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銀河連合日本×神崎島 ネタ 特別な瑞雲


太平洋神崎島鎮守府近海・練習航空戦艦『山城』


「瑞雲発艦準備急げ!」

「爆装の取り付けはまだカ!?」

「左舷弾幕薄いよ!!何やってんの!!」

山城後部の航空甲板では艦載機である瑞雲の発艦準備に追われていた。
もちろん唯の瑞雲でない、神崎島でも配備が始まったばかりの多用途噴式水上機・噴式瑞雲だ。
まあ、発艦に追われていると言っても実戦ではなく緊急発艦の訓練である。
そして瑞雲の発艦作業に携わる人員達であるがもし原作柏木真人がその顔ぶれをみたら「どひゃあ!」とか言うだろう。多分。

イゼイラ人
ダストール人
カイラス人
パーミラ人
ディスカール人

まあこの辺りは分るが、他にも複眼持ちの蝶々ぽいヴィスパー人や逆関節で三本指なユーン人、
柏木の婚約報告ためのイゼイラ行きで全世界に衝撃を与えたザムル族等
どんだけのティエルクマスカ諸種族がいるのか分からない程の種族がいる。
まあ、訓練の指導している妖精さんもキャラのバリエーションでは負けていないが。


「私が訓練するのティ連の人達しかいないなんて、不幸だわ…。」

その訓練の様子を見ていた艦長の山城は溜息を吐いていた。
そんな山城に話しかける人物がいた。

「艦長、そんな溜息吐いたって変わりゃしねえぜ。」

「パゴット大尉…、仮にも上官に対してその口の聞き方はどうかと思うわよ。」

「そりゃすんませんでした。」

えらく無遠慮な口の聞き方をして山城に話しかけて来たのは瑞雲や強風等の水上機の教官を務める伊系妖精だった。
口調を注意されても悪びれた様子もない。
こんな口の聞き方であるが水上機の操縦の腕は確かで意外なことに面倒見も良いのでイタリアやザラに頼みこんで引っ張って来た逸材だ。
口の聞き方については注意はするが山城は諦めていた。
彼が教官になることを知った日本のアニメ映画ファンなティ連人達は物凄い勢いで彼の乗る瑞雲を赤く塗っていたががなんなのか。

「こいつの翼は赤く塗らねぇノカ?」

「貴様…塗リタイノカ!?」

ついでにアニオタなティ連人達がよく分からん寸劇をしていた。


「艦長、話を戻すがティ連の奴らがこの艦で訓練するのはティ連のお上からの要請だからしょうがねえだろ?」

「まあ、そうなんだけどね。言わずにはいられないのよ…。」

「連中にとっちゃ瑞雲は特別だからな。それに瑞雲の運用訓練出来るのが『扶桑』の妹なんだから飛びつくだろ?」

「はあ、姉様なんであの時あれを引き受けちゃったの…、やっぱり私がすれば良かったかしら?」

「そしたら扶桑が山城になるだけだろ?」

「…不幸だわ…。」

山城は姉の行動を少し恨めしく思った。
時間は少し遡る。

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神崎島鎮守府工廠・航空廠

工廠の工場内では多くの工員達が働いていた。
零式艦上戦闘機や烈風等の鎮守府でもお馴染みの機体や噴式景雲改、橘花改等の多くの機体がこの工廠で生産、整備が行われている。
また一部では新型噴式戦闘機であるF-35の生産やアメリカなどから提供された現代の噴式機の整備、改良も行われている。
工員の多くは妖精であるが少なくない数のヤルバーンの乗員や日本人も働いていた。

「整備長!コレはどちらデスカ!」

「ああ、そっちに持っててくれ!」

工廠の熟練艦載機整備長妖精はイゼイラ人整備員に指示を飛ばす。
そこへ女性の整備員妖精が声を掛けてきた。

「しかし、イゼイラ人も慣れてきたわねえ。」

「西園寺か、あいつらは俺から見りゃまだまだヒヨッコだよ。」

「おやっさんから見ればみんなヒヨッコでしょ?」

整備長に軽口を叩く女性妖精、作業着の胸元を開けるなど若干だらしない格好だが一流の熟練艦載機整備員である。
そこへ男性の米系熟練艦載機整備員妖精が来た。

「サカキ整備長、頼まれ事終わりました。」

「ああ、アイザックすまねえな。」

「これぐらいお安い御用ですよ。」

この整備員妖精、整備の腕も一流だが戦闘においても一流である。
陸戦隊妖精が足りない時に志願して戦線に投入されその足で多くの戦果を上げ黄金の足とも呼ばれている。

「じゃあ一息つくとするか。」


工廠内休憩所

「アイザックから見てイゼイラ人達どう?」

休憩中の女性整備員妖精は唐突に話を始めた。

「レイカどうとはなんだ?」

「技術よ、技術。そろそろいいんじゃないかと思うんだけど。」

「ああその話か、自分もそろそろいいんじゃないかと思うが。どうですおやっさん?」

米系妖精は話を整備長へ話を振った。

「しかしなあ…。」

整備員妖精達はイゼイラ人達に何かをやらせるつもりらしい。
そこへまた別の整備員妖精が来た。
この妖精なぜか一部の空自隊員などから凶鳥フッケバインと呼ばれている。

「整備長お疲れ。」

「おう、ピーターか。」

「アイザックにレイカ、何話してんだ?」

「ほらこの間話してた航空機をヤルバーンのやつらだけで作らせてみようって話。」

「ああ、あの話か…。」

「で、ピーター。お前は彼らに作らせても良いと思うか?」

「いいんじゃないか?彼らも良くやってくれてるし。」

整備長は三人の意見を聞きしばし考える。

「お前らがそこまで言うならやらせてみるか…。」

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工廠内会議室

「何なんデショウ?」

「説明もなかったナ。」

会議室には航空廠で働くティ連人全員が集められていた。
なぜ集められたのか分からず困惑してざわついている。
そこへ整備長妖精が入ってきた。

「総員起立!敬礼!」

「座ってくれ。全員そろってるな?」

整備長は全員を見渡す。

「なんで集められたのか分からないって顔してるな。」

その言葉に全員が頷いた。
事前通達もなしに集められたのだ当然だろう。
整備長はその様子を見て不敵な笑みを浮かべた。

「今日集まってもらったのは他でもない。お前たちに航空機を一機作ってもらうと思って集まってもらった。」

全員の頭の上に疑問符が浮かぶ。
いつも作ってるではいかと。

「あー、言葉が足りなかった。お前たち"だけ"で作るということだ。」

全員がざわつきだした。

「他の熟練整備員からの推薦だな。『お前らの技術力なら大丈夫』だろうから一機作らせてみようとな。」


『お前らの技術なら大丈夫』


ある人は目をつむり涙を堪え、ある人は泣き、ある人は鼻を抑えていた。
自分達が習得したトーラルによらない技術、それが認められたのだ。
嬉しくない筈がない。

「で、お前たちが作る機体だが、それは瑞雲だ。」

整備長は苦笑いながら言う。
整備長の説明に姿勢を正し整備員達は真剣に聞き入る。

「しかし唯の瑞雲じゃねえ。『特別』な瑞雲だ。」

「アノ、特別な瑞雲とは一体?」

どの辺が特別なのか12型か?と全員が考えた。
整備長はニィと笑った。

「その瑞雲の部品は全てお前らの同胞たちが必死こいてハイクァーンを使わず製造してくれた『特別』製だ。ぶっ壊すんじゃねえぞ。」

衝撃が全員を襲った。
トーラルの影響を受け歪な技術を持つティエルクマスカの人々、一から何かを生み出すということを経験したことなどない。
そのティエルクマスカの国民である自分達の同胞がトーラルなしに製造した部品から自分達が航空機という機械を一つ丸々生み出すのだ。
それがティエルクマスカ史上どの様な意味合いを持つのか分からない者などここにはいない。

動きを止めた整備員達に整備長は溜息を吐いた。

「で、やるのか?やらねえのか?」

「「「「ヤラせて下サイ!!」」」」

ティ連整備員達の心は一つであった。

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太平洋神崎島鎮守府近海・航空戦艦『山城』

山城の後部航空甲板は大勢の人々でごった返していた。
大半がヤルバーン乗員だ。
今日はティ連製瑞雲の試験飛行が扶桑で行われるために集結していた。
しかも超大型のゼルモニターまで造成して気合が入っている。

「フリンゼ、いよいよですな。」

「エエ、今回のことはティエルクマスカの歴史の大きな一歩として記憶されマスネ!」

そこにはヴェルデオと若干興奮した様子のフェルさんがいた。
二人共ポップコーン(カレー味)を持っている。
今回のイベントはティ連的に大変重要であるらしい。
そして柏木もこの場にいた。

「しかし瑞雲一機飛ばすだけなのにえらい人数来たな。」

「何言ってるデスカ、マサトサン!今回試験飛行を行うズイウーンはティエルクマスカにとって非常に意義深い物なのデスヨ!!」

「そうですよケラー。今回飛行するズイウーンはティエルクマスカ全国民の記憶に永遠に刻まれることでしょう。」

「そんなに凄いことなのか(汗)。」

柏木の発言に訂正を行うイゼイラ人二名、その迫力に柏木はちょっと引き気味だ。
とりあえずポップコーン置こうか二人共。


ちなみにその頃の山城

「扶桑姉様の晴れ姿を近くで見れる!でも見物客一杯で遊覧船みたい…不幸だわ。」

「艦長?(汗)」



同海域・航空戦艦『扶桑』

扶桑の航空甲板では瑞雲の発艦準備に追われていた。
準備に関わっている人員全てがティ連国民で全員気合が入っている。
妖精達は見守るだけで手を出さない。
ちなみに瑞雲の国籍マークはイゼイラ国章が描かれている。

「みんな気合が入ってるわね。私も頑張らないと!」

その姿を見た扶桑は自分も頑張ろうと手をぎゅっと握った。
ティエルクマスカ初の非トーラル技術の航空機を発艦、飛行するという航空戦艦として一世一代の晴れ舞台である扶桑の気合の入り方も違う。
ちなみに今回の試験飛行はティ連全域で生放送されているためさらに気合が入っている。


実は今回のティ連製瑞雲の試験飛行、実は扶桑ではなく別の艦が担当予定であった。

伊勢型航空戦艦二番艦・日向

扶桑型航空戦艦二番艦・山城

この二隻が候補として予定されていた。
瑞雲教大司教の日向と日本戦艦で初めて航空機を発艦させた山城、神崎提督による納得の人選であった。
しかし当の本人たちから申し出があった。

「ティ連製瑞雲の試験飛行は扶桑が相応しい」

日向が瑞雲イベント参加するとか山城が姉様Loveとかそういう理由ではない。
その理由とは神崎島でも扶桑のみが持つ肩書である。

『日本初の純日本設計超弩級戦艦』

ティ連が初めて作った機体ならこちらも日本初の超弩級戦艦を当てようという話である。
そんなわけで扶桑はこの度の任務を拝受することとなったのである。

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場面は扶桑の航空甲板へと戻る。
ティエルクマスカ全国民が待ちに待った時が来た。

「風向き良し!」

「カタパルト準備完了!」

「ズイウーン、発艦位置に着きました!」

扶桑のカタパルトが金属の接触する音を出しながら旋回を開始する。

「イナーシャ、回せー!!」

ブロロと言葉にすればそんな音と共に瑞雲に搭載されたティ連人が作り上げた一三〇〇馬力の金星五四型エンジンが唸りを上げる。
山城の後部甲板に乗っているフェル達はモニターに映る瑞雲が今か今かと発艦の時を待つその姿を固唾を飲んで見守っている。

全てが整った。
扶桑は大きく息を吸い込み気持ちを落ち着かせる。
一世一代の大舞台だ失敗は許されない。

「扶桑艦載機、発艦始め!!」

扶桑が叫び、バシュン!そんな音と共に火薬式の一式2号11型射出機から瑞雲が打ち出された。
打ち出された瑞雲は一瞬高度を下げる。

「アアッ!?」

その姿に扶桑の乗るティ連人の誰かが悲鳴を上げた。
しかし、すぐに瑞雲はふわりと浮き上がり、軽快に飛んで行く。
そして輪を描くように瑞雲は扶桑の周囲を旋回し始めた。
扶桑に乗るティ連人達はその姿を呆然と見ていた。


「やったな。」

「オヤッサン…。」

整備長妖精が一人のイゼイラ人に声を掛けた。

「良い飛び方だ。機体もパイロットも整備も十分だな。」

その言葉にイゼイラ人の目頭が熱くなる。
自分たちが作り上げた瑞雲が空を飛んだ、ようやくその実感が湧いてきた。
発達過程を経なかった自分たちがトーラルに頼ることなく作り上げ、一機の飛行機を飛ばしたのだ。
そのことがたまらなく嬉しかった。



「よっしゃー!」

「ヤッター!」

山城の甲板の上ではヤルバーン乗員達がお祭り騒ぎだった。
トーラルに頼ることなく成し遂げる、発達過程を経験しない自分達にそれがどれ程困難な事か分かっているからだ。
お祭り騒ぎで喜ぶのも無理はない。
フェルさんも柏木に抱きつき頬に情熱的なキスをしている。

「何がどうなってるんだ…?」

柏木はついて行けず置いてきぼりだった。

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「おい皆見ろ!ズイウーンがこっちへ来るぞ!!」

誰かが叫ぶと一斉に静かになった。
そこへ瑞雲がプロペラとレシプロエンジンの音を響かせて近づいて来た。
山城の周囲を扶桑の時と同様に旋回を始めた。
自分の姿をティエルクマスカの人々に見せつけるように。

その姿を見たティ連人の反応は様々だ。
最上級ティエルクマスカ敬礼を瑞雲へする者、熱くなった目頭を抑える者、もう泣いてる者など様々だ。
その全員が瑞雲の飛行を喜んでいるのは確かであった。
全員が上を、未来を向き始めた、理由は分からないが柏木はそう感じた
首にフェルさんをぶら下げながら。

柏木はふと言葉を漏らした。

「ひとたび空を飛ぶことの味をしめたら、常に上を向いて歩くようになるだろう。自分の居場所は空だ、あの空に戻りたいと常に思うようになるのだ、か…。」

「ファーダ、その言葉は?」

「ん、昔のイタリアで活躍した芸術家、万物の天才とも呼ばれたレオナルド・ダ・ヴィンチの言葉。」

「常に上を向いて歩くデスカ…。」

「空を飛ぶことで未来志向になるということでしょうか、フリンゼ?」

「奥が深い言葉デスネ…。」

何やら議論を始めたフェルさんとヴェルデオ司令、そんな二人をよそに柏木は瑞雲を目で追った。
主翼の裏に描かれた輪を持つ星、フェル達の故郷イゼイラの主星ボダールを元にした図案が目に映る。
瑞雲が翼を翻すと眩しい太陽が目に入った。

「瑞雲に描かれたイゼイラの国章と重なる太陽か…。まるで、イゼイラと日本のようだな。瑞雲が神崎島か?」

柏木はずっと南洋の空を舞う瑞雲を見続けていた。



イゼイラ星間共和国議長執務室

「成功しましたね…。」

「そうだな…。」

マリヘイルとサイヴァルの二人はゼルモニターに映し出される瑞雲を見ていた。
地球の空を飛ぶ瑞雲の暗緑色の胴体にイゼイラの国章が映えている。
その姿だけで二人、特にサイヴァルは目頭が熱くなる。

ティ連の手で作り上げた瑞雲、その存在だけでどれだけの価値があるのか、あの瑞雲をティエルクマスカ全体の国宝としてもいいかもしれない。
そして瑞雲を作り上げたヤルバーン乗員達と協力してくれた神崎島鎮守府に対してはティエルクマスカ中の勲章を贈っても足りないだろう。

「あのフィブニー効果を使った機動兵器、ズイウーンと言いましたか。あれはいいものですね。」

「そうだな。そういえばあのズイウーンについて我々は旧式のヤルマルティアの機動兵器ということしか知らないな。」

「そうですね…。そうだサイヴァル!全ティエルクマスカ国民に対してズイウーンについて教育するべきではないでしょうか!?」

「それはいい考えだ!我々にとって記念すべき機動兵器だ。ティエルクマスカ全体の義務教育でも義務化するべきだろう!」

「そうですわね!善は急げとヤルマルティアの諺にもありますから急いで議会を招集しましょう!」

「ああ!イゼイラでも早急に行おう!」


この後、ティエルクマスカ全体で歴史、科学、文学等あらゆる分野で瑞雲についての教育が義務化されていくこととなる。
また、瑞雲は軍事や文学など幅広い分野に影響を与えティ連の文化をより豊かにしていくこととなった。



吹雪イゼイラへ出発前の神崎島鎮守府

「日向さん、用事ってなんですか?」

「吹雪、すまないが艤装にこいつを積んでイゼイラまで運んでくれないか?」

「なんですかこれ?」

「分解した瑞雲、それもティ連製の二号機だ。」

「あ!そういうことですか。」

「瑞雲の存在はあちらで好意的らしいからな。少しでも友好の助けになれば良いが…。提督の許可はもらっているから心配するな。」

「吹雪、了解しました!」

後にこの瑞雲がティエルクマスカ全体に衝撃を与え、イゼイラが急遽盛大な式典を行う事になろうとはこの時の吹雪は知る由もなかった。

365: 635 :2019/04/13(土) 07:32:08 HOST:p1898232-ipbf412souka.saitama.ocn.ne.jp
以上になります。
この世界で航宙護衛艦に扶桑の名前がつくとしたらと瑞雲がティ連で流行った理由を考えたらこうなりました。
転載はご自由にどうぞ。

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最終更新:2019年04月20日 12:46