お風呂の帰り道



VVアパートには風呂がない。
だから風呂に行ってきた玉城くん。
どうしてか家に風呂があるはずのクララちゃんも行くといってついてきたので一緒にお風呂へ入ってきました。
もちろんクララちゃんのお父さんも同伴です。
クララちゃんはもちろん女湯でひとりぽっち。
お父さんは玉城くんと二人で男湯へ。

れいのごとく家賃を払えない玉城くん。
お父さんの背中をゴーシゴシ。
お父さんの毛はとっても長いです。
長いクララちゃんの毛よりも長いです。
だから玉城くんに洗わせます。
ガシガシ洗おうとしたらお父さん怒ります。
玉城くんのおめめに洗剤アタックです。

「ぎゃああああああーーー目がっ目がっああああああ」

某大佐さんのように転げまわる玉城くん。
ほかのお客さんも笑ってます。
いつものことなのです。

「通称ばるす攻撃 きみのようなだめっこニートの髪洗うんじゃないんだからもっと丁寧にするんだ」

「男のくせにこまけーんだよちっちゃいおっさんっ だいたいなんでそんなくそなげーんだよっ いいかげん切れよっ クララもすっげーなげーけどおっさんの毛地面すれすれじゃねーか ばかじゃねーのっ」

「ひとの勝手だ きみだって年中髪逆立てて粋がってるじゃないか たいして喧嘩も強くないくせにひとのこといえないねくそニート」

なんか喧嘩してますが実は喧嘩になってません。
小さいお父さんは小さいけれど年金もらうような歳なのです。
ですから玉城くんは手のかかるお子ちゃまのようなものでいつもかるーくあしらっています。
簡単に言うとこれでもお父さんは玉城くんを息子のように思っているのです。
立派なひとなのです。

そうして流しっこをしながら湯船につかります。

「ちゃんと100数えるんだよー」

「ガキかオレはっ」

「ガキだよ僕の半分も生きてないお子ちゃまじゃないか」

「ぐぬぬぬ」

言い返せません玉城くん。
だって戸籍に実年齢が出ているのでどうしようもないのです。

さあお風呂からあがりました。
さっさと服着て帰ります。
しっかり拭いてひとつにまとめたお父さんの髪の毛。
水気が多くてとっても重そうですが平気そうです。
ずっと長いから慣れてるのです。

「おーにーちゃん パパーっ」

女湯から出てきたクララちゃんも髪の毛をまとめてます。
お父さんが後ろでまとめてるのとは違くクララちゃんは肩から垂らしてます。
やっぱり長くて濡れてて重そうです。
でもクララちゃんもお父さんと同じで慣れてるから平気です。

「おおっいいタイミングだぜ」

玉城くんは髪の毛下してます。
いつも逆立ててる髪の毛を下してるとなんだか根暗な坊ちゃんのようです。
玉城くんだけ短髪だからとっても頭かるそうです。
頭の中身が本当にかるいので実は短髪と相性がいいのかもしれませんね。

と帰り道を歩く三人。
前を玉城くん 玉城くんのすぐ後ろをクララちゃん。
そして二人を見守るようにもう少しだけ後ろからお父さん。

玉城くんとクララちゃんは楽しそうにお話ししながら歩いてます。
お父さんは無表情でぼんやり歩いてます。
対照的ですが仲良しな家族です。

あら なにやら白いものが空からちらりちらり。

「つめたっ」

お鼻にあたったクララちゃんがびくっと震えて目をしばたたかせます。
寒い夜 空を覆う厚い雲 今夜の天気予報は雪。
三人の帰り道に重なって振ってきたようです。


「おおー雪だぜ雪ー 東京にはめったにつもんねーからふれふれー」

「クリスマスに降ればホワイトクリスマスなんだよーおにいちゃん」

「なんだそれって」

「恋人たちを祝福してくれるんだよー」

それだけ伝えてクララちゃんは玉城くんの背中にがしっとしがみつきました。
クララちゃんは強制おんぶを試みたのです。

「重っ っきなしのっかってくんなよ」

「えへへー だーっておにいちゃんのお背中はクララだけの特等席なんだもーん」

「だーれが決めましたかだーれがええー?」

「もちろんクララが決めたもんねー」

「勝手に決めんなばーか ・・・・・ま 寒い夜にゃあったけーから許してやっけどよ」

なんだかんだと文句の多い玉城くんですが幼馴染のクララちゃんにはとっても優しいのです。
だからクララちゃんがなにをしてもたいてい許してます。
さいきんは体が大人になってきたクララちゃんにドキドキしていることも多いようです。

「(*´▽`*)おにいちゃんツンデレー」

「はいはいつんでれつんでれ あったまるついでにこのまんま走んぜっ しっかりつかまってろよぉーっ」

「おおーっ いけいけおにいちゃーん(^ω^)/」

ニートの玉城くんとにこにこして幼い感じでかわいいけれど実はとっても怖い秘密組織の暗殺者だったりします少女クララちゃんは雪の中を走り抜けます。
玉城くんはクララちゃんの怖い真実を知りません。
でもそれでいいのです。
二人はそれで幸せなのです。
少なくともクララちゃんは大好きな玉城くんに自分の秘密を知られたくありません。
だって。

「おにーちゃん だーいすき!」

ですからね。
お風呂の帰り道 幸せな夜の一幕はこんなふうにすぎていきました。

幸せな夜をお楽しみにね。


「はっくちょん・・・・・ さむい 雪とか寒いからたまんないよね・・・・・」

お年寄りのお父さんには。
ちょっぴりつらい穏やかな夜だったようですね。



あとがき
玉城くんの声優さんがお亡くなりになられましたからね。
なんかね 玉城くんのね ほのぼのとしたね 幸せな夜でもみてみたくなったのね

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最終更新:2017年04月02日 20:21