ウザ玉にはもったいないけど薄めの砂糖をどうぞ






玉城の抱き枕





1月4日の夜。もうとっくのとうにお日様はその顔を地平の彼方に下げてしまい。大晦日から今夜にかけて連続の新年会を過ごしていた玉城は頭が痛かった

二日酔いで痛む頭は朝から昼の間に治る。するとまたお酒の出番がやって来る。次の日にはまた同じ事を繰り返しての四日目だ

この日は寒かった。ひたすらに寒かった。巻いた水が少しあとには氷になるくらいに気温が低下していた
冗談ではない。気分良く飲んで体を暖めたところでこうも寒いと芯から冷えてくる訳で、寒さを酔いで誤魔化すことも覚束ないと最悪だった
これに輪をかけて最悪なのが下手に暖房を点けることができない玉城的経済事情が絡んでいた
要するに年末年始の荒使いである
親戚の子供やなんかにお年玉でもあげる気分で宴会宴会また宴会と宴会のし通しで気がつけば年末の給金を使いきりに近いやらかしをしてしまっていた

散財ここに極まる無計画さである

おかげで電気代節約のためにも暖房すら点けられなくなる有り様だ

そんなクソ寒い部屋の中でも外よりはまし。布団にくるまってりゃそれでいいわとダチの南たちが帰ったあとは布団を幾重にも巻いてミノムシみたいになっていた

とまあろくでもない有り様になる要因が自分自身な自業自得男なところへ一人の少女が訪ねてきた
訪ねてきたというよりかは部屋の鍵を勝手に解錠して勝手に上がり込んできたのだ

「お兄ちゃんおはよーこんにちはーこんばんはーあけましておめでとうー!お兄ちゃんのラブリークララちゃんが帰って来たよー!」

勝手知ったる大家の娘、年の離れた幼なじみ。というか彼女が小さい頃には玉城が遊び相手になってあげていた少女クララ・ランフランクであった
普段ならそのいきなり来てのハイなテンションに嫌みの一つでもつけていそうな玉城はしかし、今夜に限っては違っていた

「あけましておめでとうクララ!ちょうどいいとこに来た!はよ来いこっち来い今すぐに来やがれ!」

年明けの挨拶もそこそこにクララへ手招きして呼び寄せるのだ
クララはクララで何の警戒もなく玉城へ近づいていく。知らない仲で無し特段警戒の必要がないからだろう
だから

「なぁにお兄ちゃん何かよ---」

彼へと問いかけたところでがばっと抱き寄せられて分厚い布団の中へと引っ張り困れてしまったのだ

「キャーっ、な、なに?なに? お、お、おに、お兄ちゃんなにして----!」

だいたい何事にも動じない冷徹な暗殺者。笑顔でひとを殺害する事もできる一面を持ったクララもこの奇行には驚かされずにいられなかった

(お、お兄ちゃんに布団の中連れ込まれちゃったよーっ)

彼女は玉城に好意を寄せている。それも完全無条件の無償で無垢なる愛だ

好きだから好き

働かなくても自分が養うからクララと結婚してね?など断言できてしまうくらいに無条件で玉城に好意を抱いていた
幼い頃から遊んでくれたことや必要もないのに玉城がゴロツキから助け出してくれたことなど多分な要素が重なって好きだから好きと思うようになっていた

さあそんな淡いどころか強すぎる強愛的な好意を抱く玉城に布団へ連れ込まれて動じずにいられようか?

正解は----

(ど、どうしよう?どうしよう?どうしよう?お、おに、いちゃ----ま、まさかクララをっ?! だ、ダメだよそんなこと、そんそんなこと----!)

動揺しまくりだった
好きな男性に布団へ
それはイコールで大人の階段を登るとき

クララがそんな風に考えても無理からん事。が、この男は違った。いくらなんでも素面でこんなことをするほど馬鹿でもない
無論今さらになるが玉城が考え無しのアホには違いなく、彼の事が好きなクララ
や気になっている様子のマリーベル。他人を穿ったような目でみないユーフェミアやナナリー
といった一部の人間を除きほぼすべての顔見知り・友人たちからウザいと見られがちな言動行動ばかりの彼でもこんな事はしない。普通だったならば

ただし今日はついさっきまで飲んでいたわけでいま現在においても絶讚酔っぱらい中だった。だからこんな大胆不敵なセクハラを通り越してる無茶をしているのである

こんな事をした訳。それは実にシンプル・イズ・アウトであった

「あーっ!こんちきしょーめーっクララあったけーっあったけーよクララの体はーっ!思った通りあったけーわ!」

玉城はクララを抱き枕の如く抱き締めながら、彼女の頭を撫で撫で、頭から背中を通り腰へと彼女の髪を撫で下ろして、やんわりとだがしっかりと抱き締めていた

「クララ抱き枕だぜー!略してクラ抱き枕ーーっなんつってなー!!」

「え、ええっ?! あ、う、うんそう、なんだ?」

早い話が寒いからクララの人肌を求めて抱き枕してみた。というだけの事だ

クララだからよかったような物の、見知らぬ女性やら友人関係程度の間柄の女性ならば完全にアウト。玉城はこの新年1月中を留置場で過ごす事となっていただろう

「お兄ちゃん、お 酒臭いよう~っ」

「クララは今夜いっぱい俺様の枕!もう決めたぜ絶対離さねーかんなーっ!」

「クララはちょっと覚悟決めたのにぃ」

覚悟を決めた。することするならしてもいいよと一瞬でも考えた自分が馬鹿だったとクララは嘆きながら

「で、でもお兄ちゃん今夜はクララと寝てくれるんだ・・・?」

「寝る!俺は寝る!寝るぞー!クララを抱いたままこのまま寝ます!宴もたけなわ向かえて終わっちまったからクラ枕であったか寝む寝むと洒落混みます!」

それでも大好きな人と一緒に布団の中で寝る幸せを感じ入らずにはいられなかった

「んで近くデートしようぜー!金杯なー!クララあったかい!あったかいってこたぁ熱い!熱いってことはだ、勝てるってことよ!こりゃ勝つるぜ今年の俺様!だからクララと一緒にお馬さんデートだー!」

「もうっ、それデートじゃなくてギャンブルだよーっ。それにクララ高校生なんだからね?」

布団に連れ込まれた今夜のクララは長袖フリル付きのスカート姿。普段はアッシュフォード学園高等部の学生服が多い
本業こそ"なんであれ"クララ・ランフランク。彼女もまた恋するひとりの女子校生であるのだった


次の日、家へ帰ってこないクララを心配したVVが玉城の部屋にやってきたとき、玉城がクララを抱き締めて布団の中でぐーすか。クララはすぅすぅと眠っているところが発見された












































玉城はしこたま殴られた

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最終更新:2018年03月25日 12:02