7 :四〇艦隊の人:2013/11/16(土) 01:32:29

ユナイテッド・ステーツ級航空母艦(その2) 

・来襲
戦艦八隻、巡洋艦、駆逐艦多数を失ったトラック沖海戦から半年後、ユナイテッド・ステーツを中心とするアメリカ海軍空母機動部隊は新たに三隻のエセックス級を指揮下に入れ、何とか戦力の再編成を完了した。しかしその錬度はお寒い限りであった。開戦前の米海軍空母機動部隊の錬度を一〇〇%と考えるなら、現在の錬度は六〇%がせいぜい。最もひどい艦では四〇%をきっていた。最低限戦争ができる錬度に到達させるには後半年の訓練が必要と太平洋艦隊司令部は判断していた。
しかし、戦争とは相手がいる物である。対局者である日本海軍は米海軍の悪手を見逃すようなまねはしなかった。
一九四三年一一月、日本海軍は小沢治三郎大将を総司令官とし電撃侵攻で以ってミッドウェー、ハワイを落とし、一挙に西海岸へ攻撃を仕掛ける、後にいう太平洋打通作戦を発令した。
日本海軍はこの作戦に新鋭戦艦上総型(75000t、29kt、46cm三×三)三隻とトラック沖に間に合わなかった新鋭空母大鳳型(70000t、33kt、艦載機120機)一隻、本土近海にいた為トラック沖に参加できなかった翔鶴型空母(56000t、33kt、艦載機94機)三隻、戦時量産の翔鷹型四隻に加え、トラック沖を生き残った早池峰、白根、瑞鳳、モンタナ級をたこ殴りにした紀伊、尾張、殴り合い後の追撃戦を行った天城四姉妹、それぞれ妹を失った加賀、長門、四姉妹の最後の一人になってしまった霧島、空母を守って戦い男体を失った筑波型、阿蘇型計七隻を中心に艦隊を編成。
輸送艦、補給艦まで合わせて六〇〇隻以上の艦艇がトラック沖の復仇を成さんと向かってきていた。

・敗北
米国政府はこの報を受け半ば恐慌状態に陥った。彼らの手元には錬度の怪しい空母一〇隻に、真正面からぶつかって紀伊型に勝てなかったモンタナ級の三、四番艦、天城型に対抗するための艦でしかないにアイオワ級三隻に、トラックに出すには性能が不足であると判断された三年計画の戦艦群、巡洋艦、駆逐艦もトラック沖の後遺症で数が足りない。カタログ上紀伊を上回るルイジアナ級戦艦はまだ建造未了。ミッドウェーを放棄してもハワイの失陥は避けられそうも無かった。
それでも戦わないという選択肢は無かった。米軍はミッドウェーの戦力を交代させハワイに集め、残された戦力でハワイの防衛計画を作成した。しかしこれはいきなり足元を掬われる事となる。

・損傷
その足元を掬ったのは潜水艦である。開戦以降、日本海軍の潜水艦は主に通商破壊を主任務としていたが、このころ日本海軍は一部の潜水艦に大型戦闘艦への直接攻撃を命じていた。この命令は一部のトップエースにのみ発令されており、その最初の餌食になったのが訓練中であったユナイテッド・ステーツだった。
ユナイテッド・ステーツは左舷の艦首と艦尾に二発の魚雷を受け中破の損害を受け、そのままハワイのドック送りとなり、そしてドックから出ることなくハワイの陥落を迎える事となる。
他にも軽巡洋艦アトランタや重巡洋艦インディペンデンスが沈没、戦艦ノースカロライナが中破等大きな損害を受けた。


8 :四〇艦隊の人:2013/11/16(土) 01:33:53

・決戦
トラック沖で航空攻撃によって痛い目にあった日本海軍はこの時期艦隊の戦闘機比率を五〇%とし、さらに大型の防空駆逐艦(史実秋月+憂鬱島風÷2-雷装的な感じの)を大量配備して、米側の航空攻撃を封殺する作戦に出ていた。対する米海軍は極低空を飛行することで日本側のレーダー網をすり抜け、新型の一〇〇〇ポンド対艦ロケット弾で護衛艦をつぶして、その隙に空母に爆弾をタッチダウンする作戦を建てて、日本海軍との決戦に臨んだ。
一九四三年一二月二五日両軍の偵察機がほぼ同時にお互いを発見し、そして攻撃隊を放った。年をまたいで一九四四年一月一一日まで続くハワイ攻防戦の幕開けである。

・終結
両軍空母部隊の壮絶な殴り合いを制して最後まで戦場に残ったのは日本海軍だった。
両軍艦載機隊の損耗率は三〇%を越え、米海軍は日本側の翔鷹、白鷹、瑞鳳を撃沈し、白根、翔鶴、白鶴を発着艦不能、瑞鶴を艦載機枯渇により戦力外に追い込んだが、レンジャー、カサブランカ(レンジャー級二番艦)、ヨークタウン、ホーネット、エセックスの五隻が沈没、残る五隻も損傷や艦載機の損耗などで戦力を喪失。ここにいたり米海軍太平洋艦隊はハワイの防衛を諦め撤退を開始した。そして戦艦ノースカロライナを旗艦とする米旧式戦艦部隊は、戦艦上総を旗艦とする日本海軍戦艦部隊を相手に後に「パイ提督の捨て奸」と呼ばれる壮絶な後衛戦闘を行い、戦艦上総に座上していた古賀峰一中将を戦死させる等の大金星を上げ、最終的に全艦が沈没することとなる。

・陥落
米海軍がよろめきながらも戦場を去った後、日本軍はハワイへの上陸作戦を開始した。事前砲撃と爆撃で防御陣地を吹き飛ばされた米陸軍はほぼ無抵抗で日本側の橋頭堡確保を許すこととなる。一月七日、日本側ハワイの七割を制圧、この時点で真珠湾も日本側の手に落ちた。同一一日日本軍ハワイを完全制圧、戦闘の終結を宣言。以降も小規模の米残存部隊によるゲリラ戦闘が繰り広げられたが、二月末には沈静化、ハワイ諸島は日本軍の占領下に堕ちた。

・虜囚
一九四四年三月、ドック内で動けないまま鹵獲されたユナイテッド・ステーツは、戦艦長門に曳航され日本の横須賀海軍工廠へ移送、そしてそこで徹底的な調査を受ける事となる。同年六月調査の終了したユナイテッド・ステーツは横須賀沖に係留、同年八月に行われる公開核実験の標的艦となる運命を与えられ、短い余生を過ごしていた。しかし、米海軍潜水艦隊の見せた最後の意地が彼女の運命を一変させることとなる。米潜水艦の雷撃による航空母艦白根の沈没。他の修理を後回しにしてまで再戦力化を急いだ、大型空母の喪失は日本海軍上層部を激震させた。現在の手持ちは大鳳、瑞鶴、早池峰の三隻のみ。翔鶴、白鶴の修理には後五ヶ月はかかり、白鳳(大鳳型二番艦)の就役は半年先。翔鷹型は対潜任務や護衛任務の応援で出払っており、護衛空母は論外。
日本海軍はあたりを見回して、そして発見した。ほぼ無傷で、船体に損傷を受けている翔鶴、白鶴よりは早期に戦力化できる大型空母を。
その艦は現在の敵国であるアメリカ合衆国で生を受け、アメリカ合衆国その物の名を与えられた大型空母。
ユナイテッド・ステーツだった。


9 :四〇艦隊の人:2013/11/16(土) 01:37:20

とりあえずここまで。続きは精神力が回復してから。
鬱じゃなくね?という方はユナイテッド・ステーツの艦魂もしくは艦娘を想像して読むといい。
自分は今後の展開上もっと鬱な描写が待っているので気が重い……。

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最終更新:2014年01月14日 21:32