843 : ◆4b64ie/xbQ:2012/01/17(火) 18:25:05
刺激された厨二心のまま書き上げました、憂欝銀英ネタですが向こうが本格稼働するか待ち状態+本筋にあまり絡まないので此方に




電子の海―――

電脳化された者は勿論、特殊な感覚器を持ったものに始まり生体脳のままの者にすら外部貼り付け型の送受信機の開発により解放された人造の世界。

神が物質界を作ったならば、電子の世界を構築出来た人間は神の領域の諸端にたどり着いたといえるだろう。

「益体もないことを考えているなら、とっとと正気に戻って整理を続けろ親友」

などと益体もないことを考えていると、悪友が目の前にドサリと書類を置いて宣った。
意識を嫌々私的演算領域―心の海―から公共演算領域―外界―にもどすと、滑らかな飴色を宿す木造の机……の視覚データの上に書類の山ができている。

書類に見えるが、これも視覚化された情報データ。
地球・連邦~と、三層に渡り蓄えられ、肥やしとなって新技術を芽吹かせた大日本帝国の知の宝物である。
その分野は多岐にわたり……


手で触れればそのデータは自身のサブ電脳に送り込まれ、主脳の記憶野に残る技術名と意味付けされ暗記されたのと同じ状態となる。

「おい悪友、同盟への開放技術の仕分けなんだから最初から出来ないと分かってる霊魂や電脳ゴースト理論とかはさっさと弾いとけよ」

「知るか、彼処にたまってる書類を一抱え持ってきただけだ」

そう言って指した方に目を向ければ、何時の間にこの部屋に転送されてきたのか書類の山が三倍に増えていた。

「……マジかよ、またごたまぜで送ってきたのか?」

「流石に1000年以上時代が違うんだ、俺たちや、電脳や霊体技術が体系化されていない時代の俺達や、そもそも分野が存在しない同盟とズレるのは仕方ない」

「勘弁してくれ」

「諦めろ、そのための夢幻会仕分け組だ」

人類のみ、しかも衰退しつつある同盟。
人類から電子知性、新感覚保有種など枝分かれし、多様な文化が花開いた大日本。

善悪の観念など、連邦時代にある程度均質化した部分は合致すれども、その後の変化によって人体に手を加えることについてなど大小様々な感覚のズレが生じている。

今より十数年前。同盟の探査機の行動範囲から、接触が現実味を帯びたと判断した大日帝首脳部の様々な方策の一つによってこの世に再び顕れた過去の夢幻会メンバー。

このまま接触すれば民間レベルでの摩擦は勿論、大規模な亀裂も起きかねないと判断した彼等は放出する技術を厳選し、同時に感性の差を補正するための資料集めとして、召喚メンバーの一部でチームを結成させた。

そして、彼等もまた今世に再生された夢幻会会員なのだ。

844 : ◆4b64ie/xbQ:2012/01/17(火) 18:25:35

「……うし、資料課で篭もれるだけましだったな、そうマシだ、マシだからがんばろう」

そう棒読みする彼の姿は額に宝石のような感覚器を、目頭を揉むごとにピコピコと動く和製エルフのような耳を、そして透き通るような青髪を備えていた。
その肉体性能は同種族の中では最高峰だろう。

「そうだぞ、外回り組に比べれば……な」

そういう彼は一見普通の人間に見える。
しかしその物質体は作成時に召喚の影響によって偶然と必然が混じり合って素晴らしいバランスで組まれた各種部品により『理想的な擬体』と呼ばれるモノに仕上がっていた。

「悪友、今お前のボディは?」

「技術開発部巡り中」

そう言葉少なに答えた悪友は、書類仕事に没頭……いや逃避していた。

「そりゃあ伝説とかドンドン大きく理想的になって行くものだが……俺たちの器を拡張しないでくれ子孫め……」

夢幻会―――綺羅星どころか太陽のように輝く伝承は民衆のうちに刻み込まれ、大日本帝国民の霊的コミュニティの奥底から再び現世へと舞い降りた彼等へ様々な作用を及ぼしたのだ。

「漠然と上方補正された俺らはいいモルモットだよ……、イメージが固まっていた首脳部よりかは普通に近いからなぁ」

そう、夢幻会は民衆による無意識の導きで『彼等民衆の考える相応しい肉体』に転生したのだ。

作為を持って作られた最高品質の電脳。
隔世遺伝で理想的なバランスを得た、それ故に死産となるはずの胎児。

必然偶然、作為無作為。
如何にせよ、これにより彼等夢幻会は敬意と尊敬、そして探究心にさらされ続けるのだった。


「よく嶋田宰相は数十年も逃げ切れていたもんだ……」

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最終更新:2012年01月26日 20:43