431 :第三帝国:2016/09/11(日) 11:55:14


艦これ×神崎島ネタSS――――閑話「改革」


「つまりわが国の造船技術は遅れに遅れているのだな」

「未だ輸入頼りのに生産設備、未熟な冶金技術。
 第四艦隊事件以降自粛している電気溶接技術・・・一杯あるわね」

呉海軍工廠の規模は巨大で、
工員は横須賀、佐世保、舞鶴の三大工廠を合わせた数を超えている。

ビックセブンの誉れを頂く戦艦「長門」。
そして史実では戦艦「大和」を建造するに至る栄誉ある場所であり、
また戦艦を建造しなくなった戦後においても世界初となる巨大タンカーの建造に貢献した。

「耳が痛いな、
 これでも色々頑張ってきたのだか」

「だからこそ、私はここにいるのですから」

工作艦「明石」は神崎島鎮守府に所属する艦娘の中でも「吹雪」「大淀」と並んで古参に属し、
かつて「平時における連合艦隊が必要とする補修業務の4割を賄える」
と言われた高い能力と造船知識そのまま受け継がれた明石はこれまで後方支援を中心に活動してきた。

だからこそ日本に対する技術支援要員として艦政本部に出向したのだが・・・。
やれ早急に51サンチ砲をくれだの、島風型駆逐艦を量産しろ、どうすれば艦娘を建造できるか?
挙句チタン装甲で戦艦を作ろうと不明な総長とメロンが荒ぶった時点で明石はブチ切れた。

その場で将官連中を如何に日本の造船技術が遅れているか懇切丁寧に、
具体的にはエセックス空母姉妹やらリバティ船がわんさか量産された事実を説明し、
その上で映像の世紀の刑に処し、虚脱放心状態となった所で海軍工廠の近代化を『意見』し、
明石は手始めに呉海軍工廠の近代化に着手し始めたのだ――――なお、不明な総長とメロンはキッチリ再教育を施した。

「西島君が科学的管理法、それに電気溶接を模索していたけど、
 大多数は造船は特別だし電気溶接なんてまだ危険という意識があったから君たちがいなければ何もできなかったよ」

福田烈の視界には神崎島から送られてきた最新の機材、
ガントリークレーンから始まりドイツ製のそれを桁で2つほど上回る精度の工作機材が配置され、
さらに神崎島から派遣された技術者、アイザック・クラークを中心に電気溶接の練習に励む工員の姿であった。

「特にこの工数管理表はどんな最新機材よりも勝るものだ」

そして手元にはグラフ化された工数管理表が置いてあった。

史実のアメリカについてよく物量で勝ったと言われ、
まるで質は日本が勝っておりアメリカは数だけ揃えたから勝ったと、
というどこか見下すような評価を下す人間がいるが、それは違う。

その数を揃えるについても基礎的な工業力が不可欠である。
加えてどこの工場で作っても部品がかみ合う、という標準化。
どんな場所で作っても一定の品質が保てる品質管理。

大量生産にはこの2つの要素が不可欠で、
さらに現場が正しくそれを理解した上で国家がそうした法整備に取り組まなければならない。
それができたのはアメリカであり、史実の日本は最後までそれを理解していなかった。

432 :第三帝国:2016/09/11(日) 11:55:51

「さて、私は一度東京に行きますね。
 工業規格統一に向けて話し合いが必要ですから」

「では、次回もよろしくお願いします」

見た目娘に相当する年齢の少女に福田は頭を下げる。
始めは抵抗感があったが、今ではそうするに値する人間であるのを理解したのだから。

見た目は小娘であれど有する知識は自分と同じ造船屋であり、
もしも彼女と出会わなかった帝国がどうなっていたか――――それはあの映像の世紀がこれ以上なく教えてくれた。

あのような無様な姿を見せるわけにはいかない。
福田は、いや神崎島に係ったすべての人間が一様にその思いを共有しており、
ここだけでなく日本全国でこうして神崎島主導の改革が行われつつあり――――遠くに見える坂の上の雲に向かって走り出していた。





おわり

433 :ひゅうが:2016/09/11(日) 12:00:32
乙です。
うちでも明石さんを出したいなぁ…
というかどこかで見たような技師さんがいるぞw

あとメロンちゃんの師弟コンビ、南無。
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最終更新:2023年11月23日 13:37