対 棒銀1

雁木実戦譜


対 棒銀戦 その1

雁木最大の難敵である棒銀との戦いを解説する。雁木に限らず、どんな戦型においても棒銀は単純ながらもカタにハマれば、なかなか破壊力のある怖い相手だ。飛車と銀のコンビネーションは切れ味抜群で、受けそこなうとたちまち自陣が崩壊しかねない。飛車と銀のコンビ攻撃は雁木を含む右四間飛車も同じだが、速さは棒銀のが一枚上手だ。こちらが攻撃態勢をきずく前につぶされることもあるため注意が必要だ。

雁木は囲いの性質上、8筋が極めて薄い。弱点といってもいい。通常は7八の金の利き1つしかないためだ。しかも、その弱点を補おうとするにも、味方駒を引き付けて8七の地点を受けにくい。対して棒銀はその8筋をモロに攻めてくる強力な攻撃だ。雁木に対しては天敵と言ってもいいくらい相性は悪い。しかし、その割には対面する率は比較的高いため、天敵だからハイそうですかと簡単に引き下がってはいけない!

雁木による対棒銀の決定策はとりあえずないと思う。局面を見ながら臨機応変にさばいていくしかない。四間飛車が得意ならば、雁木の序盤から四間飛車に振り変えて対応すれば大丈夫だろう。ある意味、これが対策の決定版と言えるだろう。が、純血の雁木党としては飛車を振るわけにはいかない。
ということで、雁木で棒銀を迎え撃つ! 雁木で棒銀と戦うにおいてパターンはだいたい3つある。

 1.角交換型
 2.5五角型
 3.7七桂型

1つずつ実戦を紹介しながら解説していこう。まずは1の角交換型から。



先手: 雁木
後手: 居飛車棒銀

▲7六歩 △8四歩 ▲6六歩 △8五歩 ▲7七角 △7二銀
▲6八銀 △8三銀 ▲6七銀 △3四歩 ▲7八金 △5二金右
▲4八銀 △4二金上 ▲5六歩 △4一玉 ▲5七銀 △3二玉
▲4六歩 △6四歩 ▲6九玉 △9四歩 ▲9六歩 △7四歩
▲5八金 △8四銀 ▲6五歩 △同 歩 ▲2二角成 △同 銀
▲4五歩 △8六歩 ▲同 歩 △7五歩 ▲4八飛 △7六歩
▲5五角 △9二飛 ▲7六銀 △5四歩 ▲4六角 △8八歩
▲同 金 △3三角 ▲7七歩 △9五歩 ▲同 歩 △同 銀
▲9三歩 △同 飛 ▲8二角成 △7三飛 ▲9五香 △同 香
▲8四銀 △7六飛 ▲同 歩 △8八角成 ▲8一馬 △8九馬
▲9五銀 △6六桂 ▲同 銀 △同 歩 ▲4六桂 △6七歩成
▲3四桂 △5八と ▲同 玉 △5六馬 ▲2二桂成 △同 玉
▲3四桂 △1二玉 ▲2二飛
まで75手で先手の勝ち



【棋譜解説】
初手からの指し手
▲7六歩 △8四歩 ▲6六歩 △8五歩 ▲7七角 △7二銀 ▲6八銀 △8三銀(第1図)


後手は角道も開けず、いきなり最短の手順で棒銀をみせてきた。この動きを見ると雁木党としては一瞬ヒヤリとしてしまう。だがしかし、これほど早くに棒銀を表明してくるならば、なんとか対応も考えられるだろう。さて、今回はどういう方針で迎え撃つか?


第1図以下の指し手
▲6七銀 △3四歩 ▲7八金 △5二金右 ▲4八銀 △4二金上 ▲5六歩 △4一玉 ▲5七銀 △3二玉 ▲4六歩 △6四歩 ▲6九玉 △9四歩 ▲9六歩(第2図)


雁木側はとりあえず▲6七銀。四間飛車の含みをにおわせる。コレを見て後手は角道を開け、舟囲いと自陣を整備し始める。四間飛車相手には一直線棒銀は通用しないからだ。7七の角が9筋からの銀の進出を阻んでいる。△8四銀とくれば▲9六歩と受ければ角の利きのため、9筋からの銀の進出は不可能となる。後手の手が止まっている間にコチラはとりあえず雁木をくみ上げていく。後手はこの動きをみて、雁木経験のない者なら少々混乱するだろう。
△6四歩は△6五歩▲同歩とこじ開けて角交換が狙いなのかもしれないが、先の説明であったとおり、本譜は【1.角交換型】と銘打っている通り、角交換は雁木としては望む所だ。棒銀の標的となりやすい角をさばいてしまうので不満なし。後手は△6五歩は保留して△9四歩ときたが、予定どおり▲9六歩をついて9筋から棒銀は来させない。


第2図以下の指し手
△7四歩 ▲5八金 △8四銀 ▲6五歩 △同 歩 ▲2二角成 △同 銀 ▲4五歩 △8六歩 ▲同 歩 △7五歩 ▲4八飛 △7六歩 ▲5五角(第3図)


9筋からの棒銀は無理ということで、後手は△7四歩。7筋からの進出を狙うのは一見自然。しかし、これは雁木の想定どおり。△8五銀と出て次の△7五歩を見せた所で▲6五歩と角道を開けて角交換を促す。後手から交換してくるのは手損となるので、△6五同歩と一歩得しながら、先手から角交換させて△同銀と手順に銀を上げて固めるために手得する。これも自然な発想だろう。次の▲4五歩は一見、意味不明だが次の▲5五角打後の角の引き場所を確保する狙いだ。さらに、▲4八飛から4筋の逆襲を狙う含みもある。
後手は△8六歩~△7五歩といよいよ攻めに来たが、この△7五歩は必ず手抜くコト。▲同歩は△同銀で棒銀の手助けになってしまう。ココを手抜くことによって2手は稼ぐことができるのでその間に反撃体勢を築く。後手陣は玉の位置が不安定な場所なので▲4八飛と4筋逆襲を見せて▲5五角!
後手が7筋から棒銀の進出を狙ってきた場合は常に成立するカウンターだ。△7五歩▲同歩を手抜いたことにより後手は△7三歩と受けることができない。△7三銀や△7三桂も▲7四歩がある。


第3図以下の指し手
△9二飛 ▲7六銀 △5四歩 ▲4六角 △8八歩 ▲同 金 △3三角 ▲7七歩 △9五歩 ▲同 歩 △同 銀 ▲9三歩(第4図)


後手は△9二飛とかわす。他の場所に逃げては▲9一角成がうるさいのでココしかないが、△7三銀も一応は有力なようだ。以下、▲7四歩△8六飛▲2二角成△同玉▲8七銀。▲7三歩成の銀取りもあり、角と銀二枚の二枚換えだ。棒銀の攻めも封じ、後手陣も不安定なので先手もなんとか戦えるだろう。また、△7三角なら▲同角成△同銀▲8七金と立って8筋を立て直してどうか。
本譜は△9二飛と飛車をそらして棒銀を空振りさせたので満足。これで後手の速い攻めはとりあえず封じた。▲7六銀と歩を取り返して、△5四歩には▲4六角。先に▲4五歩を突いておいた効果だ。角はやはり飛車の小ビンを睨む位置で活躍したい。後手の△8八歩~△3三角はあまり意味がないだろう。もったいない。9筋に逃げた飛車を活用すべく棒銀端攻めを見せてくるが、▲9三歩の叩きが軽い好手。


第4図以下の指し手
△同 飛 ▲8二角成 △7三飛 ▲9五香 △同 香 ▲8四銀 △7六飛 ▲同 歩 △8八角成 ▲8一馬 △8九馬 ▲9五銀 △6六桂 ▲同 銀 △同 歩 ▲4六桂(第5図)


△同桂や飛車が逃げては銀がタダだし、角にも成り込まれる。△同飛は仕方ない所だが、▲8二角成と待望の成り込み。これで棒銀はもはや完全に失敗だ。△7三飛にも▲同馬と清算するのは、せっかく作った馬と相手の窮屈な飛車を交換しては損だ。▲8四銀ともったいないが露骨に飛車をいじめる。そこで後手は飛車を切って二枚換え+馬作り。ココではこれが最善か。お互い桂香と小駒を取り合い、取った桂馬で△6六桂と反撃だが、ここはあっさり清算した方がよいと踏んだ。自陣は右側に広いし、桂二枚持てば後手陣の不備をつく攻めができるからだ。その一歩が▲4六桂~▲3四桂の反撃。


第5図以下の指し手
△6七歩成 ▲3四桂 △5八と ▲同 玉 △5六馬 ▲2二桂成 △同 玉 ▲3四桂 △1二玉 ▲2二飛(結果図)


▲4六桂に後手も手抜いて△6七歩成と攻め合いを慣行。先手も手抜いて▲3四桂! 後手も手抜いて△5六馬と急所に馬をすえる。お互い一歩もひかない攻め合いだ。▲2二桂成△同玉から▲3四桂のおかわり。これがあるので先ほど桂を取った。が、これになんと後手は△1二玉!
信じられない頓死で幕が下りた。。。(クリックミスか?) △3二玉で後手玉は寄らず、むしろ東大将棋の検討によれば後手勝勢の勢い。まぁあれだけ手駒があればどうにでもできただろうに。

実際、本譜では中盤55手目の▲8四銀が悪手。そこまで先手優勢だったがコレで逆転していた。▲4四歩△同角▲8一馬くらいでどうかという所。が、とりあえずそのあたりまでは互角以上に戦えているので、雁木による棒銀撃退という意味では成功した所だろう。 棒銀への対策その1【角交換型雁木】、なんとなくわかっていただけただろうか。







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最終更新:2009年07月18日 14:32