攻める雁木1

雁木実戦譜


攻める雁木1

まずは手っ取り早く雁木の破壊力を見てもらおう。

先手:居飛車矢倉
後手:雁木

▲2六歩 △3四歩 ▲7六歩 △4四歩 ▲4八銀 △4二銀
▲5六歩 △5四歩 ▲5八金右 △4三銀 ▲2五歩 △3三角
▲4六歩 △6二銀 ▲1六歩 △5三銀 ▲3六歩 △3二金
▲3七桂 △2二角 ▲6八銀 △4一玉 ▲6六歩 △5二金
▲6七金 △6四歩 ▲7八金 △6二飛 ▲2四歩 △同 歩
▲同 飛 △6五歩 ▲同 歩 △同 飛 ▲6六歩 △6一飛
▲2八飛 △2三歩 ▲1五歩 △6四銀 ▲7七銀 △7四歩
▲7九角 △7三桂 ▲6九玉 △4五歩 ▲同 歩 △6五歩
▲3五歩 △8五桂 ▲8八銀 △6六歩 ▲6八金引 △6五銀
▲8六歩 △5六銀 ▲8五歩 △6七歩成 ▲同金左 △同銀成
▲同 金 △同飛成
まで62手で後手の勝ち


どんなスポーツ、ゲームも守るよりもやはり攻めの方が楽しい。
その攻めが炸裂した将棋だ。この破壊力こそが雁木の魅力である。
雁木に興味を持っていただければ幸いである。


【棋譜解説】
以下、実戦譜の解説を中心に雁木の差し回し方針を解説していく。
先後逆にするため図を無理やり上下反転しているので見難いが勘弁してほしい。
また、定跡なわけではないので途中途中に相手自分ともに疑問手悪手が多々あると思うが、雁木の狙いをわかってもらうのが狙いなのでスルーしてほしい。

初手からの指し手
▲2六歩 △3四歩 ▲7六歩 △4四歩 ▲4八銀 △4二銀 ▲5六歩 △5四歩 ▲5八金右 △4三銀 ▲2五歩 (第1図)

近年の将棋では自分の手の内をギリギリまで見せないのが主流であり、初手でいきなり▲2六歩と居飛車を表明するのは珍しいだろう。だが早々に居飛車と教えてくれるのならば雁木にとってはありがたい、雁木でガンガン!だ。
相手が居飛車なので雁木は△4四歩と角道を止める。角交換は避けるべきだ。相手が飛先を突かずに振り飛車含みの指し方をしてくれば△4四歩をいつ突くかはタイミングが難しい。自分も振り飛車を指して相振り歓迎ならば気にせず突いてもよいが。私は居飛車党なので相手が振り飛車の場合は角道は開けたままにしておきたい。その場合の指し方はまたいずれ解説したい。
△4二銀~△4三銀は振り飛車含みの差し回し。たいていの相手はこの当たりで振り飛車と誤認してくれる。▲5八金右もその現われだ。このような惑わせも雁木の特徴の一つ。
もちろん、機を見て本当に振り飛車にするかどうかは自由だぁ~! 振り飛車 is freedom!


第1図以下の指し手
△3三角 ▲4六歩 △6二銀 ▲1六歩 △5三銀 ▲3六歩 △3二金 ▲3七桂 (第2図)

先手は飛車先を伸ばして来る。対振り飛車への居飛車の常套手段だろう。
今回、△3三角と受けたが、通常の雁木では△3二金も筋だ。飛車先の歩はあえて切らせるのは雁木の特徴の一つ。歩交換で相手に一手損させ、そのスキに攻めるというのが雁木の大局観だ。これは覚えておこう。
しかし、本譜ではまだ早々の歩突きでこちらの攻め形は全然できていないため、ここで相手に一手損させてもあまりこちらに得はない。よってここでは歩交換を受けてみた。メリットもなく、みすみすタダで交換させる必要もない。
△6二銀~△5三銀と右銀も繰り出し二枚銀を目指す。基本的には△3二金よりも二枚銀の完成を急ぐ方が良いだろう。中央を手厚くし、飛車の横効きも通す方針だ。二枚銀が出来たら左金を上がり、2筋も固くする。右金が上がるのは飛車の横効きも止めてしまうことからも最後がいいだろう。
ただし、相手が棒銀模様など2筋を早く攻める感じで来た場合などは二枚銀より先に△3二金と上がった方がいいかもね。


第2図以下の指し手
△2二角 ▲6八銀 △4一玉 ▲6六歩 △5二金 ▲6七金 △6四歩 ▲7八金 △6二飛 ▲2四歩 △同 歩 ▲同 飛 (第3図)

△2二角は一度上げた角を引くという手損だが、▲4五歩の仕掛けが見えていて△同歩▲同桂がまずいので桂の当たりをあらかじめ避ける手だ。3三角型雁木では常に狙われる筋である。本譜では相手の角道が止まっていないので、▲4五桂に△2二角成が成立するが、やはり角交換は避けた方が良いだろう。こういったことからも飛先の歩を受ける3三角はあまりオススメできない。また、3三角型のままだと先手が▲7九角と引いて▲2四歩から角交換を狙われる筋もよくある。ほとんどの場合、序盤での角交換は雁木にとってはうまくない。雁木の居角は攻めにおける飛車以上の最強の大砲と言えるからだ。
玉を一路左へ寄り、△5二金と締めて雁木囲いの完成。
この雁木囲い最大の特徴として角に強いということがある。角交換していないかぎり、相手の角はどう動いてもこちらの玉をにらむことはできない。また角交換されていても玉の小ビンは金でがっちりガードしているため、角で絶対に王手されることもない。この2つの特徴は矢倉、美濃、穴熊にはない雁木だけが持つ特殊能力と言えるだろう。
先手はこちらの居飛車を見て取り、陣形を組み替えてくる。ここからだと、まぁ矢倉に組むのが自然なのか。雁木は△6四歩をついて右四間飛車を目指す。雁木の攻めは基本的にはこの右四間飛車が主戦力だ。△2二角が重要なのもそのためだ。


第3図以下の指し手
△6五歩 ▲同 歩 △同 飛 ▲6六歩 △6一飛 ▲2八飛 △2三歩 ▲1五歩 △6四銀 (第4図)

先手が2筋の歩交換を仕掛けてくるのは自然。▲2四飛に慌てて△2三歩は▲2五飛と引かれて△6五歩が突きづらくなる。以下、△3三桂と飛車を追う手も角道を止めてしまって不満。
ここは放置して△6五歩とこちらも飛車先を切りにいく。▲2三歩には△3三角~△2四歩で歩をタダ取りすればいい。6筋の歩交換後、飛車は1段目まで引くのが筋だ。しかし相手に銀などがわたると▲7二銀がイヤミなので△6二飛も有る。
相手が飛車を引いたら△2三歩の受けは絶対だ。手抜くと▲2四歩と垂らされて苦しい展開になる。
軽くなった飛先に△6四銀と力を蓄えていく。雁木は二枚銀のこの右銀をいかに上手く使うかがカギを握る。場面場面に合わせて臨機応変、縦横無尽に右銀を操れ!!


第4図以下の指し手
▲7七銀 △7四歩 ▲7九角 △7三桂 ▲6九玉 △4五歩 ▲同 歩 △6五歩 (第5図)

▲7七銀と矢倉を完成させて先手は満足か。▲7九角は▲6八角~▲8八玉と入城を目指したい所だろうが、しかしちょっと筋の良い人ならそれは非常に危険だということは解るだろう。
雁木は△7三桂とさらに力を蓄える。飛角銀桂と、格言どおりに攻め駒を集中させるのが右四間飛車。爆発すれば矢倉は一たまりもない所で、その爆心地に玉を入れようとする先手の大局観はまずいだろう。
▲6九玉はそれに輪をかけた大悪手。雁木がこれから6筋に攻めを集中しようとしているのにその爆心地に自ら飛び込んできたのだ。どうしても矢倉城に入城したいなら先に▲6八角だろう。それなら▲6九玉で玉頭の一応は盾になる。本譜では壁角となり、後手の飛車先で玉が身動きできない。
ここまできたら△4五歩と、これまで止めておいた角筋を通し、△6五歩と合わせ歩から一気仕掛けの開始だ。
雁木をちょっと知ってる相手なら早めに▲4六歩をついておいて△4五歩をつかせないという雁木右四間を防ぐ筋がある。それでも雁木がじっくり攻め形を整え終われば△4五歩を強行してからの攻めが決まるので▲4六歩を突いときゃ安心♪と簡単にはいかない。


第5図以下の指し手
▲3五歩 △8五桂 ▲8八銀 △6六歩 ▲6八金引 △6五銀 (第6図)

先手は△6五歩を受けづらい。▲同歩は△同桂で銀の逃げ場所が難しい。▲8八銀は△6六歩~△7五歩、▲6六銀も△7五歩から桂の効きを生かした歩攻めが厳しい。
本譜では▲3五歩と攻め合いにくるが当然手抜いて、△8五桂。矢倉は右四間の桂に必ずこの銀を攻められる宿命だ。この時に▲8八玉型だとその厳しさがよくわかるだろう。玉がいないので▲8八銀と逃げるが、▲6六銀とできないのでどこに逃げても6六の地点が薄くなり、△6六歩の取り込みが厳しい。


▲8六歩 △5六銀 ▲8五歩 △6七歩成 ▲同金左 △同銀成 ▲同 金 △同飛成
まで62手で後手の勝ち (結果図)

ここでジッと△6五銀。遅いようで早く重く厳しい一手だ。目障りな桂を払いに来るが、次の△5六銀で一気に飛車先も軽くなり、もはや先手の6筋は壊滅状態。△6七歩成で勝負有り。仕掛けから一直線に矢倉は壊滅。▲8八玉型でも雁木の角が厳しく玉を睨み矢倉苦しいだろう。



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最終更新:2008年02月26日 08:39