618 :フライルーの人:2013/10/29(火) 00:13:12
海の家系の4代目と第十世代KMF(1)

国民的作家にして元日本陸軍第7師団長福田定一氏の記した半フィクション小説「海の家系」において、
その4代目として「水の海と星の海をつなぐもの」とやや大げさな(そして作者の願望の入った)役割をもって紹介される
嶋田忍元海軍中将(最終階級)※1であるが、この度機密指定解除された「嶋田一繁日記」(以下「日記」と略す)によれば、
第十世代KMF開発において、地味だが重要な関与をしている事がわかる。
海軍の人間である彼女が基本的には陸戦兵器であるKMF開発に関与、というと違和感があるが、
少佐時代に出向した国防省技術本部で関わっていた業務が第十世代KMFに大きな影響を与えている。

「日記」によれば、海軍母艦航空隊の次期主力戦闘機開発についての意見交換、連絡要員として
配属されたようで、幾つかの会議資料の出席者名簿に名前があることからもそれは伺える。
その中で、弟である一繁氏が当時倉崎重工で丁度エナジーウイングの高効率化・コスト低減に取り組んでいたことを
きっかけに、戦闘機のV/STOL化に第九世代KMFにおいて実用化されたエナジーウイングの技術を応用することを思いついたようである。
「日記」によれば、倉崎重工だけでなく、姉にしてクルシェフスキー家後継者としてブリタニア陸軍に属する
サクラ・S・クルシェフスキー女史の人脈を用いてブリタニア帝立技術院にもコンペ参加を呼びかけ、
更には父を通じて交流の有ったスメラギコンツェルン※2を巻き込むなど、我々が「2030年代の奇跡」として知る
一大技術開発競争(とその後の経済発展)を引き起こし、平和の時代にあって停滞しかけていた技術発展に
カンフル剤を打ち、我々のよく知る光る翼を持つ航空機を生み出すこととなった、とされている。
(なお、官僚組織の常として最初の発案者の名前は新型戦闘機完成時には書類上忘れ去られていたが、その後の彼女の
 大宰相の娘というだけでは説明の付かない海軍航空畑での出世スピードを見るに、十分有り得ることだと思われる)

ここからが本題なのだが、彼女がこの一大競争を引き起こした本当の目的が、エナジーウイング(以下「EW」と略す)及び航空宇宙関係技術の
開発促進によって、一品物の「武器」である第九世代から、量産可能な「兵器」である第十世代へと移行するために
必要な要素の1つである、「EWの高効率化・コスト低減」を強引に推し進めることであった、とされている。
それを端的に表した記述が「日記」2033年12月某日条にあるのでここに抜粋する。

「あの日忍ねえが俺の愚痴に『そりゃ一人でやってれば限界はあるわよ。一繁の好きなゲームと一緒よ?
 友達やライバルと競い合ってこそウデは伸びるし、界隈は賑わうものよ。ま、お姉ちゃんに任せなさい』
 って言ってたのはこの事だったのか…」

そして、この新型戦闘機開発において、各社はそれぞれのEW生産技術向上の他に、倉崎は新型戦闘機の受注、
やや同技術において出遅れていると見られていた感のあるスメラギコンツェルンは技術向上と(コンペに参加出来るだけの)開発力誇示、
ブリタニア帝立技術院は日本軍需産業への参入の足がかりのための顔見せ、とそれぞれメリットを享受している。
(なお、倉崎はファイバー/フライルーでブリタニア軍需産業進出への足がかりを掴んでいるし、スメラギはユーロブリタニアの制式採用機開発の伝統があるため、
 ブリタニア側が日本市場へ本格参入することがバランスと相互交流の為に必要とされていた時期でもあった)
つまり、関わったもの全てがそれなりに満足する結果になっており、ここまで企図していたのだとすれば、流石大宰相の娘の面目躍如といえよう。
尤も、穿った見方をすれば、弟想いの姉が一繁氏にちょっとした仕事と手柄をプレゼントしようとしただけなのかもしれないが。

619 :フライルーの人:2013/10/29(火) 00:15:19
海の家系の4代目と第十世代KMF(2)

この時の主な成果として最大のものは無論、EWの生産設備そのものが大幅増強され、量産の目処が付いたことである。
また、副次効果として、量産効果によるコスト低減はもちろん、大量生産に適するように、エネルギー伝達経路や部品の配置を見直したことにより、
生産・整備の簡便化が達成された、という点も忘れてはいけないだろう。
さらに、技術的に一歩遅れていたスメラギではエネルギー効率そのものの向上にまでつながったと言われている。

なお、EWの量産化のみで第十世代KMFがすぐに建造できるようになったわけではなく、嶋田忍少佐が海軍に戻って以降も
周辺技術、特に耐G関係については課題が残っており、戦闘機やその他の兵器からもフィードバックを受けつつ、
(今までと比べれば)遅々とした歩みをすすめることになる。

例えば、数百機~千機単位で運用される戦闘機においては当然ではあるが、パイロットを
枢木スザクやモニカ・S・クルシェフスキーのような一部の逸材にのみ頼ることはできない。
このため、標準的パイロットでもEWによる急加速・急発進に耐えうるよう、耐Gスーツの性能向上が図られ、同時に第十世代KMF開発へも
これをフィードバックすることで、同様の問題の解決が図られるなどした。
その結果、以前のような凝った意匠のスーツは姿を消し、戦闘機同様のやや無骨な、HMDとセットになった耐Gスーツが主流となっていくことになる。
それでも、対G薬剤投与システム(DDS)と呼ばれる、薬剤投与により体内の血液循環を活性化してGによる循環の停滞を抑えるシステムの安全性の
確保・実用化までは、かなりの期間を耐G訓練に割かねばならなかったようである。

こうした周辺技術の実用化を待って2040年代後半から始まった第十世代KMF開発は、おもに予算の壁と闘いつつ、
ゆっくりとしかし着実に実用化への道を歩んでいった。
なお、合衆国の戦意を戦わずして挫く、ソレがかなわずとも兵器開発等軍事費を膨らませ(可能ならば間違った方向への試行錯誤を誘導し)、
同国の経済を混乱させることを目的として、2050年頃に意図的に本来とは異なる第十世代KMF完成予想図の
CGアニメーションを用いたプロパガンダ映像が盛んに作られた。
中でも、仮称:【望月】とされた二対のEWをもつ機体が、大気圏ギリギリを編隊を組んで飛行、飛来する隕石を
強化ハドロンブラスターの一斉射で迎撃、しかる後に散乱する破片をヴァリスやEWの翼砲撃で始末していく、という映像は、
倉崎広報部の暴走もあってロマンと迫力に満ちたものであり、実戦配備もされていないのに玩具やプラモデルが
発売されるなど、国内外で想定以上の反響を呼んだと言われている。


※1嶋田忍女史は、元海軍中将の他に、嶋田神社宮司、貴族院勅選議員の資格も有していたが、「海の家系」としての
  彼女を強調するため元海軍中将として記す。
※2幼少期に交流の有った某女性皇族(年齢及びスメラギコンツェルンとの関係の深さからに皇神楽耶殿下と見られる)の
  関与を示唆する記述も見られるが、検討には慎重を要する。
  例:2032年10月某日条「いくら昔一緒に遊んだ友達で親父同士も仲がいいからって、あの方を巻き込むか?
                 そりゃ政治的に問題ない範囲の【世間話】しかしてないんだろうけどさ・・・」

620 :フライルーの人:2013/10/29(火) 00:21:03
以上です。

実用化するのが合理的でないなら、合理的でないことがメリットの存在にしてしまえばいいじゃない、
ということで、SDI計画の反射衛星砲みたいな扱いにしてみました。

実用機が61様みたいなものになるか、それともまた別のものになるかは今後のスレの流れ次第でしょう

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最終更新:2013年11月03日 16:56