253: 第三帝国 :2018/04/02(月) 06:44:25


銀河連合日本×神崎島ネタSS――——――「犠牲羊」


東京の銀座。
あるいは赤坂あたりにある某高級料亭。

中国が日本の気象衛星「ひまわり」を破壊したその夜。
今後の対応について話し合うために三島副総理主催で二藤部総理、そして新見、白木、春日、柏木といった安保委員会の面々が揃っていた。

ティ連合から日本政府へ宛てられた親書。
そして突撃バカが定着しつつある柏木宛への招待状について話題となっていた・・・。

「でもね・・・フフフ、柏木さん・・・あなた、
 フェルフェリエさんとの婚約と今回のティ連合からの招待状・・・。
 この両者の中心人物はあなたであり、その重要性についてイマイチ理解なさってないのではないですか?」

「え?」

「本当に分かってねーみたいだな、柏木先生。
 いやー俺なんて久々に興奮してなかなか寝付けなかったのに」

「んんっ?」

二藤部と三島の言葉を理解できず柏木は首を傾げる。
それを見ていた春日、新見は口元を押さえて必死に笑わまいと堪えている。

予想はしていたがやれやれ、
とばかりに白木が首を左右に振ってから柏木に対して言葉を綴った。

「柏木、おまえフェルフェリアさんと結婚式をするとしたらどこでする予定だ?」

「え、そりゃ勿論近所の神社とかホテルで・・・」

「・・・よし、次の質問だ。
 ティ連合からおまえ宛に招待状が届いたことをどう思う?」

「いやーフェルと一緒にいられてよかったなー。
 後ついでに向こうの両親に挨拶とかしようと思ったけど・・・?」

と、正直な感想を口にする柏木。
それを聞いていた人間が一斉に大爆笑。
笑い声が木霊し、一人柏木が何が起こった!?と焦る。

「ひーひー、バカだバカだと思っていたけど、
 ここまで考えなしの突撃バカだとは思わなかったぜっ・・・!!」

「ちょ、白木、おま!?
 というより、どういう意味だよそれ!!?」

254: 第三帝国 :2018/04/02(月) 06:44:57

「くくくく、いいぜ教えてやろう。
 おまえ、『人類で初めて異星人との結婚』を成し遂げた上に、『人類で初めて五千万年光年の彼方へ行った』人間として記憶されるのだぜ、オーケー?」

「へ・・・・あ、」

今更ながら事の重大性に気づいた柏木が石化する。

「田中さんのようにヤルバーンの方々と男女で、『そういう仲』に成った例は珍しくはないですが、結婚まで踏み込んだのは・・・ハハハ、柏木さんが初めてですよ。
 それにフェルフェリアさんはヤルバーンのナンバー2なので柏木さんの結婚式には私も出なくては」

「当然、俺も参加するぜ。
 それに与党野党も我も我もと参加を希望するだろう。
 あぁ後、各国の大使もこれを機会にヤルバーンと近づこうと参加者が殺到するなー。
 場合によっては大臣、大統領クラスの参加者も出るかもなー、いやー外務大臣として困ったなー」

と、苦笑する二藤部。
さらに三島が「困った困った」とワザとらしく言葉を続ける。

「そ、そうだった・・・。
 というか、何で俺気づかなかったんだ・・・?」

「おまえの事だ。
 どうせ外人さんと結婚する程度にしか考えていなかったんだろ?」

「ぐふぅ・・・その通りだ」

再び白木に言葉で凹られる柏木。
傍から見れば新喜劇の類にしか見えないせいで再度周囲の人間は爆笑する。

「分かって頂けましたか柏木さん?
 貴方はとても重要な人間なので日本政府として『特派大使』に任命します。
 そして大使としてティ連合に送ることについて公開する方向性で固めています」

二藤部がそう一気に畳みかける。

「えっ?
 ちょ、ちょっと待ってください!
 この事を公開してしまうんですか!?」

「おぼろけとはいえ、
 元々地球から冥王星にいたヤルバーンを観測できたんだぜ。
 それが目の前で五千万年光年先へ行くとなるとそりゃ、ド派手なことになるだろうな。
 んで、神崎島との国交締結に尽力したおまえに、今や地球で知らぬ者はいないフェルフェリアさんがいなくなれば、ぜってー「どういうことだ?」と問い合わせが殺到する上に。中国やら何やらが隠蔽だの何なの因縁を突き付けて来るだろうな」

慌てふためく柏木に対して続けて白木が突っ込みを入れる。

「その中国ですが・・・もう、駄目ですね。
 それに半島の外交官が頻繁に中国と連絡を取り合っています。
 ロシアについても例の東欧で活動していた特殊部隊が極東へ移動を開始した。
 という情報も入っていますから・・・はっきり言って情勢は厳しくなりつつあります」

「『これ以上異星人と近づくな』というガーグなりのメッセージかもしれません。
 しかしだからこそ、『日本は屈しない』という意思をハッキリと伝えなければならない。
 だからこそ、柏木さん。貴方を何が何でもティ連合へ送り届けると同時に・・・まあ、犠牲羊となっていただきます、ぶっちゃけ」

「へぁ!?」

前半で新見が顔を暗くしつつ重い話をしたかと思えば、
後半の語り部である春日が唐突にいい笑顔と共に宣言した犠牲羊の言葉に柏木は再度驚愕する。


「諦めるんだな、柏木先生。
 なーに、先生の外堀を埋めるだけさ。
 日本のためにちょっとばかし利用させていただくぜ」

くつくつと悪い笑顔を浮かべる三島。
周囲を見渡すが決定事項なのは態度からして明白で、柏木はがっくりと項垂れた。

255: 第三帝国 :2018/04/02(月) 06:53:54
以上です。
では

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最終更新:2018年04月06日 09:58