662: 第三帝国 :2017/08/24(木) 22:47:52


銀河連合日本×神崎島ネタSS――——「演出」


ハイジャックされたエアバスA380。
しかし事前にそのことを知った日本政府とヤルバーンは両者の間に設立された秘密実力組織による介入を決意。

結果、田中さんに化けたシエがアラブの髭男を締め上げるという光景が機中で演出されていた。
しかしこの秘密実力組織、通称メルヴェンにヤルバーンの人員だけでなく最近急きょ新たな人員も加わった。

その人員もシエと共に機中におり女性客に化けており、
異変に気付いてシエの背後からナイフを突き刺そうと駆けるハイジャック犯の足を突き出しハイジャック犯を引っ掛けて転倒させた。

「امرأة!!(女!)」

転倒したハイジャック犯は痛む鼻を抑えつつアラビア語で女性客を罵倒する。
周囲の乗客は恐怖で悲鳴を挙げるが当の女性客は涼しげな表情を浮かべている。

それどころか男に対して僅かに嘲笑すら浮かべており、
その態度に激高した男は女性客に対してナイフを振るうが――――――女性客に腕を掴まれる。

ミシミシと嫌な音が男の腕から発生し、
男が堪らず悲鳴を漏らし、手に持っていたナイフを手放す。

そして女性客の姿が崩れて徐々に異形の姿を現す。
男は恐怖で、周囲の乗客は有りえない現象に注目する。

両目を覆う鋼鉄製の仮面。
青が混ざった灰色の肌に暗闇のごとく真っ黒な長い髪。
出る所は出て引っ込むところは引っ込んでいるナイスバディなシエほどではないが、
黒のノースリーブの下からしっかり鍛えこまれた肉体美とほどよい大きさのバストが主張する。

神崎島鎮守府所属、軽巡棲姫であった。

「沈メ」

軽巡棲姫はそう言うなり男の胸倉を掴んで床に叩きつける。
痛みで悶絶する男を無視して、軽巡棲姫は用意してあった拘束具にかける。
乗客は妖艶な魔女を連想させるシエに続いて現れた軽巡棲姫にどう反応すれば良いか分からず呆然とする。

助太刀されたシエはグッジョブ、とばかりに親指を立てる。
その反応に対して軽巡棲姫は軽く会釈し、視線でシエに対して次の行動を促す。
これにシエも同じく考えらしく指を鳴らしたのを合図に幾条もの光柱が現れる。

光柱からバトルスーツに身を包んだヤルバーン戦闘員だけでなく、
陸戦使用の装備に身を固めた艦娘、第18駆逐隊の霞を先頭も現れた。

663: 第三帝国 :2017/08/24(木) 22:48:25

「深通さん」

霞の催促に軽巡棲姫は頷く。
それを合図に一斉にビジネスクラス区域へ突入し閃光と派手な音響が鳴り響く。
ロイヤルファーストクラスでも打撃音が轟き、しばらく沈黙の時間が経過する。

やがてヤルバーン戦闘員と艦娘が拘束したハイジャック犯を続々と引きずり出したところで、
乗客は勝利と自分たちが助かった事を確信して歓喜と歓声、拍手が機中を満たした。

そして助かったと分かると早速スマートフォンやカメラでの撮影が始まる。
中にはツイッターで興奮気味に状況を呟く乗客もおり、数時間後のネットはお祭り騒ぎ確定となる。

で、エロ別嬪・・・もといファンタジー物の如何にも妖艶な魔女、という風体をしたシエ。
その上、正真正銘のファンタジー作品から現れた軽巡棲姫に艦娘との間に記念写真をねだる乗客が続出。
ついさっきまでの悲壮感はフェードアウトしてやいのやいのとお祭り騒ぎの賑やかな雰囲気になっていた。

「はいはい慌てないでー。
 記念撮影は逃げないからみんな一列に並んでー」

陽炎が混雑する機内を整理するも乗客の高揚感は抑えられない。
中には記念撮影だけで留まらずサインもねだる乗客もおり、
霞、不知火、霰それにヤルバーン戦闘員は先ほどからノートやら服やら何やらにずっとサインをしている。

やがて興奮の熱が収まったのを見計らって軽巡棲姫がCAからマイクを借りて機内放送をした。

『本機ニ搭乗スル乗客ノ皆様。
 私ハ神崎島鎮守府ニ所属スル軽巡棲姫、神崎深通デス。
 今回私達ノ提督ガコノハイジャックノ犯行計画ヲ知リ是非トモ日本政府ノ手助ケヲシタイ。
 ト所望シ、ティエルクマスカ連合、ヤルバーン所属ノ特務組織『メルヴェン』ト共同デコレニ対処シマシタ。
 皆様ニハゴ迷惑ヲオカケシタ事ヲ御詫ビ申シ上ゲルト同時ニ、皆様ノ冷静ナ協力ニヨリハイジャック犯ヲ確保スルコトガデキマシタ、アリガトウゴザイマス』

664: 第三帝国 :2017/08/24(木) 22:49:17

そして一礼。
機内に大歓声と盛大な拍手が発生し、眩いばかりにフラッシュが盛大に焚かれる。
続けてシエがマイクから語りかける。

『我々ハ、コレニテ撤収スル。
 はいじゃっく犯ニツイテハ我々ガふらんす政府ニ引き渡ス。
 諸君ラハそのママ『ぱり』へト向かうと良イ、良き旅が有ランことヲ祈ル、デハさらば」

シエがそう良い終えるとティエルクマスカ敬礼をヤルバーン戦闘員と共に行い、
艦娘達は地球でもお馴染みの極端に脇を締め肘を張らない挙手の敬礼をして光柱に包まれその場から後にした。


一連の出来事はその後世界でトップニュースとして扱われた。
まるでSFのような出来事に世界は大いに注目し、シエに艦娘達の記念写真が報道の第一報を飾った。

しかし各国の政府首脳や陰謀を企む人種は日本とヤルバーンが想像以上に親密、
かつ連携していることに衝撃を受け、そこに神崎島が加わった事実を認めざるを得なかった。
それこそが某突撃馬鹿が提唱した「抑止力」であり、今回この件に介入することを決断した神崎提督の狙いであった。

しかし、中原の民の末裔は違った。
ヤルバーンの介入により中華の夢が阻まれる。
という恐怖と同時に自分たちでなく外星人に屈した日帝の亡霊に激怒した。

日本人が聞けば意味が分からない発想だが、
阿Q的思考、あるいは中華OSでは中華の類縁以外との関係は『上か下か』の発想しかなく、
決して「対等」や「平等」といった西側的な発想、また文化、思想に至ることがなかった。

だからこそ中華の大陸で通称「ガーク」と称される勢力はさらに拡大し、
この内憂に対して13億の人民を束ねるとある人物は一つの賭けに出ることを決断した・・・。









おわり

666: 第三帝国 :2017/08/24(木) 23:00:46
以上です。
皆で楽しめたらとても嬉しいです。
我もSSを書こう!と皆様の創作意欲を刺激できたらさらに嬉しいです。

それと194様、更新乙です。
少し前にあった論争はまあ「夏あるいは冬か春の休み」なので無視して投稿されれば良いと思います。

では

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最終更新:2017年08月27日 09:03