402 :第三帝国:2016/08/05(金) 23:57:26

艦これ×神崎島ネタSS————閑話「技術者」


部屋に入ればそこは異世界であった。
高々と積み上がる論文に書籍、図面は学者の部屋としてよく見られるものだが、
それが窓を塞ぎ、机や椅子を埋もれさせる程の量となると話は違う。

おまけに辛うじて見える床にも空の栄養ドリンク(最近神崎島から輸入されている)が無数転がっており、
盛んに議論を交わす部屋の主達が醸し出す空気と合わさって何とも表現できない空間と化していた。

「時代はガスタービンだ!!
 重くてかさばる水はいらず、高出力。
 これを採用しないなど有りえない!
 現に未来の軍艦はことごとくこれを採用している。
 それは君たちの資料から分かり切っているではないか!」

「あのねえ、高熱のガスを受け止める金属素材の製作が今の日本じゃ無理って何度言えば分かるの!
 「史実」の日本だってガスタービンを採用するのにどれだけ手間だったか昨晩散々説明したでしょー!!」

「機関は君たちが提供すればよいではないか?
 それなら問題ない、後は我々が好きがって出来る・・・」

「普段の整備とかどーするの!
 ドック入りするたびにこっちに来るようじゃ意味ないじゃん!」

「それは用兵側が何とかする問題だ。
 私がすることは既存の戦艦の改良と次世代への道筋を作ることだ」

議論を交わす人間は2人。
1人は造船の神様と呼ばれつつも、それまでの強引なやり口。
そして最近は無理な設計で批判で受けている――――東京帝国大学工学部長、平賀譲。

「手始めに高温高圧缶、
 それに球状艦首内を採用するだけでも速度は大幅に向上するわよ。
 ロマンを追い求める気持ちは分かるけど、無理をすれば私みたいになることを理解しなさいよこの頑固爺ぃ!!」

そして神様を爺呼ばりしたもう1人。
灰銀色の髪を持つ少女は神崎島からの来訪者で名は――――軽巡洋艦夕張である。

見た目の年の差は孫と祖父と非常に差がある2人であるが、
互いが有する情熱と知識の量は等しく、議論を激しくぶつけ合っていた。

「何を言う!夕張、お前は儂の最高傑作だ!
 それに初めて合った時はあれ程儂を慕ってくれたのに・・・嘆かわしい!!」

「うっさい!今はただの偏屈爺よ!爺!
 大体何よこの、『80サンチ連装砲、20万t級戦艦案』は!
 入れる港の数だって限られるし、ドイツが80サンチの列車砲を運営しているからってやり過ぎよ!」

「君たちが経験した戦いで出現したレ級よりはマシだと思うが?
 それにこれなら例えレ級が出現しても我が海軍はかつる!!!」

403 :第三帝国:2016/08/05(金) 23:58:18

「アホーーーー!」

最も常人では理解しがたい方向に暴走しつつあり、
部屋を来訪した人間である呉海軍工廠造船部設計主任、
――――牧野茂はその熱意に押され無言で呻くしかなかった。

しかし、同時に。

「・・・やはり、彼女ならいけるか?」

思わずそんな言葉が漏れた。
何せ夕張と名乗る艦娘が対峙しているのは造船の最高権威。
唯人が相手をするには荷が重すぎる相手であり、意見を口にすることは非常に難しい。

だが、彼女なら対等に渡り合える。
しかも、同じ技術者で神崎島の艦娘ゆえに好都合である。

神崎島の技術を元に帝国側の戦艦改良計画、
そして神崎島で言うところの「大和」建造に必要不可欠な人材であると牧野茂は確信を深め、
神崎島も承認するこの計画参加の伝言を伝えるべく、散らかった部屋へ一歩前に進んだ。

しかし、この後彼女をまともな技術者と思いきや
「安定した性能を発揮する3連装をつなげて6連装砲とした6連装砲4基の戦艦」
と色々ぶっ飛んだ設計案について夕張から熱く語られるとは牧野茂は考えてもいなかった。













おわり

404 :第三帝国:2016/08/06(土) 00:01:20
これにて終了。
前にひゅうが氏が提示したネタを使ってみました。
少しは艦娘を出せたと思います。

そして、これを皆で楽しんで頂けると嬉しいです。
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最終更新:2023年11月23日 13:35