攻める雁木2

雁木実戦譜


攻める雁木2

今回も雁木の破壊力が炸裂した一局から。

先手:雁木
後手:居飛車矢倉

▲7六歩 △3四歩 ▲4八銀 △8四歩 ▲6六歩 △6二銀
▲6八銀 △8五歩 ▲7七角 △4二玉 ▲6七銀 △3二銀
▲5六歩 △3三銀 ▲5七銀 △3一角 ▲7八金 △3二玉
▲6九玉 △4四歩 ▲5八金 △5二金右 ▲6五歩 △5四歩
▲4八飛 △4三金 ▲8八角 △8六歩 ▲同 歩 △同 飛
▲8七歩 △8二飛 ▲4六歩 △2二玉 ▲3六歩 △7四歩
▲4五歩 △同 歩 ▲3七桂 △3二金 ▲4五桂 △4四銀
▲4六銀 △3三桂 ▲同桂成 △同金上 ▲4五桂 △3二金
▲3五歩 △2一玉 ▲3四歩 △4一桂 ▲4四角 △同 金
▲3三銀 △3四金 ▲3二銀成 △同 玉 ▲3五歩 △4四金
▲3四金 △同 金 ▲同 歩 △2二銀 ▲3五銀 △6四歩
▲3三歩成 △同 桂 ▲同桂成 △同 銀 ▲4三金 △2二玉
▲3四桂 △同 銀 ▲同 銀 △1五角 ▲3二金 △同 玉
▲4三飛成 △2一玉 ▲2三龍 △2二金 ▲3二銀
まで83手で先手の勝ち

【棋譜解説】
初手からの指し手
▲7六歩 △3四歩 ▲4八銀 △8四歩 ▲6六歩 △6二銀 ▲6八銀 △8五歩 ▲7七角 △4二玉 ▲6七銀 △3二銀 ▲5六歩 △3三銀 ▲5七銀 △3一角 ▲7八金 △3二玉 ▲6九玉 △4四歩 ▲5八金(第1図)


さて本譜も雁木対矢倉の実戦を見てみよう。今回は後手の初手は△3四歩。居飛車か振り飛車かはまだ解らないし、たいていの将棋ではこの展開になる事が多い。雁木は振り飛車を相手にするのは避けた方が懸命であるため、序盤の駒組みに注意が必要だ。相振り飛車OKならば▲6六歩で問題無し。しかしあくまで居飛車で行くのならば▲4八銀だ。通常この手は早々に居飛車を表明してしまうことからもあまり筋は良くないとされることがある。しかしどうあっても居飛車で行くつもりならば、手の内を隠して窮屈な駒組みをするよりも、どのような相手にも対応できる駒組みを優先させるべきだろう。この▲4八銀は居飛車にとって無駄になることはまずないし、早すぎる一手というわけでもない。以下、▲5六歩~▲5八金右~▲9六歩(振り飛車穴熊かどうか打診)~▲6八玉といった具合に差し回していく。雁木の駒組みにも組めるし、相手が振り飛車でも居飛車急戦・持久戦どちらにもいける無駄のない差し回しだ。最後の▲6八玉は雁木でいくなら手損になるが▲6九玉と下がる。
本譜は4手目に△8四歩と後手居飛車表明。よって次は当然▲6六歩で雁木へ。後手の早々の△8五歩にはやはり角で受けておく手が良いか。以下、▲5八金まで雁木完成。


第1図以下の指し手
△5二金右 ▲6五歩 △5四歩 ▲4八飛 △4三金 ▲8八角 △8六歩 ▲同 歩 △同 飛 ▲8七歩 △8二飛 ▲4六歩 △2二玉 ▲3六歩 △7四歩 ▲4五歩 (第2図)

第一図を見てもらえればわかるが、先手はすでに雁木囲いが完成しているが後手は何やらまだたよりない。8筋の歩をのばしたりしているからだ。雁木の方針としてはとりあえず囲む! そして相手の出方を見ながら攻め型をつくっていく、というパターンだ。つまりこの段階で右四間ではなく別の攻め方を選択することも可能。右四間飛車はいったん攻め型をつくってしまうと、別の手にいけない。早々に右四間に組んでしまうと、後手に対応されたときに指し手に困ってしまうのだ。よって攻めはとりあえず後回しにするのがいい。

雁木が組み上がったら今度は攻め型を整える。△6四歩をつかれる前に▲6五歩はついておきたい所。後手は矢倉模様なので雁木はやはり右四間飛車での攻めを狙っていく。△3一角~△5四歩には直に▲8八角と引くべきだった。今回はことなきを獲たが、△8六歩から角交換を挑まれると不満。かろうじて角交換は防げたが、それでも△8六歩と飛車先を切ってくるのは当然の一手。もし△3一角と引いた場合に飛先まで角が通っているような形になるなら、雁木は△3一角が来る前に▲8八角と引いておきたい所。そこへ後手が△3一角ではなく普通に△8六歩なら▲同歩△同飛で問題ない。しかし、△8六歩の前に△3一角を先にいれてきたら▲9六歩!とつく一手を覚えてほしい。これがないと、△3一角から△8六歩▲同歩に△同角!▲8七歩△9五角▲9六歩△8四角と手順に角を転回されてしまう。△8四角は雁木の飛車を睨んでイヤな位置だ。また△7四歩~△7三角に角を据えることもでき、雁木にとって都合が悪い。この一連の変化は頭に入れておこう。
今回は結局▲9六歩は入れないまま、攻めを優先させていった。後手は着々と矢倉に組んで行き、△2二玉と入城。雁木は迷うことなく、▲3六歩から▲4五歩と仕掛けを決行だ。


第2図以下の指し手
△同 歩 ▲3七桂 △3二金 ▲4五桂 △4四銀 ▲4六銀 △3三桂 ▲同桂成 △同金上 ▲4五桂 △3二金 ▲3五歩 (第3図)

▲4五歩では先に▲3七桂と跳ねたいかもしれないが、そこへ△3五歩がうるさい。桂頭の弱点を攻められるのは当然の所。以下、▲4五歩としかけても△3六歩~△3七歩成も足が速く、飛車にあたるのでイヤミだ。▲4五歩△同歩と取らせて桂でその歩と取り返せる形にしてから▲3七桂。これは雁木右四間特有の筋だ。▲4五歩を手抜けば▲3七桂~▲4六歩と取り込めばいい。以下、△同銀▲4五歩△3三銀▲2五桂と、後手玉への角の睨みを生かした強気な攻めで雁木指しやすい。
後手は矢倉の完成を急ぐ。雁木は桂を繰り出して行き、▲4五桂△4四銀に▲4六銀と銀を送り出す。一見飛車先が重くなって筋が悪そうだが、雁木ではこの攻め方がセオリー。あくまでも4筋をガンガン攻めまくる。△3三桂は玉の小ビンを塞ぎたい所だが苦しい一手。▲同桂から再度、桂打ちのおかわりが厳しい。▲4五桂打では▲2五桂の方が筋がよかったようだ。しかし、雁木では▲4五桂打の筋がよく発生する。その狙いは後ほど解説する。桂を打ったら桂の効き筋の歩は突き捨てたい所で▲3五歩。


第3図以下の指し手
△2一玉 ▲3四歩 △4一桂 ▲4四角 △同 金 ▲3三銀 △3四金 ▲3二銀成 △同 玉 ▲3五歩 △4四金 ▲3四金 △同 金 ▲同 歩 (第4図)

後手はこの▲3五歩を受けづらい。△同歩は▲3三歩も見えるがここは▲3五銀と強気に攻める。銀がタダのようだが、空き王手になるため△同銀と取れないのがツライ所だ。▲3五歩を手抜いても▲3四歩△同金に▲3五歩で後手はしびれている。また、▲3四歩をほうっておいても当然▲3三歩成が厳しすぎる。この▲4五桂~▲3五歩までの流れは雁木右四間飛車の最も基本的な攻め筋だ。ここまで決まればもはや後手は受け一方だ。後手は△2一玉と角筋から玉をそらす。居角右四間飛車に対して矢倉△2二玉型がいかに危険かがよくわかっていただけただろう。後手は△4一桂と必死に3三の地点を受けようとするが▲4四角といきなりの角切り強行。この角切りの筋は雁木ではよくある筋だ。実際には△4一桂がなく、△7三銀・4二角という形である時がいい(参考図)。
その場合▲4四角に当然△同金だがそこで▲5三銀!これが▲4五桂から角切りの真の狙いだ。本譜ではその筋が狙えないので先に言ったように▲2五桂打の方がよかったわけだが。。。 今回は2一に桂がいなくなったため、▲3三銀が強手。以下、自然にすすんで後手の矢倉は完全に崩壊。
前回のべたが、雁木は角に強い!! よってこのように攻めの途中でズバッと角切りからの強襲が成立しやすいのも雁木の攻めの筋だ。要記憶!


第4図以下の指し手
△2二銀 ▲3五銀 △6四歩 ▲3三歩成 △同 桂 ▲同桂成 △同 銀 ▲4三金 △2二玉 ▲3四桂 △同 銀 ▲同 銀 (第5図)

ここでは△4二玉~△5一玉と早逃げしていればまだがんばれただろう。この場合、雁木の飛車先が重いのがつらい所。後手は△2二銀となんとか受けようとするが▲3五銀と銀を前線に繰り出しながら飛車先を軽くするのが好手。△6四歩は▲同歩△同角と角の活用をはかりたいのかもしれないが、もはやここではそれどころではない。やはり玉の安全を確保すべきだっただろう。雁木は当然手抜いて▲3三歩成を決め、勝負有りか。桂をさばきあって▲4三金から▲3四桂。玉が逃げれば▲3三金で飛車先も通るので、△同銀だが▲同銀でほぼ受けなし。


第5図以下の指し手
△1五角 ▲3二金 △同 玉 ▲4三飛成 △2一玉 ▲2三龍 △2二金 ▲3二銀 (結果図)

△1五角は先手飛車にあてつつ、3三に効かせた攻防の角。ここで飛車を逃げているようではダメだ。▲3三銀打から一手一手を狙ってもいいが、ここでは2分ほどじっくり考え、即詰みに討ち取る。▲3二金と金のタダ捨てから待望の飛車を成り込んで虎王完了!





雁木 対 将棋倶楽部24上級者


さて、これまで雁木右四間飛車からの猛烈な攻め筋を見ていただいたが、ちょっと攻め単純すぎるだろ、こんなの格上に通用するの?と思われる方もいるかもしれない。実際、こうも簡単にはいかないだろうと思う。しかし、雁木戦法という戦法自体がマイナーであるため、実力者といえども甘く見て対応を誤ると痛い目に合うぞう。
以下は将棋倶楽部24上級者とかなりの実力者との実戦例。相手とは対局は初めてで、雁木を相手にするのも初めて?だったようだ。


先手: 将棋倶楽部24上級者
後手: 雁木

▲7六歩 △3四歩 ▲2六歩 △4四歩 ▲4八銀 △4二銀
▲5八金右 △4三銀 ▲5六歩 △5四歩 ▲6八玉 △6二銀
▲7八玉 △5三銀 ▲6八銀 △3二金 ▲7七銀 △4一玉
▲6六歩 △6四歩 ▲6七金 △5二金 ▲7九角 △4五歩
▲2五歩 △6二飛 ▲2四歩 △同 歩 ▲同 角 △2三歩
▲7九角 △1四歩 ▲3六歩 △7四歩 ▲3七桂 △5五歩
▲同 歩 △同 角 ▲5六歩 △2二角 ▲4六歩 △6五歩
▲同 歩 △7三桂 ▲4五桂 △5四銀直 ▲5五歩 △同 銀
▲5六歩 △6六歩 ▲5七金 △6五桂 ▲5五歩 △5七桂成
▲同 銀 △6七歩成 ▲8八玉(結果図)

油断していると上級者と言えどもこの通りだ。
・・・ところで棋譜をここまでしか載せていないのだが、何故かと言うとここから雁木が負けたから。。。
結果図以下、△5七と。と金を残したまま、攻めを継続したいと思ったのだがそこに▲6八歩と受けられ攻めに頓挫した。その後は上級者の実力を見せ付けられ、終盤力の実力差で負けた。さすがといった所だ。
検討の結果、△5七とではなく△7七とから△6九飛成で後手勝勢だった。とはいえ、それでもそこから勝ちきるには実はかなり大変な(時間がかかる)ようだ。対局後、相手は今後、雁木もナメてかかれないな・・・と語ったとか。




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最終更新:2008年03月01日 15:17