118 :二二三:2014/03/13(木) 00:15:07
ちと無茶をやってみよう
ウィキ復活したら掲載してもらってもOK

ありえない

「日本開国は決定事項である」

マシュー・カルブレイス・ペリーは艦隊旗艦サスケハナの艦長室にて副官のジョン・コンティ相手に声を張り上げた。
まだ江戸幕府と何の話し合いも成されていないというのに随分な物言いであり、相手の意思など関係無いと言わんばかりの傍若無人な発言。
俺が言っている、開国しろと
それだけで数百年間鎖国を続けている日本は開国しなければならないのだと真面目に考えていた。

「しかし、江戸幕府、タイクーン・トクガワが首を縦に振るでしょうか?」

普通ならば振らないはずだ。鍵のかかった玄関扉の前でいきなり訪ねてきた赤の他人が「俺が来たから鍵を開けろ」と言って開けたりする馬鹿はいない。
事実ペリー艦隊が来る以前にも外国船は訪れているし、皆それぞれの国の立場で日本への寄港や通商条約を結ぼうとしていたが、幕府は断固拒否の立場を採っている。
そんな国が新たに訪れた自分たちの開国要求を飲むとは思えない。
コンティの考えている通り幕府は拒否の姿勢を貫くであろう。無論ペリー自身もそれは承知の上だが、今まで訪れた各国の船は非武装船や小型軍艦ばかりであることを知っていたペリーは要求拒否などさせないと断言した。

「何のために大統領閣下は私にこの親書を託されたのか?そして我が艦隊に任務をお与え下さったのか?」

答えは一つであろうとペリーはほくそ笑む。つまり断れば武力行使だと言っているのだ。
ペリー率いるアメリカ艦隊は今までの外国船とは決定的に違う所がある。それは言うまでもなくペリー艦隊が合衆国海軍の正規艦隊であるという部分だ。
日本は今までの相手が小型船ばかりであったからこそふてぶてしく開国拒否の姿勢を貫けた。
しかし今回ばかりはそうは行かない

「鎖国した大陸猿はこちらが弱そうだと見ればつけあがる。だが強いと見れば怖じ気づくはずた。猿というのはそういう生き物だからな」

彼は日本人を人間と見ていない。大陸に引きこもる猿と見ていた。これは程度の差こそあれアメリカ人共通の認識だ

「猿は我々のような蒸気軍艦など保有してはいまい。猿が開発できるような物ではないからな」

朗らかに笑うペリーは日本の技術力が欧米に劣る物だと考えていた。
もし本格的な蒸気軍艦を日本が保有しているのならば今まで訪れた各国の船の前に姿を現していた筈だが、一度も大型船が出て来たことはない。
つまり日本には何一つ大型船は無いのだ。
無論陸での戦いとなれば僅か数百名の陸戦隊しか持たないペリーに勝ち目はない。

「ならば海から圧力を掛け続ければ良いだけだ。なぁに、大陸猿のことだ。江戸の町に数発の砲弾でも撃ち込めば大慌てで両手を上げ降伏を申し出てくるだろう」

簡単で退屈な任務となりそうだと考えていたペリーが日本大陸に到着したのは1853年7月7日。
予定通り下田沖に着いたペリー艦隊であったが、陸地が近付いてくるにつれ、水平線の向こうにポツポツと影が見えてきたのだ。


119 :二二三:2014/03/13(木) 00:16:02

最初は岩礁か何かと見ていたが、徐々に距離が近付いて来ると、それは船であるらしいことがわかってきた。それも大きさからしてサスケハナとそう変わらない、若しくは上回る巨艦であった。

「馬鹿なっ!日本にあのような大型艦があるとは聞いていないぞ?!」

しかも1隻ではなく見える範囲で最低4隻の蒸気軍艦がペリー艦隊目掛けて突き進んでくる。
同数による同型艦同士の海戦ならば経験豊富なペリーには勝つ自信があった。しかし最初から戦争目当てで来たのではない。あくまでもまずは親書を渡すことが彼の仕事

「相手方が妙な行動に出ない限り撃つな!」

こんな所で予期せぬ海戦を開き部下の命を危険に曝すことはできない。
とにかくまずはコンタクトを取るべく接近しなければならないが望遠鏡の中で大きくなる日本艦隊の先頭艦の姿がはっきりしてきた所でペリー艦隊は騒然とした空気に包まれた。

「な、なんだあの艦はっ!?」

その船の舳先は上ではなく喫水方向を向いていた。
世界中どの国の船も上に向かって尖っている筈の舳先が真っ直ぐなのだ。
更に目を凝らすと恐るべき事実がわかってきた。

「て…つ?船全体が鉄で出来ているだとっ?!」

まさかと何度も確認し、艦隊将兵皆が望遠鏡を覗き確認したがどうやら間違いなく鉄で出来ている。それも船体全てが鉄でできた鋼鉄艦らしいと判明したことで皆呆然となってしまった。
一体どこの国に鉄でできた船を保有している国があるというのか?

「な、なんという巨大な砲だ、」

現実を受け入れられないペリーは次に日本の鋼鉄艦の上甲板に据え付けられている砲に着目した。舷側の砲ですら高性能であると見てとれたが、主砲らしき巨大な砲だけは別格の存在感を放っている。

25センチはあるであろう回転式と見られる巨砲はサスケハナの64ポンド主砲とは比べるのも馬鹿馬鹿しい程に巨大だ。その他にも異様な部分はあった。マストだ。

「帆が…無い……」

その4隻全て、本来ならあるはずの帆がマストには付いていない。帆が無く煙突から煙を立ち上らせて海原を突き進んでいる。

「ありえない……」

つまりはったりでなければ帆など必要としない船だという事だ。

「完全な気走鋼鉄艦だと……」

そんな船がこの世にあるはずがなかった。

「我々は……、我々いったい何を目にしているのだ……」

つい先ほどまで日本に開国を迫る自信に満ち溢れていたペリー。そんな彼が渇いた喉から絞り出せたのは解の無い疑問だけであった。


120 :二二三:2014/03/13(木) 00:17:59

ペリーが目にしたありえない4隻は徳川幕府の防護巡洋艦ですw。
 

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最終更新:2015年02月21日 16:50