364 :yukikaze:2014/08/01(金) 00:27:09
何というか投げやりモード的な何かです。
やっぱり沖縄沖海戦かパットン登場の方がテンションあがるなあと
書いていて思いました。

  戦後夢幻会ネタSS――「破局」

「パットンの大博打」と呼ばれた仁川逆上陸作戦は成功した。
圧倒的なまでの制空権と制海権の元、日本警察予備隊二個管区隊(他国基準で言えば2個
歩兵師団)による大規模な迂回挟撃作戦は、京城と釜山の補給ラインを完全に遮断し、
釜山に集結し日本本土侵攻をめざしていた北朝鮮軍の命運を立つことになった。
この日本の行動に北朝鮮は口汚く批判の声を上げたが、彼らに出来るのは首都と定めた
京城から脱出し、平壌に籠って、悲鳴のごとくソ連の援軍を求める事だけであった。
作戦発動から1月後の10月下旬には、半島の南半分はほぼ国連軍が制圧し、韓国政府は
意気揚々と京城へと帰還した。
もっともパットンは、吉田総理に対して「あの極潰しの居候どもがやっと出ていきましたな。
誰のお蔭で帰れたと思っているのか」と、侮蔑の籠った声で、彼らの乱痴気騒ぎを評している。

そんな中、半島が北朝鮮によって制圧されても尚、しぶとくゲリラ戦を行い、北朝鮮軍を悩ませ
パットン元帥をして「唯一まともな韓国軍士官」と評された、白善燁陸軍准将は、回復なった
韓国国防部で耳を疑う命令を聞くことになる。

「38度線を越えろというのですか」

内心「このバカ狂ったか」と思ったが、どうやら目の前の男は自分が正気であると思っているようだ。
まあ元々が民間の一等航海士上がりで、散々国際常識を無視した行動や発言をした挙句、とうとう
日米を怒らせ、ハワイに事実上の追放刑を食らった李承晩の取り巻きだったことで国防部長官に
なっただけの男であるので、まともな軍事知識を求める方が困難ではあるのだが。

「そうだ。半島は我々の力で統一しないといけない。我々はそれが出来る民族だ」

精神論で統一できていれば苦労はしないと、白は、叩きつけてやろうかと思ったが、言っても
無駄であることも理解していた。
何しろわが民族は客観的事実よりも主観的妄想を好む傾向があるからだ。
政府が言う所の「日帝35年の悪逆非道な治世」ですら根絶できなかったのだから、筋金入り
の悪癖と言ってもいいだろう。

「兵力はどれだけ動員するおつもりですか。それに補給は」

無駄とは分かっていたが、白は国防部長菅に問いただした。
こいつらが馬鹿な妄想を弄り回しているのは構わないが、それに振り回されるのは自分達なのだ。
少なくとも彼は自分の部下を無駄死にさせるつもりはなかった。
余りにも多くの部下が朝鮮の大地の下で眠りについているのだから猶更だ。

「兵力は君の率いる第一師団に、再編成を終えつつある第二、第三師団。それに国民防衛軍の将兵を
 加えて、総兵力30万の大群で北の愚か者どもから半島を解放する」

それを聞いて白は完全に呆れ果てた。第一師団は首都奪還後、人員の補充は受けているものの、
その大半が徴兵経験のない一般人であり、練度は異様なほど下がっていた。
第二、第三師団も同様であり、国民防衛軍に至っては、紙の上での編制でしかない部隊が
大半なのである。
一体どこの馬鹿がこういう粗雑な計画を立てたのか。

365 :yukikaze:2014/08/01(金) 00:36:54
「補給についても万全だ。北の民衆はあの独裁者の圧政に苦しんでいる。解放軍である我らが来れば
 喜んで協力してくれるさ」

そろそろ我慢の限界が近づいてきた。
要するにまともな兵もまともな補給も与えられず北に攻め込めと言っているのだ。
北の民衆がこの男の言うように圧政に苦しんでいるのならば、彼らは我らに食料を渡すのではなく
食料を強請りに来るだろう。
あるいは勝利のおこぼれを狙って寝返るか。我が国にもそういう恥知らずの連中が多数いた訳だが。

「総司令部からの許諾は得たのですか」
「アメリカ海兵隊からは好意的な返答を貰っている。総司令部は気乗り薄なようだが、今の弱体化
 した北の軍隊ならば、我が精鋭とアメリカ海兵隊の後詰で吹き飛ばせるさ」

成程。こいつの自信の源泉はアメリカ海兵隊だった訳か。
そう言えば仁川逆上陸作戦において、ペンタゴンがパットン元帥の作戦案に反対した余波で、
アメリカ海兵隊は参加することができずに、結果的に武勲を立てられなかったからな。
それで組織存続のために派手な武勲を立てたいわけか。
マーシャルとパラオ以外良い所がなかったからな。
背景は理解できたが、白にとっては「他国の思惑に利用されているだけ」としか思えなかった。
それほどまでに自分の地位が大切かと。

「お話は理解できました。しかし総司令部の許諾は得るべきです。我々はもう失敗も許されませんし
 彼らの信頼を裏切ることも許されません」
「パットンは倭奴の言う事しか聞かん。あいつらはソ連の介入を主張している。奴らは我らが
 半島を統一して列強になって復讐されるのが怖いのだ。だからああいう虚言を吐く」

バカヤロウ・・・何でそういう大事なことを早く言わないんだ!!
白は本気で目の前の男を撃ち殺したくなった。
日本は対ソ連に対して驚くほど正確に情報を獲得している。
日本がアメリカに渡した『レッドセル』のリストに書かれていた者達が、その悉くがソ連のスパイ
であったことが立証されて、アメリカ政界を揺るがす大問題になった事なんて常識だろうに。
そして彼らがソ連の介入を主張するという事は、それがほぼクレムリンの決定事項と言っていい。
ナチスドイツをも叩き潰したソ連の機甲軍団を訓練未了な軍勢で迎え撃つ?
こいつはもう一度祖国を亡国にもっていきたいのか?

「閣下。せめて第一から第三までの訓練が完了するまで待つべきです。勇猛果敢なパットン閣下が
 ここまで慎重になるという事の意味をお考えください。単に日本の進言だけが理由ではない筈です」
「君は半島統一に反対するというのか? 君は親日派か!!」

取りつく島がないというのはこの事を言うのだろう。
自分の意見に従わないものは親日派とレッテルを張ることで組織から抹殺を図ろうとする。
組織として極めて不健全であり、だからこそ北にいいようにやられたというのにまだ理解していない。
白は、今度こそ祖国という物に対して絶望感を覚えていた。
これならまだ日帝の支配だった時の方がマシだと。
日本陸軍とて決してほめられた組織ではなかったが、それでも最低限の自浄作用はあった。
しかし・・・韓国政府にはそれすらないのだ。

「親日派ですか・・・貴方方が日本に這う這うの体で逃げている間も、必死になってゲリラ戦を行い
 戦い続けたにも拘らず、貴方方の言う所の「犯罪者」「売国奴」であると。そう言われるのですな」

冷たい白の視線と言葉に、国防部長菅は一瞬怯えの色を出したが、滑稽なほど背を逸らして「そうだ。
半島統一に反対する者は売国奴だ」と叫んだ。見苦しい程なまでの声色で。

「碌な兵站もなく、総司令部の命令を無視し、ソ連の介入の可能性があるにもかかわらず、訓練未了
 の軍隊で北に攻め込むと。私から言わせれば閣下の方が売国奴ですな。ソ連が介入して北侵軍が
 壊滅した場合、韓国はパットン元帥から軍権を剥奪されることになりますが、その時閣下はどう
 責任を取られるおつもりか? 韓国は誰からも相手にされなくなるでしょうな」

そういうと、喚き散らす国防部長菅を無視して部屋から退出した。もう馬鹿には付き合いきれなかった。

白善燁陸軍准将が病気療養の名目で第一師団長を解任されて一週間後。
韓国軍は国連軍に無断で38度線を越え、そして侵攻から2週間後、碌な兵站線がなく息切れした所を、
ソ連軍義勇部隊の猛攻を受け、白の予言通り壊滅することになる。

366 :yukikaze:2014/08/01(金) 00:37:20
後日の話である。
「療養」という名の監禁された部屋で、韓国軍の大敗北を聞いた白善燁陸軍准将
は、声を立てずに静かに泣いたとされている。自分だけが生き残ってしまったと。
パットン元帥は能面で「今回しでかした馬鹿どもには必ず落とし前をつけさせろ。
それと吉田に頭を下げに行く。サムライ達にまた借りを作ることになるとはな」と
言って車を走らせた。彼にとって韓国はもはや敵国以外の何物でもなかった。
吉田機関の面々は「流石韓国。日本の嫌がることだけは上手い」と、侮蔑の表情を
浮かべていた。彼らはこれまでの韓国のツケをきっちり覚えていた。
後はパットンを通じて、このツケをアメリカも関わらせることで厳しく取り立てる
だけである。既に彼らは一切の情けを捨てていた。

大韓民国。彼らが本当の意味で国家を運営するようになるには未だ遠い。

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最終更新:2014年09月26日 03:08