533 :ひゅうが:2016/08/12(金) 23:11:46

神崎島ネタSS――「1937年6月」その5





――1937(昭和12)年6月29日 神崎島鎮守府「中央即応集団」基地


「提督より命が下った!」

妖精さんこと温水逸雄大佐は、指揮台の上から声を張り上げた。

「わが隊は、これより長躯太平洋から東シナ海を抜け、上海へ向けて長距離飛行を断行する。
途中、詫間空および佐世保空から同任務にかかる帝国海軍航空隊と会同。
以後か彼の指揮下にて上海を目指す!」

言葉を切る。
彼らの機体は大型である。乗員の数も、小さなものでも14名。
大きなものだと25名を数えるのだからその責任は極めて大きい。

「第一戦略爆撃隊は即応できない!上海の特殊な地勢が理由であり、それこそがわが中央即応集団がゆく理由である!」

温水は、かつて詫間空に在籍していた。
彼の機体は、大型機らしく長大な航続距離をもって太平洋上で索敵任務にあたった。
そして、その過酷な任務から消耗を続けた部隊の中にあり、昭和20年6月に撃墜されるまでその任務を果たし続けた。

「諸君!のろまな亀といわれた我々だが、この島にきてからの戦歴をみてもわかるように亀は強い!
ちょっかいをかけてきた敵機を返り討ちにしたことも数知れず。
今度も全機欠けることなく戻ってくると私は確信している!以上だ!」

「では、ワカレ!」

「応!」

妖精さんたち…というよりはほとんど普通の人間そっくりにしか見えない集団が動き出す。
総勢400名以上。
彼らが向かうのは、滑走路ではなく桟橋だった。

「みんなー。頑張ってくるかも!」

「おお!秋津洲さんが見送りだ!」

「たぎるぜ!」

「秋津洲ー!俺だー!ケッコンしてくれー!」

「提督もげろー!」

…いろいろと台無しな声を上げつつ、中央即応集団に所属する二式大艇改「晴空」および、超大艇「蒼空」はエンジンをまわし、補陀洛湾へするりと滑り出した。
1機あたり700名近い人員を詰め込むことができる「蒼空」が2機、200名あまりを搭載できる「晴空」は20機あまり。

海軍詫間航空隊が総動員した97式大艇17機とあわせれば、1回あたり7000名近い人間を輸送することが可能である。

これぞ「艦娘」という特殊な存在を「空輸」し、迅速に各地へ展開させるという深海大戦において活躍した戦略航空機動システム。
彼らが「中央即応集団」という字を冠する理由だった。
さらには飛行艇だからといって侮ることもできない。
原型機となった二式大艇は「空飛ぶ戦艦」と呼ばれ、かのB-29以上の堅牢さと重武装を誇った名機である。
発動機換装や装甲追加によっていささかゴツゴツしてはいるが、彼らは毎時500キロというこの時代の飛行艇としては反則級の速度で大量輸送を可能としているのだ。
最寄りの台湾を基地とするならば、数時間も経たずにピストン輸送が可能である。

「隊司令。離水します。」

「うん。ゆくぞ。」

温水は、駆逐艦朝霜のような獰猛な表情を浮かべ、機長(女性型)に合図した。
そういえば、日辻司令はもう詫間にいるかな?こんどはこちらがK作戦をやるようなことになったが…
そんなことを考えながら。

535 :ひゅうが:2016/08/12(金) 23:12:25
【あとがき】――我慢できなかった。反省はしている。
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最終更新:2023年11月23日 13:17