431 :ひゅうが:2012/01/15(日) 21:21:14
前スレ944から948の続き、続いてしまったネタ


接触3~大日本宇宙帝国(笑)サイド~


――同 皇紀4248(西暦3588=宇宙暦788)年 銀河系
  白鳥座腕 秋津洲星系第3惑星 大日本帝国 帝都「宙京(そらのみやこ)」


「よくぞ集った我が精鋭たちよ!!」

「陛下・・・いえ殿下。はっちゃけすぎです。」

「そうか?まぁそれはともかくとして、またら君に会えて朕も――もとい余も嬉しいぞ?」

この人ってこんな性格だったっけ?と嶋田は溜息をついた。

気が付いたら日本が星間国家になっていた。しかも銀英伝の。
嶋田の感覚からいうと、こんな感じになる。

「はっはっは。嶋田さんも恥ずかしがらずに素直に来て下さればよかったのに。」

「誰のせいだと思っているんだ辻さん!?」

「ええっ!?嶋田さんをそんなに悩ませた覚えはないのですが!?いったいこっちに転生してきてから何があったのですか!?」

「もういいよ――」

嶋田は漫画チックに「るーるー」と涙を流す。

「ほう。なるほど余計なお世話だったのか?余は頼りになる仲間が貴君たちしかいないから藁にもすがる思いで儀式を執り行ったというに――」

「ああ。いえ、まったく何でもありません!むしろ真っ当な青春と仕事の日々を送れたので感謝していますですはい!」

そうか。と、月詠宮裕子内親王殿下は満月のような微笑を浮かべた。
帝国の月面遷都時に設けられた「宙宮御三家」の筆頭である彼女は、嶋田にとって絶対に逆らえない相手である。
なぜなら・・・

「すまぬ。神となってしずまっていた汝らを呼びだすのは気がひけたのだが。国難近しとの『先読み』にかかっては是非もない――怨んでくれてよいぞ。」

「いえいえ。殿下。嶋田さんも本心から嫌がっているわけではありませんよ。ねぇ?」

メガネ(絶滅していない)をキラリと光らせた辻は、貞子のように長い髪を左手で弄びながら嶋田の方を向いた。

こいつはまったく。と思いながら嶋田は辻や、その周囲でニヤニヤしているかつての面影がある面々や、上座で申し訳なさそうに顔を曇らせている内親王殿下の正体を思い出していた。
そう。これまでの会話でも分かるように、月詠宮殿下はかつての名を昭和天皇陛下という。
今や大帝の列にならぶ御方がこの世界に気がついたのは、あろうことか内府が極秘裏に献上していた某スペースオペラの傑作を読んでいたからであったらしい。

それまでは再び得た生を謳歌していた彼女は、大慌てで対処に乗り出した。
いくら「距離の暴虐」の彼方へと脱出し、せっかく開拓して長年住んでいたかつての領土を「国譲り」の捨て台詞を残して放棄したとはいっても、このままゆけば自由惑星同盟は銀河帝国に征服され、いずれはこの新天地にも連中はやってくるに違いない。
とそこまで考えていた殿下は、どうやら時の日本帝国政府の関心を誘ったらしい。
そこで彼女は、宮内庁書寮部が所管する一群のSF作品を手にすることができた。
いわく「大宰相の予言書」。
かつて大日本帝国を列強筆頭にまで押し上げ、13日戦争以前から地球統合政府成立までを半ばコントロールする強力な国際秩序を構築した「大宰相」嶋田繁太郎の手によるものとも、彼の側近だった精鋭集団が何かを用いて予見した世界の今後を記したとされる古文書である。
そこで殿下は考えた。

「そうだ。嶋田たちを呼ぼう。」と。

残念ながら記述は途中でとぎれていたが、ここまで予見していた伝説の英傑たちならきっと力になってくれるに違いない。
安定という名の停滞を生きる帝国政府の助力のもと、藁にもすがる思いで彼女は古文書をもとに「召喚」を請い願った。
そして、13日戦争以前「魂」と呼べる存在に限りなく肉薄していた「夢幻会」の成果は、完璧に作用したのだ。


「まぁ、時間がたったおかげで我々のイメージも随分と変わっていましたがね。」

と、メガネ貞子もどきの辻が苦笑する。

「まぁしょうがないだろう。広めたのは我々だ。」

こたえた伏見宮はどこのイケメン(笑)だよと言いたくなるようなキリリとしたグレーの髪をしている。
その横で疲れた表情をしているのは、地味なわりには青い瞳になっている南雲だ。「どうしてこうなったのか、と言いたくなりますがね」。という突っ込みは華麗に無視されている。
そしてそのほかの夢幻会の面々も、この場にはせいぞろいしていた。

432 :ひゅうが:2012/01/15(日) 21:21:55

ちなみに会合場所は日本の「伝統料理」と化しているラーメンを食べる「高級料亭」である。
関係ないかもしれないが、古典芸能と化していたアニメやエ○ゲに新風を吹き込むことにこの新たな夢幻会は尽力しており、その影響は今や帝国全土にも及びつつある(単に彼らの本性が出ただけの話かもしれないが)。

閑話休題。

「しかし、こうなってもまたお前と肩をならべられるのは、確かに嬉しいぞ嶋田。」

本当に嬉しそうに微笑しているのは、セットで呼ばれたという山本だった。
どこかでイメージが変わったらしく彼もまた、「彼女」になっていた。
原因は20世紀中に出されたらしいエ○ゲ「○姫無双」らしい。

嶋田は頭痛を覚えた。


「まぁ・・・皆の風体はともかく、再会は嬉しい。」

出来る限り仕事が山積しそうな制度改革が進行しつつある帝国政府や軍には近寄らないようにした嶋田だったが、嶋田の主人公(笑)補正か結局は嶋田はこういう立ち位置に落ち着いていた。
実際もう限界だったのだろう。魔王辻と嶋田の主君や上司たちの魔手から逃げるのは。
この世に再び生まれおちてから数十年、まぁよくもった方か。

「しかし、生まれ変わっても難題ばかりか。――回廊封鎖設備を営々と築いていたのが救いだが・・・。」

嶋田たちを尊敬の目で見つめるこの世界の日本帝国政府や「夢幻会」の面々を思い出しながら一同は頭痛を覚えていた。
長征1万光年ならぬ「大遷都」で1万7000光年を踏破し新たな大地へと至っていた日本帝国は、長きにわたる平和のおかげで経済的・文化的にはまだしも軍事的には停滞している。

危機感を覚えた帝国政府と夢幻会の「会合」主導での大改革が進みつつある(嶋田が軍に入らざるを得なかったのもこれが理由)が、現状では自由惑星同盟との間に存在する「サジタリウス回廊」(同盟名称『エア回廊』)や旧銀河連邦時代の辺境のさらに向こうにある「白鳥座回廊」の要塞砲台群や重防御陣地を使った、いわば近海迎撃型の艦隊決戦しか遂行することはできない。

嶋田をはじめとする改革派の将帥たちは「維新」と呼ばれる無血革命にも近い大改革を断行しつつあるこの世界の帝国で、頭の固い連中を相手にまたしても苦労させられていたのだった。


「こっちに来てまで漸減邀撃作戦と戦う羽目になるとは――」

「まぁ、あの日米戦のように国力が10倍近いなんてことがないのがまだ救いですね。」

「歴代の帝国首相が銀河連邦時代のような圧倒的国力を持つ敵の来襲に備え続けたことは僥倖としかいいようがない。経済発展と開拓、それに人口増加を図るためには漸減作戦も意味はあったのだろう。だがそれだけのために軍備を整備していては・・・。」

嶋田の言葉に全員が頷いた。
現在の大日本帝国の第1種甲種登録国民数は約580億(人工種族も含む)。
生物学的な意味で「人間」といえる未成年者の数が120億人を数えていることを考えると順調ということになるだろう。
だが、それを守るべき軍は銀河帝国や自由惑星同盟に比べ明らかに少数である。
もしも、このまま「原作」の通り自由惑星同盟を下した銀河帝国がサジタリウス腕に進出してくれば・・・いずれ日本帝国は数を回復した新銀河帝国との冷戦状態に突入するか、悪くすれば滅ぼされてしまう。
既に大質量を用いることでの超長距離ワープ航法が確立されつつある現在、それは自殺行為に他ならない。


「だからこその我々ですよ。フェザーンと同盟には役に立ってもらいましょう。我々の盾兼お客様として。その間に我々は独自に同盟領へ遠征しても大丈夫な程度の軍備を整備し、戦争を抑止しながら経済戦争での勝利を目指す。腕が鳴りますね。」

辻がニヤリと笑う。

嶋田は思った。帝国よ、君たちのは怨みはないが君たちの原作がいけないのだよ――今度こそ静かで平和な老後を過ごすために君たちには犠牲になってもらおう。
なに。心配はいらない。我々はお客様に損はさせない・・・と思う。たぶん。そうだといいなぁ。


かくして、大日本帝国は新たなる坂の上の雲を目指し始めた。

「あ。嶋田さん。地球からあなたにファンレターが届いていますよ。」

「辻さん。まさかそんなところにまで手を伸ばしていたんですか!?」

「いえ。これは先方からです。同盟の特使が持参してきましたので。」

「・・・なんだろう。とてもすごくいやな予感がする――」

そして、嶋田が自分が生きた証を見せつけられて頭痛と胃痛に悩まされる日々も、またはじまったのだった。

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最終更新:2012年01月26日 20:21