greenbio @ ウィキ

基礎知識


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1. 環境バイオ分野の概要、動向

1.1. バイオの種類

 応用分野別にレッドバイオグリーンバイオホワイトバイオに分類されている。レッドというのは血の色から連想されるように医薬用、グリーンは農業や種用、そしてホワイトは工業生産用に応用されるバイオテクノロジーを指す。
 ホワイトバイオはインダストリアル・バイオとも呼ばれ、数千年前からワインやチーズ、醤油、酒造りなどに利用されてきた。遺伝子技術の発達により、最近ではホワイトバイオはより広範囲に応用されるようになった。マッキンゼー&Co.社の市場分析によれば、ホワイトバイオは化学産業に対して2010年までに、毎年110億から220億ユーロ(1兆4500億から2兆9000億円)もの経済効果を及ぼし、社会、経済、環境のそれぞれの面で、新規雇用を創出するとともに、経済的価値も生み出し、環境への負荷を減らすとしている。工業プロセスに生物資源、酵素、微生物などを活用するホワイトバイオは、素材や化学製品、エネルギーなど応用分野は幅広く、温室効果ガス排出量を抑制し、エネルギーや水などの資源を節約することができる。そして何よりの利点は、反応プロセスでのエネルギー消費が少なくコストが安いこと。トウモロコシから樹脂の中間原料を作ることなども可能となり、石油原料の節約につなげられる、つまり地球環境の持続可能性を握る、ものづくりのニューウェーブでもある。

1.2. グリーンバイオについて

微生物や植物などの生物が持つ化学物質の吸収・蓄積・分解などの能力を利用して汚染物質を除去する方法を研究・開発する技術を広く環境バイオテクノロジーと呼ぶ。

環境浄化の例として家畜の糞尿や生ゴミを微生物によって分解させ、堆肥化させるコンポスト技術は昔から行われてきた。このような微生物の力を工学的に利用することにより積極的に有害物質を分解して環境修復を図ろうとする方法をバイオレメディエーションと言う。一方、植物による浄化作用を主に利用した浄化方法をファイトレメディエーションと言い、近年ではこれらの技術を用いて化合物だけでなく有害な重金属を濃縮して除去することにも応用されている。

これほどまで環境バイオ分野が脚光を浴びるようになったのは19971月に日本海で起こったロシア船籍「ナホトカ」号による重油流出事故が発端であった。環境負荷が少なく実用性の高い除去手段がなかったため、流出重油は当時多くの献身的なボランティアによる手作業によって除去された。この事故をきっかけに、流出油の処理法として微生物を用いて流出油を分解・浄化するバイオレメディエーション(bioremediation)が注目を集め、実際、一部の自治体や企業において実証試験を兼ねた油の浄化が進められるようになった。

この様にバイオレメディエーションは、環境浄化技術のニューホープとして注目されており、欧米ではすでに多くの会社がバイオレメディエーションによる浄化作業を行っているのに対し、日本においてはまだまだ発展途上である。バイオレメディエーションを細かく分類すると以下の二つに分けられる(1.)

①バイオスティミュレーション(Biostimulation):微生物活性化法を意味し、汚染サイトに生息している土着微生物の代謝能を活性化させることで浄化する方法。土壌に空気を吹き込んだり窒素やリンなどの無機栄養塩類を添加したり、メタンやトルエンなどを基質として加えたりする。

②バイオオーギュメンテーション(Bioaugmentation):汚染サイトにおいて汚染物質を効率的に分解する微生物を直接添加することで浄化する方法。汚染現場に元々存在する微生物を外部で培養した後に添加する場合と汚染現場以外から単離された分解微生物を導入する場合、さらに汚染物質をより効率よく分解するように遺伝子を組換えた微生物を添加する場合がある。

 遺伝子組換え菌については通産省から利用に関してのガイドラインが出されており、天然の微生物利用についても基本的にこのガイドラインを準用することになっている。

③ファイトレメディエーション(Phytoremediation)植物が根から水分や養分を吸収してさまざまな環境汚染物質を蓄積・分解する能力を利用し、土壌や地下水を浄化するレメディエーション法(汚染浄化・修復法)。または、根圏を形成する根粒菌や微生物(分解微生物;フェノール資化性菌などの土壌菌)などとの共同作業により浄化する方法。低濃度・広範囲に汚染されたサイトに有効と考えられている。ここでPhytoは「植物」を意味する。

 植物の体内や微生物の働きにより汚染物質が分解される場合と、植物の体内に吸収・濃縮する場合があり、吸収・濃縮される場合はその植物を刈り取ることで汚染物質の除去が出来る。重金属の場合は、汚染を取り除くだけでなく濃縮した重金属を抽出・回収することで再生利用が可能になる。

④その他:微生物壁方式:栄養塩類、酸化物質、還元物質などで活性な微生物壁(permeablereactivebarriers)を作り、地下水が通過する際に浄化される方式。微生物壁への栄養物質の常時注入や、微生物壁を厚くするなどの検討がなされている。

1.4. バイオレメディエーション技術の現状

 重金属の微生物除去については水銀と六価クロムの研究が進んでいる。水銀に関しては、有機水銀を無機水銀に加水分解し、さらに金属水銀に還元する微生物が見出されている。また六価クロムを三価に還元し、沈殿除去できる細菌も見出され、中国では排水処理に用いられている。さらに、植物の保有するカドミウム、鉛等の重金属蓄積能を活用する汚染土壌の浄化法が精力的に研究されている。このほかPCB,PCE,TCE,ダイオキシンなどの有機塩素化合物を分解する種々の微生物が分離され、河川や活性汚泥、油汚染などの浄化といった多くの技術が実用化されている一方土壌・地下水の分野においては実用例が少なく、今後の技術開発が期待されている。

 また、米国ではバイオレメディエーションの技術開発が精力的になされており、20016月に第6回バイオレメディエーション国際シンポジウムがサンディエゴで開催された。本シンポジウムは2年に1回米国で開催されるが、約30カ国1,500人が参加し、約600件の発表がなされた。

1.5. 水銀汚染除去技術

①イオン交換樹脂による除去法:強塩基性陰イオン交換樹脂によって排水などに含まれる水銀を除去するのが現在最もポピュラーな方法となっている。イオン交換法によって除去されるのは主に二価の無機水銀イオンである一方、有機水銀については化合物種によってこの方法では高い除去効率が得られないものが存在する。特にメチル水銀イオンは低濃度の場合に効果的な除去処理法とはいえないことがある。

②活性炭による除去法:活性炭は一般に界面活性のある疎水性の大きい物質をよく吸着する性質を持っている。また、活性炭はイオン化しているものよりも非解離の分子状態のものをよく吸着する。

③水銀耐性微生物による水銀除去法:従来の除去技術としては主に物理化学的な方法が採られてきている。しかし自然界には、生物にとってきわめて毒性の高い水銀化合物に対してもそれを細胞から除去し、または無毒化して生きている微生物が存在している。この微生物の水銀化合物の変換能や除去能力を活用することによって汚染された環境を浄化できると考えられる。

環境または汚染廃棄物から除去する微生物の細胞内に積極的に蓄積(バイオアキュムレーション)させることによって水銀を除去する遺伝子工学的方法についての新しい研究も開始されている。それらの研究の中でも、生物細胞が合成する無機ポリマーであるポリリン酸の重金属キレート能を活用する方法(日本化学会編、科学便覧-基礎編p646丸善1966)は注目に値する。この研究では大腸菌にポリリン酸を合成するための遺伝子(ポリリン酸気ナーゼ遺伝子=ppk遺伝子)と水銀イオンの膜輸送遺伝子を組み合わせて導入し、細胞質内でポリリン酸を大量に生産させたところ、この細菌は多量の水銀を細胞内に蓄積したにも関わらず水銀耐性となった。これは、細胞内に生産されたポリリン酸が水銀イオンをキレートして不溶化することによって毒性を低減したことによると考えられる。また、このポリリン酸生合成大腸菌は水銀だけでなくカドミウムイオンに対しても耐性になることが分かり、複数の重金属の生物蓄積法にも適用可能であることが示唆された。この生物学的水銀除去・回収する方法として水銀蓄積生物を用いる場合、蓄積後の細胞をどのようにして分離回収するかについて十分に研究しておく必要がある。しかし物理化学的な現象による従来の除去技術が生物反応に置き換えることが可能であると意味していることは重要な事実である。

これまで遺伝子改変生物の工学的利用がいずれも封じ込める利用を原則として行なわれてきたため、開放系利用のための安全性の評価と管理のための基準確立や社会的容認を必要としている。一方、自然界では水銀耐性遺伝子およびオペロンは自発転移因子であるトランスポゾンを介して細菌の種を越えて広範囲に水銀耐性の遺伝形質が水平伝播していることが明らかになってきている。このような遺伝子の水平伝播を応用して、水銀によって汚染された実際の汚染環境中で本来その環境に生息する土着の細菌に水銀除去遺伝子群を伝播させて浄化機能を発現させる、環境浄化微生物の「insitu分子育種法」という新しい技術を提案することができる。これによって微生物の開放系での利用を効果的にするだけでなく、生態系への影響の少ない新しいバイオテクノロジーを開発できる可能性が高い。