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日中協働沙漠緑化プロジェクト

  対象地

緑化ネットワークが緑化事業を行なっている村落から、長期的に協働体制の得られる土地として内蒙古自治区通遼市ホルチン左翼後旗阿古拉鎮都西(とき)村を選定した。この村は人口200人、50戸で土地面積は3000haである。ホルチン砂漠に近く、主な土地利用は居宅地、牧草地、農地(トウモロコシ)、荒地(砂丘)となっている。牧草用の農地に砂丘が広がっており、村に隣接する巨大な湖の北側で土壌の塩類化が顕著に現れている。現地でリトマス試験紙を用いてpHのチェックを行なったところ、湖は南北共に強いアルカリ性を示した。

  研究期間

20062011年の5年間

  研究組織、事業担当

NPO緑化ネットワーク:植林事業

・慶應義塾大学環境情報学部、厳網林研究室(沙漠班)

―厳網林助教授:総括・全般

―学生数名:土地生産力評価、モニタリングシステムの設計、フィールドワーク(社会調査、生態調査)など

・慶應義塾大学環境情報学部、冨田勝研究室(沙漠・土壌研究班)

―奈須野:微生物による塩類化土壌の浄化研究

―伊藤:バイオフィルムの応用研究

・武蔵工業大学、吉崎研究室

―吉崎真司教授、他学生数名:フィールド生態調査、最適緑化方法の選定など

・北京林業大学

―王教授、他学生数名:土壌・土質・水分調査、現地の緑化効果の観測・監視など

  研究目的

砂漠化した土地で農村の協力を得て継続して5年間の調査、実験、検証を通してより効果的に緑化事業が実施できるように複数の大学がそれぞれ得意分野を担当して支援する。単純に植林するだけでは植物の定着や農村の貧困そのものの解決には至らないため、社会的な効果を考慮したモニタリングを並行して行なう。直接農村の生産性を向上させるには、対象地での土地利用への需要から、塩類化によって牧草が生えなくなった湖北側周辺の土地を利用可能な状態に回復させる必要がある。現在もカヤツリグサなど塩類に強い植物が若干生えているが、牧草としては利用価値が低い。

本プロジェクトにおいて、私は植林される植物が定着しやすい土壌作りを研究目的とする。そこで、塩類土壌中の微生物種の中から塩類(主にナトリウムイオン)濃度とpHをコントロールできる機能を持つものを探索する。また、植林対象となる植物の生育を助けて現地にも適応可能な共生微生物種の選定なども考えている。

実験対象物

   湖周辺の土壌:どんな微生物種が全体で存在するのか。その中でも休眠状態のもの、優先種、劣勢ではあるが活性を持つものなどの比率を求める。どの微生物がどう優先種になると土壌の状態が改善したと判断できるのか検証する。また、土壌の肥沃化に重要である有機物の分解能力が高い種を同時に探索する。もし土着の種に存在しなければ外来種で土壌条件に適応できる種を検討する。

   湖の水(北側湖岸、中心、対岸)湖自体は完全にアルカリ性かつ塩濃度が高い。この中で酸性化物質を体外に分泌してpHを調節する機能を持つ種がいないか探す。存在した場合、同じ種が土壌中に存在するかを調査する。本来適応しにくい種(耐塩菌や低度好塩菌、非好塩菌など)で体内に大量の塩類、特にナトリウムイオンを吸収して貯蓄する、または細胞壁表面に吸着して生育が安定する微生物を探索する。

   湖周辺に自生している植物:植物中に含まれる塩類を調べる。植物根周辺土壌の塩濃度・pH・微生物種を調べる。農学分野では除塩のための植物を植え、塩を吸収した後で回収し、再び植えることを数年繰り返すことで確実に土壌中の塩類を減らせることが実証されていることから、ある程度その方法で塩類を減らしつつ土壌微生物の遷移をモニタリングする。

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最終更新:2006年10月18日 04:24