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487 名前:父来る ◆mQKcT9WQPM [sage ] 投稿日:2006/12/23(土) 01:17:04 ID:FHprFyc1 その日、トリステイン魔法学院の正門に、一騎の騎馬が現れた。 戦装束に飾られた、装甲を施された栗毛の牝馬。 その上には、同じく戦装束の、年の頃なら五十過ぎ、白髪交じりのブロンドと口ひげにモノクル、といった出で立ちの、おそらく貴族の男性が乗っていた。 正門を守る二人の門衛は、堂々と正門を通ろうとするその男を引き止めた。 警備用の槍を交差させ、馬を止めさせる。

「失礼。貴族の方とお見受けするが、姓名と用件を名乗られよ」

馬上の男性は口元で笑みを形作ると、門衛に名を告げた。 門衛は慌てて槍を引き、馬を通す。

「さて。通してもらって言うのもなんだが、用件は尋ねなくてもよいのかね?」

門の内側に入り、その男性は門衛に問う。 しかし、彼ほどの貴族に、名以外に用件など、と門衛が躊躇していると。

「私の用件はな。  娘を力づくで取り戻しにきたのだよ」

そう言って馬の腹をけり、学院の本棟めがけて馬を走らせた。 走り去った騎影を思わず見送りかけた門衛は、慌てて風の魔法で、本棟に連絡をとった。

ちょうどその時、ルイズは授業の合間の休み時間で、才人とともに中庭でくつろいでいた。 今度の休みの予定とか、明日の昼はなんにしようとか、いつもの他愛もない話をしていると、血相を変えたコルベールがやってきた。

「ミス・ヴァリエール!大変です!」

水精霊騎士団の遠駆けの予定を無理矢理自分との王都での観劇の予定に摩り替えさせることに成功して満足していたルイズは、その声に振り向く。

「どうしたんですか?コルベール先生」

コルベールは二人の傍らまで来ると、ぜいぜいと息を整えた。よほど慌てているらしい。

「あ、あなたのお父様が、あなたを迎えに来たらしいです!」

え、お父様がなんで、とルイズは呟く。 今まで父がそんな強硬手段に出る事はなかった。 まさか、サイトとのカンケイに気づいたとかっ!? だとしたら恐ろしい事になる、かも。 一方才人はといえば、そういやルイズの親父さん結構怖い人だったっけなあ、などと以前の邂逅を思い出していた。 しかし、コルベールの伝令はどうやら手遅れだったらしい。 三人の前に、一騎の騎馬がやってきて、嘶きと共に、足を止める。

「やあルイズ。迎えに来たぞ」

その馬上にいるのは、ラ・ヴァリエール公爵、その人だった。

「ど、どうして…?」

ルイズは思わず後じさり、そう尋ねる。 ラ・ヴァリエール公爵は、そんなルイズに応える。

「そろそろお前にも身を固めてもらおうと思ってな」

身を固める。つまりは結婚する。 しかし、今のルイズには才人という相手がいるわけで。

488 名前:父来る ◆mQKcT9WQPM [sage ] 投稿日:2006/12/23(土) 01:17:59 ID:FHprFyc1 「そ、そんな…だって、私…」

思わず言いよどむルイズの前に、才人が立った。 …サイト?

「勝手すぎやしませんか、あんた」

そして、鋭い視線で公爵を睨む。 公爵はほう、と才人を一瞥すると、馬からひらり、と降り立った。 そしてなんと、才人に向かって礼をしてみせた。

「いつぞやは無礼をしたな。  貴君の噂、私の耳にも届いておる。  シュヴァリエ・サイト。あのアルビオンの戦で、単騎よく七万の軍を止めた、らしいな」

てっきり『無礼者!』とか罵られると覚悟していた才人だったが、そんな公爵の態度に毒気を抜かれる。

「い、いや、そんな」

などと思わず恐縮してしまう。 だが公爵のそんな態度は、そこまでだった。 公爵は腰に下げた杖を引き抜くと、才人めがけて突き出した。決闘の合図である。

「抜け、シュヴァリエ」 「…え?でも」

それでもさすがに戦闘経験を積んでいるだけあり、目の前の相手が臨戦態勢だと悟るや、才人は背中のデルフリンガーに手を掛けた。 そんな公爵と才人の間に、コルベールが割って入る。

「…公爵、おやめください」

乱入してきたコルベールの顔を見て、公爵は懐かしそうな顔をする。

「ほう、炎蛇か。久しいな。教練所以来か?」 「…はい。今はここの教師をしております」 「なるほどな。生徒に手は出させん、というわけか。  なに、心配するな。手加減はする」 「…いざとなったら、私が加勢しますよ?」 「好きにしろ。お前如きに後れを取るほどなまってはおらん」

言葉を交わす二人の様子から、二人が旧知の間柄であることが知れた。 コルベールは公爵の説得が無理だと悟ると、後ろに控えるルイズのところまで下がる。 才人は目の前の公爵が本気だと悟ると、デルフリンガーを抜き、構える。左手のルーンが輝いた。

「ど、どうして父さまが…。  それより、止めないと!ねえ、先生、サイトを止めて!父さまが!」

ルイズは、父の身を案じ、コルベールにそう懇願する。 しかし、コルベールの回答は、ルイズの予想したものと違っていた。

489 名前:父来る ◆mQKcT9WQPM [sage ] 投稿日:2006/12/23(土) 01:18:54 ID:FHprFyc1 「心配するべきはサイト君の方ですよ、ミス・ヴァリエール」 「…え?」 「あなたのお父上の経歴を、たぶん貴方はご存知ないのでしょう。  彼は、トリステインの全ての特殊部隊の、教練所の長だったのです」 「……え…?」 「…私も、彼の『生徒』の一人です。貴方の元婚約者の『閃光のワルド』…彼は、ヴァリエール公爵の、最後の弟子です」 「…な…」 「あなたのおじいさまは、軍部でのしあがることで、ヴァリエールの家名を高めようとした。  実際、貴方のおじいさまの代より前は…失礼ですが、ラ・ヴァリエールには、伝統こそあれ、ただの一地方貴族でした。  そして、軍部の上に立つには、一代では遠すぎた。  その野望を叶えるために、貴方のおじいさまの作り上げた最高傑作が…貴方の父上なのですよ」

驚愕に見開かれたルイズの瞳が、父を捉える。 公爵は、右手に杖を、左手に大きめの短剣を逆手に構えている。 その短剣は峰の部分が櫛状になっている。俗に言う、「ソードブレイカー」という武器だ。 その父を、不意に風の衣が覆った。 …え?いつの間にルーンを…? 戦闘に関わるメイジの基本中の基本。見えないように詠唱を行う、特殊な詠唱方法だ。 直接先頭に関わる事のない、ルイズにはまるで無詠唱で魔法を使っているように見えた。

「厄介だなありゃあ。相当密度の濃い『風の衣』だぜ」

才人にしか聞こえない声で、デルフリンガーは才人に忠告する。

「どう厄介なんだ?」

才人もまた、構えを崩さず、デルフリンガーにだけ聞こえるよう囁く。

「あの親父の輪郭が軽く歪んでるだろ?ありゃ、周囲に渦巻いてる空気が相当濃いってことだ。  あの状態じゃ、どんだけ勢いの乗った攻撃も逸らされる。そして、逸らされた瞬間にあの左手の剣で、ずばん、だ」

なるほど確かに厄介だ。どうしたものかと才人が思案していると。

「でもテはあるぜ。あの親父、短剣にまで風の衣をまとわせてやがる。たぶん切れ味を増すためなんだろうが。  それが弱点だ。あの短剣を狙え。そしたらおれっちが『風の衣』をまとめて吸い取ってやる」

そして、風の衣が剥げた瞬間に攻撃しろ、ということか。 才人は、その作戦実行のチャンスをうかがう。 それは、すぐにやってきた。

「こないのかね?ならばこちらから…。  いかせて貰うっ!」

五十代とは思えない勢いで、公爵は踏み込んでくる。 魔法の持続中は他の魔法を操れないので、大方の予想通り、風の衣で切れ味を強化した短剣による一撃だ。 待ってましたとばかりに、才人はその短剣をデルフリンガーで受ける。 一瞬にして、公爵を覆っていた風の衣は剥ぎ取られた。

「なんだとっ!?まさか、吸魔の剣かっ!」

ただの一合で相手の武器を悟った公爵は、慌てて飛び退る。 しかしそれを見逃す才人ではない。 一気に間合いをつめ、詠唱する隙を与えない。 アニエス曰く。『メイジに対する際、大事なのは隙を与えない事だ。詠唱さえさせなければ、メイジはおそるるに足らん』 一気に下段から、デルフリンガーを振りぬく。

490 名前:父来る ◆mQKcT9WQPM [sage ] 投稿日:2006/12/23(土) 01:19:44 ID:FHprFyc1 しかしデルフリンガーは、公爵の短剣の峰で受け止められた。 その瞬間、才人の腕に違和感が走る。石の様にデルフリンガーが動かなくなったのだ。 ソードブレイカー。それは、相手の剣の動きを止め、動きを封じるための武器。 剣に対抗するべく作られた、防御装置であった。 公爵はそのまま、詠唱を開始する。 しかし、才人のとった行動は、公爵の予想を超えていた。 才人はデルフリンガーから手を離すと、履いていたブーツから二本の短剣を取り出し、一瞬で公爵の背後を取ると、その首筋に刃を突きつけた。 アニエス曰く。『常に武器は2つ以上携帯しておけ。不意はうつに越したことはない』

「…勝負、ありましたね」

才人は、そう言って、勝負の決着を宣言する。 公爵はまいった、と言わんばかりに、手に持った杖と短剣を放り出した。

「…懐の、予備の杖も捨ててください」

才人の言葉に、驚いたように公爵の目が見開かれ、そして笑顔になる。

「なるほど、七万を止めたのは伊達ではない、というわけか!」

言われたとおりに、懐から予備の杖を取り出し、放り出す。

「すごい…公爵に勝っちゃいましたよ、サイト君…」

コルベールは感心したようにそう言うが、ルイズには何がすごいのかさっぱり分からない。 そして、完全に無力化された公爵は、いきなりぐるん!と才人の方に振り向いた。 突き出された短剣が、公爵の喉下に当たる。

「ちょ、危ない!」 「気に入った!気に入ったぞ!」

そして、再びぐるん!と振り返ると、今度はルイズに向かって、言った。

「ルイズ!お前の結婚相手がたった今、決まったぞ!  このシュヴァリエ・サイトと結婚しなさい!」

その言葉に。

「「えええええええええええ!?」」

度肝を抜かれたのは、当事者二人であった。

518 :せんたいさん ◆mQKcT9WQPM :2006/12/24(日) 12:38:23 ID:KOEKAoC7 じゃあせんたいサンタからみんなにクリスマスプレゼントだ!

*ちなみにこのSSはせんたいさんの続きもののパラレルにあたります。 タバサとかアンさまとかアニエスは一切出てきません(ぁ

投下いくじぇー

520 名前:父来る ◆mQKcT9WQPM [sage ] 投稿日:2006/12/24(日) 12:39:26 ID:KOEKAoC7 あれよあれよという間に、ラ・ヴァリエール公爵は休学届けをオスマンに提出し、ルイズに荷物をまとめさせ、一足先に領地に帰る、と言い放った。 二人は公爵のあとからやってきた四頭立ての馬車に、お付の一団によって積み込まれ、呆然としている。

「お前たち二人は、この馬車で追って来なさい。  では、領地で待っておるぞ、婿殿!」

すでに馬車に積み込まれた才人に向かって笑いかけ、馬の腹を鐙で蹴ると、疾風のごとく去ってしまった。 才人はまだ呆気にとられたようにぽかんとしている。 あまりに矢継ぎ早に繰り出される異常事態に、頭の処理速度が追いついていないのである。 一方ルイズはといえば、真っ赤な顔で才人の対面の椅子に座り、もじもじしている。 …どどどどどどどどうしよう。 正式に結婚相手に決まっちゃった…!! 貴族の子女のルイズにとって家長である父の決定は絶対である。そんな父が才人を結婚相手として見初めた。 目の前でアホ面を晒している犬をちらりと盗み見る。 呆然としているその表情は歓喜なのか絶望なのか、さっぱり掴めない。 才人は、どう思ってるんだろ。 元の世界に帰らなきゃいけないのに、いいんだろうか? もう一度才人の顔を見る。

「あ」 「え」

モロに視線がぶつかった。 二人でほぼ同時に真っ赤になり、慌てて視線を逸らす。

「な、なんか用?」

思わずルイズはそう口走ってしまう。 言いたい事は他にあるのに。

「い、いや別に」

才人は窓の外の景色を眺めるように目を逸らす。 才人も、ルイズに言いたい事があった。

「あ、あのさ」 「あのね、そのね?」

言葉が重なり、二人はまた同時に口をつぐむ。

「る、ルイズから」 「い、犬から先に」

またしても言葉が重なる。 要らない所で以心伝心な二人である。 またしても重なった言葉に、なかなか言いたい事がいえない。 ああもう、とルイズが先に口火を切った。 才人のほうは見ずに、頬杖を突いて、窓の外を見ながら言う。

「サイト、なんで断らなかったのよ」

思わず口走ったその言葉は、言いたい事と微妙に違った。 『元の世界に帰りたいのに、迷惑じゃない?』そう言いたかった。 ああもう、なんで私ってこうなの! 軽く自己嫌悪に陥るルイズ。 そして、才人から返ってきた言葉が、そんなルイズを打ちのめす。

521 名前:父来る ◆mQKcT9WQPM [sage ] 投稿日:2006/12/24(日) 12:40:45 ID:KOEKAoC7 「う、嬉しかったから、かな」

ぼきゅん! ルイズの頭の中の演算装置が、火を噴いて壊れた。

「うううううううう嬉しいってどういうことよ!」

思いっきり不自然に真横を向いてルイズは聞き返す。 窓ガラスに映るその顔は、熟したトマトより赤かった。 わーわーわーわーわーわーわー!マズイマズイマズイマズイマズイ! 落ち着け私!深呼吸しろ私!水どこ!鎮静剤!えいせいへーーーーい! 浮き足立っている頭の中のルイズ頭脳内防衛軍を無理矢理まとめあげ、もう一度尋ねる。

「ああああああああんた元の世界に帰るんじゃなかったの!」

才人の回答は、ルイズ頭脳内防衛軍を一撃で壊滅させた。

「…そんなのより、ルイズと一緒に居られる方がずっと嬉しい」

どっかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん! ルイズの顔面が火を噴いた。 頭の中は大惨事だ。 ええい援軍はこないのか!しっかりしろ私!衛生兵!えいせいへーーーーーーい! 真っ赤な顔でルイズはピヨってしまった。 座っているのに、椅子の感覚がない。 ういてるうー。わたしー、おそらにういてるぅー。 そんなルイズの隣に、才人が腰掛けた。 今度は逆に、ルイズの身体が石のように固まる。

「あああああああああによあっちいきなさいよ」

真っ赤な顔を見られないように俯き、心にもないことを口走る。 そんなルイズに、才人は尋ねた。

「ルイズは、嫌なのか?」

はっとして才人の方を向くと。 …そんな顔しないでよ…。 不安そうな、まるで泣きそうな顔をしていた。 ルイズはそんな才人の肩に、自分の頭を預けた。否定の意味として。

「…ばか。分かり切ってる事聞かないでよ」

今度は、才人が硬直する番であった。

御者は馬を飛ばし、目的地のラ・ヴァリエール邸まで一気に突っ走った。 そのお陰もあって、夕刻には目的地に着いた。 その目的地は。 ヴァリエール邸内の湖のほとりに建てられた、ヴァリエール本邸よりは小さな、真っ白な屋敷であった。 先に到着していたラ・ヴァリエール公爵が自慢げに二人に話す。

「婿殿の噂を聞いてからこれを建てはじめてな!  なんだその、ここは二人の思い出の場所だろう?」

二人が暮らすための、別邸ということらしい。

522 名前:父来る ◆mQKcT9WQPM [sage ] 投稿日:2006/12/24(日) 12:41:33 ID:KOEKAoC7 「さしずめ二人の愛の巣といったところかな!」

わはは、と笑う公爵の前で、二人は目を点にしていた。

「疲れただろう?今日はゆっくり休みなさい。ではまたな」

そう言って、馬に飛び乗り、公爵は本邸のほうへ走り去ってしまった。 二人は玄関先で呆れていたが、扉を開けて待っている二人の執事を見て、邸内へと入った。 扉を抜けるとそこはエントランスホール…ではなく、廊下が両側に向けて続いていた。 執事の案内で左側の廊下を進み、すぐに見えた大きな扉を潜ると…。

「わぁ!」

ルイズが歓喜の声を上げた。 そこは、湖に面した部分がガラス張りになった、大広間になっていた。 夕日が湖面に反射し、橙色の光が大広間の調度を優しく染めていた。 エントランスとここを一続きにしなかったのは、来客にこの景色を楽しませるための工夫なのだろう。

「すごい…綺麗…」

見とれるルイズの横で、才人はぽかん、と口を開けている。 思いつきだけでこんなすごいもの作っちまうなんて、やっぱ、コイツの家って大貴族なんだなあ…。 そう思ってルイズの方を向くと、なんか言う事あるでしょ、と言わんばかりの視線を投げかけてきた。

「すごいな、コレ」

しかし才人の言った言葉は、ルイズの期待していたものとは違った。 …「お前のほうが綺麗だよ」とか言いなさいよこのニブチン…。 ルイズは軽く不機嫌になって、案内役の執事に先を促した。

「疲れたから休みたいわ。寝室はどこ?」

才人は無視して、そう言った。 馬車ではあんなに上機嫌だったルイズが、急に不機嫌になったのを見て、才人は不審に思う。 アレ?俺なんか怒らせるような事したか? どうにも空気の読めていない才人は、自分を無視して案内役の執事について歩き出したルイズを追う。

「おい、どうしたんだよ」

しかしルイズはそんな才人を無視している。 大広間中央の階段から2階へ上がり、ちょうど大広間に入った扉の逆側にある、大きな扉が寝室だった。 執事がそこを開けると、ルイズがまた驚きの声をあげる。 そこには、中央に天蓋のついた大きなベッドがあり、扉の反対側は湖に面して、バルコニーになっていた。 ガラス張りではなく蛇腹のしきりによって外界との隔たりを作る仕組みになっていた。 ルイズは執事に礼を言って下がらせる。 その際も、才人は無視したままだ。 執事が頭を下げて扉を閉じると、才人はルイズに詰め寄った。

「どうしたんだよ、何怒ってんの?」

執事の前では笑顔を崩さなかったルイズだったが、才人と二人きりになると、途端に不機嫌を露にした。

523 名前:父来る ◆mQKcT9WQPM [sage ] 投稿日:2006/12/24(日) 12:42:20 ID:KOEKAoC7 「…言ってくれなかった」

才人はルイズが何を言っているのか理解できない。 疑問符で顔を一杯にしていると。

「あのね、綺麗なもの見たら、一緒にいる婚約者に向かって言う事があるの。  わかるでしょ?」

くるん、と半回転してベッドに腰掛けるルイズ。 才人は気づいていないが、ルイズは自分を才人の『婚約者』と呼んだ。 ルイズはもう、心を決めていた。 一緒にいる。もう、離さない。 だから、ちゃんとそれらしい態度は取って欲しいわけで。 しかし鈍感においても頂点に立つ男の才人は、そんな程度でわかるわけがない。

「…よくわからん」

目の前でそう言い放つ才人の股間を、ルイズは思いっきり蹴り上げた。 ぎゃん!と犬のような声を上げて、才人はのたうつ。

「あのねー!  一から説明しないとわかんないワケこの鈍感!  綺麗なものみたら『キミの方が綺麗だよ』が基本でしょう!  こここここ、婚約者になったんだからそんくらい抑えときなさいよこのバカ!ニブチン!」

のたうつ才人の前で仁王立ちになり、ルイズは赤い顔でそう言い放つ。 今までのルイズなら、罵倒の台詞に『犬』が入っていただろう。だが今は、才人を決して犬呼ばわりしない。 そこまで聞いてやっと、才人はルイズが自分を婚約者だと認めたことに気づいた。 立ち上がり、ルイズをじっと見つめる。 すこし股間が痛むが、ここでそんな態度を見せるわけにはいかないのだ。この小さな愛しいご主人様の婚約者として。 才人の眼差しに、ルイズの顔が一気に赤くなる。

「わかった。次から気をつけるよ。  じゃあ、次はどうすればいい?」

ルイズは少し考えて、つつつ、と才人に近寄って、上目遣いで言った。

「二人きりになったんだもん。  …わかってるでしょ?」

言われるまでもない。 才人は、ルイズを抱きしめた。 ルイズも才人に抱きつき、顔をつい、と上げる。 どちらからともなく目を閉じ、二人は唇を重ねた。 唇を離すと、ルイズが次の要求をつきつけてきた。

「…ここは寝室よね…。  この先は、言わせないでよ…?」

返事の代わりに、才人はもう一度ルイズの唇を奪った。

524 名前:父来る ◆mQKcT9WQPM [sage ] 投稿日:2006/12/24(日) 12:43:03 ID:KOEKAoC7 もう、歯止めは効かなかった。 二人はお互いに服を脱がしあい、ベッドの上で見詰め合っていた。 沈む夕焼けを背負ったルイズの裸体は、まるで茜の光を放つ女神のように見えた。

「綺麗だ、ルイズ。  世界で一番…」

言って才人は、遠慮なくルイズを抱きしめる。

「遅いわよ…ばか」

言ってルイズは顔を上げ、才人の唇を塞ぐ。 接したまま唇が開き、互いの舌がまるで抱き合うように絡み合う。 才人の手がルイズの背中を撫で、ルイズは必死に才人にしがみつく。 才人の手がルイズのこぶりなヒップを愛撫しはじめると、ルイズはたまらず唇を離した。

「あっ…ぁはっ…」

臀部を撫で回される刺激に、俯くルイズ。 その視線の先に、張り詰めた才人の怒張があった。 ルイズは才人を抱きとめていた手を解くと、両手でその怒張を優しく握り締めた。

「くぅっ…」

優しくグラインドされるルイズの手が、才人に快感を送り込む。 才人は負けじと、ルイズの双丘の下から手を回し、すでに濡れそぼっているルイズの入り口を両手の指で撫で回す。

「あ、だめっ…」

ルイズの声が上ずり、才人を握る手に力が篭る。 それがまた刺激になって、才人を高める。

「うっ…」

才人は今度は、両手の指で、ルイズの前と後ろの門を同時に刺激する。 同時に襲い来る快感に、ルイズは必死に耐える。

「やっ…あっ…」

必死に自分を繋ぎとめ、負けじと才人を刺激する。 竿だけでなく陰嚢を片手で優しく握り、ふわふわと優しく刺激する。

「うぁっ、ダメだ、ルイズっ」

先に限界を迎えたのは才人だった。 思わず両手でルイズの双丘を開ききるほどに握り締め、射精の刺激に備える。

「ふぁっ!」

その反動でルイズが強く握った才人が一瞬膨らみ、弾けた。 びゅびゅっ! 白い迸りが、ルイズの顔を、胸を、汚す。

「もう…先に逝っちゃうなんてズルい…」

自分にかけられた才人の欲望を拭き取るように手ですくい、ルイズは上目遣いに才人を睨む。

525 名前:父来る ◆mQKcT9WQPM [sage ] 投稿日:2006/12/24(日) 12:43:45 ID:KOEKAoC7 「ゴメン…」

しかし、逝ったあとにもかかわらず、すぐに才人は元気を取り戻す。 そんな才人を見てルイズは淫靡に微笑むと、その剛直の上に自らを押し当てた。

「今度は、ちゃんと私も逝かせて…」

そして、そのまま才人を飲み込んだ。 ずぶずぶと剛直がルイズの中に埋まり、ルイズの背筋が快感で反り返る。

「うあぁっ!奥までぇっ…!」

最奥まで届いたそれを引き抜くため、ルイズは腰を上げようとする。 しかし、才人がその腰を掴み、それをさせない。

「…え…?」 「今日はちょっと、やり方を変えてみよう」

才人はいたずらっぽく笑い、ルイズを突き刺したまま腰をゆっくりと回した。 腰に回した手で、ルイズの身体を同時に揺さ振る。 ルイズの中が才人でかき回される。

「うぁっ…なにこれぇ…」

内臓をかき回される感覚に、ルイズの意識が朦朧となる。 才人はルイズを貫いたまま、一切引き抜かずに回転運動だけでルイズに刺激を与える。

「どう?ルイズ」 「なかっ…かきまわされてっ…ヘンに…なるぅっ…!」

最奥を刺激されたまま、ぐちゃぐちゃと中身をかき回される感覚が、ルイズを高みに持ち上げていく。 掴まれているせいで動きの取れない不自由さが、背徳的な快感となってルイズを責める。

「あ、だめ、だめ、いくの、いっちゃうのぉっ!」

一足先にルイズが限界を迎える。 かき回されるそこが、絶頂と共に強く引き絞られる。

「く、出る、ルイズっ!」

その刺激に遅れて絶頂を迎える才人。 ルイズの中に、熱く滾った才人の欲望が、注ぎ込まれる。

「あ、は、でてる、でてるぅ…」

才人に抱きしめられながら、ルイズは下腹部に感じる温もりに、愛しさを感じていた。

526 名前:父来る ◆mQKcT9WQPM [sage ] 投稿日:2006/12/24(日) 12:44:18 ID:KOEKAoC7 交わった後、全裸のまま二人は横になった。 外はもう日が沈み、双つの月が寄り添うように昇っていた。 まるで、今の二人を象徴するかのように。

「綺麗…」

月の光を弾く湖を見て、ルイズがそう漏らす。

「ルイズの方が…綺麗だよ」

すかさず、才人がルイズの背中からそう応える。 ルイズは驚いたように振り向き、朱に染まった頬で才人を見つめる。

「なんだよ、そんなジロジロ見るなよ。  …コレでいいんだろ?」

赤い顔で照れたように頬をかく才人。 結構恥ずかしいらしい。 そんな才人に、ルイズは微笑み、キスのご褒美をあげた。

「よくできました」

そして唇を離して、才人の胸を枕に決め込むと、その胸に手を置いて、言った。

「幸せにしてね…旦那様」 「…ああ」

二人の約束を、双つの月が優しく照らしていた。〜fin

かと思いきや。 二人の波乱万丈が、ここから始まるとは、その時の二人には思いもよらなかったのである。

*とぅ・び・こんてぃにゅぅど*