予選その8 vs ゴキゲン中飛車

kureの24名人戦奮闘記 予選その8


予選その8


名人戦予選も折り返しの8戦目。今日の初戦はmomijiman0503氏(現R930、最高R930)、生粋のゴキゲン中飛車党のようである。対局時Rもこれまでで最高の相手。気を引き締めて臨まねば。この対局もおそらく対ゴキゲン中飛車になりそう。問題は先手になるか後手になるかで戦い方が全く異なってくる。ぜひとも先手が欲しい処。

【名人戦6級リーグb 予選05局目(2010/01/15)】
 先手▲ kure90 後手△momijiman0503

初手からの指し手
▲7六歩 △3四歩 ▲2六歩 △5四歩 ▲4八銀 △5二飛 ▲6八玉
△5五歩 ▲7八玉 △6二玉 ▲6八銀 △7二玉 ▲2五歩 △3三角
▲7七銀 △4二銀 ▲3六歩 △5三銀 ▲3七銀(第1図)

本局も先手。8戦で7度目の先手だ。相手は予想どおりゴキゲン中飛車模様。対振り飛車で先手をとれたのはありがたい。kureは対ゴキゲン中飛車相手には先手なら二枚銀急戦、後手なら飯島流引き角戦法を採用している。飯島流引き角は角道を開けない戦法。kureが後手番での初手は必ず△8四歩と飛車先をつくのはそのためなのだ。基本的に丸山ワクチンは好みではないのでやらない。
本局は先手をとれたので急戦でいく。▲2五歩とつき△3三角を強要する。そして▲7七銀と角道を止める。後手から△5六歩と仕掛けて角をさばかせるのを防ぐ狙いだが、通常はもっと後でとめる。これほど早く止めるのはkure流の工夫。角交換はできればしたくないのだ。後手の角を攻めの目標にしたまま負担駒とさせたい構想。
二枚銀急戦をみて後手も△4二銀~△5三銀と強気に対抗してくる。ここで先手は▲3六歩~▲3七銀と早繰り銀急戦だ。この形は▲5八金右を省略した郷田流と呼ばれるもの。先手の手番をいかしたスピードある急戦のための工夫なのだ。
対ゴキゲン中飛車の二枚銀急戦ではこの▲3七銀型の他に▲4七銀型がある(参考1図)。
対ゴキゲン急戦の初期は▲3七銀型が指されていたものの、その後▲4七銀型が主流となった。ここから数手進んで▲3六銀と出たときに△5六歩と仕掛けられ、▲同歩△同飛▲4七金が受けの定跡で互角とされる(参考2図)。
しかしこの金がソッポにいく形がヒドく、プロならまだしもアマチュアでは勝ちきるのは相当困難なよう。kureも実際そう思えるし、この急戦はほとんどやらない。やって勝率も高くない。相当に受けに実力がなければ指しこなせない戦型なのだ。そのため一時、先手では4筋位取り戦法を採用していた。これは割と勝負できていたのだが、ある日、ゴキゲン党でもない相手のゴキゲン中飛車に決定的に完敗した。その負けっぷりがあまりにもヒドくて衝撃的で以後、この戦法は封印した。
先手でも無理やり居飛穴や引き角をやっていたのだが、イマイチだった。そこへ近年、この▲3七銀型(郷田流)が復活しプロでも流行している。郷田九段がひたすら研究を続け指し続け、復活させた戦法なのだ。現在プロでも▲4七銀型よりもこちらの▲3七銀型の採用率、勝率ともに高いようだ。詳しい定跡は「将棋世界2009年9月号」に講座があるのでそちらを参照されたい。

第1図以下の指し手
△5四銀 ▲4六銀 △6五銀 ▲5八金右 △5六歩 ▲同 歩
△同 銀 ▲5七歩 △6五銀 ▲6八金上 △8二玉(第2図)

第1図から後手の指し手はほぼ2通り。1つは△4四銀で、これは受けの形。プロの実戦ではこれが一番多い。先手の▲3五歩からの仕掛けを封じて主導権をとらせない狙いだ。しかしこれには▲4六銀~▲3七桂とゆっくり活用できるのだ。以下、▲4五桂とはねて角の引き場所を催促する。△2二角なら▲2四歩だし、△5一角なら▲6六銀~▲5五銀左といずれも先手が動きやすい。
もう一つは本譜の△5四銀。これは攻め合いを見せた強気な手だ。だがこれには堂々と▲3五歩の仕掛けがある。後手も△6五銀と攻め合いを見せる。これは後手の方が早そうだ。定跡では先手は▲7七銀が入っていないので後手のこの△6五銀がくる前に先手からの▲3五歩の仕掛けの方が早いのだ。kureは△5六歩の早い仕掛けがイヤなので▲7七銀を早めに入れている。このため後手の仕掛けの方が早い。
このまま△6五銀に▲3五歩をついても△5六歩と先にこられるので一旦▲5八金上と受けるのは仕方ない処。さらに▲6八金と上がり後手の中央の仕掛けを完全に無効にする。これで先手の右銀の動きが自由になる効果もある。▲7七銀を早めに入れているので後手の角もさばけないのだ。早めの▲7七銀で後手の△5六歩の仕掛けからの角交換を消し、後手の5三銀の行方によって金を上がって守るか▲3五歩からすぐ仕掛けるか。これがkure流急戦の方針である。

第2図以下の指し手
▲3五歩 △5六歩 ▲同 歩 △3五歩 ▲2四歩 △同 歩 ▲3四歩
△5一角 ▲3五銀 △5六飛 ▲4六銀 △5四飛 ▲3八飛(第3図)

後手はこれ以上、攻めようがないので△8二玉と玉型を整備するくらいしかないが、先手は堂々と▲3五歩と仕掛け開始だ。
ここでふと気がついたのだが、この▲4六銀の形から▲3五歩との仕掛け、実はこれは4筋位取り戦法での形、仕掛けによく似ているのだ! 4筋位取り戦法に比べ、この▲3七銀急戦は「一、4筋の歩を突く2手が省ける  二、4五歩型よりも4七歩型のほうが自陣は堅い」というメリットがある。なんと、この▲3七銀急戦は4筋位取り戦法を進化させたようなものだったのか!?? どうりで自分の棋風にも馴染むような気がするのか。
それはさておき、▲3五歩の瞬間、再度△5六歩と後手は動いてくる。▲同歩と取らせてから△3五歩と手を戻す。これは▲同銀なら△5六飛▲5七歩△3六飛のさばきを狙ったものだ。当然、そんな見え見えの狙いにはまるわけにはいかない。先手も▲2四歩と飛車先の歩を突き捨てる。
そして▲3四歩がこの急戦ではよくある手筋だ。角が2二や4四に逃げては▲2四飛と走られるので5一に引き、△6二角の活用を狙うしかない。△5六飛には▲4六銀とがっちり受け止める。△5四飛と飛車をヨコに使ってきたが、3四の歩は重要な拠点であり簡単に取らせるわけにはいかないので▲3八飛と守る。

第3図以下の指し手
△7四飛 ▲2二歩 △7六銀 ▲2一歩成 △7七銀成
▲同 角 △5二金左 ▲1一と △4九銀 ▲3六飛(第4図)

第3図まで先手が主導権を握っていて指しやすいだろう。自陣の形も二枚の金で中央をしっかりおさえ、後手の角も活用させていない。参考2図と比べても随分こちらの方がよく見えるだろう。次に▲8六銀と上がって角筋を通す狙いを受けにくい。△後手も△7四飛と玉頭にプレッシャ-をかけなんとか手を作ろうとする。狙いは当然△7六銀のぶつけだろう。だがこれには▲2二歩が効く。飛車が敵陣内からいなくなってスキが多いのだ。
△7六銀にも手抜いて桂香を拾いにいく。△7七銀成に▲同角と角もさばけてきた。後手からは一本△4九銀がありそうだが、その前に一度△5二金左と自陣をひきしめる。△4九銀が見えているが、先手はどう動くか。▲2八飛とかわしても△3四飛と拠点を消され、歩切れの先手は▲3五歩と打てない。角も活用されそうだ。そこで▲1一とと駒を補充して相手にもたれる。今度は▲2八飛△3四飛に▲3五香があるので、さすがに△4九銀と打つ処。

第4図以下の指し手
△3五歩 ▲同 飛 △7七飛成 ▲同 桂 △5八銀成 ▲同 金 △7六金
▲1五飛 △5七歩 ▲同 銀 △1四歩 ▲8五飛(第5図)

▲3六飛に後手は一本△3五歩の工夫。そして△7七飛成が勝負手だ。▲同玉は△4四角、▲同金は△5八銀成なので▲同桂しかない。以下、金をとって△7六金が飛車角交換から狙いの手。△4四角以下、一気に勝負を決める狙いだ。ここは▲1五飛と危険地帯から飛車を遠ざけるしかない。△5七歩は▲同銀で余計かたくなったか。続く△1四歩に▲同飛△5五角の狙いのためだろうが、ここで▲8五飛が攻防に利かせたままの機敏な一手だ! 先手も一気の決戦を狙っている。

第5図以下の指し手
△2八角 ▲8六香 △7二銀 ▲5三歩 △同 金
▲1二飛 △5二歩 ▲9五桂(第6図)

△2八角は緩手。攻めを続ける手駒がほしい処だったのだろうが、先手の狙いを見落としていたか。▲8六香! 単に△5五角を受けた手というよりも敵玉頭から一気に攻め潰してしまおうというのが先手の真の狙いだったのだ。▲5三歩△同金を効かせて▲1二飛も細かい工夫。後手は8三の地点を受ける手がないので、こうしたゆっくりした味付けも間に合う。そして待望の▲9五桂。これで玉頭に受けはもうない。

第6図以下の指し手
△7一玉 ▲8三桂成 △6四金 ▲8二成桂 △6二玉 ▲4二銀(第7図)

△7一玉の早逃げはなかなか機敏な一手だが、美濃囲いは玉がいた8八に駒の効きがないのが最大の弱点だ。
▲8三桂成~▲8二成桂に為す術がない。△6四金の逃げ道確保にも▲4二銀がピッタリ。

第7図以下の指し手
△7七金 ▲同 玉 △5五角成 ▲同 飛 △同 金 ▲5三銀打
△同 歩 ▲5一銀不成 △同 玉 ▲3三角(結果図)
まで89手で先手の勝ち

△7七金~△5五角成と形造りだがここでも▲8五飛が受けによく効いていた。敵陣に飛車を打ち込んだ時も何かの際に角のラインにあたらないように1二に打っておいたのも細かい気配り。もし飛車を2二に打っていて▲8五飛がいなければ△5五角成が王手飛車で飛び上がる。△5五角成はあっさり▲同飛ととってしまい、以下後手からは王手のかけようがない(△6五桂も▲同飛)。▲5三銀から即詰めで、終始指しやすく戦えたと思う。やはり▲4七銀急戦より▲3七銀急戦のほうが指しやすく勝率もいい。
対局後の感想戦でどうやら相手は「狼将棋部」のメンバーでこちらのことも知っていたようだった。vipに強いゴキゲン使いがいるというと、てっちwのことも知っていた。以前来ていたkame(えりりん)は三段リーグで出場しているらしい。つええ!!(しかも断トツのリーグ1位(kame1223)





開始日時:2010/01/15 21:29:42
棋戦:名人戦6級リーグb 予選08
戦型:3七銀急戦・ゴキゲン中飛車
先手:kure90
後手:momijiman0503

▲7六歩 △3四歩 ▲2六歩 △5四歩 ▲4八銀 △5二飛
▲6八玉 △5五歩 ▲7八玉 △6二玉 ▲6八銀 △7二玉
▲2五歩 △3三角 ▲7七銀 △4二銀 ▲3六歩 △5三銀
▲3七銀 △5四銀 ▲4六銀 △6五銀 ▲5八金右 △5六歩
▲同 歩 △同 銀 ▲5七歩 △6五銀 ▲6八金上 △8二玉
▲3五歩 △5六歩 ▲同 歩 △3五歩 ▲2四歩 △同 歩
▲3四歩 △5一角 ▲3五銀 △5六飛 ▲4六銀 △5四飛
▲3八飛 △7四飛 ▲2二歩 △7六銀 ▲2一歩成 △7七銀成
▲同 角 △5二金左 ▲1一と △4九銀 ▲3六飛 △3五歩
▲同 飛 △7七飛成 ▲同 桂 △5八銀成 ▲同 金 △7六金
▲1五飛 △5七歩 ▲同 銀 △1四歩 ▲8五飛 △2八角
▲8六香 △7二銀 ▲5三歩 △同 金 ▲1二飛 △5二歩
▲9五桂 △7一玉 ▲8三桂成 △6四金 ▲8二成桂 △6二玉
▲4二銀 △7七金 ▲同 玉 △5五角成 ▲同 飛 △同 金
▲5三銀打 △同 歩 ▲5一銀不成△同 玉 ▲3三角
まで89手で先手の勝ち