めたくなかった事を次々と指摘してくる賊に対する怒りよりも自分の陥っている悪循環の認識が はっきりし始めていることになんともいえぬ悲しさ、寂しさがこみ上げてくる。

264 名前:イザベラ慣らし4/4[sage] 投稿日:2006/12/15(金) 06:55:25 ID:LbTLt3Fr 「や、止めなさい!……止めて、もう止めてよ…」

幾分にかすれた声しかでない、少し涙目になっているのか視界もにじんできていた。 でも今自分にできる精一杯の要求だった。が、男は続けた。 「そりゃぁ親子の間ってのはのこのこ他人が入っていいもんじゃないだろう。  でもな、お前の噂聞いたり言動見ると口惜しくてしょうがないんだよ。  なんていうか愛情の量も足りなきゃ受け取り方も判らない迷い子みたいでさ」

 うつむいたまま肩を幾分震わせ続けるイザベラに近づく影と気配 その気配はさらに近づきイザベラの良く梳かれた蒼髪に手櫛をかけてきた。 「…?」 「これだけの髪を保てる生活をさせてもらって、」 今度は耳から顎へと指が流れていく、その感触にいくぶんくすぐったさを覚えつつ何事かと できる限りに身を縮みこませようとするが顎へと達した手に再び面を上げさせられる。 「…っ……何?」 「これほどすべらかな肌を持ちながら、」 言うと同時進行に薄手の手袋をつけた一方の腕で額からまなじり、頬へとなぞり、問う。 「何が足りない?  何故、この切れ長の眼差しを悪意に満たす?  何故この眉間を怒りに歪め、何故この唇から罵りが生まれる?  笑えば華と映えように、無下に押し殺す?」 仮面から覗きこむ眼には悪意も蔑みも無くただ、イザベラを凝視してくる。

「そっ…そんなの判らない、判るわけない!」 軽く混乱しつつも答え始めていた。 「みんな、私を?無能者の娘?とか?簒奪者の娘?みたいな眼でしか見てこない!  お父様に魔法の才が少し足りないから、私があの娘より魔法が劣るから……なんて事で  お爺様の跡を継承するときに騒ぎ立てて…!  私は、あんな人形遊びやおどけて自分を紛らわせるしかなくなる以前のお父様で良かった。  良かったのに……あの娘もその父親も何も助けてなんかくれなかった。  だから私は、わたしは…!」

「困っていた時に助けてもらえなかったから悪意に身を任せた、と?  なら、もし今度助けられた時にはお前はどうする?命を捧げてでも報えるか?」

妙なことを言い出す、などという思考は無かったが答を選ぶに迷いも無かった。 「命まるごとなんて御免だね。でも……もしそれが本当なら?心?を捧げてもいい」

554 名前:イザベラ慣らし2[sage] 投稿日:2007/01/13(土) 20:30:16 ID:gC3SwRxV 「心、とはな…」 相手の声に多少の驚きが混じる、が語尾は呟くように消える。

「な、何よ、ガリア第一王女の私の言葉を疑うっていうの?」 こんな賊にまで軽んじられるのだろうかという思いが沸き起こり その表情に落胆の色を塗り重ねようとしたとき、回答は質問だった。

「お前の得意系統はなんだ?」 「自分は聞くだけ聞いて私にはだんまりなんだね…まぁいいわ、私が得意なのは、か……水よ」 風といいかけてあの娘の顔が脳裏に浮かんだ。 私よりも二つ三つも年下のくせに、分家筋のくせに、 トライアングルへ未だ到達できない私には嫉妬してもし足りない従妹… あの娘と比べられそうな要素はできるかぎり伏せておきたかった。 「で、それが私の言葉の信用性とどう繋がるのよ?」

「他の系統ならまだ半信半疑だったけどな。水は人の心と体に強く作用する、強く操作できる系統だろう。 それを一番理解しているメイジのお前が、代償に?己の心?を選んだ。ならその言葉の重みは判る」 「つまり?」

「いきなり俺をそこまで信用するのか、と驚いた」

「別に信用したわけじゃないわ、ただ私にとってそれだけの価値があるかもと思っただけよ。 ま、そんなことしてくれるようなのが居るなんて思ってないし」

「破格の代価は諦観の裏返しか……そろいも揃って哀しいものだな。本当にそっくりだ」

肩透かしを食わせるつもりの虚勢も返される言葉に揺すぶられる、つい耳を傾けてしまう

「俺は二人のメイジを知ってる。一人はとんと芽が出ずに誰もに軽んじられる屈辱に、 もう一人は才を示してもそれを認めてくれる者のいない孤独に囚われてた。 お前からはその二人を併せたよう苦悩が感じられる」 「何よ、それ」 「無才ではないが身近により優秀な者がいるためにその地位に相応しからず、と。 周囲に認められぬ孤独と屈辱、それがお前を苛立たせるんだろう?」

なんて傲慢なヤツ…人の心に土足で踏み入るようなことをズケズケと!

555 名前:イザベラ慣らし2[sage] 投稿日:2007/01/13(土) 20:31:17 ID:gC3SwRxV 「…やるよ」 「え?」 激昂しかけて聞き逃した

「手伝ってやる、って言ったのさ。お前に?救い?が来るように。 お前が求める通りの助けになるかはわかんねぇけどな。 ただ、その時まで俺なりにお前のイライラをいくらか発散させてはやれると思うからな」

さっきまでは慧眼な物言いをしていたくせに一転なんとも間の抜けたことを言いだす 正直、全く人間が掴めない 「どういう風の吹き回しさ?押し入った挙句に被害者に助力を申し出る強盗なんて聞いたことも無いよ」 「何、せっかくの素材が勿体無いと思ってね。その顔が憎悪以外でどう変化するか見たくなった」

――ポン――心の中で小さく何かが弾けた音が聞こえたような気がした――少し赤面してしまったかもしれない…

動揺を見せまいとしてかイザベラは俯きこんでいる。 その間にサイトは彼女に近づくと、貴婦人に手を許された騎士のように未だ麻痺させられている イザベラの手をとる。

「…何を?」 「今夜は挨拶代わりということで触れるのはこれだけにして、俺流のストレス解消法の デモンストレーションをお見せするよ」 接吻されるかと思った手先には一体の人形が近づけられ、その人形の武器で小さく刺される。 手荒れするようなことをするはずもない綺麗な肌に小さく浮いた紅い珠が人形に吸われ 傷に血止めだろう軟膏を塗ると賊は数歩下がって人形を床に置いた。

「それは…まさか、スキルニル!? 盗賊が気軽に入手できるような代物じゃないはずよ!」 「以前に結構な数に襲われてね、大半はぶった切っちまったんだがいくつかは無事に解除できた。 そのうちの一体さ」

そうするうちにも魔法人形は変貌を続けイザベラの姿をとり終える。 それを確認したサイトはスキルニルの背後にまわり後ろ手に拘束する、がスキルニルのほうは 命令を待つばかりで抵抗する素振りも見せない。

一通りし終えると未だ椅子に留め置かれているイザベラをベッド横に向き合わせ、脚の拘束を緩める。 さらにベッド上から毛布を抜き出し、自分の羽織っていた上着と併せてかけてくれた。

「随分、薄い部屋着だったんだな。悪かった」 「助力を申し出たり気遣ったり本当に変な賊だね」 「穏便に交渉を始めたかっただけさ。あとはそこで見てればいい」

言いながら先程のスキルニルを連れてくると空いているベッドの上に横たわらせる。

「さぁちょっとした鑑賞会を始めよう」 221 :イザベラ慣らし3 :2007/02/03(土) 01:07:36 ID:V9sAEwYv 「襲われた時は夜陰だったから判りにくかっけど本当に良く出来てるもんだな。  噂じゃ外見以外も色々映しとれるらしいけど、これだけでも美術品で飾れそうだ……」

 後ろ手に拘束されたまま大人しくしているスキルニルを眺めつつ、そんなことを言っている。 ――貶さないのはともかく本人を前にその裸像をまじまじと観察するのは止めて欲しい――  そう思っていると男もベッドに上がりスキルニルを私に向ける形で抱き起こし、自分はその 後ろに座って軽く抱擁するように両腕をまわしてくる。

「どこから触って欲しい、とか要望はあるかい?」 「さてね、人形相手に欲情できるような性質じゃないからね。自分で考えてみたらどうだい」 「やれやれ、じゃそうさせてもらうさ」

 言うと、男は胸に添えていた両手をなぞるように動かし始める。 下から持ち上げるように滑らせたかと思えば乳房を包み込むように指を広げると 乳首を指の隙間に覗かせるようにして揉みこんでいく……。 「いいな、この触感といい、手ごろな大きさといい馴染むようだ」 うなじの辺りにうずめていた顔を右耳に近付かせて囁くと 『…………ッ』  先刻まで無表情だったスキルニルがわずかに反応した。 据わったように宙に放たれていた視線が胸を揉む手を注視している… 見れば乳首に引っ掛けるように指で押さえ、弾力ではずれるのを利用して刺激しているらしい。 断続的に加えられるその刺激に応えるように乳首がプックリと膨らんで来ている

『………ッ……ァ』 存在を主張し始めたのに気付いた男の指がまた動きを変えスキルニルの反応が増え始めた。 『っ……ひぅ…ゃ!…そ、そこは』

膨らんだ乳首をすり潰すように刺激し、軽く摘んで引いて……両手で時に同じ動きをしたかと思えば 不意に片方を反転させたり停めたり強弱をつけて丹念に愛撫を加える、その都度スキルニルは 身体を硬直させたり、耐え切れずにこぼしたかのような短い声をあげる。

『ぁ……ふぁ…あぁっ…』 ――まさかスキルニルが女として感じてる? それは人形の声というには余りに肉感的な響きを帯び始めていた。 こころなしか、肌の色も赤みを帯びつつあるし、動きもガーゴイルのような無機質さよりも 人のそれに……が、何より切なげに眉根を寄せ瞼を閉じ、与えられる刺激に集中している表情――  それが自分の顔をそっくり映したマジックアイテムでしかないと知っていてもなお、 いや判っているからこそ不思議な感覚がいっそう強くなる。 鏡の前に立つ自分は何もしていないのに映し出された影だけが躍っているような……

「えらく熱心に見てるが、気に入ってもらえたのかな?」

 投げかけられた声に呼び戻され、自分を見つめている視線に気付く。 仮面にさえぎられて目元の細かい表情まではうかがえなかったがスキルニルのみならず自分にも注意を払っていたらしい。

「ま、この反応からして聞くだけ野暮か」  と、スキルニルの顔を覗き込んでいる。ひとしきり観察し終えたのか、こちらを見続けながら スキルニルを振り向かせていた手を頬、喉、鎖骨、肩、二の腕…と這わせつつ下半身へと運ぶ。 その意図を測りかねているうちに自分の体の違和感が減っていることに気付く。 ――両腕の痺れが治っている! 視線はこれを暗に教える為?   さっき投げさせられた杖は……あった…この距離なら椅子ごと転がっても取れる? ―― 無意識に先程投げさせられた杖に視線が走る。

222 :イザベラ慣らし3 :2007/02/03(土) 01:09:15 ID:V9sAEwYv ――いや、緩められたとはいえ両足が縛られていることに変わりは無い。 椅子ごと転がるなんてまねを試したこともないし、杖を掴めても詠唱を終えるまで賊が大人しく 待っていてくれるだろうか――

 機を窺うイザベラをよそにスキルニルへの愛撫は次の段階へと進もうとしていた。 『……こ、今度は何処…?』  左手を胸に残し、腕から腹へと進められた右手がヘソの周りを数回なぞる、がそこから蒼い叢には直行せずに 脚の付け根、太ももと滑らせていく。 焦点の定まらない動きに焦らされたかスキルニルが身をよじる。 ――既に?何を?されるかではなく?何処を?されるかという思考になってるわね――  散々道草をして、ようやく目的を思い出したように指が蒼い叢に伸ばされる。 叢を抜け目的の場所に到達してなお、その周囲を検分するかのように撫でていく。

『…っふぅ……そ、そっちじゃ……な、なくてぇ…』 「そっちじゃわからないな、もっと判りやすく言ってくれないと」 『もう少し……』 そう言いかけて俯いてしまうのをからかうように、蜜を滴らせ始めた花弁を指の腹で擦りあげる 「こっちかな?」 『ひゃうっ、うっ…あ、やぁっ』 「違ったかな、じゃあこうか?」 『んっ……んんっ!』

叢にかけて掌で数度往復させ面での刺激を与えた後、人差し指と薬指で花弁をこじあけるようにして 中指を滑り込ませる。 うなじに舌をはわせつつ、侵入させた指を蠢かせるのに応じてスキルニルの肢体が軽く震えた。

『はぁ…そこ…気持ち、いい…』

イザベラは眼前で繰り広げられる痴態を関心半分呆れ半分に見ていたが ――全く……でもそんなに心地いいものなのかしら?――  物理的束縛を受けているのは麻酔が切れた今は足だけであり先刻かけられた毛布のおかげで両手は ある程度、賊に気付かれずに動かせる……  つまり、スキルニルが受けていることを模倣できるということ… 鏡像が本体に従って動くべきところを鏡像に本体が従うという、荒唐無稽な考えが脳裏をよぎる。 ――どうせ向うは危害を加えてくる気配もないしそう勘付かれるような動きをしなければいい―― などと開き直ってしまう辺り、案外気が緩んでしまっているのかもしれない。 そして、イザベラは自らの手とスキルニルを愛撫する手の動きを同調させはじめた……。

243 名前:191の者[sage] 投稿日:2007/02/04(日) 20:52:30 ID:J777Izlq  掛けられた毛布を隠れ蓑に、眼前のスキルニルに施されていく愛撫を一拍遅れる形で追随する。 ――とはいっても気分が乗り切ってないからそのままは無理じゃない?―― などと思慮しながら手を胸と秘所へと伸ばしてみるがその感触に杞憂を知る

「!……なん、で…」 いつもの薄い寝間着だけであれば身体の火照りに、夜気の寒さなりで気付いていただろう。 だが掛けられた毛布によって保温されていたせいですっかり失念していたようである。 「わ、た、し…感じ…ちゃって…た?」 朝ビスチェに、夜も寝間着に着替えさせる時、多少触れるモノ程度にしか意識しなかった胸の先端は いつもよりも膨らみ指が触れるか否かという距離でも背筋に向けてむず痒いような感覚を伝えてくる。 下半身の反応も上半身に負けていなかった。

「こんなに…濡れてるなんて」 椅子の足に拘束されいくばくか股を開かされていたのがやはり仇となったか、知らず知らずに蒼の草原 は蜜に浸されていた。 そしてその根源たる花弁へと指を進めれば、そこは今尚次々と新たな蜜を湧き出させている。 しかも… 『んうっ…ん…あ……あん!』 眼前で賊に弄られているスキルニルの嬌声に合わせるようにひくつき、濡れる。 『や、そんな…に、ふぁっ』 仰け反るように身を捩じらせ与えられる刺激からスキルニルが逃れようとする度、男の腕に抱きすくめられている。 男の方も与え過ぎた快感が程よく引くまで待つつもりかその間は手を止める。 「そんなに強張るな、何もお前を壊そうってんじゃないんだから」 『で、でも…こ、声は出ちゃうし…身体も勝手に…! あ、はぁ、っ……んんっ…あぁうっ』

――なんだかすっかり二人の世界じゃない?まぁ変にさっきみたいに話しかけられるよりはいいけど―― だから私も自分の鏡像を愛撫する男の動きに集中できる。 私が動かしているのは、私を愛撫しているのはあの男の手、指…… あの男に抱きすくめられ愛撫されているのは人形ではなく私自身…… ちょっと軽い自己暗示をかけつつゆっくりと見える範囲、覚えられる範囲で動きをトレースし自分に施してゆく。 相手の注意が逸れているという認識からくる安心感か、声を漏らすことにも躊躇は無かった。 「ん…っ…は、はぁ…う…」 『あ、あぁっ、ん…』 『「ふ、ひぁっ、あうっ、ん、ああっ!」』 はじめは輪唱になっていた嬌声が少しずつ重なり始める、 あたかもイザベラとスキルニルの昂りがそうなるかのように……。

244 名前:イザベラ慣らし4[sage] 投稿日:2007/02/04(日) 20:53:38 ID:J777Izlq 『「あん……んん…ぁん…んくっ!」』  古代魔法技術の驚異、とでもいうべきだろうか。 サイトの手指の動き一つに双子のような一人と一体のあげる嬌声がステレオのように反応する。 『「ふぁ、ぁ…あん……ん、ひぁっ……はぁぁ!」』 しばしそれが繰り返されていたが、流れはまた変わりつつあった。 「さてとこっちは…」 草原というよりもはや湿原と表記できるだろう場所を抜け、泉へと至る途上に在るモノ ベールをかけられるかのように保護されているソレに泉に浸されていた指を近づける。 蜜を馴染ませた指の腹でこすり落とすように包皮から開放すると軽くつまむ。

 迂闊にもイザベラは最前までの愛撫と同じレベルの認識で追随してしまった。 『「ひゃあっ!」』 一際高い声と身体が仰け反るような感覚に襲われる。 『だ、だめ! そこはっ、ぁあっ、ひっ、あああ!』 「だ、だめ! ここはっ、ぁあっ、ひっ、あああ!」

――な、何よコレ!さっきまでの、なんかより何倍もゾクゾクって、や、また… はぁっ、あっ、あっ、あああっ! わ、わけわかんな、くぅっ! だ、ダメ、このままは 向うに気付かれちゃう! で、でも止められ……な――

 かろうじて寸前で動きを緩め意識を保ったイザベラだが、スキルニルには無論不可能である。 『や、あふ、はぁっ、んっくぅぅ……あああぁぁっ!』 先刻を上回らんばかりの嬌声とともに大きく身体を震わせ、数秒後にガックリと脱力し前方に 倒れこもうとするところを男の腕に引き止められる。

 すっかり脱力しているスキルニルをベッドに寝かせると男は立ち上がり水差しを手に戻ってくる。 べッド脇の小机に水差しを置くとスキルニルを抱き起こし耳元に二言三言囁く。聞き終えたスキルニル が小机に備え付けのペンを取り何かをしたためる。 命じた作業の終わりを確認すると男はスキルニルの口を開かせ粉状の何かを含ませる。 そして水差しと対のグラスに注いだ水を一口含みスキルニルの唇を奪うように重ねた。

245 名前:イザベラ慣らし4[sage] 投稿日:2007/02/04(日) 20:54:17 ID:J777Izlq  一連の流れをおぼろげな意識で眺めていたイザベラだったが、 ベッドの上で寝ているはずだった一人と一体がごく間近に立っていることに気付く。

「さて、仕舞ということにしてこいつを解除してやってくれ。 ただし、こいつのキスが終わってからだがね」  男の言葉と入れ替わるように鏡を眼前におかれたようにスキルニルの顔が迫り唇が重ねてくる、が ただの接吻ではなく舌で唇を割り開くと何かを流し込んで来た。 わけもわからずに飲み込んでしまうと耳元に解除のルーンが囁かれ復唱するよう促される。 促されるままに呟くが効果は現れず男は、あぁそうかとばかりに杖を拾った。持たせようとして毛布 から右手を引き出した男の動きが一瞬止まるがそのまま解除を済ませ、再び杖を取り手を戻す。

「いい娘だ、だからこれはサービスしておくよ」 言うや毛布の上からイザベラの手に添えるように押さえると軽く振動させた。 その刺激で収まりかけていた火が再び燃え上がりイザベラの理性を炙る。 「ゃ…せ、せっかく…収まって、きてたのに…ま、また変にっ! な、なにか…… なにかが、く、来る! き、来ちゃう! あぅっ、んうっ、あっふぁぁ」 一層振動が激しくなり意識が白く染まって行く…… 「ああっ! あああぁぁぁっ!」 一気に追い上げられた身体が仰け反り痙攣し…一拍おいて弛緩すると背もたれによりかかる。 「あぁ、それとお前のところの七号の命、俺が貰い受けた」 薄れ行く意識の最後に意外な言葉を聞きながら、イザベラの視界は暗転した。

翌朝、プチ・トロワの人々が目覚め、主の寝室に出向いた時 そこには寝台で寝息をたてるイザベラとその脇の小机に小さなメモ、小さな黄薔薇の造花が置かれていたという…

540 名前:E慣らし幕間 1/3[sage] 投稿日:2007/02/15(木) 21:15:57 ID:D8WDSKX/  一つの人影がプチ・トロワの扉から出てくる、ごく自然に、一仕事を終えた住人のように。 確かに人影は一つの仕事をしてきたばかり、だがそれは未だ成っていない。門扉へと続く石畳を踏みながら彼らは話していた。

『なぁ、相棒。もう喋ってもいいかね?』 「ん? あぁ、黙っててくれたんだな。で、なんだよ」 『あのじゃじゃ馬姫さんに最後、何飲ませたんだね?  痩せても枯れても相手は一国の王族、しかも現国王の一人娘。  何かあったらそれこそ姫さんや騎士隊の連中の言ったように外交問題になるぜ』

背負った大剣の懸念の言葉に、人影は歩きながら仮面を外す。 「なにも起きやしないさ」 月光にいつもと変わらぬ表情を照らし出されながらサイトが返す。 「使用人連中を眠らせるのに使ったのと同じ眠り薬が四割八分、残りは胃薬とか牛乳や干した小魚の  粉末とかそんなもんさ。食い合わせがどうかはわかんねぇけど寝込みもしないだろ」 『いや、眠り薬なんだから寝込むだろ』 「俺の世界じゃ、寝込むってのは病気したり働きすぎてぶっ倒れた時なんかに使うんだよ。  んでその間に悪夢なんか見てうなされたりすりゃ完璧だね」 至極まっとうな指摘をさらっと流す。 『いや、だからってなぁ……またぞろ金髪ロールの嬢ちゃんに作ってもらったんだろうが  そのレシピに至る理由がサッパリだぁよ』 「簡潔に言うと一つ、強いて挙げるなら二つ」 『まぁ詳しく頼むよ』 六千年を過ごし退屈するのにも退屈していたはずのデルフだが喋る時は別らしい。 より相手の言葉の多い方を選択してくる。

「まず一つはタバサにあんなこと命令したやつに教育してやるってこと」 『で、スキルニルで放置プレイ?』 「話の腰を露骨な表現で叩き折るなよ…。自分が矢を放てばその矢が射返されてくる、  そう認識させれば下手な手出しをしてこなくなるだろ」 『つまり?確実に息の根を止めろ?と』 背負って会話していたデルフを抜くと意思の主発信部分と思われるカクカクと動く鍔部分を 正対させて口を開く。 「なぁ、不意に火竜山脈に火山あるのかなとか、もしあったら火口に伝説の肩書き持ってる  剣を投げ入れたらなんか凄いこと起こらないかな、とか試してみたくなりそうなんだが」 『悪かった、最後まで聞くから試さないで。ってか相棒最近貴族の娘っこと似てきたね…』 後半にかすかな抗議を匂わせつつ話す魔剣はおとなしく聞くことを承諾した。

541 名前:E慣らし幕間 2[sage] 投稿日:2007/02/15(木) 21:17:19 ID:D8WDSKX/ 「向うは暗殺まで仕掛けてしくじった。  けど、それを公式に抗議したところで物証も乏しいしこじれるのは目に見えてる。  その上、仮装とはいえ姫様が出られた舞踏会に暗殺者が忍び込めた、  なんて事が知られれば国威にも影響するだろ」 『まぁ他国も国民も、虚無の使い魔なんて伝説だけのモノとしか捉えてないだろうし  侵入者の一部が元々潜り込んでいて、それを見過していたって取られるのがオチだろうな。  ましてあの姫さんはアルビオンと戦ったばかりだし、戦の火種狙いと勘繰られるかもしれんね』

相方が茶化すのを止めたの確認すると背負い直し再び歩みを再開する。 「あぁ、だから姫様の提案は呑めねぇ。影のやりとりは影のうちに片付ける。  そのための王都潜入、宮殿侵入、貴人襲撃だ。連中にも同じ事情を背負わせて鈍らせる」 『けど相棒、ガリアは前の戦争では殆ど国力を消耗してない上、トリステインの台所は火の車。  こっちが同じアクションを仕掛けたら、相手さんが待ってましたと戦争に持ち込んでくる、  という危険もあるぜ』 「だからこそ保険としてあの調合なんだよ。  死傷者が出た時点で即お終い、とまでは言わないけど後から指摘されて困るような痕跡だけは  残さないようにしないとな」

『あの薔薇とメモはいいのかい?』 拘束した王女に王女を模したスキルニルを弄る様を見せつつ、その最後に仕掛けた事を尋ねて来る。 「筆跡は本人のものだし、花にしたってギーシュが塩に軽い固定化をかけただけだから持って数刻、  本人が手に取る頃には触れば崩れるくらいに脆くなってるさ」 『まぁ、大事ないようなら構わんけどな。それとそのいかにも胡散臭い仮面、良く持ち出せたね。  仮にも王城にあったんだからそこいらのマジックアイテムとは値打ちが違うだろうに』

当座の心配が無くなったことで興味は侵入から街道に出るまで外さなかった面に移ったらしい。 「前に姫様のとこ行った時にな。  壁に一箇所だけアルビオンの意匠が混じってたとこがあったんでおかしいなと思ってさ」

542 名前:E慣らし幕間 3[sage] 投稿日:2007/02/15(木) 21:17:58 ID:D8WDSKX/ ――――  その日もアニエスさんから?訓練の招待?があった。 けど一つ違ったのはいつもは言伝で済ませられるのに、あの時はわざわざ手紙だった。 まぁ、読めなかったけど封印が姫様のだったし王室の紋章もあったから 訓練場所が道場やそこらの屋外じゃないんだろうと思ってお城に出向いたんだ、そしたら……

「サイト、今日は宮中儀礼について教えてやる。  平民出身が平民上がりと軽んじられる理由は出自を始め色々あるが  種々の場面でその場に要求される立ち居振る舞いに疎いというのがある。  日々の暮らしに不要な我々が疎いのも当然だが貴族を相手にする必要がある以上  連中のやりかたも身に付けておかんとな」

そう言っていつもの木剣の代わりに指揮者の持つタクトのような指示棒で肩を叩いている。 「そ、それは嬉しいんですが何故王宮で、っていうかなんで姫様の執務室で?  しかも姫様がここに居るんですか!?」

そう、その場にはいつもの二人だけではなく女王その人がニコニコと笑顔で?居た? 「貴族連中にはごく普通の所作をわざわざ練習している所など見られたら格好がつかんだろう?  その点、ここなら人は来にくいし、来る前に報せもある。  それになにより、貴族としての振る舞いができているかどうかは付け焼刃の私より  生粋の王族の陛下に判断していただくのが適当というだけだ」

助けを求めるようにアンリエッタに視線を送るが返ってきたのは 「シュヴァリエとして立派に私をエスコートできるよう励んでくださいましね?  サイト様」 期待に目を輝かせ、頬を薄く染める女王の勅命だった。

61 名前:E慣らし幕間 4[sage] 投稿日:2007/02/21(水) 01:03:05 ID:YKhp7rzR ……  それから暫く、アニエスが解説を交えつつ手本を見せる。 サイトに実演させアンリエッタが評定を下す、という流れが続いた。 ようやく一通りを済ませ、アニエスさんが最後の項目に目を向け 「後は…、御手を許された時のものぐらいか。  これは以前にもやっているし省略しても構わ………」 何故かそこで声は途切れてしまった。 「でしたら手本も解説も要りませんわよね、私を相手に実演してくださいまし。  それからお茶に致しましょう、アニエス用意をお願いね」 代わって姫様の声がした。顔を上げてみると姫様がアニエスさんの前に割り込んできていた。 アニエスさんは何か言いたげだったが結局二言三言ぼやくとお茶の用意に席を外していった。

 執務室に二人っきりになってしまいどことなくぎこちない空気が漂い始める 「さ、さぁ、サイト様、戻ってきた彼女にとやかく言われる前に復習を済ませてしまいましょう?」 呼びつけたときのように頬を染めつつ軽く手を差し出して来る。 復習といっても以前は馬車の小窓に騎乗したままという状況だったのだが、この様子では気にしていないらしい。 以前、ギーシュが気絶して転がった時の姿勢を思い浮かべ片膝をつき、差し出された手に右手を添え 接吻の形をとる。瞬間、薄い生地越しに感じる姫様の体温が上がったように感じた。 先までと同様に評定を聞こうと顔を上げるとアンリエッタの視線は半ば夢見るように宙を泳いでいた。

 このままじゃ、間が持たねぇ…… なにか話題になるものは…と室内に視線をめぐらせるが戦争後に王城の家財も処分されてしまい これとなりそうなものも見当たらない。が、そんな中でふと違和感とも既視感ともつかない感覚を覚える。 壁の色の違いからみて家財の陰になっていたのだろう。 「姫様、あの壁の紋様だけ違う気がするんですけど……」 「…ぇ? あぁ、あれは…アルビオン王家の意匠ですわね」 その言葉にはたと我に返ったのか少し慌てたようにアンリエッタが答えてくれる。

 あぁ、それでかと納得する。姫様の密使として赴いた陥落前夜のニューカッスル城の宴の場に 掲げられていたものと精緻さは違えど同じ意匠だった。 そうなると何故ここだけ違うのか…異世界出身者としてはこういう時に試してみたくなるものである。 「サイト殿?」 けげんそうなアンリエッタをさしおき件の壁に近付き意匠に手をかざしながら小さく呟く。 「…エク メトテ ロエス…」が何も変化は見受けられなかった。 そうそう都合良くはいかないよなぁ、と思い直しかけてもう一つ思いつく。 どうせ何も無いなら少し遊んでみてもいいだろう、そんな思いから不思議そうにこちらを見ている アンリエッタに手招きをする。 「どうされました、何か気になることでもありましたか?」 「えぇ、少し確認したいことが出来たのでちょっと手を貸してください」 いまいち状況がわからないといったアンリエッタの手をとりその指に光る風のルビーを壁に近づける。 「これから俺の後に続いて同じように唱えてください」 「え、えぇ、構いませんが、何ですの?」 「ちょっとしたおまじないですよ、上手くいけば面白いことが起きるかもしれません」 悪戯っぽい笑みを浮かべると、彼女も笑みを返してくる。 「じゃぁ、いきますよ。リーテ…」  「リーテ」 「ラトバリタ…ウルス…」 「アリアロス…ヴァル…」  「ラトバリタ…ウルス…」 「アリアロス…ヴァル…」 「ネトリール」 「ネトリール」 姫様の復唱が終わったとき壁の意匠が薄く光り家具の跡に見えた線に光が走った。

63 名前:E慣らし幕間 5[sage] 投稿日:2007/02/21(水) 01:04:03 ID:YKhp7rzR 「こ、これは!?」 横で驚きの声を上げるアンリエッタ以上に自分自身も驚いていた。 「試してみるもんだなぁ」

光の走った枠を輪郭とした壁面に触れてみると、先程までの固い感触は感じられず 触れた手を中心に水面に波紋が広がるように波打っていく。 『こんな時に限って、俺を呼ぶなんて相棒ひでぇよ…』 用心の為に半分ほどデルフを潜り込ませてから引き抜くがこれといって害もなさそうだった。 「で、どうよ。この先の様子は」 聞き慣れた愚痴を聞き流し偵察結果を尋ねる。 『ちょっとした通路とその先に扉の無い小部屋が見えたがね』

「なんだろう、非常時の避難口だったのかな?」 「面白そうですわね、行ってみませんか」 「まぁ、行ってみれば判るか。一応用心してくださいね、姫様」 好奇心猫を殺すという言葉もある、背負い直したデルフの柄に手を掛け、一方の手でアンリエッタの 手をひきつつ壁をくぐるとデルフの言葉どおりに人が三人ほど並べる幅の通路と先の小部屋が目に入ってきた。 誰が通るともしれない通路をひたすら照らしていたのかと思われる明かりの中を進み小部屋へと入る。 「避難所というか脱出の機を窺う為の一時待機所、兼倉庫ってとこかな」 「でしょうか…色々な物が置かれていますわね。あら、こんな仮面まで…」 アンリエッタが仮面を手に取って脇の説明書きを読み始める。 「?反転と再誕の仮面?、両王家の友好を象徴するべくこの仮面を贈る。  この仮面を被せられる者、心の仮面を外されん。されど貴族にかような非礼あるまじき。  なればこの仮面の効をメイジならざる者に限定す……  まるで自白の魔法が込められたアイテムのようですわね」 その時遠くから声が響いてきた。 「陛下ー!」 「陛下ーどちらに居られるのですか!」

「まずっ、アニエスさんが戻ってきたみたいです」 「それにあの声は枢機卿も来ていますわね、すぐに戻りませんと!」 急いで壁のところまで戻ると室内の様子は見えるのに、中からこちらに気付く様子はない。

「様子を見るための仕掛けですかね、ともかく二人が向こうを向いてる時に戻りましょう」 そういって壁に飛び込もうとしたときに姫様が何かを押し付けてきた。 「思わず持ってきてしまいましたが二人に見つかると面倒そうですわ。  次の機会までサイト殿が預かっていてくださいまし」 ――――

「ってわけさ」 『成る程ね、でその仮面がこれってわけか』 「平民というか非メイジ限定だけど一時的に性格とか振る舞いを変化させられるし  その効果は人それぞれって代物らしい」 『で、相棒の隠された性格がアレってわけだ』 「なんだよ?」 『うんにゃ、一途なようでいて案外黒かったんだな、と』 「ほっとけ」

64 名前:E慣らし幕間 6[sage] 投稿日:2007/02/21(水) 01:05:01 ID:YKhp7rzR  一方、イザベラはグラン・トロワ謁見の間にて父にして主たるジョゼフの前に跪いていた。

「で、使用人悉くを昏倒させられた上、警備ガーゴイルにも少なからず被害を出し  あまつさえ王女たるお前の寝所にまで賊の侵入を許したというのだな。  ガリア北花壇警護騎士団長イザベラよ」 「申し訳ありません、お父さ……いえ、国王陛下」 ジョゼフの声音は娘にかけるものというよりも家臣に対するそれであることは 非公式ながらも官職名をつけてきたことからも感じ取れた。 「賊はその後、お前を罵倒し昏倒させ、再度の襲撃を予告したメモまで残して逃走。  追撃をすることもかなわずおめおめと捕り逃した、まるでいい所無しだな。  わが国を影から支えるべき騎士団の長がこうも易々と襲撃されるようでは……  お前の器を見誤った私の裁量違いだったか」 「お、お父様!」 「それともその賊に手篭めにでもされたか」 その言葉にイザベラの顔色が青くなる。 「そんなことは御座いません!我が身の純潔は守り通して御座います!」 「なれば何故、このような失態となるのかな?」

「そ、それは……使用人達は元より警備のガーゴイルにしても戦力として数えられるような  ものでも御座いません。騎士団員にしても任務の都度召集するものたちですので常駐してはおりません」 「ふむ…しかしその北花壇騎士にしてもどうであろうな?任務に乗じて?七号?を消せ、と命じたが実際はどうだ。  逆にあやつの勲功を重ねさせ、亡霊どもに活気を与えてしまっている。  あやつを目立たせまいと他の者を差し向ければ失敗し、後始末をあやつにされる体たらく」 「そ、それは騎士個人の資質によるもので…」 ?個人の資質?という言葉にジョゼフは吼えた。 「任務に合った資質の者を選定できぬお前に言えた事か!  …良かろう、お前の望むままの警備陣を敷くがいい。そして賊を仕留めて見せろ。  但し、騎士を使うことはならん。お前とガーゴイルのみでやり遂げるのだ、よいな」 父王の気炎にすくみあがりながらもイザベラは首肯する。 「七号を監視せよと命じたエルフを破った輩が居る。お前を襲った賊がその一人ならば成功の暁には  皆もお前の才を認めよう。私の娘が後継者に足る、とな。  準備に必要があれば私の名を出せばよい、理解したなら下がれ」 「御意」

65 名前:E慣らし幕間 7[sage] 投稿日:2007/02/21(水) 01:06:14 ID:YKhp7rzR 「随分と不機嫌なのだな」 退出していく娘を見ていたジョゼフに声をかけるものがあった。

「ビダーシャルか、呼びつけた覚えは無いが何用だ」 「なに、以前お前が退屈だとぼやいていたではないか。  チェスの相手すら満足につとまる相手もいないなど、な」 ジョゼフの視線は続きを促していた。 「蛮人のゲームで満足できぬのなら我らの競技はどうだろう、思ってな。  定石も固定概念も無い全くの新規格であれば話は別だろう」 「ほう、お前達エルフでも机上とはいえ争うことがあるのだな」 「嫌っているだけで禁止しているわけではない。必要があればその限りではないさ」 「参考までに聞いておこう、その必要とはどのような時生じる?」 「精霊との契約に臨む交渉者の優先順位だな。  我らは精霊との契約には常に個で向き合うことが大いなる意思への敬意と考えるからだ」

「ふん、その程度か…想い人をかけてとでもいえば親しみを持てたのだがな」 「次からはそう答えることにしよう。それで競技は受けるのか?」 「まぁ退屈しのぎにはなるかもしれんな、でどんなものだ」 「この場は少し向かんな。対局しやすい場に移るとしよう」 謁見の間から場を移すことを提案され、チェスに使われていた一室に入る。 「いきなり我らの様式では準備がまだ揃っていないからな、お前達のものを流用してみた。  台座の形が違うモノが複数合って助かった」 小脇に抱えていた羊皮紙を広げるとそこには9×9に区切られた無地のマスと同色のチェスの駒が 2セット(というよりは2セット分から同色だけを抜き出したものが)転がる。 「正直2セットでは足りぬので3セット崩させてもらった。  まず手前から3列目にポーンを並べる、2列目は縦の2筋と8筋に、向かって右にルーク、左にクイーンを並べ  最後一番手前には中央からキング、色違いのポーン、ビショップ、ナイト、色違いのキングを置く…… その後しばし駒の動きの差異やルールを解説しおえたのち対局が始まり何順かが過ぎた頃ビダーシャルが口を開いた。 「そういえば先刻は随分と寛大な処置だったな。部下とはいえ実の娘はやはり可愛いか?」 その問いに対するジョゼフの表情はやはり変わらない。 「娘であろうとエルフであろうと同じだ、全てはこの将棋と同じガリアの駒に過ぎん」 「そういうものか」 口調だけなく中身までもが淡々としたやりとりとともに両者の時間は流れていった……

66 名前:E慣らし幕間 8[sage] 投稿日:2007/02/21(水) 01:06:56 ID:YKhp7rzR  グラン・トロワを辞したイザベラは自らの本陣、プチ・トロワに戻るや宝物庫へと使いを走らせた。 あの忌まわしい記憶を引き起こした元凶の?あれ?は朽ちるまで封印しておくつもりだったが 北花壇騎士を使えぬ以上保険はかけておきたかった。 お父様は怒られはしたものの処罰はされなかった、最後には期待の言葉も下さった。

使いに出す前によくよく言い聞かせたとおり侍女は?あれ?に直接ふれることなく小ぶりの箱を大事そうに抱えてきた。 「またお前を使わなければならないなんて癪だけれどね」 侍女を下がらせ、悪態をつきながら眼前の小箱の蓋を開く。 『姫殿下、私は昨年お暇を願ったはずですが』 「長年、ガリアの影の仕事を受けてきた上に依頼者にあのような反逆をするモノを野放しに出来るわけが無いでしょう。  けど、この仕事を首尾よくやりおおせればお父様に私からもお願いしてあげるし  好きな付き人の一人でも選ばせてあげるわ」

箱の中から返ってきた言葉に被せるように命令を下す。 「だから、今夜襲ってくる賊を確実に仕留めなさい。いいわね??地下水?」 452 名前:E慣らし[sage] 投稿日:2007/03/08(木) 08:10:23 ID:XNF8jpMm 『あまり気乗りはしませんが、陛下からのご依頼という形なら努力しましょう』 「お前が納得するならなんでもいいわ、好きなように建前なりなんなりお付け。  その代わりしくじったら三ヶ月はガリア一天候の悪い地方の一番高い建物の先に括りつけてやるから覚悟おし」

覇気の薄い地下水に憤慨しつつイザベラはスキルニルの準備にかかる。 ―あの夜、賊は魔法らしい魔法は直接使ってこなかった。  メイジでないなら当然だけど、そんな平民に突破されるほどプチ・トロワの警備は緩くない。  なら、あいつは…自らの得意系統を明かさずにそこまでやってのけられる程のメイジなのかもしれない―

そう考えるとイザベラは何故か少し嬉しかった。 利用されようとしているだけかもしれないが、それにも増して、それほどの相手が 自分を評価し、交渉に応じるか否かの選択権も寄越してくれたのである。

「随分と嬉しそうですわね、姫殿下。  落ち込んでいるのではとのジョゼフさまのご配慮も無用だったのかしら」 「ミューズ……いくらお父様の信あつい貴女でも王族にはそれなりの礼があるんじゃない?」

思考に割って入ってきた声の主に向き直る。 相変わらず目深に被ったフードから黒髪を覗かせ不遜な気配をまとった女性が目に入る。 脇に控えた侍女は訪問者の可否を仰げず、主の不興を買ったのではないかと怯えていたが イザベラの下がれという仕草に逃げるように扉の向うへ消えた。

「それで、今日は何の用?私はお父様から直々に賜った任務で忙しいのよ」 「私もジョゼフさま直々のおいいつけで伺ったのです。  でなければわざわざこちらまで出向いて殿下の貴重なお時間を邪魔したりは致しませんわ」 いやみなやつ、とでもいわんばかりに睨みつけて来るイザベラを軽くいなし女は言葉を続ける。 「殿下のお役に立つものを届けよ、とのことでコレをお持ちしました」 言いながら持っていた小箱を差し出してくる。獣の牙よりも幾分青みがかった牙が数本入っている。 「地に撒けば並のガーゴイルなど比べ物にならない駒となります。  添え付けのルーンを唱えれば差し違えてでも相手を仕留めますわ」

453 名前:E慣らし[sage] 投稿日:2007/03/08(木) 08:11:01 ID:XNF8jpMm 「それを使って勝ったとしても私の功績にならないんじゃない」 「あくまで保険ですわ。もし使われたとしても、彼我の力量を見定め機を逃さぬ才のうち、と  ジョゼフさまも申されておりました」  気に入らない相手からの助力の申し出に不満はあったが父からの配慮となれば無碍にもできない。

「いいわ、保険として預かっておく。これで貴女の顔もたつでしょ」 「ありがとうございます、ついでといってはなんですが一つ謎掛けなどさせていただきたいのですがお付き合いいただけますか?」 「なによ?」 「チェスで最も強い駒はなんでございましょう?そしてその強弱はどこで決められるのでしょう?」

 ようやく追い払えるかと思えばまだ居座るつもりらしい。半ばうんざりしつつ答える。 「クィーンとでも答えると思ったの?駒に強弱なんて無いわ、あるとすれば活きてるか死んでるか。  それだけよ。使えない駒なんて無いのと同じよ」 「流石ですわ。ジョゼフさまも同じ事を申されていました」  ミューズはそういい残し退室していく。 その後姿を見送りながらも内心に薄ら寒いものを感じずにはいられなかった。 父からの助力の品を届けに来た場で、わざわざする話題ではない。それは、つまり……

 ガーゴイルへの指示と配置を終えると、日没には起こすよう侍女に伝え寝所に入る。 言いつけどおりに起こされ、軽い食事を取る。使用人たちには今夜一晩は部屋から出ないように命じ 自らは庭園―今夜の舞台とする場所―が見渡せる部屋に移った。

 庭には剣、矛、ダガーを携えたガーゴイル、プチ・トロワの屋上にも弓や槍で武装した有翼のガーゴイルが控えている。 そしてプチ・トロワ正面に切り札を待機させ完成した布陣を見下ろしつつ一人呟く。 「さぁ、歓迎してあげるわ。この前のお礼も兼ねてね……そして私が認められるために」

454 名前:E慣らし[sage] 投稿日:2007/03/08(木) 08:11:52 ID:XNF8jpMm 『あ〜なんか向うさんもはりきってるみたいだねぇ』 「だな」 『前庭丸ごと戦場にしますっていわんばかりにガーゴイルがいるねぇ』 「いるな」 『なんか屋根のも飾りじゃない感じがするし』 「そうだな」 『それでも相棒は突っ込むんだろう?』

 背負いの大剣が相手の力の入れようを確認した上で、呆れ半分楽しみ半分に問いかけてくるが答えは決まっていた。 「当然。レディを待たせるのは紳士の流儀に反するからな」 『らしくねぇ…そんなセリフ、らしくねぇよ、ってもう着けてたのかソレ。  じゃぁ一つだけ頼むわ』 「なんだよ?」 『あいつらの武器ふんだくって使ってもいいけど俺を忘れないでくれよ?』 「努力する」 『こういうときは普通、確約するもんだぜ…』

 抗議を聞き流し門の前へと進むと脇に控えていた一対のゴーレムが早速反応する。 だがゴーレム達は只門を開くだけで襲ってくる気配もない。 「戦場はこの先、って事か」 武装した仮面の訪問者が門をくぐり、ゴーレム達の横を過ぎ数歩といった所、背後から門扉の閉まる音がした。 振り返ると先程のゴーレム達は青白い燐光を放ちながら崩れ落ちていく。と、同時に庭園内の随所に しつらえられたかがり火が点火されていく。 『ようやく開幕らしいぜ、相棒』 だが返事は無かった。代わりに自分を掴む手とその甲に輝くルーンを察知…できたかどうかと表現したくなるような移動の勢いがデルフを襲う。 矢、ではなく投擲槍が数本、門とサイトを分断するかのように地面に突き立っていた。 感知範囲に入ったのか近接系の武装ガーゴイルが動き始める。 「懐に入って来いってさ。あんまりわめくと舌噛むぞ!」 『俺に舌なんてねぇ!』 「そうかい!」 最後の軽口とばかりのやりとりとともに一人と一本は突風となって切り込んだ。

455 名前:E慣らし[sage] 投稿日:2007/03/08(木) 08:12:33 ID:XNF8jpMm 「始まったようね」  灯りを落とした室内から庭園を見ていたイザベラは、門に配置したゴーレム達が狼煙代わりの燐光をあげるのを目にし、一人呟いた。 まだ遠目にガーゴイル達が集結していくのがわかる程度だがそれで止まるような相手ではないだろう。 遠距離・間接系のものたちで賊の行動範囲を制限し、近距離型で誘導する、それが第一陣。 第一波が庭園中程まで押し込まれる頃合で合流しはじめるのが第二陣である。

「やっぱり、魔法は使ってないみたいね。となるとメイジではないのかしら?」 『であれば、私が出るまでも無く次で終わりでありましょうな』  観察を続けるイザベラに傍らの影が応える。 「?騎士殺しの霞?…随分と大層な名前だったからいくつか仕掛けておいたけどどれほどのものかしら」 『じきに判るでしょう』 「そうね、でもココでの観戦時間はこれで終わりよ、霞が効かなければ後は私たちなのだから。  いいこと?止めを刺すのは私、お前はあくまで動きを封じるだけよ」 『それはもう何度も打ち合わせたじゃない。いい加減耳にたこが出来そうよ』 「いきなり切り替えられてもね…」 口調を豹変させた相手に軽くため息をこぼす。 「まぁいいわ、じゃぁ持ち場に付くとしましょう」 『そうね』 そう、隣の人影は一点を除いてイザベラと瓜二つであった。 一方が小箱を持ち、もう一方がナイフを持っている、ただそれだけの相違。 二人とも杖を持ってはいるが影のそれはダミーでしかなかった。

イザベラとスキルニルに携えられた地下水は階下へと降りると二手に別れる。 地下水は正面へ、イザベラは普段は衛士の詰め所へと。

456 名前:E慣らし[sage] 投稿日:2007/03/08(木) 08:13:05 ID:XNF8jpMm  宮殿の主達が戦況を語る間も一人と一本は動いていた。

 初撃の後、向かってきたガーゴイルは二体、左側の一体の頭部を狙うようにデルフを振り下ろす。 当然受けてくる所で、接点を軸に刃を滑らせ受けている腕の下へもぐりこむ様に切り抜ける。 武器を持つ腕を損傷してもガーゴイルは残るバックラーで縦に殴りつけようとする動きを見せた。 『このくらいじゃ止まってくれんぜ!』 「ならこうするさ!」 潜り抜けた勢いを相殺せんとばかりにデルフを振りつつ反転、反撃せんとした相手の脚に叩きつける。 ガシャンという音とともに崩れ落ちる陰から残る一体が迫っていた。 先に損傷させて取り落とされた敵の剣を掴み迫る敵の足元に横薙ぎに投げつけ転倒させる。 ガーゴイルが起き上がろうとした次の瞬間、追い討ちを喰らわせる。 切り付け際に魔力を吸われたか、擬似意識の伝達が困難になったのか、ともかく無力化していく。 続けて横薙ぎのダガー、繰り出される槍、打ちつけられるフレイル……だがアニエスに受けた訓練と ガンダールヴの力があわさった今のサイトが遅れを取るはずも無い。

 一通りを片付け振り返った視界に、遠く出口を封鎖する一団が見えた。 「これまたあからさまに奥に来い、って感じだな」 『けど前方の連中のいくつかからおかしな気配がするぜ』 確かに庭園中央付近、円状に開けたエリアに布陣する一団がある。 その中の幾体かはあちこちの間接から煙のようなものを漂わせていた。 『バーストメイル…にしちゃぁ火系統は感じられねぇ』 「なら斬ってもいいよな」 返事を待たずに手近の一体を切り倒したその時

ボワッ!

鎧に封じられていた霞が一挙に噴き出す。同様に霞を漂わせていたものたちも噴出した霞に触れ 内蔵していた霞を解放するや、一帯はたちまち濃霧に包まれてしまう。 わざわざ仕込まれていただけあり、ただ視界をさえぎるだけではないらしい。 「っ!」 咄嗟に跳び退る。

457 名前:E慣らし[sage] 投稿日:2007/03/08(木) 08:13:35 ID:XNF8jpMm ――今のはなんだ…?正面からの刺突だったはずなのに、直後に横からに――

『相棒、どうしたよ? ギリギリまで引き付けるにしたって向きがてんで見当違いだぜ』 「なぁデルフ、この霧はやっぱやばいよな」 『俺はともかく相棒の様子だと軽く幻惑の効果はあるようだな。  的が絞れんとなると数で押し込まれるぜ』 アドバイスを再現するように、視覚で捉えきれない攻撃が続く。 かろうじてかわしはするが守勢である限り勝機は遠のいてしまう。 「このままじゃ埒があかねぇ、デルフ建物の正面はわかるか?」 『あぁ、左後方8時、ご丁寧にあの姫さん直々に待ち受けてるぜ』 「よし、次の攻撃で一気に抜ける」

 霞を切り裂くように振り下ろされる戦斧を半身で避けつつ方向転換、数歩駆け出したところで 繰り出されるポールウェポンの柄をバネにさらに跳躍を試みる。

 囲いを強行突破となれば矢ぶすまの一つもあるかと思ったが予測は外された。 ?ラグーズ・ウォータル・イス・イーサ・ウィンデ? 舞踏会の晩、泣きながら走り去ったルイズを探していたときにも受けた魔法… デルフを振り上げ、反動で身体をツララの群れの射線からずらし着地する。 「器用に避けたものね、でもこれはどうかしら!?」

円柱状に立ち込めた霞から飛び出してきたサイトにウィンディ・アイシクルを射掛けたイザベラは 続けざまに詠唱を組み上げ発動させる。 ?イル・ウィンデ……ラナ・デル・ウインデ!? エア・カッターを囮にエア・ハンマーで叩き落そうというのだろう。 だがサイトは止まらない。 眼前に迫る空気の塊をデルフに任せ、その向うに歪んで映る目標に向け疾走する。 杖兼用らしきナイフから次々と魔法を繰り出してくるイザベラだが、速さではこちらに分があるらしい。 懐に飛び込むと、床に組み伏せナイフをもぎとる。 「これでようやく王手だな」 「えぇ、但しかけられたのは私ではなくお前の方だけれどね」 背後から聞こえてきたのは真下に組み伏せたはずの相手の声だった。