522: 第三帝国 :2018/07/28(土) 22:52:22
銀河連合日本×神崎島ネタSS――——――外伝「神崎島の夏休みⅢ」
時の流れは速く太陽は水平線の向こうへ沈み、空は赤い夕焼けとなり、それもやがて夜へと変化する。
鎮守府では笛や太鼓の祭囃子の音が音が響き、たっぷりソースを絡めた焼きそば、マヨネーズをこれでもかとかけたタコ焼き。
などなど祭りに欠かせないグルメの香りが漂い、行きかう人々の気分を高揚させる。
飲み物は子供はその場で作りたてのラムネを口にし、大人たちは涼むことを口実にビールやら冷酒を一杯やったりと・・・。
で、そんな中。
異星人女子&地球人女子連合軍と男2人の御一行が来てからフェルの第一声は。
「カレーはどこデスカ!カレー!」
であった。
予想通りである。
「カレーなら大和さんの伊勢エビカレーがお勧めよ」
「伊勢エビ、聞いたことがあるデスヨ。
伊勢エビは高級品でとっても美味しいト」
瑞鶴の提言にフェルが目の色を変える。
見れば大和と矢矧、雪風の3人が担当している伊勢エビカレーの天幕にはカレー狂いな異星人たちが集まりつつある。
「行って来ますデスヨ、マサトサン!」
ビシっと柏木に敬礼し駆け足で伊勢エビカレーの天幕に向かう。
カレー狂いの変わらなさに柏木は苦笑し、瑞鶴及びその他面々は爆笑する。
そして、柏木御一行以外でも大勢の人間が鎮守府納涼祭に参加して楽しんでいる。
例えば田中さんと目出度く親公認となったザッシュは明石のアイテム屋で風鈴を購入したり、射的でくちくいきゅうのぬいぐるみを欲しがる美加ちゃんのために父親として大見が一肌脱いだりとそれぞれ楽しんでいた。
イベントも盛りだくさんでウォースパイトと所謂『中の人』とのトークショー。
川内と駆逐水鬼によって水上で繰り広げられる夜戦訓練の披露。
大洗でのライブが決まった那珂と軽巡棲鬼のダブルライブ。
他にも電灯艦飾で夜の軍港に浮かぶ軍艦、サーチライトで作る光の回廊劇などあり目が離せない。
523: 第三帝国 :2018/07/28(土) 22:53:33
「しかしまあ・・・カオスだなぁ」
が、視線をドンちゃん騒いでいる方に向ければ、由良が歌う艦娘音頭に合わせて輪形陣でぬるぬると踊る深海浮輪(多数)
金箔に象嵌、漆など日本の伝統工芸の集約して作り上げた瑞雲1分の1サイズ神輿を「瑞雲!瑞雲!」と担ぐ航空巡洋艦と水上機母艦娘一同。
おまけに「霞ちゃん改二を称えよ!」と叫びドラム缶を鳴らしつつ霞改二姿をしたねぶたを引き回す礼号組などと突っ込みどころが追い付かない。
なおわくわく動画生放送を経由して見ているネット上は、
名前: 名無しさん@T督たちの憂鬱投稿日:~
瑞雲を崇めよ!
瑞雲を称えよ!
おお、瑞雲よ!
汝の名こそ誉なり!
名前: 名無しさん@T督たちの憂鬱投稿日:~
霞ちゃんを称えよ!
霞ちゃん改二を崇めよ!
礼号組万歳!駆逐艦万歳!
名前: 名無しさん@T督たちの憂鬱投稿日:~
それにしても、浮輪も出世したなぁ・・・まさかここまでメジャーな存在になるとは
名前: 名無しさん@T督たちの憂鬱投稿日:~
さんをつけろよデコ助野郎!!
サバト化したり深海浮輪が「さん」ずけされたりとごちゃごちゃであった。
「やあ、柏木さん。
楽しんでますか?」
「オマタセ、ミンナ」
そんな時、甚平姿で涼し気な格好をした神崎提督が柏木に声をかけた。
隣には浴衣姿の深海鶴棲姫が秘書艦として寄り添っている。
524: 第三帝国 :2018/07/28(土) 22:58:49
「ええ、神崎提督!
お陰様でフェルなんて・・・」
と柏木が伊勢エビカレーを受け取ってはしゃいでいるフェルを指摘し、神崎提督と深海鶴棲姫は先に笑った瑞鶴たちと同じく笑いを零す。
「フフン、頑張ッタ甲斐ガアッタネ、テイトクさん」
深海鶴棲姫が瑞鶴とよく似た仕草でそう言うなり提督の腕を自分のほうへぐいっと抱き寄せる。
途端、柏木の背後にいる艦娘たちから殺人光線じみた強すぎる視線が発せられる。
(我、修羅場に突入す!・・・って俺じゃねぇ!?
リアルジュウコンカッコカリをした勇者こと神崎提督だ・・・イキロ!)
心なしか冷や汗をダラダラ流しているようにも見える神崎提督に対して柏木は内心で敬礼を送る。
リアルな艦娘たちとハーレムを築いている神崎提督に嫉妬はないとは言えないが、それ以上に艦娘たちに振り回されている神崎提督の日常を知っているだけに同情心の方が勝っていた。
「・・・まぁ、いいわ。
どうせ後で提督さんと『仲良く』するつもりだし・・・」
と瑞鶴がもにょもにょもと言葉を濁す。
先ほどとは別な意味で熱い視線(複数)が柏木の背後から発せられる。
(・・・・・・やっぱ、モゲロ!!)
世界各地に住まうT督達の気持ちを代表して血涙を流しつつ柏木は内心で呟いた。
「マサトサーン。
マサトサンのカレーも買ってきたのデスヨ!
それともうスグ花火の打ち上げが始まるって言ってマシタ」
等とぱるぱるしていた柏木にカレーを2つ持ってきたフェルがやってくる。
間を開けずに、ひゅるるる~と間の抜けた笛のような音が空に響くと・・・・・・。
「花火よ!」
炸裂と同時に空に咲いた一凛の光の花を見て五十鈴が叫ぶ。
さらに続けて花火が夜空を照らし、光でできた大輪の花が咲き誇る。
「おお、綺麗だ」
修羅場回避で内心万々歳なのと、今夜の事で覚悟完了な神崎提督が殊更大声で叫ぶ。
「わぁああああ、綺麗ですネー!」
空に輝く大輪の花にフェルが目を輝かせる。
「うん、綺麗だな・・・」
両手にカレーを持つフェルを傍に抱き寄せ柏木が呟く。
不意に、空を見上げていたフェルと視線が合う。
「フェル・・・」
「あ、マサトサン・・・」
考えていることは視線を交わすだけで十分であった。
徐々に互いの唇が近づき―――――――――。
とある縁から恋仲となり、共に人生を歩むことを決意した地球人と異星人が過ごすとある日の神崎島の夏休み。
そこで特別な、永遠に忘れることができない思い出をまた1つ作ったのであった・・・。
おまけ
「なあ、フェル・・・」
「なんデスカ?」
「キスってカレー味がするんだな(悟り)」
「フェ!?ち、違うデス!」
色んな意味で思い出になったようである。
最終更新:2018年07月30日 12:42