221 :ひゅうが:2012/01/24(火) 18:01:04
投稿します。

ネタ――軍艦談義2


「次は、機動陣地について説明いたします。
全長は1万5000メートル、約15キロから20キロ程度で、構造はご承知の通り円錐形に近いものになります。艦首砲と主砲を搭載しているという基本構成は汎用戦艦の拡大版ですが、艦首砲については特務艦に分類されている『1号型要塞砲』とほぼ同等の威力を持ちます。砲塔搭載型の主砲については汎用戦闘艦の艦首砲程度の威力を持っている『重砲』ものや、汎用戦闘艦の主砲なみに抑えて速射性を重視した『機関砲』を搭載したもの、先に紹介しました魚雷発射管を装備したものや、戦闘艇を搭載したものなどが存在します。
これらは、汎用戦闘艦と戦隊を組める程度の機動能力を持っています。配備数は予備艦を含め320隻。うち56隻はサジタリウス回廊防衛軍集団に所属しています。」

モニターには、『神通』型や『北上』型、『古鷹』型といった表示が出される。

「以前は番号で呼称していましたが、現在の宇宙軍への再編に伴って移動能力を有するものには艦名が割り振られました。これらも、代替艦建造が進行中です。」

モニターには、「第1次八八八艦隊計画」と「予算案審議中」の字が躍った。
詳細を知ろうと恐る恐る詳細と記されたアイコンに触ろうとした同盟側士官の一人は、「第2級宇宙軍防衛機密」「あなたには情報閲覧権限がありません」という警告アイコンに少し飛び上がって驚いた。

「あとで公開できる範囲の資料を渡しますのでそれまで待ってください」と、古賀からの文章と一礼するデフォルメされた古賀のキャラクターアイコンが続いて表示され、士官は気まずそうに愛想笑いをして一礼した。
その間古賀の指も口も動いていないことに気が付いて口をぱくぱくさせる頃には、古賀は次なる説明に移っている。

「さあお待ちかね――でしょうか?機動鎮守府級戦艦に移ります。
先に述べました『機動陣地』や『機動鎮守府』というのはかつての日本帝国防衛軍に所属していた頃の呼称でして、現在の宇宙軍への再編の結果『機動』とついているワープ機能などの航行能力を有するものは『軍艦』としての改装と艦隊への編入措置がとられました。」

工事は現在も進行中だし、侵攻作戦能力はタイプによってまちまちだが――という部分は言わないでおいた。

「この中でも『機動鎮守府』級戦艦は『汎用戦艦(ウォーシップ)』ではなく『戦艦(バトルシップ)』もしくは『戦闘母艦(バトルキャリアー)』と冠している通り、わが軍が保有する最大の軍艦です。
全長は最小で2万3千メートル、23キロ程度。最大の『金剛』型になりますと28キロ程度になりますね。
数は現状で10隻。うち5隻がサジタリウス回廊防衛軍集団に配されています。主砲は現状で1号型要塞砲と呼ばれるものを装備。艦首砲については軍機となっています。
艦隊の母艦機能は最大のもので7千隻程度です。」

「質問ですが。」

ヤンが手を挙げた。

「どうぞ。」

「はい。大きさから考えると、もう少し多くの母港としての機能があると思っていましたが。地球時代の空母のように、艦隊を収容しての機動的な運用を行う方が戦術的な有益度は高いと思われますが?」

鋭い、さすがは「原作」キャラの中で辛うじて戦略レベルの思考が行えていたキャラクターだ。
というか、それを考え付かない原作キャラの方が異常なのか?と思いながら、古賀は内心舌打ちしていた。
大艦巨砲「趣味者」である古賀にとって、空母マフィアの思考はトラウマものなのだ。
せっかく強力な火砲があるし、搭載軍艦はかつての艦載機と軍艦の速度差より圧倒的に小さいのに・・・
有益であるのは認めるが。

「それは、わが軍が長年にわたり、そちらのいうエア回廊における機動邀撃作戦を構想していたことが理由です。
長年にわたり、銀河連邦の継承国家である銀河帝国がイゼルローン回廊やフェザーン回廊からサジタリウス腕に進出して我々の討伐に来ることを想定していましたので、まずは火力的な優勢を作り出すことを目標にこれらの迎撃網は整備されてきました。」

222 :ひゅうが:2012/01/24(火) 18:01:46

「なるほど。あの要塞地帯はマジノ線・・・っと、旅順要塞のような役割というわけですね。」

ヤンは、途中で言い直す。

「気にせずともいいですよ。旅順だと帝政ロシア太平洋艦隊とあわせていささか縁起が悪いのでここは動くシャーウッドの森と言っておきます。」

ヤンと、ネタ元を知っている男たちが笑った。
同盟側はロビン・フッドを知っている者で、日本側は「原作」を知っている嶋田たちも加えた数だったが。

「汎用戦闘艦の補充は工廠設備ですぐできますし、大型の機動陣地級戦艦や機動鎮守府級戦艦の予備艦も各地の軍港鎮守府にストックしてあります。
回廊内で軍事行動が可能な上限となる艦艇30万隻から40万隻が5次にわたって襲来することを想定していましたので、航続力も改装前は回廊内を4往復もすればいい方でした。」

言外に今はそうでもないが、同盟側の誘いに乗って出兵はできないよ。と古賀は言った。

「これ以外の艦艇は、動けない『対馬第1・第2要塞』や前線近くの港湾設備に収容していました。」

「ありがとうございました。もうひとつ質問なのですが――」

今度はシトレが質問を引き継いだ。
さて、来るか?
古賀と嶋田の思考はシンクロしていた。
電脳の予備思考回路が導き出していたいくつかの想定質問のうち、一番重要と思われる質問にさしかかったのを彼らは察していた。

「先ほど、汎用戦闘艦の補充といわれましたが、具体的にはどれくらいのペースで?」

同盟側の全員がこちらに注目する。

「嶋田さん。いいですか?」

「や。かまわんでしょう。」

わざとらしくではあるが、二人は頷いた。
ともすれば表情なくしてもコミュニケーションが成立してしまう電脳化の副産物として、日本人は仕草や会話の様式にこだわるようになっていた。
要は、「私はあなたにこれだけ心を砕いていますよ」ということを周囲にも対象にも同時に知らせるためだ。

作戦担当ということになっている嶋田の会話の主導権が移ったことを示すように、古賀は手元に集中していた電脳アクセス・配布権を示すアドミニスターアイコンと表示データを嶋田に渡した。

「私たちは、作戦想定を少なくとも一度の襲来を撃退した後2週間の間を開けてと考えていました。回数を重ねるに従って兵力の統合などでのべ襲来数は増えることも。
そこで、汎用戦闘艦は急速建造が可能なようにブロック化をして設計を行っていました。
これをあわせると――1か月で10万隻、フル稼働時には半年で100万隻程度の量産が可能と推定しています。
ただ、資材が足りないでしょうからまぁ実質は1年で100万隻程度になるでしょうが。」

同盟側の空気が、凍った。

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最終更新:2012年01月30日 19:50