45: ひゅうが :2018/06/04(月) 04:49:39
※※全般的にギャグ入ってます


   艦こ○ 神崎島ネタSS――「男どものプロジェクトX○○○」




――1937(昭和12)年12月21日


「さて諸君。特別任務である」

「ハッ!」

「ところで堀閣下」

「ボスだ。」

「は?」

「私は諸君の長を拝命している。いわばボスだ。ゆえにそう呼んでほしい」

「閣下。それでは山下閣下と…」

「む?ならば冠詞『The』をつけよ。そうだな。ザ・ボスと呼べ。」

それ、女性だよという突っ込みをいれる者はここにいない。
この帝国高等弁務官府、亜熱帯ゆえにやや暖房を利かせる程度の建物の一室に集まっていたのは、この庁舎につめる概ね将校以上の階級の者たちであったからだった。
もっとも、それは元ネタを知らないことと同義ではないのだが。

「ふむ。ならば俺はスネークだな。秋雲がそういっていた」

「山下閣下。そのとき何をしておられたんです?」

「うむ。少し海防艦組に伊良湖のモナカを配っていたら一航戦組に見つかってしまってな…そして」

「段ボールに隠れていたんですか?」

「そういうことになる。なんだ、知っているのか?」

「いえ。スネークは段ボールに隠れるもの…らしいです。」

「まぁそんなところだろう。あとなぜかカロリーメ○トをもらった」

ついでにいえば、陸海軍の将校たちが最も突っ込みたかったのは目の前でイイ笑顔をしている将帥2名の格好だった。
編み上げブーツに紺色の化学繊維らしいズボン、そして同系統の物入れ多数が入ったベストに長袖の上着。
暗色で耳までを覆う兜(ヘルメット)に飛行眼鏡というよりは海女の使う水中眼鏡に近い物体が付属している。
兜の横には小型懐中電灯らしきものが付属していた。
どうみても、この島の娯楽映画に登場するスペシャル・フォース(特殊部隊)の格好である。
ご丁寧に胸元にはIJNやIJAのアップリケがついていた。
やや肥満体である二人にあわせて特注されたらしい。
というかどこに注文したのだ。

そして何より異彩を放っていたのが――


「閣下」

「ザ・ボスだ」

「ザ・ボス。その…頭についているそれは、もしや」

「ふふふ。わかったか。」

「はい。本気ですか?」

暗色系統の兜に似つかわしくない明色系統の物体がそこにかぶせられていた。

「本気だ。諸君も知っているだろう?」

「いや、確かにそうですが…」

46: ひゅうが :2018/06/04(月) 04:50:15

海軍士官らしい白い第2種軍装の肩が少し落ちる。
そんな様子を二人の男はニヤニヤ笑いながら見ている。
より肥満体でなぜか芹沢博士じみた眼帯の男の方が耐え切れないように笑った。

「はっはっは。気にするな。それに我々には段ボールという無敵の迷彩…こちらでいうところのカムフラージュがあるのだ。
なにしろ、露骨に動いても気付かれなかったくらいだぞ」

「スネーク閣下!それはお約束だから動けなかっただけです!あと一航戦の彼女らが職後すぐだったのでしょうそれ!」

「なぜわかった?!」

「あの娘さんたちなら100メートル先の間宮アイスクリームでも感知します!というかされました!」

うわぁ…と全員が引いた。
実体験だったのか。

「貴様やるな。仮称いせ型2番艦。」

「何ですかそれ」

「今名付けた。前世は瑞雲教の大司教だったに違いない。ついでに黒歴史も多そうだ。
邪気眼の使い手は誤魔化せんぞ」

「よくわからないがなんで納得してしまうんでしょうね!」

「まぁまぁ瑞雲大司教」

「ザ・ボスまで!」

ニヤニヤ笑う自称ザ・ボスであるところの海軍中将が先ほどまで肩をおとしていた海軍将校を指さした

「君の黒歴史であるところの同人活動についてはこちらの仮称ドライ・ライヒから聞かせてもらったぞ!」

「うわぁぁぁ!」

色々と台無しだった。
5分ばかり、天保銭組になれずにいろいろこじらせた挙句この島に押し付けられた箸にも棒にもかからない将校をいじった自称スネークは唐突に真面目な表情になる。


「気付いているだろう?ここ数日の『鎮守府』の諸君の格好を」

全員が頷いた。
艦娘、といわれるだいたい生物学的には人類と近しいらしい種族は、多くの理解しがたい特徴が存在する。
戦闘時の防弾服じみたバカげた強度を誇る衣類に瞬時に着替えることができる(なおこれを変身と呼んだのは日曜朝に早起きして神崎島放送協会の第4や第7周波数帯を見る習慣をもつ別の陸軍将校だった)こともそのひとつだった。
それとは別の制服を着用して仕事にあたる上、私服も持っているらしいが着替えの手間が大幅に短縮されているのは世の女性からすれば羨ましいことかもしれない。
だが、高等弁務官府の人々が驚いたのは実によくこの服が変わることだった。
春には花見仕様になり、そして夏場にはこの時代からすれば驚天動地の上下が別の水着で勤務することすらあった。
それでいて仕事にはまったく支障をきたしていないのだから、健全な日本男児であるところの彼らは目のやり場に困ることしきりであった。
(そういえば海軍が秋刀魚漁を仕事というのだろうか?)

47: ひゅうが :2018/06/04(月) 04:52:05

「これに対し、わが帝国は全力で答えることにした」

「本土の許可はとってあるぞ。島側との友好関係構築は我々の重要な任務だ」

それに――と自称ザ・ボスが声を低くした。

「我々はこの島より多くの利益を得た。ここではないどこかの歴史とはいえ、帝国がたどるはずであった歴史で水漬く屍となってもまた帝国に益をもたらした。
この恩義にはいささかでも報いるべきであると本職は考える」

全員が頷いた。
それに加え、この半年以上を神崎島で過ごした駐在武官たちはこの島の運んできた文化や文明の利器にどっぷりと漬かっていた。
それを当たり前だと開き直らないだけの美徳にこの時期の帝国陸海軍は不自由しなくなっていたのだった。

義をみてせざるは勇なきなり。
明治以来、武士道の美点と近代性の両立をもってその本質にしようと試みた帝国陸海軍はその精華を確かに伝えていたのである。

「まぁ実は、提督の体が色々な意味でもたない上にこの1年間出ずっぱりだった神崎島中央即応集団がそろってこの時期特別休暇をとるからと事務方に泣きつかれたからなのだが」

「閣下!」

「そこはイイハナシダナーにしときましょうよ!」

「あのぺったん軽空母の悪影響受けてますよ!」

「よし瑞雲大司教。宗教裁判の時間だ」

「アイエエエエエ!宗教裁判?宗教裁判ナンデ!?」

訂正。こいつらも色々と島に染まってきて駄目だった。



――1937年12月24日深夜
赤い三角帽をかぶり、対照的に吸音ゴム底のブーツと特殊部隊の装備を整えた野郎どもは、警備の憲兵さんの案内でそーっと艦娘寮へと侵入。
数人ずつに分かれて合鍵を使って駆逐艦や海防艦以下の各姉妹艦部屋へ入室すると、同じくなぜか都市迷彩柄の袋の中からゴソゴソと箱らしきものを取り出して靴下の中やベッドの下へと置いていった。
そして、地味に不埒なことをしないかと監視してもいた憲兵さんたちと、見ている者がいるのならば実にムカつくいい笑顔をかわしてそそくさと帰途についた。
ついでに二次会扱いで祝杯を挙げ、翌日そろってぶっ倒れた

その頃には、駆逐艦娘や海防艦娘(と一部の純真な大型艦)は今回の下手人の息子や孫たち、さらに習慣の浸透しつつある日本人や海外の多数派と同様にサンタさんからのプレゼントに目を輝かせていたのだった。


…なお、彼らも出席した一次会では駆逐艦娘や海防艦娘もぱっかぱっか酒を飲んでいたのだが、それでもこんなことをするのかというような無粋な男はこの中に存在しなかったことを付け加えておく。

48: ひゅうが :2018/06/04(月) 04:55:12
【あとがき】――再び第三帝国様へのお詫びもあわせまして一本追加いたしました。
第三帝国様、楽しんでいただければ幸いです。
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最終更新:2023年12月10日 18:23