130: 第三帝国 :2017/04/19(水) 23:46:14


銀河連合日本×神崎島ネタSS――——「大見の溜息」


時刻は丁度昼時で「いずも」の艦内食堂は賑やかである。
今日の献立は各艦に独自のレシピを有する海自が誇るカレーライスで、残念ながら「いずも」は配備されたばかりで「いずも」独自のカレーはなく、今回は最近練習艦へと移籍した護衛艦「やまゆき」の肉じゃがカレーが振る舞われていた。

隠し味にみりんや珈琲などを使用しているため、唯のカレールーでは出せない味を出しており、その味はついて自衛隊員の誰もが納得するだけで留まらず連絡士官として再度「いずも」に乗り込んだ時雨もまた満足する程美味しい物であった。

「うん、すごく美味しいよ。
 カレーもだけど副食のサラダに春巻きが美味しいね」

「ははは、確かに!
 いやはや、海さんの飯は旨い!」

時雨の賞賛に大見健三等陸佐が同意を表明した。
大見は陸佐、つまり陸自の人間だが「いずも」に搭乗していたのは離島奪還の訓練のためで、今回神崎島が現れなければ訓練終了後には即座に下船し、駐屯地へ帰るはずであった。

しかし神崎島鎮守府と名乗る勢力が現れ、詳しい事は知らないが柏木交渉官とドノバン大使との交渉の結果。
日米艦隊は鎮守府艦隊の案内で神崎島の首府である神崎市へと向かっている。

道中の連絡士官役として再度「いずも」に乗り込んだ時雨とは同じ階級であり、海の上では基本暇な陸自のため接点が増え、今ではこうして昼食を共にするまでに至った。

まあ、お陰様で嫉妬光線を周囲から浴びる羽目になっていたが。

何せ「時雨」と名乗る目の前の少女について大見もよく「知っている」
友人である柏木から某ブラウザゲームを勧められ遊んだ事があるからだ。

目の前に遊んでたゲームのキャラクターが人間として現実として存在している。
この事実に喜ぶより先にこそばゆい感覚を大見は覚えた。

しかし、ケッコンカッコカリ済み。
加えて重婚状態なのには絶望と羨望を混ぜ合わせた感情が出そうになったが・・・。

最も大見よりさらに上の階級の人間はそう単純に考えておらず、まるでアニメの世界から飛び出て来たかのような様々な身体的な特徴を有する艦長と指揮官に相対した自衛隊とアメリカの佐官、将官達はどう接するべきか真剣に悩んだ(何せどう見ても20代、あるいは10代半かそれ以下の少女達なのだから)

加えて神崎側から語られる彼女自身の歴史とその正体に度肝を抜かれた。
曰く、自分達は「艦娘」として復活したかつての戦争で沈んだ軍艦の存在である。

曰く、現世と離れた常世の世界に堕ち、深海棲艦との大戦争を提督の指揮下でこれまで戦ってきた。

曰く、気が遠くなる月日を経過し、ついに戦争の勝利と共に深海棲艦との講和を成立させた。
平和を勝ち取った矢先に海域封鎖が解け、再び現世へと戻ってきた。

131: 第三帝国 :2017/04/19(水) 23:46:46

何度聞いてもおとぎ話にしか聞こえない内容で、聞かされた側は本国にどう報告すべきか頭を悩ませると同時に、彼女らの「正体」は噂ではなく公然の事実として自衛隊とアメリカ海軍の間に知れ渡った。

「まさか宇宙人に続いて今度は艦〇れが現実化するなんて・・・」

「おまけに全員ケッコンカッコカリ済み・・・神崎もげろ」

「いや、未実装艦ならワンチャンある!」

「ヤマカゼは!この中にマイ・ドータであるヤマカゼはいないのか!?」

      • どうやら海上自衛隊にはT督が大勢着任しているようであった。
ついでにアメリカ海軍にはアドミラルではなくパパ提督ことdadmiralがいるようである。

なお柏木と自衛隊の報告を聞いた日本政府とヤルバーンも色んな意味で驚愕すると同時に、異星人と日本政府の役人は調査のために俄かに艦〇れにT督として着任しだし、サーバーに負荷が掛かりつつあった。

幹部自衛官として一連のやり取りは聞き及んでおり、さらに友人である柏木を経由してエラー猫爆撃も近いとの談で大見は公式が病気と頭を抱えることになったが・・・。 

「大丈夫?疲れたかい?」

「・・・いや、何でもない」

こちらの様子を見て不思議そうに首を傾げる時雨に「実は君は二次元のキャラクターだと自分は認識しており、それが現実に現れている事実に困惑している」と言えるはずもなく、何でもないと大見は答える。


現在、既に日本政府は神崎島の主権を尊重すると政府発表をしており、アメリカ、さらにヤルバーンも神崎島の意思を尊重するとの談話を発表したため、領土欲に目がくらんだ大多数の国や個人は一度引き下がったが大陸はそれで引かなかった。
大隈海峡を突破し神崎島の竜宮島の正面海域に到着した中国艦隊に対し「翔鶴」「瑞鶴」を中心とした機動部隊が警告。
極度の緊張状態下での睨みあいが続いていたが、現場にアメリカ原子力空母「カール・ヴィンソン 」を中心とする空母第1打撃群が到着。

「紛争回避のための監視」と称した実質的な神崎島援護、中国排除の動きに対して中国艦隊はようやく退いたところで、
大陸側の政府発表によれば「米帝と日帝による新たな帝国主義の現れ」と声を荒げている。

そんな中、神崎島とどのような関係を構築するのか?
その問いに対し柏木政府特務交渉官の交渉手腕が内外から注目を浴びており、

あの突撃馬鹿も苦労するな、
と密かに溜息を大見は吐いた。




おわり

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最終更新:2017年05月04日 13:58