523 :名無しさん:2013/12/03(火) 01:19:30
「すまない…もう一度言ってくれ」
「ですから、日本はあくまで保護国として最低限のことしかしないと言っています大統領。難民等の諸問題は我々ユニオンで処理しろと。恵まれている事を自覚して欲しいと。」

その言葉は大西洋州連合Atlantic.States Unionの大統領にして、前ニューヨーク市長であるフィオレロ・ラガーディアの小柄な体躯をよろけさせるには十分だった。無理もない。
日本が「難民等」と言ったその難民ですら、今のユニオンには満足に対策できていない。
事実難民達は今もセントラルパークに占拠してデモを行い、その数は日に日に増えているのだ。

『これも全てロングのせいだ!』

ラガーディアは何千回目かの呪詛を【最後のアメリカ大統領】を唱え、それから必死に机に向かった。日本の言うとおり確かに大西洋州連合は恵まれている。今も悲惨な末期戦を続ける太平洋側やメキシコ軍と言う名の夜盗の狩り場にされている南部に比べれば、日本の後ろ盾でなんとか国家の枠組みを作っているのだから。
その点において、強権によってニューヨーク港を日本軍に明け渡し「売国奴」と言われながらも大西洋州の同時降伏に邁進したラガーディアは、多くのアメリカ人を救ったと言えるだろう

『だが、それでは足りないのだ』

そう、今の大西洋連合では、日本のいう【最低限】では苦境にあえぐ人々を救うには足りない。
だからこそ彼は今日もペンを取り、日本政府との紙の戦いに明け暮れるのだった。

フィオレロ・ラガーディア。完全崩壊の危機にあったアメリカで大西洋州連合を作りあげ後に救国の聖人とまで言われる彼だが、皮肉なことに彼の「専制的で強権を振るう統治」によって生きながらえ復興した大西洋州連合は、後に彼を模範とするが故にアメリカの
精神であった民主主義国家としての形を、自ら捨て去ることになるのである。


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最終更新:2014年05月23日 22:02