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銀河連合日本×神崎島 ネタ とある駆逐艦艦長の憂鬱


日本国南西諸島排他的経済水域内 北海艦隊所属052A型駆逐艦 哈爾浜艦橋


「クソ、日本鬼子め!!」

艦橋で中央軍事委員会政治工作部の将校、所謂政治将校は歯軋りをした。
この政治将校は党ではなく軍から党を経て派遣された政治将校だ。
党内部にまで軍部の手が伸びて軍事独裁化しているのは間違いない、一党独裁が軍部に変わっただけだと言えばそれまでだが。
政治将校は艦の隣を並走する偉大なる中華国家の軍艦の行く手を遮った艦を睨みつけている。
その艦からはこの海域からの退去を命じる通信がひっきり無し流れていた。

その様子をこの艦、北海艦隊所属の052A型駆逐艦哈爾浜の艦長は呆れた目で見ていた。
どちらかかといえば共産党員というより
所謂古き良き海の男に近い考えを持つこの艦長、軍部が共産党を抑えて政治の実権を握って以降の対日軍事圧力に否定的であった。

「(日本鬼子という言葉は日本人に燃料供給するだけだろうに…。)」

属する北海艦隊の潜水艦は軒並み使い潰され、というより一度出撃すれば乗員や艦が使用不可能となり、
侵攻して来る心配するなんて必要もない日本を連日のように刺激して艦と乗員を危険に晒していた。
疫病神もいい所である。

ついでに乗組員の士気も低い。
初期には日本なぞ如何なるものかと気勢を上げる者も居たが連日の出撃でその者達も段々と目が死んでいった。
一番士気が低いのは日本産のあるゲームを良くしていた連中である。
そいつらは党の目を掻い潜りしていたがそれで気晴らしになるのならと艦長は黙認していたがネット統制が厳しくなると出来なくなり発狂していた。

あの島が出現して艦娘がいると判明した際は士気が最高潮だったんだがなあと艦長は遠い目をする。
そいつらの手に涼月や鹿島、翔鶴のフィギュアや彼女等の画像が背景なスマホを持っていたことは目にしなかったことにして。


哈爾浜の横を並走する旭日旗と羅針盤が描かれた旗を掲げる中型艦に目を向ける。
最近この海域でよく見かけるあの島の球磨型軽巡洋艦群、日本での通称5,500トン型軽巡より大きい。
あいつら15.2センチ連装砲にVLSなんぞ搭載して明らかに5,500トンどころか日本の愛宕型防空ミサイル巡洋艦(護衛艦です)並の大きさあるんじゃなかろうか?
ついでに5,500トン級の中には蘇聯のスラヴァ級の強化発展型の様な重雷装巡洋艦を称するのがあるがあれ本当に同型艦なのだろうか?

気を取り直し観察すると5,500トン型より巨大かつ同じ15.2センチ連装砲を搭載していることから恐らくは阿賀野型軽巡洋艦であろう。
しかし油断は出来ない島の艦は異なる大きさの主砲を搭載し排水量も可変するので阿賀野型と思っていたら重巡洋艦である可能性も否定出来ない。
複数の駆逐艦も並走している。
こちらも艦隊で行動しているが戦闘ともなればミサイル数でほぼ互角、水上砲戦では確実に負けるだろう。
そんな中兵達が会話をする。


「(磯風に浜風、村雨がいる…。近海に隼鷹も展開していることを考えるとパプアニューギニアのウェワク攻略時の編成か?)」

「(空母隼鷹、当時の第二航空戦隊とその護衛部隊か、ということはあれは阿賀野姉か…。)」

(なんでこいつらそんなに詳しいんだよ…。)

ボソボソと話す兵達の声が耳の中に入って来た艦長は頭を抱えた。

923: 635 :2019/08/09(金) 07:16:07 HOST:119-171-231-231.rev.home.ne.jp

「貴様らあの艦の名前がなんのか分かるのか!?」

兵達の会話が政治将校の耳にも入ったらしい。

「え、あ、ハッ!ハイ、その通りであります!」

「あの艦は阿賀野姉であります!」

「ほう、阿賀野姉か…。」

(テンパって余計な言葉ついてるよ!姉てなんだ姉って!?)

艦長もなんかテンパっていた。
そこへ通信員が司令部からの入電を報せた。

「司令部より入電、帰投せよとのことです。」

「なんだと!?日本鬼子の艦を叩き潰すまたとない機会だぞ!?」

(いやこっちから手を出しちゃだめって上から言われてましたよね!?)

艦長の心の中のツッコミは冴え渡っていた。


「クソっ!おい!あの艦に通信を繋げ!!」

「え?あ、はい。」

「『阿賀野姉ェ、これで勝ったと思うなよぉ!!!』」

なんか色々台無しである。
艦長はなんか疲れてきたが全艦に命令をなんとか下す。

「はあ、通信員全艦に通達、これより母港に帰投する。」

「了解!あ、日本海軍の艦から通信が…。」

艦長なんか猛烈にイヤな予感を感じる。


『もう勝負ついてるから!キラリーン☆!』

「「「「………」」」」

十代後半の少女の様な高い声が艦橋へと響き渡る。
沈黙が艦橋を覆う。
艦長は艦橋の天井を見上げた。

(ブッダよ、あなたは今も寝ているのですか…)

政治将校は顔を真赤にしている。

「艦長引き返せ!あの艦絶対に沈めてやる!」

「無理です。上の指示が優先です。それとも抗命致しますか?党員。」

「ぐぬぬ。」

艦長は無表情で告げる。
政治将校は顔を赤くしすぎて今にも倒れてしまいそうだ。


「これで勝ったと思うなよぉーーーーーー!!!」

今度は政治将校の野太い声が艦橋に木霊した。

「「「「(いや、もう勝負ついてるから…。)」」」」

「…声が汚い、さすが政治将校きたない…。」

艦橋の心は一つとなり、艦長は心の中で決意を固める。

「(俺、この作戦が終わったら、除隊か亡命するんだ……。)」

艦長、それは死亡フラグだ。

924: 635 :2019/08/09(金) 07:18:19 HOST:119-171-231-231.rev.home.ne.jp
以上になります。
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最終更新:2019年08月13日 11:04