452 :ヒナヒナ:2012/01/19(木) 23:04:15
○銀鬱TSなしシナリオを考えてみた

※設定話なので銀英成分は出てきません。銀鬱3次といった感じです。



格式を匂わせつつも、華美にならない宮殿の一室。
今や惑星恒星をまたに掛ける大日本帝国の今世の天皇と話しているのは、
一見ボウとした目をした軍服を着た50代の男性であった。
謁見できるだけの地位にいるので、将官ではあるはずだが、階級章はつけていない。

「陛下、また、お会いできるとは思いませんでした。」
「朕も再び生を受けるとは思っていなかったし、またそなた等と見えるとは想わなかったな。」
「しかし、私の様な古い人間ばかりを使っていると人材が育ちません。再考なさりますようお願いします。」
「分かってはいるが、今回は国難であるという事だ。朕だけではなく国会もこれを承認した。」
「……英霊保存法ですか。」


英霊保存法

それは日本が電脳世界という新たな地平を得た後に制定された法律であった。
実績において特に優れた功績を残した文武官に適応される。
生前に電脳世界にデータ人格を記録しておき、死後においてもそれを保管する。
有事の際には義体を与えられて呼び起こされ、
軍事・政治への助言・補助を行うというものであった。

これは有事の際にのみ発動され、天皇、国会、国民によって審査され行われる。
旧時代の権力者を呼び出すという、間違えば自国を滅ぼす毒にもなりかねないことなので、
憲法改正なみに厳重に手順が定められている。
(電脳投票を行っているため、国会投票、国民投票には地球時代ほど時間がかからない)
彼らを実体化させておく期限を区切っておかなければならないなどの制限が加えられている。
もちろん、死後の平穏という観念はまだあるため、
普段その人格データは一般電脳世界とは切り離され、
新靖国神社の中に鎮座するサーバに静かに保存されていた。

なにかと批判の多い法律ではあったが、大遷都当時の
銀河連邦に比べるべくも無い、自国の人的資源をカバーするために生まれた法だった。
当時、大日本帝国は精神的にそこまで追い詰められていたのだった。
結果からみると、今の今まで使わず死んだ法律になっていた。
もちろん、何回か改廃することも検討されたのだが、
まさか、それまでに靖国サーバに入れてしまった英霊の魂(人格と経験データ)を
消す訳にもいかず、どうするのかという問題が起こり、
結局、死んだ法律として、今まで英霊が静かに眠り続けることになった。

453 :ヒナヒナ:2012/01/19(木) 23:04:47

「先ほど現在の状況のレクチャーは受けております。
たしかに銀河連邦時代に他の文明と切り離されたわが国の人間は
国交に向いていないのかも知れません。だからといって……
あの時代の旧夢幻会の人間をほぼ全員呼び出すのはやりすぎです。」
「ついでに我々は戦争と無縁になって久しい。防衛体制こそ歴代の首相が築いてきたが、
軍そのものは硬直が見られ、わが国の国家規模に対して弱体化している。
そこで、そなたら救国の英霊に指南役を頼みたいのだ。」
「……わかりました。このまま座して、この国を食い荒らされるわけには行きません。」

結局折れる辺りが嶋田であったが、義体ながら疲れた表情に見えるのは
先ほどまで怒り狂っていたので反動が来たのかもしれない。
実は嶋田の義体が女性タイプで用意され、嶋田が切れるという事件があったのだ。
嶋田首相少女説が本気で信じられていた(半ば常識化していた)ことも有り、
担当の係員が彼らを生前とは似ても似つかない姿で用意してしまったのだ。
笑いながら怒り迫る美少女姿の英霊に担当の係員が真っ青になり、
必死に生前のデータを漁り写真を探し出し、義体製作会社に即作らせ、
本人らの生前の姿に則った義体をすぐさま用意することとなった。
因みに、外交も担うことから最低限の年齢は必要ということになり、40-50代の姿だった。

「では英霊嶋田繁太郎に命じる。
自由惑星同盟と銀河帝国およびフェザーンと国交を開き、
また、大日本帝国の軍事強化をまかせる。
役職は皇任特別顧問、階級は中将をもってこれに当たれ。」
「はっ」

敬礼し拝命した嶋田は陛下が退室した後、別室に下った。
そしてそこには見覚えのある顔をした面々が雁首をそろえていた。

「良かったですね。嶋田さん義体なら一日24時間勤務の無理ではありません。
それに100億人規模の国同士の通商を一から構築するとは心が躍りますね。」
「精神が死んでしまう。只でさえここでの自分の評価にSAN値が削られているんだ。」
「この日本でアニメを復興させなくては。いや、新しい萌を考えるのが先か?」
「平常運転ですね。私はやっぱり近宙域防衛艦隊の整備なのですかね。地味役ですよね。」
「陸戦が殆ど無い…私は必要だったか? 2c○どころか、二次元に人権が認められる世界か。
同盟・帝国とも交信できる新たな情報規格を整備するかな。」
「国民の意識改革もしなくてはな。安全が只であるという認識を取り払わなくては。
そのためには体感型燃え戦争映画を……。」

嶋田ら昭和期の夢幻会中枢メンバーは、その研究の結果魂の原理に肉薄し、
不完全ながら条件が揃えば、転生という荒業を行えるようになっていた。
(その度に辻とコンビを組まされ、嶋田が仕事に泣くのはお約束であった。)
その後電脳世界が発展し、人格と人生経験のデータ保存という技が確立するに至って、
転生という不完全な技術は廃れて電脳システムへと移行した。
というよりも電脳世界が魂の保管庫として機能しだしたということでもあった。
ちなみに嶋田らは何回目かの転生後にその魂をサーバに捕まえられ
(死ぬ前に人格データと記憶データを取られた)、
以来、英霊として靖国神社のサーバに眠っていたのだった。


「神様、俺、何か悪い事しましたか……?」


衝号を決行したと言う自答は置いておいて、嶋田は死後も働かされる事態を嘆いた。
ちなみに萌文化を作った神様や軍神として、彼自身が神として奉られていることを知って、
悶絶するのはこのあと暫くしてからのことだった。

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最終更新:2012年01月29日 19:38