164: 635 :2019/02/25(月) 20:16:56 HOST:p1898232-ipbf412souka.saitama.ocn.ne.jp

銀河連合日本×神崎島 ネタ 飛躍


神崎島宇宙基地

巨大なロケットが打ち上げの時を待っていた。


「打ち上げ3分前です。全システムの電源が外部から内部に切り替えられました!」『180、79、78』

「トーチ点火!」『81、80、79』

「デフレクター冷却開始!」『69、68、67』

「打ち上げ1分前です!」『60、59、58』

「ウォーターカーテン散水開始!」『31、30、29』

「フライトモードオン!」『13、12、11』

「非常用電池起動!」『9、8、7』

「全システム準備完了!」『5、4、3』

「メインエンジンスタート!」『2、1』

「ヤタガラス搭載エネルギアロケットリフトオフ!」

ロケットはノズルから火を吐きながら龍の様に天空へと登っていく。

「オービターヤタガラスを搭載したエネルギアロケット1号機が神崎島宇宙基地から打ち上げられました。」

「打ち上げ以後ロケットの管制は神崎島宇宙基地管制塔から神崎島鎮守府宇宙司令部に引き継がれています。」



神崎島宇宙基地管制室

大勢の人間達が喜んでいた。

「よっしゃー!」

「やったぞ!」

「まて!まだ喜ぶのは早い!」

喜んでいた者達に神崎島宇宙開発の責任者ヴェルナー・フォン・ブラウンは釘をさした。


「……。」

「ロケットは正常に飛行中です。神崎島の各地上局は正常にロケットの追尾を行っています。」

全員が固唾を飲む。


『こちらアメリカ海軍ミサイル追跡艦インヴィンシブル、現在ロケットに異常は見受けられず。』

『同じくロシア海軍ミサイル追跡艦マーシャル・ネデリン、こちらも同様だ。』

今回のヤタガラス打ち上げ支援の為に派遣された米露両国のミサイル追跡艦からも順調という報告が入る。
米露両国がどれ程力を入れているのか分かる。


『こちらヤルバーン、展開させているヴァルメからも異常は報告されていない。』

ヤルバーンからも報告が入った。
今回の打ち上げはイゼイラ史上初のトーラル技術なしの大気圏離脱であり、イゼイラ本国とティエルクマスカ本部から全力での支援を命じられている。
またもしもの時のためにティ連防衛総省太陽系軍管区特危自衛隊からも複数の艦艇が抽出され支援に当たっている。
ティ連も凄まじい力の入れようだ。


全員がモニターを注視する。
10秒、1分、その時間が何倍にも感じられた。

『管制室聞こえるか?こちらヤタガラス。』

165: 635 :2019/02/25(月) 20:18:47 HOST:p1898232-ipbf412souka.saitama.ocn.ne.jp

オービターヤタガラス

凄まじいGが乗員を襲っていた。

「グウウウ。」

その中でもイゼイラ人デルンは特に苦しそうだった。
イゼイラ人の骨格は含気骨であるため骨密度が人類に劣るのだ。
デルンは歯を食いしばり耐えていた。

デルンの脳裏に自分を送り出してくれた家族や仲間、フリンゼの姿が浮かぶ。
イゼイラとティエルクマスカの希望を託されたのだ、こんな所で挫ける訳にはいかなかった。

何時間にも感じる重圧が続く、そしてそれは突然終わった。
そしてデルンはしばらく呆けていた。

「ア…。」

「おい!大丈夫か!?」

船長のガガーリンが心配そうに声を掛ける。
ガガーリンは体を固定していたベルトを既に外していてデルンのベルトを外し始めた。

「…大丈夫デス。宇宙へ出るとはコレ程大変な事だったのデスネ…。」

「そりゃそうだ。空間振動エンジンや重力制御なんてものはヤルバーンが来るまで存在しなかったからなあ。」

デルンの呟きに答えながらテキパキとベルトを外していく。

「ほい、終わったぞ。」

「ありがとうゴザイマス。アワワ!」

ベルトを外し油断しているとデルンの体が浮かんだ。
無重力状態だ。
普段重力制御されて宇宙にいるためとっさに反応出来なかったのだ・

「おいおい、この船はティ連の船のように重力制御されてないのだから注意してくれ。」

「申し訳アリマセン…。」

「これから直せばいいさ。作業に入るぞ!」

「ハイ!」


ガガーリンはコックピットの席に座ると管制室と通信を始めた。

「管制室聞こえるか?こちらヤタガラス。」

『!ああ、聞こえるぞ。状況は?』

「船体に異常なし、乗員も全員無事だ。これより次の作業に入る。」

『了解した。健闘を祈る!』

短い報告を終えガガーリンは息を吐いた。
そしてコックピットの窓から青い地球が目に入った。

「ああ、帰ってきたのかここに。」

ガガーリンの呟きをデルンは聞き同じ様にガラス越しの地球を見た。
宇宙から惑星を見ることの多いイゼイラ人にとっても特別に見えるようだ。

「すごいデスネ…。」

「まあ、頑張ったご褒美という所か…。」

地球をぼうっと見つめる二人にまりも注意した。

「はいはい、そういうのはISSに着いてからにしましょ?」

「「そうだな(デスネ。)」」

166: 635 :2019/02/25(月) 20:22:47 HOST:p1898232-ipbf412souka.saitama.ocn.ne.jp

神崎島宇宙基地管制室

『管制室聞こえるか?こちらヤタガラス。』

「!ああ、聞こえるぞ。状況は?」

『船体に異常なし、乗員も全員無事だ。これより次の作業に入る。』

「了解した。健闘を祈る!」

ヤタガラスとの通信が終わった。


「よっしゃーーーー!!」

通信を終えるとガッツポーズをしてフォン・ブラウンは絶叫した。
また、そこかしこで握手をしたり、抱き合って喜びを表している。

二藤部は笑いながら泣くヴェルデオと肩を組み、笑顔の三島がヴェルデオの背中を叩き、
ジョージ・ハリソン米大統領とゲオルギー・アレクサンドル・グレヴィッチ露大統領は無言で握手を交わす。
マーキュリ7やロシアの伝説的宇宙飛行士達は円陣を組み、日米露の宇宙関係者はリポビタン○で乾杯している。
ここにいる艦娘達は抱き合って喜んでいる。


そして我らが柏木夫妻は

「マザトザン、やっだデスヨ。イゼイラ人がドーラルに頼る事なぐ宇宙に行けだデスヨ。」

「ああ、フェル。やったな!」

「うえーん。マサトサン!!」

フェルさんの顔は涙でグシャグシャだ。

「フェルフェリア君。」

そんなフェルさんに声を掛ける人物、神崎提督だ。
後ろには明石や夕張が控えている。
二人共感動でがん泣きである。

「すびばせん。神崎提督。」

柏木に鼻をかんでもらいながらフェルさんは対応する。

「いや、そのままで構わない。まずはおめでとう。」

「アリガトウゴザイマス!」

フェルさんは元気いっぱいに答えた。

「しかし、これからが大変だぞ。」

「へ?」

「神崎島の宇宙開発を通してとはいえ、地球の地域国家と直接関わることになったのだ。これから様々な国や勢力が接触を図ることだろう。」

言外に大丈夫か?とフェルさんに問いかける。
真面目な顔をしたフェルさんと心配そうに見つめる柏木。

「提督、ご心配ありがとうゴザイマス。でもワタシ達イゼイラ人は大丈夫デス。」

「ほう。」

「これはワタシ達が失ったものを取り戻すストーリーなのデスヨ。ワタシ達は必ず乗り越えなければならないのデスヨ。」

「そうか…。」

何やら提督は納得したらしい。

「これは一人の人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては偉大な飛躍である。」

「その言葉ハ?」

「地球で初めて他の天体に降りた人物の言葉だ。」

「アポロ11号船長アームストロングの言葉ですね。」

「柏木君その通りだ。」

フェルは自分の中でその言葉を反芻する。

167: 635 :2019/02/25(月) 20:23:26 HOST:p1898232-ipbf412souka.saitama.ocn.ne.jp

「たった一人のイゼイラ人が宇宙に出ただけデス。しかし、トーラルの助力なしに成し遂げたのはティエルクマスカ全体の飛躍デスネ…。」

その言葉を噛みしめるようにフェルは言った。
そしてフェルは姿勢を正し、神崎提督に最上級ティエルクマスカ敬礼をする。

「神崎博之提督。ワタシ達イゼイラ人が失った物を取り戻す機会を与えて下さったことに一人のイゼイラ人として感謝致しマス。」

今回の打ち上げはただの打ち上げではない、イゼイラとティエルクマスカの未来と希望を取り戻すための飛躍なのだ。
この成功がどれだけのものをティエルクマスカに齎したのかは計り知れない。
そして今のフェルはいつものほえほえフェルさんではない、ティエルクマスカとイゼイラの意思を代表しているのだ。
彼女達が今回の様な希望となるものをどれだけ渇望しているのかが分かる。

その姿に神崎提督はフッと笑みを零す。

「柏木君。」

「はい?」

「良い奥さんを貰ったな。」

「そりゃもう自慢の嫁さんですから。」

柏木は笑顔で応えた。

168: 635 :2019/02/25(月) 20:24:19 HOST:p1898232-ipbf412souka.saitama.ocn.ne.jp
以上になります。
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最終更新:2019年03月02日 17:27