200 :taka:2016/03/08(火) 00:36:19
アーネンエルベネタ


とあるドイツの喫茶店にて

「儂の時間も尽きるか。口惜しい事だ」

手にした2000年の新聞を見やりながら、老人は呟く。
体のあちこちにある傷跡が隠れるほどに皺深く、老人は老いていた。
新聞には冷戦が集結した後の軌道が、総決算として掲載されていた。

「可能であれば、我が祖国の敗北を防ぎたかったが……一人ではあまりにも非力だったか」

彼の脳裏に、大戦に勝利した祖国の記憶がある。
大戦に勝利したが、極東の島国に敗北した記憶がある。
彼の国に生涯を通じて苦杯を飲まされ続け、無念を抱いて死を迎えた記憶がある。
彼が……かつての親衛隊の将校であり、戦後、この国の闇で暗躍し続けた政治団体の幹部になれたのはその記憶という黄金があったからだ。

「まあ、私と同じ無力感を【奴ら】が抱いているのは僥倖な事だ」

その黄金があったおかげで、注視していた国の不可解な動き……自分と同じ仕組みを抱いた者達の思惑を知ることが出来た。
かような奇跡が無ければ気づかなかった。気づくわけがないカラクリの真相を。

「我が祖国やブリデンの連中が如何に足掻いても勝てぬ訳だ。
 いや、勝てる訳がない筈だ。歴史の流れを先読み出来る、未来の知識を持ち神を気取った連中めが」

黄金の記憶の中と比較して、彼らの活動期間は短かったようだ。
そのせいか大戦での活動では盤石ではなく、米国に譲歩させた上での降伏を行うのがやっとのようだった。
彼自身の活動も力不足故に幾つかの雌雄の芽をドイツに埋め込むのがやっとだった。
その意味で言えば両方共歴史には勝ち抜けなかったと言える。

「だが、今回は納得して逝けそうだ。連中の思う様にならなかったのを見れたのも痛快だったしなぁ」

戦中、戦後の舵取りも苦労の跡が見えたのを、老人は愉悦を持って見ていた。
あの記憶で散々に世界を翻弄させた連中の苦悩が、老人にとってまさに喜悦を感じさせたのだ。

「精々、これからも足掻がいい。自分達がかつて潰した、国々の狭間でな」

老人はそう言うと、コーヒーを飲み干して静かにまぶたを閉ざした。


おはり

247 :taka:2016/03/08(火) 18:41:38
色々言われているが、あのドイツ人的には

「どんな形でも良いから日本が凹まされる所が見たかった」だけ

原作夢幻会で後塵しか拝まされなかったポジションとしてはそれが望みだった訳で
無論、夢幻会からすればナンバーワンだって大変なんだぞと憤慨するだろうけど
でも、それがわかるのは日本人だとしても彼ら位だけだよね?
徹底的な秘密主義だったわけだし、敵性国家の彼が理解出来るわけがないよね? な話

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最終更新:2016年08月21日 09:46