564: 第三帝国 :2019/01/08(火) 00:21:41 HOST:70.244.32.202.bf.2iij.net
銀河連合日本×神崎島ネタSS――——――「フォークト博士とノースロップの異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて異形飛行機を愛するようになったか」
――――ヤルバーン内部、ヤル研
「これは・・・その、」
某突撃バカとお芋に春雨(黒)を衛星軌道から見送った多川信次一佐は目の前に鎮座する機体を見て言葉をなんとか絞り出す。
この呻くような声に同席している日本人たちは同意するように呻き声を漏らし、対してヤルバーンから派遣された技術者たちは発達過程文明の技術に触れてはしゃいでいる。
それは飛行機というにはあまりにも異様な姿をしていた。
3つのレシプロエンジン、そこまではよい。
だが発想が変態すぎた。
それはまさに3つの串にささった蒲焼だった
「ブローム・ウント・フォスBv P.170。
・・・こうして見ると変態すぎる、というか引くわ!!その発想に!?」
やっとまともな言葉を発することができた多川の意見に日本人技術者達は頷く。
何せこの機体、「良好な視界の三座偵察機」という開発要求に対し実際に飛んだ(ここ重要!)
Bv141という変態飛行機を世に送り出したリヒャルト・フォークト博士のペーパープランで終わった産物であるがそれが目の前にいた。
左右対称なだけでも博士が考えた機体としてましな方だが・・・。
兎も角文章で表現できないほど異様で今は日本軍機らしい緑色迷彩に赤い日の丸が機体に描かれているが、もし茶色で機体を塗ってしまえばかば焼きと区別がつかない事間違いなしな程度に異形飛行機であった。
「分かるわー。
でも困ったことに爆撃機としてスペック通りに飛ぶのよ、これが。
エンジンに制御システム、それに炭素繊維とかあれこれ弄っているから厳密なオリジナルではないけど」
「ええぇー・・・」
夕張のセリフに再度ドンびく日本人たち。
その言葉が正しければ時速800キロを叩き出す高速爆撃機となる。
「まあ、それよりも・・・こっちの方が興味を抱くんじゃない?」
夕張が振り返った先には巨大な全翼機が鎮座していた。
爆撃機「富嶽」と左程変わらぬ全幅を有するそれは機体全体を真っ黒に塗装されている。
航空機として異形の姿も相まって見る人に対して無言の圧を加えていた。
「YB-35。
フライ・バイ・ワイヤの導入による飛行の安定を確保。
それ以外の点として表面に施されたステルス塗装に炭素素材。
などなど色々21世紀由来の素材技術を導入しているからステルス機としての性能もあり。
ジェット機への換装もYB-49という例があるから短期間での性能向上も見込めるわ、それに――――」
オリジナルより拡張された爆装庫を指さす。
爆弾ではなくミサイルがぶら下がっているのが見える。
565: 第三帝国 :2019/01/08(火) 00:22:40 HOST:70.244.32.202.bf.2iij.net
「ミサイルだって詰めるわ、山ほどね」
驚くべきはノースロップの異常な愛情か、
あるいは史実で1946年に初飛行まで漕ぎつけたアメリカの技術力か?
確かに言えるのは表の歴史から「零れ落ちた」者たちが集う神崎島に同じく夢幻の存在となったこの異形機がたどり着くのは必然であったこと。
そして深海棲艦との戦いを経由し、今再び表の歴史へと帰ってきたことである。
「いいじゃないか」
空自の現場代表として出席していた多川は先ほど違い新しい玩具を手に入れて高揚している。
表情がどこぞの殿役を任されたどこぞの大隊指揮官のような笑みを浮かべる。
「とりあえず海自のP-3と同じく100機あれば最高だ」
「予算はどうするのよ?
防衛計画は予算の大幅な拡張。
と噂に聞くけど財務省が許すと思うの?」
北の核ミサイルや赤い大陸の軍拡より自衛隊が日々怯えている某省庁の名を夕張が告げる。
「なあに、心配無用。
・・・陸自の予算を削れば一発だ!!」
「ちょ、」
「陸自としては空自の提案に反対である!!」
同じく現場代表として出席していた大見健三等陸佐が叫ぶ。
唯でさえ悲惨な陸自の予算について現場で色々実感しているだけに念が籠っている。
「大体陸自など竹光のごときなまくらに過ぎぬと・・・」
「なまくらと申したか」
漂うサツバツなアトモスフィア。
しかしそこに新たなジエータイクラン・・・もとい海自が現れる。
「待たれい
話は聞かせてもらった」
まとめ役として参加している加藤幸一海将が威厳たっぷりに発言する。
これなら話が纏まりそうだと夕張は安心するが――――。
566: 第三帝国 :2019/01/08(火) 00:23:38 HOST:70.244.32.202.bf.2iij.net
「これは我々海自が使う。
陸自ともども空自は引っ込んでいたまえ」
あ、そういえばこの人。
空中巡洋艦構想を進めていた当事者だった。
と満面な笑みを浮かべる加藤海将の表情を見て夕張は今更ながら思い出す。
「てめーは陸自を怒らせた!」
「俺はとにかく、ひりついていたいんだよ!」
「黙れジジイ!戦略爆撃機で超低空からチェストASM-3とかばかなのしぬの?」
「かつて帝国海軍は高度計が0を切るまで肉薄低空雷撃を敢行したという、まあ噂だけど前からやってみたかった(蛮族スマイル)」
そして始まる良い年したオッサン連中の大人げない喧嘩。
- 加藤海将に室町蛮族OSがインストールされているような気がするが、まあ大丈夫だろう。
他国と比較して予算の制約が厳しい中で「ハイクアーンで何でも作れます!あと神崎島から色々援助します!」なんて言われてタガが外れているだけなのだから。
それに―――――。
「この程度『夕張』がいた時代よりずっといいし」
夕張は個人の名前でなく軍艦の名前として自分の名を呟きあの時代を回想する。
現場レベルは兎も角、佐官、将官でこうして和気あいあいとした場面などなかったと言ってもよい。
そして迎えた破滅の歴史を記憶と記録、体感で知っているだけに夕張は今の馬鹿騒ぎが羨ましかった。
「・・・いい時代になったわね」
小声で周囲に聞こえぬように夕張は独白した。
―――――余談だがしばらくの後、
防衛省から出された「新対艦誘導弾を運用するステルス支援機」の概算要求が通り、事情を知る人間の間で静かな衝撃が広がったことを記す。
おわり
最終更新:2019年01月26日 11:11