119 :ひゅうが:2012/01/23(月) 17:50:05

※演習飛ばしてネタを書きましたので、今回はちょっとだけ真面目にいきます。


ネタ――軍艦談義1

――同日 日本宇宙軍大学校 第1演習実技室


「まずは、わが日本宇宙軍の陣容についてご説明いたします。」

古賀峯一校長が席についた面々の前で立ち上がり、言った。
同盟側は、武官代表シドニー・シトレ大将(第8艦隊司令)、統合作戦本部宇宙作戦部長ジェラルド・エイレネー少将、同作戦第1課長ルイ・マクヴィッツ大佐および作戦課員2名。技術局長レオニード・プーレー中将待遇技官と科学者および技術者3名。
これに、宇宙艦隊司令部付き ヤン・ウェンリー中佐を加えた10名が同盟側の構成だ。

日本側は応接係を兼ねる宇宙軍統合軍令本部次長 嶋田茉莉(軍籍簿にはこう記されている)中将、宇宙軍大学校校長 古賀峯一少将、同校教官 山賀勝彦大佐および研究官2名。
統合技術本部より艦政部長 田中直道技術大将および技術士官2名。
そして今期宇宙軍大学校学生 国木田秀文少佐と高橋洋子少佐を加えた計10名となっている。
彼らは、落ち着いた色合いの部屋の中央に置かれた金属質の長卓を挟んで向かい合っている。

古賀は、すっかり慣れた手つきで映像を演習用電脳から呼び出し、要目などが記された「メモ」を各自の卓上へ配布した。
傍目から見ると、空中に映し出された映像が古賀の手から各自の座る席のデスク上に飛んでくるように見えるだろう。
同盟側の士官や技術者たちは目を見開いたり無言で驚きを表していた。

「まず、わが宇宙軍は実戦部隊となる『連合艦隊』と長距離哨戒と商船団の護衛が任務となる『航宙護衛総隊』に分かれています。これらと各恒星系の保有する警備部隊に地上軍を統括する組織として『統合軍令本部』が置かれています。最高司令官としては今上陛下を戴いていますが、実質は、内閣が主催する国家安全保障会議を諮問機関として内閣総理大臣により統制されています。
実戦戦力としてこれを統括するのが『連合艦隊』となりますので、今回の説明はまずこちらからいたします。」

古賀は、組織図を映し出していた空間ディスプレイに宇宙空間の映像を映し出した。
銀色の巨大な円錐形を底面ではりあわせたような形の構造物が映し出され、その周囲には同盟側がサジタリウス(エア)回廊で見たような防備設備が小さい規模ではあるが構築されている。
周囲に遊弋する2000メートル級の軍艦と比べてみると、これがどれだけ巨大であるのかがよくわかった。

「戦時における連合艦隊司令部が置かれる横須賀軍港鎮守府施設です。わが国の航路の要衝上に置かれている9つの鎮守府の中でも呉軍港鎮守府や大神軍港鎮守府と並ぶ主要軍港となります。恒星『三浦』の約10パーセントを覆う軌道リングから軍需工業地帯にエネルギーを送り、軍艦と機動鎮守府級戦艦の建造を行う『横須賀工廠地帯』を持っており、主に後方での建造業務も行っております。」

映像が変わる。
恒星系内にあるらしいそこには、小惑星帯のように軍艦建造用ドックが宇宙空間に並び、手前では肋骨のような巨大な構造物の周囲を覆いつつある分厚い外殻が映しだされていた。
いずれも、部品接合時に起こる光と照明に青い恒星光が溶け合い、神秘的な雰囲気を醸し出している。


「連合艦隊が統括する汎用戦闘艦――貴国が運用しているような戦艦に相当する軍艦の総計は、現在のところ6万8千隻ほど。うち3万隻ほどが主力となる標準型戦闘艦で主力はこの『秋月』型、2万隻ほどが攻撃型戦艦で現在のところ『島風』型が主力となっています。残る艦艇は特務艦・機動母艦などです。
しかし、第18次艦隊建造計画による就役から半世紀が経過していますので現在代替艦の建造計画が進行中になります。」

数種類の艦艇が映し出された。全長は1200メートルから2000メートル程度。
同盟軍の軍艦とは違い、流線形のどこか地球時代の軍艦のような形をしている。
艦首砲以外にも砲塔や艦橋に似たセンサーマストが備えられていることが、その感覚を強調していた。

120 :ひゅうが:2012/01/23(月) 17:50:39
「この攻撃型戦艦の側面や下部についている大きな砲塔のようなものはいったい・・・」

技官の一人が手を挙げ、次々に表示されていた艦形の三面図のうちのひとつを指差した。

「ああ、これは『魚雷』――亜光速大型誘導ミサイル発射管です。弾頭には縮退弾頭やレーザー水爆を搭載し、大型構造物や戦隊単位の敵に対し広域攻撃をかけるために存在します。」

即座に古賀は別の記録映像を呼び出した。

どこかの恒星系。目標となるのは小型の小惑星群とその間にあるごつごつした艦艇だ。
カウントダウンが表示され、0になると画面を光の筋を引いた「魚雷」が通り過ぎ、真っ直ぐ目標へ突進した。

そして。

閃光。合計5発の広域攻撃用の縮退弾頭は、弾頭の縮退により反応物質の8割から9割をエネルギーに変換。中心核となったマイクロブラックホールが10マイクロ秒の間にホーキング放射により蒸発することで発生する熱量と共にエネルギーを「光」という形で放出した。

続いて観測映像が呼び出され、光の中で目標が蒸発していく様子が映し出される。
同盟軍の士官たちは口をあんぐりと開けていた。
威力としては、中規模なゼッフル粒子散布空間の爆発に似ている。

ああ。確かにこれはひどいと思うよな。俺もこっちに来た時に「やりすぎだ」と思ったくらいだし。まったく乃木閣下以来の火力信仰って怖い。
そんなことを考えながら古賀は口を動かす。

「反応伝達物質の濃度と単位あたりエネルギーが距離の3乗に比例して低下していくので、一発あたりの最大威力は見た目ほど大きくはありません。
ですので通常は、前方へのエネルギー伝達性を強めて使用し、攻撃効率を上げています。
これの小型版を搭載した艦載機もありますが、費用対効果の面から限定された状況でしか使用できません。」

「あ、ありがとうございました。」

同盟軍の技官たちはからは「トールハンマー」という単語がしきりに聞かれた。

「主砲威力その他については軍機です。艦首砲および砲塔主砲いずれについても同様となります。現在、これら汎用戦闘艦を5個艦隊に分けており、うち3個艦隊がサジタリウス回廊防衛軍集団についております。次に、機動陣地および機動鎮守府級戦艦についてです。」

「すいません。その――機動陣地と機動鎮守府の違いについてですが。」

「両者とも、一定以上の移動能力とワープ能力を持つ全長10キロメートル以上の艦の名称です。『機動陣地』は、汎用戦闘艦の補給と整備機能を持たずに砲撃や雷撃に特化しています。『機動鎮守府』は少なくとも戦隊や分艦隊以上の母港としての機能を持ち、なおかつ戦闘能力を持つものですので前者よりも艦体は大きくなります。
戦艦と戦闘母艦の違いのようなものですな。」

ヤンを筆頭にした面々が熱心にメモをとるのに「後で市販のものですが資料をお渡ししますよ」と古賀は言い、次なる映像を呼び出した。

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最終更新:2012年01月30日 19:31