828 :名無しさん:2013/03/24(日) 05:13:23
大日本帝国は高麗に上陸して以来、破竹の勢いで進撃していた。
高麗の首都まで後わずかに来ていた、ある前線の一つでお客様を迎えていた。

「東条閣下!我々は大変お待ちしていました!」
「うむ、御苦労。最前線と聞いていたが、部隊の様子はどうだ?」
「はい!部隊の損害はそれほどなく、敵の首都陥落も間近とあって、大変士気が高いです」




東条が前線に慰問をしていた頃、高麗の最前線では

「少佐!最前線に大日本帝国軍総司令官の東条大将が慰問しているという情報が入りました!」
「何!?本当か?誤報じゃないんだな?」
「はっ!私の確かな筋です」
「そうか・・・よくやった。場所はどこだ?」
「場所は・・・・」
その士官は細かな情報を少佐に報告する

報告を聞いた少佐は、現時点の位置・最前線から入った部隊数・敵司令部の位置を地図上で確かめる
地図をしばし見つめていた少佐だが、やがて決意したかのように顔を上げると
「皆を呼んでくれ・・・・作戦を伝える・・・・」

士官・ベテランパイロットを集め、作戦の要領を伝える。
まず、陽動を起こし、敵司令所周辺の戦力を薄くした所で、側面から強襲するという単純明快な作戦であった。
(・・・・だが、これは)
問題があるとすれば、敵戦力が集められる、陽動部隊がどうしても被害が大きくなるということだ。
この危険な作戦の指揮は立案者が行うべきだろう

「なお、陽動部隊の指揮は「少佐!私に任せていただけないでしょうか!」大尉・・・・」
少佐の言葉を遮ったのは、少佐の右腕と頼りにしていた大尉であった。

「危険だぞ?」「戦場に安全な場所なぞありません!」
「生きる可能性が低いぞ?」「少佐の方が危険です!」
「・・・・」「私は死ぬために行くのではありません!少佐の・・・祖国の為に行くのです!」
「そうか・・・俺は良い部下を持ったな」「はい!」

そういって、少佐は手を差し出し、大尉もそれを握り返し、がっしりと握りあう

「生きて帰ってこい」「少佐もお気を付けて」

そして、少佐は周りを見回す。周りにいる人たちも大尉と同じ顔をしていた。
それを見た少佐は誇らしげに思いながら、言葉を告げる
「最初で最後のチャンスだ。祖国を救えるのは今しかない!総員出撃!」




大日本帝国軍司令所から少し離れた森の中で、3機のダガーが偵察に出ていた

「あーあ、最近のチョン(高麗のこと)は、すぐに逃げ出すから、倒しがいがないなあ」
「そうぼやくな、首都陥落間近なんだから、もうすぐ帰れるぞ」
「そうか?清が残っているだろ?」
「それでも、帰れるかも知れんぞ」
「すぐそこにチョンがいたりして」

そういうと、どっと笑い声が広がる

「まさか、こんな・・・・うぐぅ」

無線からうめき声が聞こえたので、慌てて振り返ってみれば、背中から中国刀が生えたダガーだった。

「て・・・!」

慌てて、ライフルを構えようとしたダガーだが、上から、中国刀を振り下ろしたジェンシーによって、右腕が切断された。
それを見た、隣のダガーはナイフを取り出す時間も無いと、咄嗟にライフルの銃床で殴ろうとしたがかわされて、右腕を切断される。
切断された衝撃で、後ずさりするダガーに後ろから別のジェンシーが中国刀を突き刺す。突き刺されたダガーは僅かに痙攣した後に沈黙する。
そして、すかさず、スラッシュハーケンを発射して、もう片方のダガーを貫かせて撃破する。

1分に満たない短時間に終わった戦闘だった。

829 :名無しさん:2013/03/24(日) 05:14:15
「クリアー。・・・少佐、敵の偵察部隊を片づけました」
「ごくろう、静粛状態で進撃する」

森の中から、十数機のジェンシーが静粛行動で移動し、やがて、最前線付近に到達する
目の前には、多くの戦車と共にウィンダムが駐機していた。

「少佐」「あわてるな、もうすぐ時間だ」
少佐は時計を見ながらつぶやく。効果は目の前に広がっていた




その歩兵は心をうきうきしていた。

東条大将の拝謁に加えて、故郷からの手紙を楽しみしていたからだった。
その楽しみは数秒後には破られる

甲高い、風切り音がしたかと思う、陣地が突然爆発した。
「敵襲!」
歩兵は、長年の経験から、咄嗟に伏せることによって、怪我を抑える事が出来た。

これは、少佐の部隊の重砲隊で、大日本帝国・ブリタニア基準では旧砲であったが、最前線では十分通用した。
航空部隊などで、潰された砲も多かったが、少佐の部隊は隠蔽が上手かったなどもあって、纏まった数を所有していた。
その重砲が今までの恨みを晴らさんばかりの勢いで次々と弾丸を発射する。

塹壕に直撃すれば、隠れていた歩兵ごと消滅し、待機状態だったKMFに直撃すれば大爆発を起こし、至近弾で戦車のキャタピラが吹っ飛ばされる

「隠れてろ!まだ、攻撃が来るぞ!」

そう叫ぶが、次の攻撃は奇妙だった。

砲弾が弾着すると共に、視界が真っ白に染められたからだ
「何だ?」「何も見えないぞ!?」
「毒ガス攻撃かもしれない!速くマスクを付けるんだ!」
「落ち着け、ただの煙だ!」
色々な声が飛び交うが、歩兵は返事できなかった。
なぜなら


煙の向こうから、歩兵が大声を出しながら吶喊し、キャタピラに轟音と共に戦車が現れ
そして、最後に見た光景がランドスピナーを回しながら疾走するKMFだった・・・・・





「前線部隊から報告です!敵KMF・戦車部隊の混成部隊が前方の部隊に攻撃してきました。
ただし、数が多くて至急支援を頼む!とのことです」
部隊を謁見し終えた東条達がコーヒーブレイクを楽しんでいた所の報告だった。

「そうか、左翼・右翼の部隊を最低限の数を残し、前方に集中せよ」
「了解!」
敬礼をしながら去っていく兵士を見送りながら東条は尋ねる
「大佐?そんなに簡単に兵力を動かしてもいいのでしょうか?」
「なあに、高麗軍は突撃するしか能がないのですよ。前方さえしのげば勝手に逃げてくれますよ」
(はたしてそう、うまくいくかな?)
東条は長年の経験から危険だと感じていたが、何も言わない・・・・・




「急げ!急げ!俺達が到着する前に、前方部隊が前部喰い終わっちまうぞ」
3機のウィンダムが飛行しながら、現場へと急いでいた。

彼らは、自軍有利に進んでいたと思っていたからだ。

だが、目に入った光景は、彼らの想像を裏切った。

1機のウィンダムが3機のジェンシーの連携によって撃墜され、あちこちで潰走する自軍だった

830 :名無しさん:2013/03/24(日) 05:15:38
「おいおい、我が軍が勝っている戦争じゃなかったのかよ」
「そんなことはどうでもいい!俺達もいく
彼の声は途中で途切れた。

なぜなら、大空で突然爆発を起こしたからだった。

慌てて、回避行動をとると、1機のウィンダムの頭部が吹き飛ばされ、1機のウィンダムは右腕を吹き飛ばされた。


「1機撃墜、2機撃破・・・・悪くない」
そうつぶやくのは、ウィンダムが飛行していた高度よりも高高度で飛んでいた、輸送機に乗った大尉からの狙撃だった。
パクリと何かと悪名高い高麗製兵器において、唯一自国で開発できて、列強に並んだ兵器が大尉が使う狙撃銃だった。
少佐の要望で密かに開発された銃だが、他国が開発した狙撃銃よりも軽く、弾道性能が良好だったのである。
ただ、惜しらむは量産軌道に乗る前に開戦となり、空襲などで大尉の狙撃銃しか残らなかったのである

「第3小隊突出過ぎだ!少し下がれ!第4小隊は第5小隊の援護に回れ、重砲隊、ポイント4-6を攻撃せよ」
大尉は指揮を執りながら、その合間に狙撃を繰り返す。

「少佐・・・・ここまで部隊の目を引きつけました。後は宜しく頼みます」




「少佐!時間です!」
「よし、総員突撃だ!」
前方部隊の陽動に成功したのか、少佐の前にいた部隊のほとんどが移動し、前方は僅かなウィンダムが残ったのみだった。

少佐たちは、まずハンドグレネードを投げて、爆発を起こさせてひるまさせる。
そして、黒煙が残っている内に突撃を行う。

ウィンダムのパイロットは驚愕した。黒煙の向こうからジェンシーが躍り出てきたからだ。そして、次の瞬間には斬り飛ばされていた。

ウィンダムのパイロット達が事態を理解するまでには、次々と撃破され、ジェンシーは疾風のように通り過ぎた。




司令部では苛立ちが募っていた。いつもなら、逃げる高麗軍がこの時ばかりは、立ち向かってきて、乱戦にもつれ込むことで
フレンドリーファイアを恐れて、効率的な支援が出来ず、更には時折煙幕で視界を遮ることで指揮を混乱させてきたからだ。

そんな司令部に驚愕の報告が入って来た。
「馬鹿な!右翼に突然1個中隊のKMFが現れただと!」
「はい、そして、右翼の部隊は壊滅状態になったそうで、敵のKMF部隊は真っ直ぐ司令部に向かってきているそうです」
凍りつく司令部

なぜなら、右翼の部隊が阻止できなかったとしたら、もはや遮る壁がないのだ。
左翼の部隊は、左翼からの奇襲に備えて引き抜く事が出来ない。
苦戦している前方の部隊から引き抜く事も論外だ。

うろたえだす司令部、ある者は癇癪に叫び、ある者は責任論を押し付けだそうとする、見るに耐えられない出来事が生み出されそうになった、その時

「うろたえるな」

静かな、しかし、力強い言葉が響き渡った。その言葉に男たちはピタリと止まり、東条に注目した。
東条は、最初から変わらぬ姿勢のまま言葉を紡ぎ出す。
「こうなった事を悔やんでも遅い。それよりもみっともなく死ぬよりも、毅然とした戦いぶりを
敵に見せつけようではないか!おい!ヘルメットと武器を持ってこい!」

司令部は再び動き出す。全員がヘルメットをかぶり、ライフル・パズーカを抱えて、各地に散らばって待機する。

831 :名無しさん:2013/03/24(日) 05:16:35
最後に残された東条は思う
(すまない・・・・――――。こんなことなら結婚を申し込めば良かったな)

走馬灯が走りだした東条に伝令がやってくる
「報告です!――――




平原を駆けるKMF部隊があった。
それは、先ほど右翼部隊を壊滅させた少佐が率いる部隊だった。

「もうすぐ敵司令部だ!各機注意を怠るな!」
「「「「「「了解!」」」」」」
注意を出しながら、少佐は思う。

(もう少しだ。東条を捕虜もしくは戦死させる事に成功すれば、敵の侵攻を中止することが出来るかもしれない)

そう考えた少佐は、このようなリスクの高い作戦を考えたが、今のところ成功しつつあった。

(あとすこ・・・!)
「散開!」

少佐が叫ぶと同時に散らばるジェンシーだが、1機が爆散した。

「くそ!今の攻撃は!?」

みれば、左の方角から、数機のウィンダムとヴィンセントが飛んできており、先頭には紫色にカラーリングされたKMFがあった。

そのまま、戦闘に入ったが、先ほどのように一瞬で勝つことなく、こちらも撃墜されるなどの被害が出始めた。

「くそ!後少し・・・後少しだったのに!」

もはや、作戦が破綻した事を悟った少佐は、緑の信号弾を打ち上げ、引き上げに入った。
救助部隊もそれを悟ってか追撃は行われなかった。




「大尉!敵司令部の方角から緑の信号弾が上がりました!作戦失敗です!」
「そうか・・・・少佐も無事なのだろうか?」

前方部隊は混乱から取り戻したのか、息を吹き返えつつあった。

支援の要だった、重砲隊もステルス戦闘爆撃隊によって潰され、大尉が乗った輸送機も撃墜された。
大尉は直前に降りる事に成功し、そのまま前線で指揮を執り続けたが、作戦が失敗に終わった事を悟ったのであった。


「これ以上の戦闘は無意味である。総員引き揚げに掛かれ。ただし、俺は殿として残る」
そういって、敵の方に向きあうと、いつの間にか数機のジェンシーが大尉機の周りにいた。

「おいおい・・・俺は引き揚げろと命令したのだが?」
「あいにくと耳が悪くなったので、最初の命令しか聞こえませんでした」
「それに、時間稼ぎなら1機よりも、複数機の方がいいっしょ」
そういって笑い声が聞こえる。

「まったくお前らときたら・・・・よし!俺に地獄までついてこい」
「「「イヤッハー!!」」」
彼らは、そのまま敵部隊の真っ只中に突入した。











少佐の賭けは失敗した。

少佐の部隊は半数が撃墜されたが、少佐は辛うじて帰還に成功する。
しかし、陽動を担当した部隊は60%が未帰還となり、大尉も帰らぬ人となり、壊滅状態になった。
これが原因で、少佐の部隊に死守命令が出される要因となった。



なお、風の噂では救助部隊の指揮官が東条に抱きついたという噂が出たが、真相は不明である。

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最終更新:2013年04月07日 10:45