986: 第三帝国 :2017/11/26(日) 21:26:54
銀河連合日本×神崎島ネタSS――——―「合同信任状捧呈式Ⅱ」
『東洋鬼がっ!』
FGM-148ジャベリンの照準を覗く男が罵り声を上げる。
はじめは簡単な仕事だと聞いていただけに男の怒りはなお大きかった。
自分達以外に対物ライフルを使用しての狙撃を任された人間がいると聞いて大げさだと思っていたくらいだ。
しかしそれは違った。
外星人の技術であるシールドで馬車を完全に守る、なんて誰が考え付くだろうか?
少なくともそこいらの官僚、政治家にはとても思いつかないし普通は面子云々で握りつぶされるだろう。
なおFGM-148ジャベリンだがハッキリ言って安くない。
しかも対戦車ミサイルなどという大掛かりな物を日本に持ち込むのは不可能に近い。
ゆえに今回入国に際してそうした検査から逃れるために祖国の外交特権を利用して持ち込んだのだ。
『どうする、同志?
このままだと任務が達成できないぞ?』
観測役の同志が顔を青くして言う。
帰国後に受けるであろう仕打ちについて想像しているのだろう。
『いや、まだ手段はある。
要は騒ぎを起こせばよいから――――あそこを狙う』
ジャベリンの向きをコンクリートジャングルの中に浮かぶ緑の島、皇居に照準を合わせた。
『成程!その手があったか!』
『ああ、これで俺たちは英雄だ!』
調子に乗っている劣悪列島民族に懲罰を下す。
そんな絶対正義に酔いしれつつ安全装置を解除して発射態勢に入ろうとしたその時―――――。
「うふふふふ、な~にをしているのかしら?」
第三者の声が響いた。
「敌人!(敵だ!)」
反射的に傍に置いてあった拳銃、
67式微声手鎗で即座に声がした方向へ向けて発砲。
サイレンサーの銃なので通常より小さいとはいえ連続して発砲音が響く。
工作員たちはこれまでの経験から全弾を確実に目標に叩き込めたと確信したが、
987: 第三帝国 :2017/11/26(日) 21:27:59
「あらあら~痛いじゃないの~」
全弾が命中したにも関わらず少女は変わらずその場で立っていた。
「「・・・っ!?」」
その光景に工作員達は絶句する。
あり得ない光景に思考が空白状態となり動きを止める。
敵を前にして打ち尽くした弾倉の交換すら忘れてしまう。
そしてそんな相手の状態に龍田は見逃すはずもなく、
「もう声も出ませんか~」
のんびりとした口調であるが一瞬で間合いを詰める。
使い慣れた長刀型の艤装を虚空の中から出現させて一閃。
工作員の胴が2人揃って上下に分かれて周囲に血吹雪を作―――――らなかった。
「峰内よぉ、安心しなさい。
まあ、加減したとはいえ肋骨とか色々折れていて痛いかもしれないけど」
龍田の視線の先には痛みで悶絶し、意識を喪失した工作員達の姿があった。
「コッチモ片付イタカ。
シカシ、少シ見タガナカナカノ腕前ダナ龍田」
直後、龍田が一瞬でケリを着けたこと褒めるエロいねーちゃん・・・ゲホゲホ、日本人モードのシエが現れる。
「ふふふ、天龍ちゃんより上手でしょ?
でもこの事はあの子には内緒にしていてね、拗ねちゃうから。
・・・って、あら?もしかして一発いいのをもらっちゃったみたい?」
「一発ドコロカ2発モ受ケテシマッタ。
マダマダ訓練ト知識ガ不足シテイタ、不覚ダ」
「・・・もしかしてその肩に担いでいるその銃で?」
「ウム」
「・・・・・・私が言うのもあれだけど、普通は胴体が真っ二つに分かれる代物よそれは」
対物ライフルを2発も受けていながら「腹が少し痛む」としか思えない動作をしているシエに龍田は呆れを含んだ感想を口にした。
「二ホン人的ナ表現ヲ借リレバ『PVMCG様々』ト言ッタ所ダ」
「相変わらず出鱈目ねぇ、それ」
対物ライフルを受けても大丈夫。
という地球の歩兵に革命が起こること待ったなしの宇宙人の超絶技術に龍田が再度呆れる。
「マア、兎モ角コレデ私達ノ任務ハ完了ダ」
「そうね、天龍ちゃん達が護衛している儀装馬車も宮城(きゅうじょう)に入れたみたいね」
2人の視線は儀仗馬車が護衛に見送られつつ二重橋、正門石橋を渡って正面門に入っていく様子が見られた。
お膳立てが終わり、歴史に残る儀式が始まる・・・。
おわり
最終更新:2017年11月30日 20:54