ザイード マッサーニ

最終更新:

匿名ユーザー

- view
だれでも歓迎! 編集

ザイード マッサーニ


ブルーサンズを設立した男

ザイード マッサーニは、サンティアゴと共同で、ブルーサンズを設立したベテランの傭兵である。

ザイードは、カスミ同様にDLCのキャラクターで、日本語PS3版には彼が付いてくるが、Xbox360版ではない。
彼がいれば、ヴィド サンティアゴを追跡するミッションもできるし、DLCシタデルでは、カスミ同様にコミカルな
場面が豊富にある。なかなか冗談のわかる男で楽しい。

だが、もうザイード マッサーニの声を、同じ声優が演じることはできない。

ザイードの声優だった、ロビン サックス氏は、Mass Effect3「DLCシタデル」の収録後、
2013年2月1日、カリフォルニア州で、心臓発作の為に亡くなった。不意の事故だったといわれていて、特に病気
ではなかった。

1951年生まれの彼は、誕生日の4日前、61歳でこの世を去った。

ロビン サックス氏にとって、DLCシタデルの収録が最後の仕事となった。その前の仕事は、バイオハザードの
仕事をしていて、その前はMass Effect2のザイードの声の収録。
そのもっと前は、Dragon Age Originsの男性グレイ ウォーデンの声も演じていて、BioWareには馴染みが深い。

ロビン サックスのセクシーな声は、多くの女性ファンを魅了してきた。
イギリス ロンドン生まれの彼は、ザイードに魂を与えた声優だったが、もし彼が生きていれば、
次回のMass Effect4にも、他の役で出演できたかもしれなかったので、とても残念だ。

さて、ザイードについても、語るべきところは多いが、ほぼ、このことに関連している。それはブルーサンズ。

ブルーサンズとは、「青い太陽」という意味だが、この名前は、あるTVドラマに出てくる企業の名前にちなんだ、
といわれている。また、スター・ウォーズに出てくる「黒い太陽」からもヒントを得ているとか。

このブルーサンズは、ザイードとヴィド サンティアゴが共同で設立した、民間警備会社の名前になった。
だが、人間の警備兵を集めたはずのブルーサンズは、いつしかバタリアン警備兵へと取って代わり、やがて
ザイードと、サンティアゴは対立する。

コミック「ファウンデーション11」では、ブルーサンズを追い出されたザイードが、傭兵として名誉挽回する
の為に、シャドウブローカーの依頼を受ける任務について紹介されている。




危険な香

サーベラスのラザラス ステーション、ラサ(マヤ ブルックス)の寝室。

夜、仕事を終えて、ラサはジェイコブと一緒にトレーニングをしていた。
それも、2人はベッドの上で、熱く激しい運動で汗を流す。

今夜のラサは、とても燃えていた。
ジェイコブも、前より情熱的になり、ラサに優しくしていた。

ジェイコブは、ラサを悦ばせるコツをもう会得していたようで、ラサはそのジェイコブの
巧みな腕によって、浮き上がるような頂点に何度も達していた。

ジェイコブの胸に倒れこんだラサ。

ラサ「ジェイコブ、あなたってこっちのスペシャリストね」
ジェイコブ「エージェントとして必要なことだよ、当然さ」

ラサ「エージェントってこっちの訓練も受けるの?」
ジェイコブ「本気にしないでくれ、冗談さ、冗談」

2人は笑って、中休みに入った。

ラサ「ジェイコブ…。」
ジェイコブ「ん? どうした?」

ラサ「あの…。何か聞こえませんか?」
ジェイコブ「ん? あ…本当だ」

ジェイコブは通信機を取って話をする。「ミランダか、どうした?」
ミランダ「ジェイコブ、お取り込み中申し訳ないけど、すぐ来てちょうだい」

ジェイコブ「了解、すぐ行きます」
ラサ「ミランダから?」

ジェイコブ「すまない、イルーシヴマンから通信のようだ。君はまだここにいていい。
もし何かあれば呼ぶから」

ラサ「はい、了解です」

ジェイコブは、すぐに服を着て、急いでミランダの元に向かう。

イルーシヴマンはミランダとジェイコブを呼んで、ホログラム通信をしている。

ラサは、ベッドから降りてシャワールームへ行くと、汗を流した。

タオルで体を拭くラサ。今、彼女の胸の内には、ある計画が進みつつあった。

イルーシヴマン「ミランダ、特攻任務のファイルは、残りはあと何人だ?」

ミランダ「ザイード マッサーニと、セイン クリオスの2人です。」

イルーシヴマン「よろしい。では、ジェイコブ、ラサの後を頼んだ。」

ジェイコブ「了解」

通信を終えると、2人は持ち場に戻っていく。

ミランダ「ねえジェイコブ、ラサの後を頼むって何?」

ジェイコブ「彼女は私に任せたってことさ。ただそれだけだ」
彼は、最後のファイルが揃えば、ラサの進退は自分に任せたという意味だと察した。

ジェイコブは、ミランダとは別れ、ラサの部屋に向かった。

ラサは、既にユニフォームに着替えていて、ソファーに腰掛けて栄養ドリンクを飲んでいた。

ジェイコブ「ラサ、ファイルの整理はあとどのくらいかかりそうかい?」
ラサ「うーん、あと4、5日もあれば。」

ジェイコブ「わかった。ファイルの整理が終わったら、話があるんだ」
ラサ「話?」

ジェイコブ「またその時話すよ。今はいい」
ラサ「あの…。ジェイコブ?」

部屋を出ようとしたジェイコブは、ラサを振り返る。
ジェイコブ「何だ? ラサ…。」

ラサ「あなたは、サーベラスにずっと残るつもり?」

ジェイコブ「そうだな…。そんなことは考えもしなかった。連合に戻るつもりはもうないよ。
それに、サーベラスを抜けるつもりも、今はない。今はいい仕事をしていると思っているしな」

ラサ「そうなんだ。じゃ、私とは遊びってことよね?」
ジェイコブ「遊び? 君はそう思っているかもしれないが…。僕はそんなつもりはないよ」

ラサ「それ…。本当なの? どうしよう…。」と、彼女は少し驚いて慌てた。

ジェイコブ「僕と付き合うのは嫌なのかい?」
ラサの顔色を見るジェイコブ。彼も、ラサの気持ちが気になになる。

ラサ「ジェイコブのことは好きなんだけど…。その…。」

そこにまた通信が入る。

ジェイコブは「すまないラサ、また来る」と言って立ち去った。
彼は、シェパード少佐の回復が近いので最近は忙しい。

ラサは、ジェイコブの気持ちがどれくらい本当のものなのか計りかねた。

自分は、ある計画を実行してサーベラスを去ろうと思っているのに、ジェイコブの気持ちが
気になって仕方がない。

ラサは眠れないので、残りのファイルを整理しようと思い、コンソールの前に戻る。

明日の朝、提出予定のファイル「ザイード マッサーニ」の報告書の見直しをすることにした。
もう既に、内容の整理はついているのだが、また読み返して疲れたら眠れると思い読み直す。

ラサは、栄養ドリンク片手に画面に向かう。

まだ、濡れていた髪の毛からは、水滴がテーブルにぽた、ぽたっと落ちる。
ラサには、その水滴の落ちる音が、まるで秒読みに聞こえてきた。サーベラスを去る秒読みのように…。

もう、今夜のようなベッドでのトレーニングは、してもらえないかもしれない、思うと、
とても残念に思えてくるラサだった。

ラサは、報告書に目を向けると、なぜか、頬に涙がこぼれ落ちる…。


ブルーサンズとサンティアゴ

2160年、ブルーサンズは、ザイードとヴィド サンティアゴの2人によって設立された、民間警備会社である。

このブルーサンズの目的は、クライアントから依頼された、軍事的な作戦行動を遂行することであり、
その目的達成には多くの経費を必要とし、クライアントには多額な費用を請求する。

ブルーサンズ設立当初、サンティアゴは財務管理を担当し、ザイードは傭兵部隊を指揮していた。

ブルーサンズは、2165年、連合に関する依頼を受けた。
それは、バタリアンの投資家である、エダン ハダ博士による依頼だった。

博士は、連合のAI研究所と、惑星キャマラにあるドータン製造工場を破壊するよう要請した。また、
カーリー サンダースの誘拐もブルーサンズは引き受け、彼女を拉致してエレメントゼロ精製所に運んだ。
だが、博士はサレン アルティリウスに殺されてしまい、その代金は博士の会社が払うことになった。

財務管理をしていたサンティアゴは、今回の依頼報酬が100万を越す多額の支払いになった為、その後ますます
バタリアンと通じるようになった。

そのせいで、2168年のスキリアン強襲の仕事をブルーサンズが請け負うことになった。
これが切っ掛けとなって、連合にとってブルーサンズは、依頼の敵なら誰でも攻撃するという、実に節操の
ない軍事組織として、厄介な存在となった。


ザイードとの対立

サンティアゴは、財務管理だけでなく、ブルーサンズを占有しようとしていた。
彼は、クライアントだけでなく、ブルーサンズの傭兵までも、バタリアンを用いることを選択した。

最近は、連合を敵にすることが多くなり、元々人間嫌いのバタリアンを用いることは理に適っていた。

ザイードは、サンティアゴに文句を言った。クライアントから多額の支払いがあるのに、
費用の安いバタリアンを使うのは、ただのケチである、と。

だが、サンティアゴは、クライアントが喜ぶ選択をするのは間違っていないといって、
ザイードの要求を却下し、バタリアンの傭兵を増やしていった。

やがてザイードは、サンティアゴの計略にはまり、ブルーサンズから無理やり手を引かされることになる。
それと同時に、大怪我を負ったザイード。

ザイードは、ブルーサンズから離れると家に戻り、しばらく怪我の治療に専念することにした。

サンティアゴは、傭兵部隊の指揮官だったザイードの後釜を新しく任命することにした。

人間ではなく、バタリアンのソレム ダルサラを指揮官に任命し、彼の戦略と手腕に期待した。


ザイードの復活

オメガの幸運

ザイードは、シタデルにある病院で手当を受け、完治するまで病院で悶々と過ごした。

何ヶ月かして、やがて彼は、次なる戦いをする準備をする必要があると思い、再び傭兵として
復帰できるかどうか、イリウムなどで情報収集にあたる。

ある時、ザイードは懐かしいブルーサンズの仲間に会う為、オメガに出向いた。

だが、仲間に会う前に、人間達の話し声からブルーサンズの新たなリーダーは、バタリアン
だと知らされたザイードは、嫌になってバーに行って気分を変えようとした。


アリア ティロークは、ザイードがブルーサンズから外れているという情報は既に部下から
聞いて知っていた。

まだこの時、ブルーサンズはアリアの傘下ではなかったが、ブルーサンズを率いている
ヴィド サンティアゴをいずれ取り除いて、組織をその手の内に収めようと目論んでいた。

アリアは、今後ブルーサンズが機能する為に、ザイードの力が必要になるかもしれないと思い、
少し手助けをしてやることにした。

ブルーサンズ時代のザイードのかつての仲間の何人かに、アリアは部下に連絡を取らせた。
そして、ザイードにまた会えるよう取り計らう。

また、シャドウブローカーのエージェントが、ザイードに依頼を持ち込もうとしている情報を
つかんだアリアは、その仲介役を引き受けた。

アリアは、自らザイードをアフターライフに呼んだ。

アリア「ザイード…。会えて嬉しいぞ。お前に耳寄りの話がある。まあ、リラックスして聞いてくれ」

ザイード「まさか、あんたから会おうと連絡があるとは思いもよらなかったぜ。世の中は驚きに満ちている。
あんたもな…。」と、彼はソファーに座り、アリアの顔色を伺う

ザイード「ところで、耳寄りな情報とは何だ? どうせあんたに利益のある話なんだろう? まさか、
ここオメガにのさばる害虫を駆除しろってんじゃないだろうな…。俺はブルーサンズの指揮官だった
んだぜ? それに見合う仕事なら…是非歓迎したいところだがな…。」と、彼はアリア相手に、一切下手
にでないつもりだった。

アリアは、ザイードを横目で見ながら「ザイード、お前にオメガの掃除を頼むくらいなら、
エクリプスやブロッドパックを使っている。アークエンジェルとかいう、正義の独善者もこの
オメガにはいるようだがな、お前にはもっといい仕事の話を聞かせてやろうと思う」

ザイード「ほう? それはどんな仕事だ? 聞かせてもらおう」
そばにいた部下のバタリアンは、ザイードの態度が気に入らない様子で、彼を睨んでいた。

ザイードは、そのバタリアンに手を振ると、彼はアリアによって下がらされた。

アリア「ブルーサンズ、今は、まだヴィド サンティアゴの手にあるようだが、私は奴を取り除いて
縄をかけようと思っている。お前が次の仕事をすれば、その計画がより進むことになる。だから
手を貸してくれ、ザイード」

ザイード「ブルーサンズか。今はあそこに戻る気はないが、俺にどうしろっていうんだ?」

アリア「実は、お前にある依頼主から仕事が来ている。これだ。仕事内容はすべてこれにある。
仕事に必要な仲間も、艦も、目的地も、倒すべき相手もな、それに多額の報酬のこともだ」

アリアは、笑みを浮かべながら、パッドをザイードに渡す。

ザイードは、そのパッドを見ると、目を大きく見開いてじっと見た。
「これはまた、変わった仕事内容だな。宇宙での仕事か。いいだろう、謎めいた内容だが、十分
俺に相応しい仕事だ。」と、彼は仕事内容に満足した様子だった。

アリアは、ザイードに飲み物を持たせた。
ザイード「これはありがたい。うむ…。美味い。こんな美味い酒は久しぶりだ」

アリア「お前の為に特別に取り寄せた。」
ザイード「アリア、ここまでしてくれて、あんたには報酬の何割を払えばいいんだ?」

アリア「お前は、その仕事を全うするだけでいい。それが私への報酬だ。」
ザイード「分かった。そう言うのなら、俺はこの仕事を必ずやり遂げてみせる」

アリア「ブルーサンズのことは気するな。今後は私が奴らを操る」

ザイードは、ブルーサンズがそう簡単にアリアの手に渡るとは思っていなかったが、これだけ
自信満々に言うのだから、それだけの計算と計画が確かなものだろうとは思った。

ヴィド サンティアゴが指揮官に任命したソレム ダルサラは、そのアリアの計画に加担した。
その結果、後にザイードがシェパード少佐と共にサンティアゴの命を奪う、ということにつながる。

今年、2185年中には、ブルーサンズはアリアの手に落ちることになるのである。

ザイード「ふふふ。分かったよアリア。この事は一生恩に切る。本当に感謝する。では早速イリウムに
向かうとするよ。また会おう」

アリアは、部下のバタリアンにザイードと送らせた。

アリア「ふふふ…。お手並み拝見といこうか…。」

1000歳を超えるという、オメガの支配者アリアは、人を使うのがとても上手だった。
これまで生き延びてきた智恵なのかもしれない。


ザイードは、アリアから貴重な情報提供と支援を得て、依頼主のいるイリウムへと向かった。

イリウムの情報ブローカー

イリウムのバー

ザイードは、依頼主の情報ブローカーが来るまで飲んでいた。
そして、彼の相手をしているのが、メイトリアーク アシータである。

アシータ「あんた、その酒は強いんだよ? ほどほどにしないと、倒れちまうよ?」

ザイード「何、いいんだ。俺の体は、もうイカれちまってるからな。銃弾を受け過ぎたせいで、
俺の肝臓はもう機械になっちまった。さあ、もう1杯くれ。」

クローガンの父親を持つアシータは、やや呆れた表情で彼を見ていたが、彼女は、ザイードが
待ち合わせしているという人物にも興味があったので、できるだけ彼を引きとめようとしていた。

ザイード「ところで、遅いなぁ。また来ねぇ」と、ぼやいていると、一人のヴォルスが、
彼の傍に立った。

アシータは、そのヴォルスを見ると「ん? お前…どうしたんだい? あたしに何か用事かい?」
と、そのヴォルスにそう聞いた。彼女は、馴染みのヴォルスが、ザイードの相手とは思わなかった
からそう聞いた。

そのヴォルスがザイードが待っていたという、シャドウブローカーのエージェントのクリン ラヴォン。
実は、この名前はエージェント用の偽名だが、彼はその名前で呼ばれていた。

(Mass Effect2・DLCシャドウブローカー船・アーカイブズ映像に関連映像 アシータとヴォルス)

クリン ラヴォン「アシータ、今日はお前に用があるのではない。その男に用があってきた」

ザイードは振り向いた。まさか、こんな小柄なヴォルスがエージェントだとは気づかなかったので、
つい酒をこぼしそうになった。

アシータ「じゃあ、ゆっくりやんな。もし話が秘密なら、そっちのテーブルを使うといい」
と、隅のテーブルを指差した。

だが、少し離れたテーブルで、酒を飲みながら、じっと2人を見つめる一人のアサリがいた。

ザイードとクリン ラヴォンは、アシータのいうテーブルに座って話し始めた。アサリには気づかずに。

ザイード「仕事の話をしよう。随分危険な仕事のようだが、本気でこれを俺達にやらせようってのか?」

クリン ラヴォン「そうだ。アリアから聞いたが、お前ならやれると聞いたからだ。何か問題はあるのか?」

ザイード「いや、できるさ。仲間がいるからな。これから会う俺の仕事仲間は、3人とも確かな腕だ。
保証する。だが、気になったのは、なぜトゥーリアンがトゥーリアンを? 理由を知りたいね」

クリン ラヴォン「依頼主は、トゥーリアン政府に関わりのある者だが、それ以上はここでは言えない。」

ザイード「ああ、そうだな。かなり危ない話だ。場合によっちゃ、シタデル評議会が黙っていないかも
しれない。俺の首も危ないことになりはしねぇか?」

彼は酒を飲む手を止めて、グラスを置いた。

クリン ラヴォン「アリアから聞いてないか? これはお前へのプレゼントだ。成功すれば、お前は英雄だ。
その辺は間違いない」

ザイード「英雄ね…。つまり、これは評議会にとっていい任務なんだな。了解した。必ずやり遂げてみせるさ」
と、またグラスに手をかけ、酒を飲み始めた。

クリン ラヴォン「報酬のことだが、シタデルにいる金融アドバイザー、バルラヴォンを訪ねるがいい。彼が
今回の報酬が振り込まれる口座を紹介してくれる。」

ザイード「了解した。必ず生きて戻ってきて、報酬を受け取ってみせるさ、任せておけ」
と、彼は笑みを浮かべ、立ち去るヴォルスを見送った。


ザイードの元恋人

クリン ラヴォンはそれ以上言わずに立ち去ったが、クリン ラヴォンが座っていた席にいきなり座った
アサリがいた。ザイードは彼女を見て、やや驚いたが、すぐに分かった。

ザイード「やあ、トリスターナ。早かったな。仕事の前に1杯どうだ?」と、彼は元恋人に酒を注ごうとする。
トリスターナ「お酒なら、あなた達の話が終わるまでの間にたっぷり飲ませてもらったわ」

ザイード「すでに出来上がっちまってたか。これは1本取られたな。」と、彼は機嫌がいい。
トリスターナ「ふふ、ところで、ザイード。あなたと久しぶりに会えて嬉しいわ。今回は魅力的なお誘いを
ありがと」と、彼の頬にキスをした。

ザイード「普段は冷たい反応しかしないお前が…。キスなんて珍しいな。心変わりでもしたのか?」
トリスターナ「あら、私はジャスティカよ。法を守るのが私の使命なの。今回はそれができる…。」
と彼女は言って、笑みを浮かべる。

ザイード「やっぱりな。お前は友情を知らない冷たいジャスティカだ。他のジャスティカも同様なのか?」
トリスターナ「知らないわよ。このイリウムに一人来たって話は聞いたけど、会ったことないわ」

ザイード「いや、冷たいジャスティカはやっぱりお前だけだよ。そのジャスティカは、きっと話の
わかるやつだよ。はははは」と笑いながらテーブルを立つ。

彼は、将来そのジャスティカに近い将来会うことになろうとは、この時思ってもいなかった。
また、そのジャスティカに自分が言い寄ろうとすることも。

トリスターナ「私もそのジャスティカに会ってみたいものだわ。冷たいのは私だけじゃないって分かるから」
ザイード「いや、絶対違う。絶対にな。ははは」

2人は、席を立ち、イリウムの港へと向かう。

メイトリアーク アシータは、バーを去る2人の姿を見て、あのうちどちらかは戻ってこない、そう予感した。

港へ向かう途中、2人は話をしながら歩いた。

ザイードとトリスターナは、かつて恋人同士で、共にブルーサンズの仲間として戦ったこともあったが、
トリスターナはジャスティカであり、石のように冷たい女だと分かると、ザイードはトリスターナから離れた。

ブルーサンズの顧客は、善意の人助けをしてもらいたいのではなく、敵を排除してもらいたいのである。
だが、ジャスティカは、自分の法に照らし合わせて悪だと判断すると、それを顧客であっても排除してしまう。

ザイード「お前は、すぐに罪人を見つけると殺しちまう癖がある。それだから俺がブルーサンズを追われる原因
にもなったんだよ」

トリスターナ「ジャスティカの法は絶対なの。犯罪人を放っておくことは、私には許されないの。分かるでしょ?」
ザイード「だからって、顧客を皆殺しにすることわねぇだろ? おかげであんときゃ、報酬がフイになっちまった」

トリスターナ「あたしのガールフレンドを紹介してあげたでしょ? あれで勘弁しなさい」
ザイード「お前には負けたよ。さあ着いた。懐かしい仲間に会おう」

ザイードとトリスターナは、港に先に着いた。あとの2人を待つ。


ジェイスとホライン


港には、ステルス艦が停泊していた。それを見上げる2人。

この艦は、依頼主が用意した艦で、トゥーリアンのステルス艦である。
元々使い捨ての小型艦として用意されていたが、高価な艦だった。

この艦はファーストコンタクト戦争で使われていたが、地球人のコロニー偵察が主な任務だったのが、
ハナー艦隊のクルーのドレルによってハナーアイ(ハナーと会話する時に使うコンタクトレンズ)からこの艦の
遮蔽を見破られ、その時からトゥーリアン艦の間以外では使われなくなった旧型のステルス艦である。
また、2186年のリーパー戦争開始時にこのステルス艦に使われたが、リーパーのセンサーから隠れることは出来ず、
再び使われなくなった。

ザイード「この艦か、悪くない。このステルス艦を乗り捨てるのは、ちょっともったいねぇな」
捨てる艦になるのなら、後でもらいたいくらいだったが、それは出来なかった。

トリスターナは、ここで待ち合わせをしていた、他の2人を探した。
そして、2人を見つけて連れてくる。

一人は、人間のフリーランサーの傭兵で、ジェイス レインという男。ザイードを尊敬する忠実なる友だ。

彼は、自分の愛用する武器、M-8 アベンジャーに「ベッシー」という名前をつけていた。
それは、ザイードが自分のライフルに「ジェシー」と名づけたことを真似してのことだった。

差し詰め、M-560 Hydraあたりは「フナッシー」とでも言うのだろうか…。

もう一人は、サラリアンのケンドウ ホライン。彼はテックスペシャリストで、彼も仕事の知らせを聞いて
離れた星系からすぐにここに飛んできた。彼も、ザイードにとって力になる存在で、今回の仕事では活躍が
期待できた。

ザイード、トリスターナ、ジェイス、ホラインの4人は揃うと、それぞれ再開の握手を交わし、ステルス艦に
乗り込んだ。


危険な任務の始まり

このステルス艦は小型なので、区画は4つしかないが、そのうちの1つ、ブリッジで、ザイード達は作戦会議を
始めていた。

今回の作戦は、とても短時間に遂行される必要があったが、入念な打ち合わせをして、細かいミスがないように
それぞれ話し合った。

ジェイス「ところで、どうしてトゥーリアンがトゥーリアンの艦を破壊するんだ? 意味が分からない」

ザイード「それはな、お前が自分のライフルにベッシーって名づけるくらいの意味があるのさ」

ホライン「その例えは答えになってない」

トリスターナ「ふふふ。そうね。ジャスティカの私から言わせれば、きっとこれは、トゥーリアン政府内部で
起こっている内紛の1つね。権力争いをしている連中が、優位に立つために起こそうとしているとか」

ザイード「詮索はそのくらいにして、皆、用意はいいな。もうとっくにバリカン号は惑星インペラに
着いてる頃だ」

ザイード「アピエン クレストにコースをセットし、発進」
ホライン「了解、コースをセット、発進」

ザイード達の乗ったステルス艦は、トゥーリアンの星系であるアピエン クレスト星系に向かった。


バリカン号への危険なジャンプ

アピエン クレスト星系に入ったステルス艦は、進路をさらにトリビア恒星系に向けて飛んだ。
さらに、惑星インペラに向かう。


惑星インペラ軌道上に着いた、ザイード達の乗ったステルス艦。

このステルス艦から少し離れたところに、トゥーリアンのフリゲート艦バリカン号が停泊している。
その周辺には、小さな軌道小惑星が幾つか浮かんでいた。

惑星インペラは、トゥーリアンの長い歴史がある惑星で、かつての帝国が栄えていた時代の実力者である、
トゥーリアンの「アトリン インペラ」にちなんで名づけられた。

かつての帝国は、そのヒエラルキー階級社会の必然的な崩壊によって、その歴史の幕を閉じることになったが、
現在はトゥーリアンの防衛軍基地などに使われている。

そのトゥーリアン防衛軍基地には、トゥーリアン防衛軍とトゥーリアン政府の高官がいて、
彼らはザイードらの到着をまったく補足できないでいた。

これから、ザイード、トリスターナ、ジェイス、ホラインの4人は、これからとても危険な宇宙遊泳を
経験しようとしていた。

全員、宇宙服を着用していて、数時間の酸素ボンベを用意し、それぞれ最小限の武器と通信機、
グレネード、その他を準備し、出発の準備が完了した。

ザイード「さあ、楽しい旅が始まるぜ、皆、くれぐれも違う方向に飛ぶなよ」
3人は「了解」と返事をする。

これから4人は、トゥーリアンのフリゲート艦・バリカン号に飛び移るのである。
もし上手にバリカン号に移れなければ、宇宙に放り出されて、救助されるまで漂うことになる。

ザイード達4人は、エアロックに待機していた。
ザイードが、時計を見ながら作戦開始時刻を待つ。

「0:00」

ザイード「作戦開始だ」

ザイード、トリスターナ、ジェイス、ホラインの4人は、エアロックを一人ずつ出て、バリカン号に
向かって宇宙遊泳を敢行した。

4人は、ステルス艦を蹴ることによって、速度をつけ、バリカン号へ向かっていく。
ジェイスの少し方向が逸れようとしていたので、ザイードが手を引っ張って補正する。

およそ10秒ほどで、バリカン号の船体に到着。


破壊

バリカン号の内部のエアロック。

依頼主の内通者である、トゥーリアンのポロニス司令官は、エアロック前で待っていた。

彼は、時計を見て「0:00」になったのを確認すると、エアロックを開けて、船体にへばりついていた
4人を艦に誘導した。

ポロニス司令官「ようこそ、フリゲート艦バリカン号へ」と、ザイード達と挨拶。

ザイード「あまりゆっくりしている時間はないようだな」

ポロニス司令官「そうだ。作戦通り迅速に頼む。もう既にこの艦は、軌道小惑星にぶつかるようコースが固定され
ている。あと5分だ」

トリスターナ「ではいきましょう」
ジェイス「了解」
ホライン「任せておけ」
ザイード「腕が鳴るな」

ポロニス司令官は、通路を真っ直ぐ行ってブリッジへ向かうと、ガルコ艦長が彼を振り向いてすぐに質問する。

ガルコ艦長「ポロニス司令官、艦が移動しているのはなぜだ? だれも命令していないと思うが」

ポロニス司令官「それはだな…。これのせいだ」と言うと、彼は焼夷弾を床に投げつけ、その爆発音と共に
あたり一面が爆発の光に包まれた。

周囲にいたトゥーリアンの兵士が驚いて振り返る。そして自動的に火災警報が鳴る。

ガルコ艦長は、何が起こったの分からないまま、呆然としている。

銃を構えたポロニス司令官は、後方の通路に合図する。

まず、ジェイスがブリッジに突入してきて、トゥーリアン兵士と戦闘になる。

傭兵の姿を見てやっと気づいたガルコ艦長は「ポロニス司令官!何の真似だ!」と叫ぶ。

そして彼は、飛び交う銃弾を避けながら、ポロニス司令官の方に向かうが、司令官は銃を向けている。
「なぜこんなことをする!司令官…。訳を聞かせてもらおう! これは…交戦派の差し金なのか?!」

ポロニス司令官「私は交戦派でもなければ、和平派でもない。ガルコ艦長、これは裏切りではない、叛乱だよ。
正しき叛乱だ」と彼はそう言ってコンソールのボタンを押すと、バリカン号は、軌道小惑星に向かって勢いよく
衝突する。

ザイード、ホライン、トリスターナがブリッジに入った瞬間、バリカン号は衝撃で半壊し、艦の右舷側にいた
数十人のトゥーリアン兵士が船外に飛ばされた。

ガルコ艦長「機関部が…コアが危ない…。このままでは艦は惑星に落ちる…。」
彼は急いでブリッジから出ようとしたが、爆発で艦の左舷部が吹き飛んだ。

これで、140人いたトゥーリアン兵士の大半を失う。機関部に、2人のトゥーリアンがいるのみとなった。

さらにポロニス司令官は、衝撃波のせいで、宇宙へ放り出された。
彼は、宇宙服を着た状態で宇宙をさ迷っていたが、予定通り、彼の仲間のフリゲート艦が救助に来る。

フリゲート艦のクルーは、防衛基地の司令官に傭兵部隊からの攻撃を報告し、ザイードの乗ってきたステルス艦を
フリゲート艦に回収してトューリアンが関与している痕跡を消した。

ポロニス司令官は、今回の依頼主の内通者だったが、この後、さらに新たな叛乱を起こす為に暗躍することになる。
彼らの目的は、トゥーリアンにおける無能な首脳部を引き摺り下ろすことにあったが、この叛乱計画は
後にシェパード少佐の仕事に影響してくる。

ともあれ、ガルコ艦長が傭兵部隊によって暗殺される、というのがポロニス司令官のシナリオだった。


ザイード達は、宇宙服のせいで、空気がなくなっても平気だったが、ガルコ艦長は、まだ原型を留めている
ブリッジを離れて慌ててロッカーに行き、宇宙服を着る。その間にザイード達はブリッジを占拠した。

ザイード「ホライン、まずセキュリティを解除しろ、そして機関停止。このまま艦を惑星へ落とす。」
ホライン「了解!」

ザイード「トリスターナ、他の敵が来たら撃て」
トリスターナ「了解」と、彼女はスナイパーライフルを構えて、周囲を見回す。

ザイード「ジェイス、お前は脱出ポッドに向かえ!」
ジェイス「了解!」彼はすぐブリッジのすぐ下層にある脱出ポッドへと梯子を下って降りる。

ホライン「機関停止。艦は軌道より落下開始」
彼は、スラスターを微調整して、惑星に向けて艦に勢いをつけた。バリカン号は、惑星インペラの引力に
引かれて徐々に落下を始める。

ザイード「さあ、逃げるぞ! 脱出ポッドへ向かえ!」

ザイード、ホライン、トリスターナは梯子を順番に降りて脱出ポッドへ向かうが、脱出ポッドは2つしか
残っていなかった。


脱出


ガルコ艦長は、コンソールを操作して救難信号を出す。
すると、惑星インペラにあるトゥーリアン防衛軍基地にその救難信号がすぐ届く。

トゥーリアン兵士「こちら防衛軍基地、バリカン号応答せよ!」
何度も呼びかけたが、返事がない。

トゥーリアン司令官「バリカン号に何があったというのだ、原因を調べろ」

トゥーリアン兵士「付近にいるフリゲート艦が救助に向かっているそうです。既にポロニス司令官を救助した
と報告が入っています。」

トゥーリアン兵士「司令官、バリカン号が何者かによって破壊されたとのことです。現在、艦は惑星インペラに
向かって落下中とのこと」

ポロニス司令官は、謎の傭兵部隊によってバリカン号が破壊されたと報告する。
これは、トゥーリアン防衛軍にとって重大な意味を持つことになった。

ガルコ艦長が攻撃されて死亡した場合、軍部の和平派はさらにその地位を失うだろう。
これによって交戦派のプライマークに交代せざるを得ない。

トゥーリアン司令官「何てことだ!」彼は、この事態に陰謀の匂いを嗅ぎ取っていた。

迷っている暇などない彼は、すぐにジャベリン ミサイルの準備を始めるよう、命令を出した。

そして、直ちにパラヴェンの防衛軍本部に通信を送り、この事態を報告した。


バリカン号は落下中で、艦ががたがたを激しく揺らぎ、隔壁がはがれて飛んでいく。
ザイード、ホライン、トリスターナは脱出ポッドに乗ろうとしていたが、あまり時間はない。

ザイード「ホライン! 脱出ポッドに乗れ! 急げ!」
ホライン「…。了解!」

彼は、一瞬ザイードを振り返ったが、すぐにポッドに入っていた。

ザイードとトリスターナは、1つの脱出ポッドを見て、お互い顔を見合わせていた。

トリスターナ「ザイード、乗ったらどう?」
ザイード「トリスターナ、お前はどうする? これに2人は乗れない」

トリスターナ「わたしはジャスティカよ、あなたは私に命令できない」
ザイード「うるさい、チームの司令官はおれだ。言うことを聞け」

トリスターナ「いいえ、その前に実はね、ザイード。ここで言っておきたいことがあるの」
と言った瞬間、残っていたガルコ艦長が、壊れた艦の間から、銃を向けて撃ってきた。

ガルコ艦長「お前達、逃がさんぞ!」

トリスターナ「ち、私達とやりあう気なの?!」と、彼女はスナイパーライフルで彼を狙おうとするが、
バリカン号が激しく揺れるために、狙いを固定できない。

ガルコ艦長は、艦の隔壁につかまっていたが、もうバリカン号の基本構造も壊れそうになってきた。
機関部は炎を上げて燃え盛り、時折爆発音を響かせる。

大気圏まで、あと1分もない。


地上の防衛軍基地では、ジャベリン ミサイルの準備が整った。

トゥーリアン司令官は、まだ発射の命令は出していないが、バリカン号が大気圏に突入したら撃つつもりでいた。

バリカン号は激しく揺れながら落下していくが、もう崩壊寸前だった。

トリスターナ「ザイード! 私は、ヴィド サンティアゴの下で働いていたの。あなたとベッドにいたときもね!」
ザイード「何?! お前正気で言っているのか!」

トリスターナ「そうよ、今なら言える。あなたをずっと騙していてごめんなさい。あなたをブルーサンズから
追い出す工作をしたのも私、私なのよ!」

ザイード「なぜ今頃になって! そんなたわ言を!」と、彼はトリスターナにライフルを向けた。

トリスターナ「撃ちなさいよ! さあ!」と、彼女もスナイパーライフルをザイードに向けていた。

ザイードからは、石のように冷たい女だと言われていたが、ここでは違った。熱く激しい彼女の気持ちが
この時はザイードにも伝わってきた。

ザイード「今さら謝っても遅い! トリスターナ!」彼は叫ぶが、ライフルの引き金には指は掛けられない。

ガルコ艦長が2人に向けて銃を撃とうとすると、トリスターナが気づいてガルコ艦長を撃つ。

頭を撃ち抜かれたガルコ艦長は、バリカン号から放り出されて、大気圏の摩擦熱に焼かれていく。

ザイードは、さすがに元恋人を撃つ勇気はなかったので、そのまま脱出ポッドに向かうと、
トリスターナも脱出ポッドに乗ろう近寄ってきた。

ザイードは「あばよ」と言って隔壁に手をやり、それを押すと、トリスターナは隔壁に押されて、
バリカン号から放り出された。彼女もやがて大気圏の摩擦熱に焼かれていく。

ザイード「あいつは、自分の法で自分を裁けなかったから、俺に…。」と、彼は悲しい顔をしたまま、
脱出ポッドへと向かい、乗り込んで、急ぎバリカン号を離れた。

地上の防衛軍基地では、トゥーリアン司令官が、ついにジャベリン ミサイルを発射させた。

殆ど瓦礫と化したフリゲート艦 バリカン号は、やがてジャベリン ミサイルに撃ち落されて、その残骸が
大気圏で燃えながら落下していく。

ザイードの乗った脱出ポッドは、摩擦熱で赤くなりながら地上に落下していった。

地上では、ジェイスと、ホラインが待っていた。

待機していたトゥーリアン兵士が脱出ポッドを確認すると、シャトルで3人を迎えにいく。


任務を終えて

危険な作戦から無事に生還したザイード、ジェイス、ホラインの3人は、ポロニス司令官のフリゲート艦によって、
イリウムまで送ってもらった。

港。

ポロニス司令官「おかげで作戦は無事に成功したよ。礼を言う」
ザイードと握手する。

ザイード「あんたもよく無事に逃げられたな。あの状況から」

ポロニス司令官「何、さっきの艦が待っていたのだよ。すべて計画通りだったのだ。今回、君達がトゥーリアンの為に
協力してくれたことに我らトゥーリアン一同、感謝する。報酬は…。」

ザイード「分かってるよ。大丈夫だ」

ポロニス司令官「トゥーリアンはこれで、攻勢に転じることができるよ。では、私はこれで失礼する。さらばだ」
彼は敬礼してフリゲート艦に戻っていった。

このポロニス司令官は、後に、別の叛乱を画策し、発覚して部下によって殺されてしまうが、トゥーリアン首脳部は
これによって大きく刷新されていく。しかし、リーパーとの紛争が始まると、再び危機を迎えていくことになる。

ザイード「さあ、報酬をもらいにいくか」

ジェイス「なあ、ザイード、俺、あんたについてきてよかったと思うよ。今回は楽しかった。また機会があれば
是非呼んでくれ」

ザイード「一緒に飲みに行かないのか?」

ジェイス「ああ、俺はこのまま仕事だ。それじゃな! 報酬は口座に入れておいてくれ!」と、彼は分け前の額も
聞かずに行ってしまった。

ホライン「ザイード、私もフリーランサーの仕事より、こっちのほうがはるかに面白かった。また参加させて
くれると嬉しい」

ザイード「分かった。何かあったらすぐ連絡する」

ホライン「私の報酬は、お前が取っておけ。私には十分な資産がある。今回の礼だ。ではまたな」
と、彼は早口でしゃべると、すぐにタクシー発着場に向かってしまった。

結局、ザイードは、4人分の報酬、160万クレジットをバルラヴォンの銀行から引き出すと、
自分の口座に120万、ジェイスの口座に40万を入れた。


ザイードは、酒を飲みたくて仕方がなかったので、再びメイトリアーク アシータのいるバーに向かった。

結末

ザイードは、メイトリアーク アシータの前で酒を飲んでいた。

すると、そこにクリン ラヴォンが来て、傍に立った。
ザイード「おお、お前か。今回はたんまり礼をしてもらってありがとな。どうだ、一杯やるか?」

クリン ラヴォン「いや、私は酒はたしなまない。ところで、今回の依頼主のことだが…。」
ザイード「あのトゥーリアン司令官じゃないのか?」

クリン ラヴォン「違う。彼は手駒に過ぎない。1つの叛乱計画のな。」
ザイード「へぇ、そうかい。まあいい、また仕事がくればやるだけさ。ただ今回はちと危なかったけどな」

クリン ラヴォン「依頼主とは違うトゥーリアン政府の高官が、お前に感謝すると言っていたよ。」
ザイード「…なるほどな。俺は本当にトゥーリアンの手助けをしたってわけだな…。信じられないぜ…。」

クリン ラヴォン「ところで、ついでだが、サーベラスからお前に連絡が届いている」
ザイード「サーベラス? あの連合を辞めた奴らが行くサーベラスか」

クリン ラヴォン「お前のことは、もうトゥーリアンでは有名だよ。きっと噂を聞いた誰かが報告したんだろう」
と彼はいい、そのまま立ち去った。

メイトリアーク アシータ「あんた、サーベラスなんかに関わるとろくなことないよ?」

ザイード「はは、そうだな。確かに」と、苦笑い。

彼は酒を飲み始めたが、サーベラスからの通信は、まだすぐに開封しない。

メイトリアーク アシータ「あたしにも一杯おごってくれよ」

ザイード「いいだろう、ほら、飲もう」
アシータ「あんたいい銃もってるね」

ザイード「綺麗だろう? これはジェシーってんだ。このジェシーが殺した敵は今まで…。」と、長い話をはじめた。

同じ時刻、バーの近くにあるオフィスにいたリアラ ティッソーニは、シャドウブローカーの尻尾を捕らえるために、
情報ブローカーとして、奮闘して戦っていた。

もちろん、父親がザイードと話しているとは知らない…。


最後の夜

ラザラス ステーション。

ラサは、やっとザイード マッサーニの報告書をすべて見直して、ベッドに戻ろうとした。

そこに夜遅く、ミランダが部屋を訪れた。

ミランダ「邪魔していい?」
ラサ「ええ、どうぞ。今から寝ようと思ってたところです」と、彼女はあくびしていた。

ミランダ「ごめんね、夜遅く」
ラサ「いえ、いいんですよ。一杯飲みます?」

栄養ドリンクなら沢山ボトルがあるが、出すのをやめたラサ。

ミランダ「いえ、いいわ。ところでね、話があるんだけど…。」と、彼女はコンソールの前の椅子に座って、
しばらくうつむいた。

ラサ「どうかしました?」

ミランダ「あのね、その…。今後のことなんだけど、最後のファイルが提出できたら、あなた、すぐに
このラザラス ステーションから、急いで逃げたほうがいいわ」

ラサ「どうしてです?」と、彼女は若干緊張した声で聞いた。

ミランダ「それは…。たぶん…。あなたが危険な目に会うからよ」

ラサ「でもなぜ?」と、ややこわばった表情。

ミランダ「おそらくね、私の直感なんだけど、イルーシヴマンはあなたを信用してないみたいなのよ。」

ラサ「なるほど…。でもなぜ今さら…。私はサーベラスに入って何年もなるのに…。」

ミランダ「理由は私にも説明できないの。でも、この事はだれにも内緒よ。いいわね」

ラサ「はい、分かりました。ご忠告感謝します」

ミランダ「それと、あなたの本当の名前を教えてくれる?」

ラサ「え?! まさか…。知ってたんですか?」

ミランダ「ええ、そうよ。ずっと前からね。あなた、何度も名前を変えてたでしょ? チャニング大佐とか」

ラサ「え…ええ、そうです。えと…本名は…ホープ リリアムです。」と、彼女は、また嘘を言った。

ミランダ「ホープ リリアムね。分かったわ。内緒にしとくけど、このステーションを出るのは早いほうが
いいわ。きっとジェイコブが手伝ってくれるはずよ」

ラサ「はい、チーフ」

ミランダ「眠れないようなこと言って悪かったけど、これもあなたの為なのよ。だから…おやすみなさい」

ミランダは、私服でここに着たが、彼女が通路を出ると、ジェイコブがドア越からすっと出てきて
ラサの部屋に入った。

ラサ「ジェイコブ!」彼女は青ざめた。
ジェイコブ「やっぱり…。偽名を使ってたんだな?」

ラサ「はい。すいません。いまさら遅いですよね?」と、謝る。

ジェイコブ「謝らなくていい。さっきミランダが言ったことは本当だ。イルーシヴマンは僕に、君のことを
任せると言っていた。だから、僕に任せて。」

ラサは、ベッドに座ったままジェイコブに向き直ってこう言った。

ラサ「私、1つ考えてることがあるんです。それが終わればここを出たいと思ってます」
ジェイコブ「考えてること? それは僕かな?」

ラサ「いえ、そうじゃなくて…。」
ジェイコブにも、これは言えなかった。クローン シェパードを開放しようなどと…口が裂けても。

ジェイコブ「さあ、今日はもう遅いので、おやすみ。明日また話を聞くから」
ラサ「はい…。」

ジェイコブは、部屋を出た。

ラサは、一人ベッドの上で、サーベラスに入ってからの20年間をいろいろと思い出し始めた。

イルーシヴマンに会った時の事、レックスに会っていいクローガンだと思ったこと、カイレンにはいろいろと
世話になったこと、心優しきアサシンのセイン、それからミランダやジェイコブ…。

彼女は、またジェイコブとのことを思い出すと、次第に眠りに落ちていった…。

自室で過ごす、最後の夜がこうして過ぎていく…。


ラザラス ステーションのある区画では、クローン シェパードのタンクが、開けられるのを今か今かと
待っていた。

シェパード少佐と瓜二つの、もう一人のシェパードが、誰もいない研究室で…息を潜めて待っている。



コミック「ファウンデーション11」

コミック「ファウンデーション12、13」は、セイン クリオスにまとめられ、最終回となりました。


タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

記事メニュー
目安箱バナー