開始日時:2008/03/07 10:00
終了日時:2008/03/07 21:59
棋戦:第66期順位戦B級2組10回戦
持ち時間:6時間
消費時間:107▲208△358
場所:東京・将棋会館
先手:先崎 学八段
後手:加藤 一二三九段
過去の対戦は5勝5敗の五分。順位戦はA級で2局、B級1組で2局指しており2勝2敗1千日手。加藤は本局に敗れると降級点の可能性がある。本局の記録係は小泉祐三段(18歳、西村一義九段門下)
(棋譜・コメント入力=烏)
▲7八金
この手を見た加藤は固まってしまった。モニターにはあぐらをかいた加藤の足が映し出されている。この2手目、どうやら長くなりそうだ。
△8四歩
加藤は20分ほどで△8四歩を着手。▲7八金を直接とがめにいくなら振り飛車にする手もあったが、我関せず△8四歩の選択も自然だろう。
▲7六歩
ここで△3二金なら、▲6八銀から矢倉になる公算が高い。
△8五歩
この手は▲7七角と上がらせて、その形を負担にする考え方。早めに飛車先を決めてしまうデメリットもあるが、方針が一貫していれば問題ない。
▲7七角 △3四歩 ▲8八銀 △3二金 ▲4八銀
モニターに出前のメニュー表が映っている。加藤は素早く特上寿司を注文したと思われるが、先崎が広げているメニュー表を覗き込んでいるのか、身を乗り出した姿が映っている。
△6二銀 ▲4六歩
普通の角換わりになれば、飛車先を突いていない得が生きてくる。先崎はその展開を目指し、加藤はそうならないように駒組みしていくことになりそうだ。
昼食の注文は加藤・うな重(竹)、先崎・うな重(松)。相手のうな重より上のランクを頼むのは、将棋界では有名な手筋とされている。加藤がメニュー表を覗き込んでいたのはそういう経緯があったからのようだ。
△4四歩 ▲4七銀
ここで昼食休憩に入った。消費時間は先崎15分、加藤1時間47分。
△4二銀 ▲5八金 △5四歩 ▲6九玉
先崎の狙いは▲5九角~▲3七角の三手角。加藤の狙いは△3三銀~△3一角~△8六歩の角交換。手数としては先崎の三手角のほうが早そうだ。
△5二金 ▲3六歩
14時頃、ここまでの消費時間は先崎30分、加藤2時間16分。
△4三銀
矢倉ではなく雁木へ。
▲5九角 △5三銀 ▲7七銀 △7四歩 ▲7九玉 △6四歩
なかなか玉を動かさないのは、△6三金~△7三桂~△6二玉の右玉を視野に入れてのことだろう。
▲6六歩 △6三金 ▲2六歩 △6二玉
やはり右玉。これで8二飛がいなければ、そのまま飛車落ち上手の陣形になる。
▲2五歩 △9四歩 ▲9六歩 △7三桂 ▲2四歩 △同 歩
▲同 飛 △2三歩 ▲2八飛 △8一飛
後手陣の浮き駒は今引いた飛車のみ。
▲5六銀
15時頃、消費時間は先崎54分、加藤3時間3分。
△1四歩 ▲1六歩 △3三桂 ▲3七角 △7二玉 ▲8八玉
△5一飛 ▲9八香
右玉に対して穴熊に組み替える作戦は、この戦型の常用手段のひとつ。ただバランスが崩れやすくなるため、一手一手慎重に進めることになる。
△6二銀 ▲9九玉 △5五歩 ▲6七銀 △5三銀 ▲4五歩
ここで駒がぶつかった。△同桂なら角をかわして▲4六歩。△同歩は単に▲5五角か、それとも▲5六歩と突き上げるか。
この局面で食休憩に入った。消費時間は先崎1時間48分、加藤5時間1分。
△1三角
△1三角は軽い手なのだが、加藤が指すと重厚さが伝わってくるようだ。次に△4五桂と歩を取れば後手有利。ここまで比較的早指しで進めてきた先崎だったが、ここは考えどころだろう。
▲4四歩 △同銀右 ▲4六歩 △3一角
一仕事終えて引っ込む。ここ数手のやりとりは、はっきり加藤が得をした感じだ。
▲8八銀
これでひとまずは安心。右辺で互角の戦いが出来れば、玉形の差で先手が優位に立てるだろう。
△8一飛 ▲2六角 △2四歩 ▲5九角 △2三金
形にこだわらず。非常にバランスがいいが、網が破れた瞬間に敗勢になる。加藤にとっては時間が少ないのが不安要素だろう。
▲5六歩 △5一飛 ▲4七金 △5六歩 ▲同 銀 △5五歩
20時半頃、消費時間は先崎2時間40分、加藤5時間22分。
▲4五歩
思い切って踏み込んだ。△5六歩▲4四歩△同銀は▲3二銀がある。したがって△4五同桂と取ることになりそうだ。▲6七銀△4六歩▲同金△5七桂成▲4五歩と進めるつもりなのだろうか。
△5六歩
なんとも思い切った一手。こうなるともうタダじゃ済まない。
▲4四歩 △同 銀 ▲2六角 △3五歩 ▲3二銀 △5七歩成
▲5二歩 △同 飛 ▲3一銀不成
一気の大決戦。次に▲4一角がある。
△4七と ▲4一角 △5七飛成 ▲2三角成 △8六歩
コメントを入れる暇もない早さで進む。
加藤の残りは30分ほど。
▲3四馬
一歩も引かず寄せ合いを目指す。△4三歩なら▲3五角の活用がピッタリになりそうだ。
△4三歩
4四の銀を取られると、後で▲3五角が絶好になる。現局面で▲3五角も十分ありえそうだ。
▲4二銀成
次は▲4三成銀から▲4四馬。ここからは純粋なスピード勝負になる。
△2五銀
スピード勝負にならなかった。△8七歩成と攻めると▲8四歩と垂らされる順があるため、攻め合いには持ち込めなかった。控え室の形勢判断は先崎優勢~勝勢。
▲3五角
これが竜取り。△同銀に▲同馬もまた竜取り。先手玉は穴熊。加藤苦しい。
△3四銀 ▲5七角
△同とに▲5一飛。いつでも▲2四飛の筋もあり、とても支えきれる格好ではない。すでに検討は打ち切られている。
△同 と ▲5一飛
8筋の歩が切れた瞬間に▲8四歩があるため、先手玉に迫る手立てが見当たらない。
△5六角
▲9一飛成は一回詰めろだが、△6二金と引いてひと頑張りする。先に▲5二成銀としてから▲9一飛成とするのが手堅い順だろうか。
▲5二成銀
次は▲9一飛成以外に▲6一飛成~▲6三竜と金を取る手もある。
攻防に△4五角打としても、角を渡せないのでは効果は薄い。
△6二金打 ▲5四歩
「次は▲9一飛成か。いやーいい手だ」(宮田五段)
△5八歩
すごい手つきで△5八歩。△7八角成が回れば詰めろだが、▲9一飛成で受けがない。
▲9一飛成 △8二角 ▲8三金 △同 玉 ▲8四香
ここで終局となった。以下は△8四同玉▲8二竜△8三香▲9三角と追っていけば詰む。
消費時間は先崎3時間28分、加藤5時間58分。勝った先崎は6勝4敗、敗れた加藤は3勝7敗となり降級点が決まった。
まで107手で先手の勝ち
最終更新:2008年03月10日 00:37